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<東京怪談・PCゲームノベル>


それは突然に‥

 その日は天気も良く、絶好の買い物日和だった。
 空を見上げれば青い空が何処までも続いており、たまには散歩するのも悪くないなと思いながら、最近新しく出来たショッピングセンターに入っていく。
 日曜、しかも新しく出来たという事から中は大勢の人間で賑わっていた。
 若者に人気のブランド、女の子が好みそうな雑貨屋、そして使途不明の怪しげな店、久々に買い物に来たせいかどれもこれもが新鮮だった。
「‥‥‥‥あれ?」
 大勢の人間で賑わっている中、見知った顔を見かけて「あ‥‥」と声をかけようとした――が、先に向こうの方が気づいて「‥‥あれ」と少しばかり驚いた顔で話しかけてきた。
「立ち話もなんだし、カフェでもいかない?」
 そう言われて、二人はカフェに入ることになったのだった。

視点→ソール・バレンタイン

「こんな所に出来るなんて便利になったなぁ」
 ソール・バレンタインは愛用の軽自動車を駐車して扉を開ける。エアコンで冷えていた車内から茹だるような暑い外へと出た為に少しだけソールは表情を歪めて「あっつー‥‥」と呟いた。
「店からは少し遠いけど、停める事が出来ただけでもOKとしなくちゃね」
 ソールは呟きながら周りを見渡す。彼の視界に入ってきたのは停める場所を見つけられずにぐるぐると回る車、しかも一台ではなく何台も同じような行動をしている。
 そしてソールは店の中へと足を進める、停まっている車の数もあって中はまるでお祭のように人が大勢賑わっていた。
「あ、これ可愛い」
 ソールが手にしたのはソールの長い髪に似合いそうな赤いリボン、その隣に置いてあるネックレスも可愛いものでソールは目移りばかりをしていた。
「こういう場所が出来ると僕としても助かるなぁ、あっちにも可愛い服がある店があったし」
 そう言ってリボンとネックレスを元の場所に戻して、雑貨屋を出て洋服屋へと移動しかけた時だった。
「ソール、さん‥‥?」
 服を買ったのだろう、紙袋を下げた紫苑サクラが少し驚いたようにソールを見ていた。そして立ち話もなんだし、と言うことから少し洒落た感じのカフェへと入っていく。
「まさか、こんな人が多い場所でソールさんに会うなんて思ってなかったです」
 それぞれ飲み物を頼んだ後にサクラがくすっと微笑みながら小さく呟いた。
「僕もだよ、偶然って本当にあるんだね」
 ソールも少し可笑しそうに笑って言葉を返す。
「そういえば、何か買ったの?」
 ソールはサクラの隣にある紙袋を見ながら問いかけると「ええ、久々に洋服でもと思って」とサクラは苦笑しながら言葉を返してきた。
「そういえば、ソールさんは外国の方ですよね? ご両親とかにこっちに来る事を反対されなかったんですか?」
 サクラが少し遠慮がちに問いかけると「うーん、反対はされた、のかなぁ」とソールは何処か曖昧に言葉を濁した。
「父さんは厳しかったし、母さんは優しかった。姉さんが二人いるんだけど、12歳の時に父さんのお酒を二番目の姉さんにそそのかされて飲まされたんだけど‥‥」
 ソールはその時の事を思い出したのか、少し表情を暗くしながら「一番上の姉さんに見つかってお仕置きされたんだよね」と言葉を付け足した。
「お、お仕置き?」
 サクラが目を瞬かせながら呟くと「僕は小さかったからヘッドバット3発で済んだんだけどね」と苦笑しながら言葉を返した。
(「ヘッドバット3発でって‥‥それも十分酷お仕置きだと思うんですけど‥‥」)
 サクラは心の中で呟いたが、それを口に出して言うことは出来なかった。
「でも姉さんはパワーボム喰らってたなぁ、結構痛かったんじゃないかな」
 ソールは思い出すように遠くを見つめながら苦笑する。
「きみは? サクラさんの両親とか」
 ソールの言葉にサクラはカプチーノの入ったカップをテーブルにおいて「私は‥‥」と俯く。
「私の母は、俗に言う愛人で私は父から認知されていない子なんです。父にも家族はいて、私にとって母親の違うお兄さんがいるって聞いてたんですけど‥‥」
 サクラはそれだけ呟くと、下を俯いてしまう。
「もしかして聞いちゃいけない事だったかな、それだったらごめんね」
 ソールが申し訳なさそうに呟くと「いいえ、いいんです」とサクラは顔を上げてにっこりと笑う。
「別に隠すほどの事じゃないですし、二つ違いのお兄さんで、私が高校の時――初めて好きになった人が――母親の違う兄だったんです」
 サクラの言葉に「え」とソールは短く言葉を返す。それ以外に話す言葉が見つからなかったのだろう。
「兄さんは私の事を知ってたみたいで、私が好きだったのも気づいていました。だから私を利用したんです。最初は欲しいゲームソフトの万引き、それがエスカレートしてお金を要求、そしてテストの答案用紙を盗んで来いとも言われました」
 酷い、ソールは口元に手を当てながら呟く。
「最終的にはバレて私は学校にいられなくなり、母親は私を捨てて男の人と何処かへ行ってしまいました、それからは高校を辞めて働き、東京に来たんです」
 私を知る人がいないから、とサクラは少し泣きそうな表情で呟く。
「それからはマトモに男の人と口を聞くことも出来ません。男の人全てが、兄さんのような人に見えてしまうから‥‥」
 サクラはカプチーノを飲み干しながら「こんな話、ごめんなさい」とサクラは困ったように笑ってソールに言葉を投げかける。
「ねぇ、確かここって美容院もあったし行ってみない? アクセサリーの店とかも行ってみようよ」
 ソールも飲み物を飲み干し、立ち上がってサクラの手を取る。
「え? え、え?」
 突然の事でサクラは戸惑うように立ち上がり、カフェから出て行く。
「折角可愛いんだから、もうちょっと可愛くしようよ」
 ソールに背中を押されて美容室へと入っていき、ソールはカタログを見ながらサクラに似合う髪型を探し始める。
「さっき買った服を見せて?」
「え、えぇ」
 ソールは服とカタログを見比べながら「この髪型にしてあげて」と男性に告げる。男性は「かしこまりました」と丁寧に頭を下げて、サクラの髪の毛を切り、セットしていく。
 それから一時間後、緩いウェーブをかけられて長かった髪も肩くらいまでに切られて、さっぱりとしたサクラの姿があった。
「次は洋服屋に行こう、今みたいな格好も可愛いけど、もうちょっとフェミニンとかの方が似合いそうな気がする」
 ソールは立ち止まり、フェミニン系の服がある店へと入ってオレンジやピンクの服をサクラに合わせる。
「今は夏だし、淡い水色でも涼しげでいい感じかもね」
 そう言ってソールは水色のワンピースをサクラに差し出す。
「うん、凄く似合うよ。洋服もこういう感じの方が似合うと思うよ?」
 ソールの言葉に「そ、そうですか?」とサクラは照れたような表情でワンピースを見ていた。
「ソールさんみたいな人が男の人でいたらいいのに」
「え?」
 ポツリとサクラは呟いたけれど、ソールにはその言葉は届いていなかったようだ。
「あ、な、なんでもないです」
 そしてその後、二人は夕食を一緒に食べて、ソールの車でサクラは家まで送ってもらい、お互いにとって楽しい一日となったのだった。


――出演者――

7833/ソール・バレンタイン/24歳/男性/ニューハーフ/魔法少女?

―――――――

ソール・バレンタイン様>
こんにちは、いつもご発注ありがとうございます。
今回ゲーノベを執筆させていただきました、水貴です。
前回に続き、第二話にもご参加くださりありがとうございますっ。
内容の方はいかがだったでしょうか?
サクラとの絡みを上手く出せていれば良いのですが‥‥。

それでは、今回は書かせてくださりありがとうございましたっ。

2009/8/4