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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


―― 悪戯好きな子供達の夜 ――

 スケッチブックに鉛筆を滑らせる。
 何も描かれていない真っ白なページに自分が描きたいものを埋めていく。
 まるで僕自身が世界を作っていくようで好きだった。パパとママが喜んでくれるのが嬉しくて、僕は余計に絵を描くことが好きになった。

「実〜、片付け終わったぁ?」
 ドアを軽い叩く音と同時にリュウ・リミテッドが顔を覗かせてくる。
「うん。終わったよ――って言うより僕の荷物ってほとんど無かったから直ぐに終わった」
 大枝・実は座っていたベッドから立ち上がり、ドアを開けてリュウに部屋に入るように促す。
 リュウと大枝、この二人は年も近いせいか一緒に住み始めてから直ぐに仲良くなった。同じ『異形』の力を持つ者同士、打ち解けやすかったのだろう。
「ねぇねぇ、外に遊びに行こうよ」
 時間はもうすぐ九時、子供が出かけるには少し遅い時間だ。
「リュー、それ‥‥持っていくの?」
 大枝はリュウの持っているタンバリンを指差しながら問いかける。リュウは楽器――彼の場合はタンバリンを使わないと精霊を操る事は出来ないと彼自身から大枝は聞かされていた。
 つまり、それを持っていくという事は『精霊を使う遊び』をしようとしている事が分かる。
「うん、実もそれ持っていこうよ」
 リュウが指差したのはスケッチブック。大枝は『描いたものを具現化する』能力を有しており、この二人が真面目に能力を使って遊ぶとなると、周りの人間にとっては少し迷惑なことになるかもしれない。
「でも、こういうのを遊びに使っちゃいけないんじゃないかな」
 かつて自分の能力を制御しきれずに人を殺めた経験のある実が俯きながら呟く。
「大丈夫だよ、リューもいるし。それに危ない悪戯はしないよ」
 そう言ってリュウは大枝の腕を引っ張って外へと連れ出したのだった。


 リュウと大枝、彼らが家から出てやってきた場所は公園。少しばかりやんちゃな少年少女が集まっているのか迷惑なくらいに騒がしい。
「実、ご近所迷惑だから止めさせてあげようよ」
 リュウはさらりと言って「お兄さん、お姉さん、ちょっとご近所迷惑だから静かにしてください」と明らかにタチの悪そうな少年少女に話しかける。
「あぁ?」
「何このガキんちょ、あったまおかしいんじゃない?」
 少年少女達はけらけらと笑いながらリュウと大枝を見ながら大きな声で笑っている。
「あんまり騒ぐと‥‥バケモノに食べられちゃうかもよ〜?」
 リュウがからかうように少年少女達に話しかけると「何か気味悪いんですけど、このガキ」と少女がリュウをじろりと睨みつける。
 その時、リュウは視線で大枝に合図する。大枝は何をしようとしているのか直ぐにわかったのか、呆れたような視線を返し――スケッチブックに殴り描きする。
「きゃあああああああああっ!」
 それと同時に現れた化け物に少女の一人が大きな声で叫ぶ。
「うわっ」
 そしてリュウも空中をふわりと浮いて見せると少年の一人が驚いたような声を出した後、一歩後ろへと下がる。
「ねぇ、お兄さんたちには聞こえないの? この公園にいるモノたちの声が‥‥」
 ぴたん、と噴水から水雫が落ち、木々の揺れる音がざざざと静かな夜の公園に響き渡る。それはまるで自然が奏でる音のようで、少年少女達は「きゃあっ」と怯え始める。
 流石に自分達の周りで起きている不可思議な現象に最初こそ威勢の良かった少年少女達も怯え始め、がたがたと震え、今にも泣きそうな少女もいた。
「そこで何をしているんだ」
 ぴかっと懐中電灯の光を当てられ、少年少女、リュウや大枝も眩しさに目を細める。
「ちょ、おまわりさん! このガキ達何とかしろよ! 俺ら殺されちまうよ!」
 少年の一人がおまわりさんに縋り付きながら話しかけるのだが――肝心のリュウや大枝は「何のことですか?」と言葉を続けた。
「僕達はこのお兄さんたちが騒いでて煩いから静かにしてってお願いしただけなんだけどなぁ、ねぇ? 実」
「うん。僕達は注意しただけです。そうしたら何かそのお兄さんたちが騒いじゃって‥‥」
 大枝も首を縦に振りながら呟くと「嘘吐いてんじゃねぇよ」と少年の一人が凄みながら言葉を投げかけてくる。
 そこでおまわりさん達も少年少女達がお酒臭いことに気づき「きみたち」とため息を吐きながら少年少女の方に話しかける。
「どう見ても未成年だよな、それなのに足元に転がってるそれの説明は出来るのかい? 酔っ払ってこの子たちに絡んだだけなんじゃないのか?」
 おまわりさんの言葉に「ち、ちげぇよ!」と少年たちは言葉を返すのだが、彼らが実際にお酒を飲んでいたのは事実のようで、どう考えてもリュウや大枝が悪者になる事はなかった。
「キミ達もこんな時間に出歩くからこんなことになるんだよ。これからは気をつけなさい」
「「は〜い‥‥」」
 こんな時間に出歩いていることを注意され、リュウや大枝は子供らしく返事をして「それじゃ僕達帰ります」と頭を下げて来た道を戻る。

「あ〜、僕達も怒られちゃったね〜。でも悪戯するのって楽しかった」
 大枝が笑いながら呟くと「今度は怒られないように夜遅くに出歩くのはやめようか」とリュウも言葉を返す。
「本当はもっと悪戯するはずだったのに、おまわりさんが来ちゃうなんて‥‥」
「どんなことをしようと考えてたの?」
 残念そうに呟くリュウに大枝が問いかけると「召喚術使おうと思ってたんだ」とさらりと言葉を返す。
「え‥‥本気?」
「もちろん怪我なんてさせるつもりはなかったよ、今の僕じゃ低レベルの召喚術しか使えないしね」
 ふぅん、と大枝は言葉を返しながら「実はー?」とリュウが聞いてくる。
「ん?」
「実は何かしたいなってなかった?」
 リュウの問いかけに「うーん‥‥」と大枝は考えこみながらスケッチブックをぱらぱらと捲る。
「僕は別に、何がしたいってワケじゃないけど――なんか楽しかった。人を驚かすのって悪い事かなって思うんだけど――本当に楽しかった」
 大枝は少年少女達の驚く様を思い出しているのか、くすくすと思い出し笑いをしながら呟く。
「おまわりさんには怒られちゃったけどね」
「いいじゃん、それも悪戯の楽しみの一つなんだから」
 リュウが悪戯っぽい笑顔を見せながら言葉を返すと「そうだね」と大枝も笑う。
「次はもっと面白く驚かせられるように頑張らないとね」
 リュウが拳を『ぐ』と握り締めながら呟く。悪戯心が騒ぐ、これは子供の特権。
 だからこれからもリュウや大枝は悪戯をやめないだろう。悪戯は子供にしか許されないのだから。
「次は僕ももうちょっと怖い怪物描いて驚かせようかな」
 大枝がスケッチブックを見ながら呟き、二人は家へと帰って行ったのだった。


END


――出演者――

8068/大枝・実/9歳/男性/学生・魔術師?

8065/リュウ・リミテッド/10歳/男性/学生・魔術師

―――――――

大枝・実様>
リュウ・リミテッド様>

こんにちは。
今回シチュノベ(ツイン)を執筆させていただきました水貴透子です。
今回はご発注ありがとうございました♪
描魔のその後――という事でしたが、いかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思って下さったら嬉しいです。
それとその後を書かせて頂き、凄く嬉しかったです。

それでは書かせてくださり、ありがとうございましたっ。

2009/6/30