コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


描魔

ゴーストネットOFFの掲示板にて最近噂されている事がある。
それは子供の鬼が現れているのだと言う。
その子供は『描くモノ』を全て具現化することが出来て、人々を苦しめているのだとか‥‥。
無邪気な子供が手にした大きすぎる力。
その力はついに最悪の形を迎える。
件 名・人死に
投稿者・ミソギ
本 文・ついに『子鬼』が人を殺したらしいよ。

件 名・ええっ、嘘!
投稿者・イズミ
本 文・うそぉ! え、それっていつの話!?

件 名・一週間前
投稿者・ミソギ
本 文・母親を死なせたんだって。父親が子鬼を殺そうとしてるらしいんだけど、何と捕まえたら100万円くれるって!
この投稿記事から若い連中が『子鬼』と呼ばれる少年(9歳)が見も知らぬ人間達に追い立てられ始めるのだった。

視点→リュウ・リミテッド

「人間って怖いですね‥‥こういうのが出ると、いろいろと厄介な事になるのですよ‥‥リィも人間ですけど」
 姉であるエリィ・リミテッドがノートパソコンを操りながら苦笑して呟く。まるで中世の魔女狩りのようだ、リュウ・リミテッドはエリィのノートパソコンを覗き込みながら心の中で呟く。
「お姉ちゃん、この子鬼ってさぁ‥‥具現系の魔術師じゃない?」
「確かに‥‥」
 エリィは記事内容を見直しながら小さく呟く。人間の中にも特殊な力を持って生まれてくる事が多々ある。それは扱う者によって白にも黒にも染まる。まるで真っ白なキャンバスに描く絵のように。
「多分、悪気はないと思うんだ。ただ、純粋に絵が好きでこうなったと思うんだ」
 リュウは少し俯きながら小さな声で呟く。
「悪気があったのか、なかったのか、どっちにしても助けた方が良さそうね‥‥同士として」
 エリィの言葉にリュウは首を縦に振る。リュウとエリィ、彼らも普通の人間からは『異形』と呼ばれる力の持ち主だ。能力の違いはあれど、同じような人間を前にして放っておく事など出来ないのだろう。
「さて、急ぎましょうか。お金に目が眩んだ厄介な人達がこの子を見つけてしまう前に」
 確かに、とリュウは心の中で呟く。投稿記事を見ている限り、お金目当てに『子鬼』を探している人間は大勢いそうなのだから。
「‥‥うん、急ごう」
 殺させはしないよ、このまま殺されたら――可哀想だ。リュウは『ぐ』と拳を強く握り締め、エリィと共に『子鬼』を探しに外へと出たのだった。

「ねぇ――『子鬼』って呼ばれてる子供を知らない?」
 あれから二人が来たのは近く公園だった。子鬼を探すとは言ったものの、何処を探せばいいのかも検討着かず、二人はそれぞれの能力を使って子鬼を探す事にした。
 リュウはタンバリンを使って、公園に生えている木々の妖精や噴水に潜む水の妖精などに協力を求めていた。
「う〜ん、そういう子いたかなぁ? ねぇ、知ってる?」
 水の妖精が木々の妖精に問いかけると「うん、少し向こうの公園にいる桜の妖精が見たって言ってたような気がする」と言葉を返した。
「本当!? 向こうの公園って何処? 教えて?」
 リュウが前のめりになって妖精たちに話の続きを言うように急かす。
「此処を真っ直ぐ行ったら百貨店があるから、その百貨店から向かって右に行くの、そしたら小さな公園があるから。そこの妖精に聞くといいよ」
「ありがとう! すぐに行ってみるよ」
 リュウは手を振って妖精たちと別れてベンチで腰掛けているエリィの所まで小走りで行く。
「お姉ちゃん、向こうの公園の妖精が子鬼を見たって」
 情報が入って嬉しそうな表情のリュウとは裏腹にエリィの表情はあまり嬉しそうではなかった。
「どうかしたの?」
 リュウが問いかけると「予想以上に子鬼を探してる人が多いみたい」と俯きながら言葉を返してくる。
「それなら問題ないよ、その人達より先に見つければいいんだから」
 リュウがエリィの腕を引っ張って「行こう」と先へ行くように促す。そして二人は妖精に会う為に公園へと向かい始めたのだった。


「子鬼? あぁ、あの子の事ね。知ってるも何もこの公園はあの子のお気に入りみたいだから」
「いつ来るか分かる?」
「今来てるわよ、ほら。あそこの隅っこで絵を描いてるのが子鬼って呼ばれてる子よ」
 桜の妖精が指差した方向にはベンチに座って真剣な表情で絵を描いている少年だった。エリィも少年に気づいたようで、慌ててこっちを見ている。
「ありがとう。それじゃね」
 リュウは軽く手を振ってエリィの所へと向かう。
「お姉ちゃん」
「リュー、あの子が子鬼なのね」
 エリィの言葉にリュウは無言で首を縦に振る。
「急いだ方がいいかもしれない、殺気だった足音が聞こえるから」
 エリィが呟いた瞬間「僕を殺すの」と少年の声が聞こえてきた。
 しかし少年の様子を見ていると『殺されるかもしれない恐怖』は感じられなかった。むしろ当然とでも言うかのように受け入れている印象さえ見受けられた。
「僕はママを殺したからね。それも仕方ないかもしれないけど――この絵を描きあげるまで待ってくれないかな」
 少年はスケッチブックから視線を移動すること無く言葉を続ける。
「だけど、この絵を描きあげてパパにあげたら死んでもいいからさ」
 二人が少年の絵を覗きこむと――そこには優しげな女性が描かれていた。
「僕が殺しちゃったママをパパに返すから。その後は殺してもいいよ」
「リュー達は‥‥キミを殺しに来たわけじゃないよ?」
「そうです、リィたちはそんな事はしませんわ」
 二人が否定の言葉を呟くと「じゃあ何のため? あ、僕を捕まえないと100万円もらえないから?」と少年は初めて顔をあげて言葉を話してきた。
「僕は‥‥ママを喜ばせたかっただけなのに、何で僕の絵がママを殺しちゃったの‥‥あんなに好きだったママ‥‥それを見てたパパも僕を嫌いになった」
 だから、パパにママを返すの――少年は言葉を付け足して二人に向かって話した。
「はっきり言ってリィ達はお金なんてどうでもいいんです。リィ達はあなたが心配で来たんです」
 心配と言う言葉に少年は首を傾げる。
「僕はママを殺したんだよ? 怖くないの? 僕はあなた達を殺すかもしれないんだよ?」
 少年の言葉に「大丈夫よ」とエリィが言葉を返した。
「リィ達は能力こそ違うけれど同士なのです」
「ねぇねぇ、リュー達の所に来ない?」
 リュウの言葉に少年は「え?」と目を丸くしながら呟いた。
「でも‥‥僕がいれば二人に迷惑がかかるから‥‥」
 リュウ達の申し出は少年にとってありがたかった。だって少年に行く場所など残されていないのだから。
「リィは全然、そういう事は気にしませんよ。むしろ、どんとこいなのです」
 エリィは呟きながら少年に向かって手を差し出す。少年もおずおずと出された手を取り、3人で公園を離れる。
「あのね、僕の名前は――‥‥」
 少年は居場所を見つけた。彼女達のおかげで安らげる場所を見つけたのだろう。そして彼女達と一緒にいれば力が暴走して人を襲うこともしなくなるだろう。
 二人によって少年は救われたのだから。

END

――出演者――

8065/リュウ・リミテッド/10歳/男性/学生・魔術師

8062/エリィ・リミテッド/14歳/女性/学生・魔術師

―――――――

リュウ・リミテッド様>
エリィ・リミテッド様>

初めまして、今回『描魔』の執筆をさせていただきました水貴透子です。
今回はご発注ありがとうございまいした。
内容の方はいかがだったでしょうか?
少しでもご満足して頂けるものに仕上がっていれば幸いです。
それでは、また機会がありましたら宜しくお願いします。


2009/6/27