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―― 子供達のそんな日常 ――
子供の仕事、それはよく学んで、遊んで、食べて、寝る事。
毎日を元気に暮らしていくこと。
たとえ、離れていても親は子供が元気に育つことを願うのだから。
今日は天気も良く、綺麗な青空が広がっている。
こんな日に遊んだら凄く楽しいだろう、エリィ・リミテッドは空を仰ぎながら心の中で呟き、目の前の可愛い便箋へと再び視線を落とす。
「お姉ちゃん、何してんの?」
リュウ・リミテッドがエリィの後ろから顔を覗かせながら問いかける。弟が話しかけてきた事で再びペンをテーブルの上へと置いて後ろを向いて視線を合わせる。
「この前、お父様達から手紙が来たでしょう? そのお返事を書いているんです。リューこそ何を‥‥?」
エリィがリュウに問いかけると「実と遊んでる」と短い言葉と満面の笑顔がエリィに向けられた。
リュウが『実』と呼ぶ少年は、最近エリィとリュウが住んでいる蔦屋敷に居候する事になった少年。同じ性別、同じ年代のリュウと楽しく暮らしており、最近では悪戯などを一緒にしている事もある。
「そういえば‥‥今回はどうしましょう」
エリィがポツリと呟くと「何かあったの?」と大枝・実が首を傾げながらエリィに言葉を投げかける。
「えぇ、実はリィ達の両親がフランスに居て手紙が送られてきたんです。そのお返事を今書いているんですけど――写真をどうしようか悩んでしまって‥‥」
エリィが苦笑しながら呟くと「写真?」と大枝は再び首を傾げる。
「えぇ、リィ達の元気な姿を見て安心してもらえるようにいつも手紙のお返事には写真を同封してるんですけど今回はどうしようかなって」
エリィの言葉に「じゃあ僕が写真を撮るからカメラ貸して」と大枝が少し眉を下げて笑う。
両親――という言葉に大枝も考えるところがあるのだろう。明らかに自分は居候なのだと実感させられる。二人は言わないけれど『邪魔者』なんじゃないかと大枝の頭の中で嫌な考えがぐるぐると回り始める。
「何言ってんの? 実もリューたちと一緒に写らなくちゃ」
リュウの言葉に実は「え?」と驚きに目を見開きながらきょとんとした顔で言葉を返す。
「そんな寂しい事を言わないで。実もリィ達と一緒に写りましょ」
エリィの言葉に少しだけ実は嬉しくなって首を縦に振る。
「どうせなら元気なところが良いですよね」
エリィの言葉に「リューの魔術が上達したのも見て欲しい」とリュウがタンバリンを使って『召喚術』を使用する。
リュウは『召喚術』があまり得意ではなく、最近練習している姿をエリィも大枝も見ていたから知っている。
だからこそ上達したのを見て欲しいのだろう。
「リューったら‥‥動画じゃないから見せれるわけじゃないのに‥‥」
エリィが苦笑しながら呟くと「リュウはきっとお父さんやお母さんが大好きなんだね」と大枝は少しだけ寂しそうな表情をしながら呟いた。
「リューはお父様やお母様の事はもちろん、リィの事も――実の事も大好きですわよ」
リィが優しい笑みを浮かべながら大枝に話しかけ、大枝は嬉しそうに「ありがとう」と言葉を返した――次の瞬間、リュウの慌てたような声が庭園に響き渡る。
「リュウ、どうし―――‥‥」
大枝の言葉は最後まで呟かれることはなかった。
なぜならリュウが『召喚術』によって小さな魔獣達が現れ、庭園の中は少しだけパニックになっていた。
「‥‥リュー‥‥」
流石にカメラを構えていたエリィも少しだけ頭が痛くなるのを感じたのだとか‥‥。
「リュー、何をしてるの?」
エリィはカメラをオートモードにしてテーブルに置き、リュウのところへと行く。大枝も少し驚いた表情はしていたけれど何処か楽しそうに画材をテーブルの上においてエリィの後を追ってリュウの元へと向かう。
「ちょっとぉっ! キミ達は呼んでないんだから大人しく帰ってよ!」
リュウが呼び出した魔獣の一匹に向かって大きな声で叫ぶのだが――魔獣は木の上からまるでリュウを嘲笑うかのように、木になっている木の実をリュウに向けて投げつける。
どうやら大人しく帰ってくれるつもりは全くないらしい。
「うぅ、リューが呼んだんだから言う事聞けってばっ!」
リュウは手をぱたぱたとさせながら叫ぶが、魔獣は聞く耳持たず。
しかも他にも数匹の魔獣も召喚されてるらしく、リュウをからかっているのかリュウの頭を踏むようにして庭園を駆けていく。
「リュウ、何してるの?」
大枝が問いかけると「呼び出した魔獣達が言う事聞かないんだよ」としょんぼりしながら言葉を返す。幸いにも『召喚術』が苦手なリュウが呼び出したおかげで凶悪なものを呼び出すことはなかった。精々いたずら好きの魔獣程度なのだろう。
「とりあえず捕まえて帰らせましょう。このままでは庭園が荒らされてしまいます」
エリィがため息混じりに呟き、魔獣を追いかけ始める。
「僕も行くよ」
大枝は言葉を残し、手を前へとかざす。するとスケッチブックや鉛筆などの画材が入った鞄が出現する。
「さて‥‥と」
大枝はスケッチブックと鉛筆を取り出し、何かを描き始める。小さな魔獣達はそれなりに素早さもあり、とてもじゃないけれど走って追いかけて捕まえるなんて無理な話だ。
(「それなら‥‥それに負けないものを――描けばいい‥‥」)
大枝は心の中で呟き、描いた獣を黄色の色鉛筆で色づける。色づけを行う事によって大枝が描いたモノは特殊能力を得る。
「捕まえておいで」
スケッチブックから具現化した獣に大枝が命じると、獣は魔獣を追って走り出す。そして次の物を描くために大枝はスケッチブックに鉛筆を滑らせた。
「えぇ、少し困っているんです。このままでは綺麗に整備された庭園が壊されちゃいそうで‥‥」
エリィは自分達の庭園に住む精霊たちに話しかけ、何か良い方法はないかと相談する。精霊たちもこの庭園が荒らされてしまったら自分達の居場所を失うということになるので、快くエリィ達に協力をしてくれる。
「え? 実が?」
精霊が指差した方向を見ると大枝が描いた獣が追いかけている姿が視界に入る。
それを見て「なるほど」とエリィは呟く。大枝の獣が魔獣を追いかけ、その間にリュウがトラップを仕掛けて足止め、その間に大枝の獣が捕まえる――‥‥立派な計画だ。
「リィも手伝うとしましょう――――リミテッドをなめない方がいいですよ」
エリィは「くす」と笑みを漏らして音楽を奏でて精霊達を操り、魔獣達を追いかけ、捕まえるための手助けをするように指示する。
流石に魔獣と言えども、三人全員が特殊能力を使って追いかけてくるのだからかなうはずもない。
合計3匹の魔獣たちは全て捕まえられて大枝が描き作り出した『檻』に閉じ込める。
「もう! こんな悪戯させるためにリューは呼んだんじゃないのに‥‥」
ため息混じりにリュウは魔獣たちを元の世界へと戻し、リミテッド家の蔦屋敷は再び平穏を取り戻したのだった。
拝見・親愛なるご両親へ
新しい弟のような子も増えて、リューも喜んでいます。
二人で悪戯ばかりしてるんですよ?
きっと同じ年頃の実と気があったのでしょうね、リィももちろん実の事は好きですよ。
リィ達の元気な姿を写真に収めて送ろうと思ったんですけど――ちょっとしたハプニングでドタバタ写真になってしまいました。
リューの召喚術が苦手なのはもう暫くは続きそうです。
‥‥とまぁ、こんな感じですが、リィ達は元気でやっています。
お父様やお母様もお体に気をつけて下さいね。
それではまた、お手紙を楽しみに待っています。
END
――出演者――
8065/リュウ・リミテッド/10歳/男性/学生・魔術師
8062/エリィ・リミテッド/14歳/女性/学生・魔術師
8069/大枝・実/9歳/男性/学生・魔術師?
―――――――
リュウ・リミテッド様>
エリィ・リミテッド様>
大枝・実様>
こんにちは、いつもご発注をありがとうございます。
今回はシチュノベ(グル3)のご発注をありがとうございました。
3人の日常――ということで書かせて頂きましたが、いかがだったでしょうか?
ご満足して頂けるものに仕上がっていれば幸いです。
楽しい3人を書かせて頂き、ありがとうございましたっ。
それでは、また機会がありましたら書かせて頂きたいです♪
2009/7/6
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