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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


描魔

ゴーストネットOFFの掲示板にて最近噂されている事がある。
それは子供の鬼が現れているのだと言う。
その子供は『描くモノ』を全て具現化することが出来て、人々を苦しめているのだとか‥‥。
無邪気な子供が手にした大きすぎる力。
その力はついに最悪の形を迎える。
件 名・人死に
投稿者・ミソギ
本 文・ついに『子鬼』が人を殺したらしいよ。

件 名・ええっ、嘘!
投稿者・イズミ
本 文・うそぉ! え、それっていつの話!?

件 名・一週間前
投稿者・ミソギ
本 文・母親を死なせたんだって。父親が子鬼を殺そうとしてるらしいんだけど、何と捕まえたら100万円くれるって!
この投稿記事から若い連中が『子鬼』と呼ばれる少年(9歳)が見も知らぬ人間達に追い立てられ始めるのだった。

視点→エリィ・リミテッド

「人間って怖いですね‥‥こういうのが出ると、いろいろと厄介な事になるのですよ‥‥リィも人間ですけど」
 まるで中世の魔女狩りのようだ、エリィは口に出すことはしなかったけれど心の中で呟いた。恐らく弟であるリュウ・リミテッドも同じ事を思っているのだろう。
「お姉ちゃん、この子鬼ってさぁ‥‥具現系の魔術師じゃない?」
 リュウの言葉に「確かに‥‥」とエリィも言葉を返す。彼女も記事内容を見た時から同じ事を思っていたのだろう。
 人間の中にも特殊な力を持って生まれてくる事が多々ある。それは扱う者によって白にも黒にも染まる。まるで真っ白なキャンバスに描く絵のように。
「多分、悪気はないと思うんだ。ただ、純粋に絵が好きでこうなったと思うんだ」
 リュウは少し俯きながら小さな声で呟く。
「悪気があったのか、なかったのか、どっちにしても助けた方が良さそうね‥‥同士として」
 彼女の言葉にリュウは首を縦に振る。リュウとエリィ、彼女達も普通の人間からは『異形』と呼ばれる力の持ち主だ。能力の違いはあれど、同じような人間を前にして放っておく事など出来ないのだろう。
「さて、急ぎましょうか。お金に目が眩んだ厄介な人達がこの子を見つけてしまう前に」
「‥‥うん、急ごう」
 リュウは小さく、だけど決意を秘めた瞳で言葉を返した。エリィはそんな弟の姿を優しい瞳で見た後、一緒に『子鬼』を探す為に外へと出て行ったのだった。

「ねぇ――『子鬼』って呼ばれてる子供を知らない?」
 あれから二人が来たのは近くの公園だった。子鬼を探すとは言ったものの、何処を探せばいいのかも検討着かず、二人はそれぞれの能力を使って子鬼を探す事にした。
 リュウはタンバリンを使って、公園に生えている木々の妖精や噴水に潜む水の妖精などに協力を求めていた。
「リューったらあんなに大きく動いて‥‥結構人から見られてるじゃないの」
 くす、と微笑みながらエリィは呟いてベンチへと腰を下ろす。そして瞳を伏せる。彼女は人の足音を聞き分ける事が出来る能力を有している。
(「‥‥まるで急いでいるみたいに足音の速い人が多い‥‥もしかして子鬼を探しているのかしら‥‥」)
 エリィは足音を聞いて、予想以上に子鬼を追っている人間が多いことを知ると、自分達も急がねばと言う気持ちに駆られる。
 その時、リュウが此方に向かって駆けてくる姿が視界に入ってきた。
「お姉ちゃん、向こうの公園の妖精が子鬼を見たって」
 情報が入って嬉しそうなリュウの顔を見て、エリィも少し笑ってみせるけれどどうしても無理をしている感じがして、リュウの表情も曇る。
「どうかしたの?」
 リュウが問いかけると「予想以上に子鬼を探している人が多いみたい」と俯きながら言葉を返してくる。
「それなら問題ないよ、その人達より先に見つければいいんだから」
 リュウはエリィの腕を引っ張って「行こう」と先へ行くように促す。
(「そうね、そうよね。その人達が先に見つけるよりリューとリィが見つければいいだけの話だよね」)
 エリィは心の中で呟き、子鬼を見つける為に公園へと向かい始めた。


 公園に到着するとリュウはタンバリンを使って桜の妖精と話し始めた。話の内容を聞いている限り、この公園は子鬼のお気に入りの場所のようだ。途中、リュウが此方を向いて公園の隅っこを見る。エリィもつられるようにそちらに視線を移すと一人の少年が視界に入ってきた。
「お姉ちゃん」
「リュー、あの子が子鬼なのね」
 エリィの言葉にリュウは無言で首を縦に振る。
「急いだ方がいいかもしれない、殺気だった足音が聞こえるから」
 エリィが呟いた瞬間「僕を殺すの」と少年の声が聞こえてきた。
 しかし少年の様子を見ていると『殺されるかもしれない恐怖』は感じられなかった。むしろ当然とでも言うかのように受け入れている印象さえ見受けられた。
「僕はママを殺したからね。それも仕方ないかもしれないけど――この絵を描きあげるまで待ってくれないかな」
 少年はスケッチブックから視線を移動すること無く言葉を続ける。
「だけど、この絵を描きあげてパパにあげたら死んでもいいからさ」
 二人が少年の絵を覗きこむと――そこには優しげな女性が描かれていた。
「僕が殺しちゃったママをパパに返すから。その後は殺してもいいよ」
「リュー達は‥‥キミを殺しに来たわけじゃないよ?」
「そうです、リィたちはそんな事はしませんわ」
 二人が否定の言葉を呟くと「じゃあ何のため? あ、僕を捕まえないと100万円もらえないから?」と少年は初めて顔をあげて言葉を話してきた。
「僕は‥‥ママを喜ばせたかっただけなのに、何で僕の絵がママを殺しちゃったの‥‥あんなに好きだったママ‥‥それを見てたパパも僕を嫌いになった」
 だから、パパにママを返すの――少年は言葉を付け足して二人に向かって話した。
「はっきり言ってリィ達はお金なんてどうでもいいんです。リィ達はあなたが心配で来たんです」
 心配と言う言葉に少年は首を傾げる。
「僕はママを殺したんだよ? 怖くないの? 僕はあなた達を殺すかもしれないんだよ?」
 少年の言葉に「大丈夫よ」とエリィが言葉を返した。
「リィ達は能力こそ違うけれど同士なのです」
「ねぇねぇ、リュー達の所に来ない?」
 リュウの言葉に少年は「え?」と目を丸くしながら呟いた。
「でも‥‥僕がいれば二人に迷惑がかかるから‥‥」
 リュウ達の申し出は少年にとってありがたかった。だって少年に行く場所など残されていないのだから。
「リィは全然、そういう事は気にしませんよ。むしろ、どんとこいなのです」
 エリィは呟きながら少年に向かって手を差し出す。少年もおずおずと出された手を取り、3人で公園を離れる。
「あのね、僕の名前は――‥‥」
 少年は居場所を見つけた。彼女達のおかげで安らげる場所を見つけたのだろう。そして彼女達と一緒にいれば力が暴走して人を襲うこともしなくなるだろう。
 二人によって少年は救われたのだから。


END


――出演者――

8065/リュウ・リミテッド/10歳/男性/学生・魔術師

8062/エリィ・リミテッド/14歳/女性/学生・魔術師

―――――――

リュウ・リミテッド様>
エリィ・リミテッド様>

初めまして、今回『描魔』の執筆をさせていただきました水貴透子です。
今回はご発注ありがとうございまいした。
内容の方はいかがだったでしょうか?
少しでもご満足して頂けるものに仕上がっていれば幸いです。
それでは、また機会がありましたら宜しくお願いします。


2009/6/27