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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


河川敷の花火大会 2009
Д゚) 回覧板〜
 いつもの小麦色が恵美に回覧板をわたした。
「あ、どうもです」
|Д゚) かわうそ? これで失礼する
「でも、普通は近所の…」
|Д゚) あーあのおばちゃんはダンス同好会で忙しいと言うから、かわうそ?がお駄賃貰って届けてきただけ
|Д゚) あと、ダンスの他にテニスも始めたとか何とか
「そうですか、ありがとうございます。元気で何よりですね♪」
|Д゚)ノ では、かわうそ?はこれで♪ また後ほど
「のちほど?」

 かわうそ?は軽やかに屋根に飛びのり屋根伝いで何処かに消えた。
 小首をかしげる。
 後ほどって何?

 恵美は回覧板の内容をみる。廃品回収日のことや地域コミュニティの情報など…。
 そして…『河川敷花火大会』の広告。
「そうね…梅雨が明けたら…花火大会よね」
 先ほどの小麦色の言葉も分かる。ああ、アレも行くんだ、と。
 この地域の川は結構大きく綺麗で有名だ。
 そこで花火が催される。一寸大きなお祭りである。
「みんなで見に行った方が面白そうよね」
 そう言って、友だちを誘うことにした恵美であった。


「夏祭り……か……」
 ポスターを眺める鳳凰院美香。
 隣では買い食いでアイスを食べている弟、紀嗣がいた。
「浴衣、このところ着てないね」
 紀嗣が言うと。
「何が言いたい?」
「んー。浴衣姿みたいな♪ って」
「……バカ」
 そっぽを向き早足で歩く美香。
「まってよー」
 弟は追いかけていった。

 織田義明はクローゼットの中から浴衣を取りだし考える。
「浴衣も良いが甚平で喜楽というのもあるな」
 色々有るため、彼も『人』として、世俗を楽しみたいのであった。 



〈集合〉
「な、何、この超越者の集まりはっ!」
 天城・優希があやかし荘に集まっているメンツに驚いていた。
 IO2とは別の超常能力監視組織のかのじょにとって、陰陽師や巫女、神格保持者や異世界の魔法使いがいることが驚異的だと言うことである。
|Д゚) でたらめ存在異次元びっくりショー
「……あなたが言ったら、よけい納得がいくわ不思議だけど」
|Д゚) ひでぇ
 実際、今回神とか偉い人とかそんな事関係がないのであるが。

「皇騎さん。先ほどはお疲れ様」
「茜さん、やっとお休みがとれましたし」
 藍染めに白い川を描いた浴衣姿に身を包む長谷・茜と、藍色に紺の花を彩った浴衣の宮小路・皇騎が先を歩いている。しかkり、彼女をエスコートする前に、茜の親に将棋の相手をさせられていたのだ。その後ろに、金魚の浴衣の神城・柚月と向日葵の浴衣のアリス・ルシファールが続いていた。
「ところで、鳳凰院の2人と、織田君はどこよ?」
「天薙先輩も居ませんね?」
 柚月が気が付いて、
「あれ? 先ほどまで居たのに。どこに?」
 因幡・恵美がキョロキョロ見る。
「こっちだよ」
 男の声が土手から聞こえた。鳳凰院・紀嗣だった。
「どうしたの?」
「みんな、空気読もうよ」
 紀嗣が苦笑している。
「は?」
「ひ?」
|Д゚) へ?
「あまり、大きな声では口に出せないけど……。うん、紀嗣が正しいかな?」
 すこし、目線をはずしての鳳凰院・美香が先頭を見る。
「あ、そうだったんやねぇ」
「あーなるほどー」
 先頭の余り会えないカップルの事を気遣えと言うことだ。更に土手の下で、苦笑している織田・義明と天薙・撫子が待っている。どうも、今回の主導権は紀嗣にあるらしい。
「後で冷やかすのも自由って事で」
 にこにこ笑う紀嗣に、柚月がそれもそうやなと同意した。
「それは、しなくていい」
 美香は弟のほっぺをつねった。
「何か仲がいいなぁ。あれからかわったんとちゃう?」
 と、柚月が言った。

――色々あったからね。と姉弟は言う。

「普通に見ていると、本当に普通なんだよね。霊力も魔力も感じられない」
 優希は監察などにより来ているために、この『普通の人』のような雰囲気になじめなかった。
|Д゚) じきになれる
 小麦色に言われても、余り嬉しくない。
|Д゚) くけーっ!

「皆さん、こんばんは。優希様は初めましてですね」
「はい、天城・優希です」
「天薙です。今回はよろしくお願いしますね」
 ニッコリ微笑む撫子に、優希はただただ、普通に挨拶するだけしかできなかった。
「仕事のことは忘れて、楽しむ方が良いかもな?」
 影斬が見透かす様に言う。その笑みは優しかった。
 お互い挨拶をすませてから、土手の上を歩く2人を見やる。
「さて、あの二人は放っておいても良いの? 皆さん」
 アリスが、不安そうに言うわけだが、
「余りあってない分2人キリが良いのは……同意だな。なぜかあの2人は遠距離恋愛なみに出会いの率が低いから」
 義明がうんうん頷いている。
「私たちはいつも一緒ですけどね」
 うふふと、撫子が言うと、柚月が「あついわー。ってのろけんな」とか突っ込んだ。
「天城さんの足下にいるアレがちょっかい出さないのも、わきまえて居るやな」
 柚月が、優希の足下を
|Д゚) 失敬な
|Д゚) ネタがない
「それだけかいっ!」
 一行は談笑して、花火大会に向かうのであった。
「私は、監視すればいいのかな?」
 優希は全く超常の力を感じない一行に、疑問を持つのだった。


〈いつもの通りに〉
「ゴザはここだな」
 義明がゴザを敷いて、撫子がてきぱきとお重とお酒の入った鞄をおく。恵美と柚月も手伝って、場所緒確保は終わった。
「屋台で食べないのですか? 先輩」
 アリスは柚月に訊くが、『天薙さんはいつもこうしているんや』と微笑み答える。
「それでも雰囲気を味わいたいために、屋台に出向くんやけどねー。うちは」
 と、付け加えるが。
「わたくしは、こういう事が好きですから。アリス様、どうですか?」
「あ、はい、いただきます」
 撫子の勧めに、アリスは履き物を脱いで、ゴザに座った。
「……で、例のお二人は?」
「そうっとしておきましょう」
 撫子はくすくす笑う。
「天薙先輩の料理待ってました!」
 嬉々としてるのは紀嗣だった。
「こら、はしたないぞ」
 美香が、苦笑して注意するも、仕方ないと溜息をついている。
 その、和やかな姉弟を見て、撫子も柚月も安堵している。たぶん、一連の事件が、2人を大きく成長させたのだろうと。

|Д゚) じー
「どうしたナマモノ?」
|Д゚) ほたてー
「はいはい、かわうそ?様にも貝柱とトロの和え物がありますよ」
|Д゚) わーい♪
 小麦色が、撫子の膝に乗っかって、ほしそうな顔をしていた。
「天城、何ぼうっとしている。こっちにこないのか?」
「え、あ、はい」
 このなごんだ空気に、呆然としていた優希だった。
 撫子がお酌をして、義明と一緒に花火を待つように、恵美も柚月やアリス、双子に世話をしていた。特に初対面の優希には優しく、丁寧に接していた。
「あ、一発目があがりそうだ」
 紀嗣が闇夜の先を指さすと、ドーンという音とともに、大きな光の花が咲いた。

〈カップルさん〉
「こうするのも久しぶり、ですね」
「だよね」
 皇騎が茜の手を繋いで、土手から花火を眺めている。歓声と花火の音が、胸に響く。近くに行けば行くほど、その振動は強くなるが心躍る物であった。茜の頭には皇騎が買った、髪飾りが輝いている。
「もう一寸良いところで見よう」
「え?」
 茜が早足で歩きはじめる。それに引っ張られるように皇騎も付いていくのだが、
「きゃっ!」
 履き物の鼻緒が切れたらしい。
「いったいー」
「大丈夫ですか? 茜さん」
 屈んで彼女を支えてあげる皇騎。お互いの息が近くに感じられる。茜は、大丈夫と微笑んだ。
「しっかり調べておけばよかったなぁ」
「動かないで」
 ハンカチで、切れた鼻緒を修復して、元通り。
「ありがとう。皇騎さん」
「立てますか?」
「うん。急いじゃ駄目だよね」
 まだあどけなさが残る茜の笑みに、皇騎はどきりとしていた。
「……で、あ、撫子たちにしてやられた!」
 いま気づいたみたい。
 そう、最初から2人っきりだったのだ。
「……もう、よしちゃんも……謀ったな」
 言葉が違うと突っ込みたいけどやめておく。
 大事な時間をくれたのだから、ここは感謝しなくてはと言うことだ。もっとも、首謀者は、撫子でも義明でもない。紀嗣なんだが、そんなこと、2人は知らない。


〈屋台で〉
「さて、思いっきり遊ぶか! 柚月さんに……えっと、天城とアリスっていったっけ? いこう」
 紀嗣がアリスと優希を誘う。
「ようし、うちの屋台周りは容赦ないでぇ」
「え? ああ、はい」
「はい、行きましょう」
「なんだ? ナンパか?」
 義明がちゃかすが、そこの小麦色が居るより良いでしょと紀嗣が言い返した。
|Д゚) ひでー
「いつもの反応だな」
 美香は人混みが嫌なので、ゴザに座ったまま、花火を見ているという。義明も撫子も残る。
「紀嗣が居るだけで、変な虫は付かないだろうし、安心だ」
 美香は信頼しきっていた。

「さて、ルールは。特殊能力使用禁止! 店の人に迷惑かかるから」
 仕切始める紀嗣。
「たしかに、こんな所で力とか魔術使ったら、IO2もうるさいわな。納得……ってしきるなっ」
 柚月の裏拳つっこみが紀嗣にヒットする。
 普通に輪投げや、射的を楽しんでは、リンゴ飴やチョコバナナを食べながら屋台巡りをするのだった。特に籤だと、サーチ厳禁はこの手のメンバーでは必須である。
 本当にごく普通に遊んでいる一行を見て、優希は戸惑いを隠せていない。
「どうしたんやー?」
「い、いや、何でもないです」
 しかし……。
 なぜかクレーンゲームがあって(どこから引っ張ってきたんだよ)、とってみたい物はカワウソのぬいぐるみ。お金がやばい状態になって、柚月もアリスも紀嗣も大敗する。
「……私も?」
 優希の番と言うことに、どうしようと悩むわけだが、
「し、しかたない……」
 コインを入れて、いざスタート。
「よっしゃきた――!」
 大ハッスル。軽々、カワウソぬいぐるみをゲットした。
 今までおとなしかった彼女が180度変貌したことに驚く事も無理はないのだった。
 5匹ぐらい釣れて、ほくほくの優希は、我に返って、真っ赤になってしまった。
「は、はずかしい」
「快感やったでぇ。あんなにうまいんやねぇ」
「すごかったです!」

〈おわり〉
 最後の花火も盛大に終わり、全員がまとまって帰っていく。
 色々遊びつかれてか、最年少のアリスは一寸フラフラしている。柚月が手を繋いでこけないようにしていた。
 義明が優希に、
「仕事柄出来たみたいだが、我々が世界に関わるときはかなりひどい状態の時だ。なので心配するな」
 と、言うだけにとどめている。
|Д゚) かわうそ? いっぱい!
「かわうそ? やない。カワウソや」
 と、訳の分からない言い合いもする、柚月とかわうそ?

 今年の花火も、平和に終わったのであった。

END

余談
 数日後、登校日に学生服姿の
「えええ!? 優希って先輩?!」
 紀嗣が驚く
「何歳に見えたんですか?」
「よくてタメ。それか中学生」
 優希は青筋立てて、紀嗣を睨んだ。
「本当、ごめんなさい」


■登場人物
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生・巫女・天位覚醒者】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【6047 アリス・ルシファール 13 女 時空管理維持局特殊執務官/魔操の奏者】
【7305 神城・柚月 18 女 時空管理維持局本局課長/超常物理魔導師】
【7432 天城・優希 18 女 高校生/特務部隊所属・特務兵】

■ライター通信
このたび、『河川敷の花火大会2009』に参加して頂きありがとうございます。

では、また別のお話でお会いしましょう。

滝照直樹
20090818