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<なつきたっ・サマードリームノベル>


夢幻月夜・美しく咲く花の火

夏の風物詩とも言えるイベント、祭り。
今日は小さな神社での祭りが予定されており、中でも花火は特に評判が良かった。
きらきらと輝く花火が川の水面に映って、夏を特に感じさせるのだと言う。


――夏祭りのご案内――

毎年恒例となっております『夏祭り』を今年もする事になりました。
夜店などは午後5時から開催される事になっております。
金魚すくい、クレープ、射的、祭りの醍醐味である夜店が揃っております。
中でも祭りのメインと呼べる花火大会も開催予定ですので、皆様ご都合が合いましたら
花火を見て、夏を感じて見ませんか?

この夏の思い出が、花火が皆様の思い出となる事を花火大会スタッフ一同心より願っております。


視点→リュウ・リミテッド

 始まりは街で見かけた夏祭りの案内チラシ。
姉であるエリィ・リミテッドや同居人である大枝・実と一緒に行きたくて悪いとは思ったけれど、リュウはチラシを引きちぎって自宅へと持ち帰った。
「お祭り行こっ!」
 エリィ。リミテッドは大枝・実の絵のモデルをしているだったのか、洋風の椅子に腰掛けていた。その正面にはスケッチブックを持った実もチラシに少しだけ興味があるのか進めていた鉛筆を止めている。
「お祭り‥‥?」
 エリィが呟くと「お姉ちゃん、これ見てこれ!」とリュウがやや興奮気味に叫びながら少しだけしわくちゃになったチラシをエリィに渡した。
「夏祭りの案内なのね、開催日は‥‥あら、今日なんですね」
「行こうよ♪ お姉ちゃんと実も!」
 リュウはぱたぱたと落ち着きの無い様子でエリィと実に話しかける。
「それじゃ、皆で行きましょうか」
 エリィの言葉を聞いてリュウは余計に嬉しさを我慢出来なかった。もし『ダメ』なんていわれたらどうしよう、リュウはそんな様子などおくびにも見せなかったけれど少しだけ不安があったのだ。
「ただし」
 祭りに行こうと実と準備をしようと仕掛けた時、まるでそれを止めるかのようにエリィが静かに呟く。
 もしかしたら『やっぱり止めましょう』なんていわれるんじゃないか、リュウは考えると少しだけ浮いていた気分が沈んでいくのを感じた。
 そんなリュウの気持ちを知ってかエリィはくすくすと笑みを漏らしながら「大した事じゃないですよ」と言葉を付け足した。
「魔術を使うのは禁止と言う事だけです、お祭りの場で騒ぎにでもなったら大変ですし、人の迷惑にならないとも言い切れませんから」
 エリィの言葉が『祭りに行くのを止める』と言うものではなく、リュウはホッと安堵したように「なんだぁ」と呟いた。
「そう言う事なら大丈夫だよ」
 リュウは言葉を付け足して、お祭りの準備の為に部屋へと走って戻っていく。
「十分後に玄関で待ち合わせですわよ」
 背中からエリィの声が聞こえ「わかったー!」とリュウは立ち止まることなく言葉を返して、部屋へと向かったのだった。

 それから十分後――‥‥。
 「さて、こんなものかな」
 リュウはトラップツールが入ったバッグを背負い、祭りに行く準備を終わらせていた。勿論エリィとの約束を破るつもりは毛頭無い。
 彼の『トラップマスター』としての名前は伊達ではないらしく、魔術を使わなくてもリュウは悪戯をする気満々のようだ。

「それでは行きましょうか」
 エリィが白衣を翻しながら呟く。
 お祭りを開催している場所は近くの神社で、三人が住んでいる場所から遠くもないけれど、あまり近くもないという微妙な場所だった。
 外に出れば、今からお祭りに向かうのか浴衣などを着た少女達や、小さな子供を連れた家族連れなどが多く見られた。
「今からお祭りに向かうのかな、結構人が多くなりそうだね」
 実が浴衣を着た少女を見ながら呟く。
「そうですわね、お祭りや花火と言えば夏の風物詩ですもの。人が集まるのも不思議じゃないですわ」
 エリィの言葉に「人が沢山いた方が何か楽しいじゃん」とリュウもにぱっと笑顔で言葉を返す。
「そうだね。今日はたくさん楽しんじゃおう」
 実が言葉を返し、三人はお祭りで賑わう神社へと足を踏み入れたのだった。

「リィはこの辺の屋台を見てますから、リュウと実は何処か見てきたらどうかしら」
 エリィがリュウと実に話しかけると「そうしよっか!」とリュウが実の顔を見ながら言葉を返し、二人はそのまま人ごみの中へと消えていったのだった。
「あー、あそこに射的があるっ。行ってみようよ、実!」
 リュウは少し遠くに見える『射的』という文字が書かれた看板を見つけて実に話して足早にかけていく。
「ちょ、ちょっと待ってよ、リュウ!」
 よほど楽しいのか、実の事を振り返らずにリュウは走っていくため実は着いていくのが少し大変だったりする。
「おじちゃん、射的1回ずつ!」
 リュウはびしっと人差し指を上に向けて射的の屋台で木箱に座っているおじさんに話しかけた。
「おっ、坊主は元気いいなぁ! はいよ、よぅく狙うんだぞ。そっちの坊主もだろ?」
 射的用のモデルガンを二人に渡しながらおじさんが「あの赤い布のところが狙いやすいぞ」と射的ポイントを教えてくれる。
「頑張ろうね、実」
「うん、僕も頑張る」
 二人は台の上にモデルガンを置いて、棚の上においてある人形を狙う。
「あ〜〜〜! 一回目外したぁ!」
「あ、僕は落とせたよ」
 一回目の弾でリュウは見事に外れ、実は少し大きい的だったけれど当たって人形は下へと落ちる。
「こっちの坊主の方がうまかったな――ほい、この人形は持っていきな」
 おじさんは落ちた人形を実に渡しながら豪快に笑う。
「うぅ〜〜、次は絶対に落としてやるっ」
 リュウは少しムキになって再び人形を狙いだす。ここで彼のトラップ道具を使えば落とせない事もないのだろうけれど、遊びは遊び、ちゃんと遊ばないのは子供として許せない、そんな気持ちが混じっているのかもしれない。
「うう、無理だ‥‥おじちゃんありがと。別のゲームしにいく‥‥」
 しょんぼりとしながらリュウが立ち去ろうとすると「これ持っていきな」と少し大きな人形をおじさんがリュウに渡す。
「あ、ありがと! おじちゃん良い人だなっ」
 にぱっとリュウは笑って「次のゲームに行こう、実!」と先ほどのように走っていってしまった。
 さすがは祭りとでもいうべきなのだろうか、普段ではゲームセンターなどで遊べないような面白いゲームが沢山あってリュウや実の目を輝かせていた。
「あ、これしたいな――‥‥一回させてくださいな」
 リュウがお金を払ってくじ引きをし始める。
「『超ラッキー』って奴を引けばゲームとソフトが2つずつもらえるよ、頑張ってみるんだね」
 屋台のおばさんがリュウに話しかけると「うん、頑張る」と箱の中に手を突っ込んで一枚の紙を引いた。
 そこに書かれていた文字は――――‥‥『超ラッキー』だった。
「うわっ、おばちゃん! これって2つずつもらえるやるだよねっ」
「凄いねぇ、これ確か一個しか入ってなかったはずなのに‥‥仕方ない、引いた以上は景品をやらないとね、ほら、持っていくといいよ」
 おばさんは携帯ゲーム機とソフトが2つずつ入った袋をリュウに渡す。
「やったっ、やったよ、みの―――る?」
 くるりと振り向いた先、そこにはいるはずの実の姿が見当たらない。
「あ―――れ?」
 逸れた、リュウが理解できたのはそれから数秒後の事。

「あー、どうしよう、実と逸れちゃった‥‥探しに行こうにも人が多くて見つからないし、どうしよう」
 うろうろとしながらリュウはどうやって実を捜そうと考えているが、慌てている為に良い案は出てこない。
「何をしているんですの?」
 そこへ現れたのは姉であるエリィだった。
「お姉ちゃんっ」
 エリィに話しかけられ、リュウはこれまでのいきさつを彼女に話す。
「それは困りましたね」
 苦笑してエリィは言葉を返してきた。
「まずはいろいろ探してみましょう」
 一人より二人、そう思ったリュウは首を大きく振って実を捜しに歩き出したのだった。


 それから暫くして、人の多いところは探し終えた二人は人気の無い場所へと足を向けることに決めた。
「この辺にいてくれればいいのですけど‥‥」
「うん、人の多いところは探したし、あとはこの辺しか探してない場所はないんだけどなぁ」
 エリィとリュウは周りをきょろきょろと見渡しながら呟くと、数名の少年達に囲まれている実の姿を発見する。
「お姉ちゃん、あれ」
「実――ですわね」
 確かに実、しかも特に驚いた様子はなく『どうやってこの場を切り抜けようかな』と考えているような表情だった。
「よぅし」
 リュウはトラップツールのテグスなどを取り出してトラップを作り始める。もちろんどんな状況であろうと『魔術禁止』の約束を破るつもりはリュウにはない。
 それが分かっているからエリィも口を出さないでいた。
 そして実もリュウとエリィに気づいたのか鞄から筆を取り出す。
「あ? 何してんだ、コイツ」
 空中に『×』を描き始めた実を見て、少年達は怪訝そうに眉を顰めた。
「おにーさんたち、もう逃げられないよ。リュウのトラップから」
 少年達の正面と左右に『×』を描き、逃げられないようにする。
「え」
 少年達がリュウのトラップに気づくのはテグスにくくりつけられた油性マジックが飛んできたあとの事だった。
「まぁ、大丈夫ですか? うちの弟達が失礼なことを‥‥」
 エリィが少しだけ申し訳なさそうに話しかけると「か、可愛い‥‥」と少年の一人がエリィを見て呟く。
「‥‥リューのお姉ちゃんに何か用?」
 エリィにちょっかいを出されたと感じたリュウは真っ黒な微笑みを浮かべて少年達に話しかけ、その場を三人は去ったのだった。


「あー、何か最後にあったけど楽しかったね!」
 リュウが大きく伸びをしながら呟くと「そうですわね、もうすぐ花火ですわ」とエリィが空を見上げながら言葉を返した。
「またお祭りがあったら行こうね!」
 リュウが楽しそうに実に話しかけると「うんっ」と実も笑って言葉を返す。
 その後、花火を見ながら夏を満喫する三人なのだった。

END

――出演者――
8062/エリィ・リミテッド/14歳/女性/学生・魔術師
8065/リュウ・リミテッド/10歳/男性/学生・魔術師
8069/大枝・実/9歳/男性/学生・魔術師?
―――――――

リュウ・リミテッド様>
こんにちは、いつもご発注ありがとうございます。
今回は「なつきたっ・サマードリームノベル」にご発注いただきありがとうございました。
今回は三名でのご参加希望でしたが、いかがだったでしょうか?
少しでも面白い、楽しげな様子だと思って下さったら嬉しいです。
それでは、またご縁がありましたらご発注お待ちしています。
今回は書かせて頂き、ありがとうございましたっ。

2009/7/16