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<東京怪談・PCゲームノベル>


故河あずさの失踪(前編)

 すご腕の超能力者、「故河あずさ」が行方不明になった。もう2週間になる。最後の目撃者は友人の「楠木はるか」という人物。
 
 彼女は高校生活を送りながら、「超常組織スピリッターズ」の一員として働いてもらっていた。メンバーである霊能力者、エル・レイニーズ、空間転移者、波多野由宇と一緒に活動していたのだが……。

「ここは刑事として捜索するのが無難ね。まず最後に目撃した楠木はるかに当たってみましょう」

 という現役刑事、エルの意見に沿って捜索することにした。由宇も一緒にいるのだが、だが、空気のように後ろからついていく。

 まずはあずさの高校に出向き、楠木はるかを呼び出してもらい、話を聞くことにした。
「わたしも目撃してないんで、よくわからないんです。彼女は誘拐されたとしか思えません」
「じゃあなぜ誘拐されたと思うんですか? 身代金の要求もありませんし、理由がなくては消えるなんてことはありません」

 そうなのだ。「誘拐」という言葉が真っ先に飛び込んでくるのがおかしいわけだ。
「ここ周辺で、かわいい女学生が誘拐されて、帰ってこないという事件があるんです。あずさもそれに巻き込まれたのかも」
もしそうだとすれば普通の人間じゃない。能力者か、彼女の能力を知りつくし、裏をかいて捕まえたに違いない。
「わたしも気をつけなくちゃ……」
「?」
「かわいい子ほど誘拐されるらしいし、わたしなんて恰好の相手だわ」

 付き合っていられないんで、現場捜索に向かった。「すべての事件は現場から」である。調べようにもごく普通の町並みで、ところどころ細い裏道がある。あずさもここで捕まえられたのだろうか?

 そこに小柄でかわいらしい、制服姿の女の子が歩いていた。
「ちょっといいかしら」
女の子はうなづき、側に寄ってきた。
「あなたの名前は?」
その女生徒は「石神アリスです」と答えた。

「あのね、あなたみたいにかわいい女生徒が最近、この付近で誘拐されてるみたいなの」
 その言葉を聞いた瞬間のアリスのこころの叫び。
(あーここでかわいい子ゲットしてるのがバレたの? ここでこの二人を石に変えておこうかな?)
そんな迷いの叫びの間に一枚の写真を差し出された。
「この子知らないかしら? 名前は『故河あずさ』って言うんだけど」
これはアリスにも知らない顔のようで、猫の爪を出すことはなくなり、少しほっとした。
「なにかわかったら教えてね。それからあんまりうろうろしちゃダメよ」

 情報に困ったエルたちは何となしに草間興信所に向かった。
「誘拐事件ですか?」
草間興信所所長である、「草間武彦」に相談した。お手伝いをしている女の子が、エルたちに豆で入れたコーヒーを差し出した。

「実はこういう問い合わせが増加してるんです」
 その分布図を見せてくれた。
「誘拐の最終目撃情報はここらへんが多いのですが、故河さんは少し離れたところなんですよ」
地図を見ると見事にあずさの場所だけ、若干異なっていた。

「ここからは僕の勘なんですけどね」
 エルと由宇は耳の聞き取り視数を最大にした。
「あずささんに限ると、別の経路で誘拐された可能性があります。あらゆる点から疑ってみてください」

 どうもと二人は帰ろうとしたら、
「あの、相談料」
と武彦が誰しも聞きたくないジングルを鳴らした。
「できれば……ツケで」

 続いてアトラス編集部……のような忙しい現場で相談するわけにはいけないので、書店でいくつかのバックナンバーも一緒に買うことにした。
 ここ最近の失踪事件は霊的な問題なのでは? という見解があるが、それを徹底的に調べようとした若者がこつぜんと消えたという記事が、今回の事件と関係があるのだろうか? 深く追い求めるには少々危険な目に合うのかもしれない。

 今度はネットカフェに入っていった。エルは紅茶、由宇はメロンソーダ。見るサイトは決まっている、「ゴーストネットOFF」だ。

 捜索願がたくさん書かれているが、ほとんど未解決。ただ一つ気になることがあった。
「失踪した人間の石像を飾ってある美術館があるらしい」
これも未解決のまま、噂にしかなっていない。

 やはり現場にもう一度戻ることにした。またもアリスが歩いていたので、声をかけた。
「ねえ。この周辺にお家があるの?」
アリスは(とりあえず)うなづいた。
「ここらへんって、女生徒がよく通る道かしら?」
と言われたアリスの心境。
(やっばーい。わたしの悪事がバレた? でも普通の事情聴取のように見えるし。うーんうーん)

 悩んだ末、アリスは考えを逸らすことにしてみた。
「最近、虚無の境界に異変があって、賛同者を探したり、高能力者を催眠術で味方につけてあるらしいですよ。もしかしたら誘拐事件と関連あるのかもしれません」
「何でそんなこと知ってるの? アリスちゃん」
(そこまで捜索するかこの刑事。石にしちゃおうかな?)
「えーっと、家族に詳しい人がいるんです」

 その情報に頼った2人はアリスの行く先をついて行くことにした。
「虚無の境界って、そもそも何なの?」
というエルの問いにアリスは答える。
「簡単に言えば世界人類の滅亡をはかる狂信的なテロ組織ですね。とりあえず探してみます」
夜の街に歩いている怪しい人間、1人1人たどり着いたのは集会所の前にある受付であった。

「この世の中に不満があるあなた。我々の仲間になりませんか?」
 入っていこうとするエルたちに、「待って」とアリスは声をかけて、
「正体を吐かせてみます」
と言った。アリスは魔眼を使い、怪しいこの男の本音を吐かせた。
「こ、これは、虚無の境界への賛同者、能力者を増やすために勧誘し、洗脳するのです」
「だそうです」
アリスはにっこりと笑った。
「やっぱり。乗り込むわよ」

 アリスたちは集会に乗り込み、戦闘態勢に入った。
「ここにいちゃ皆ダメになるわよ! 逃げなさい」
ピストルを構えたエルはそう叫んだ。
「おやおや、どうも部外者がいるようですね」
とごつい男――傭兵が出てきて、戦闘用の銃を構えた。
「やばい、この男、戦闘のプロだわ」
汗水たらすエルに応援するがごとく、由宇は火事現場と空間をつなげて、炎を差し向けた。
「残念だったな。体がすべて銀でできているから、炎だろうと吹雪だろうと耐えられるんだよ!」
その隙にアリスが魔眼を使い、男を石に変えていく――予定だったのだが、思わぬ援軍が入ってきた。

 スーツに身を固めた人間が数人、それを着崩した人間が一人、乗り込んできた。ピストルを持ち、連射するも、まったく歯が立たない。
「そんなもので俺が倒せると思うのか?」
傭兵の男は銃を構えたところでピタっと動きを止めた。
「なぜだ? なぜ動かない?」

 ふわりと回転ジャンプをし、そこにやってきたのはピンク色の髪の毛をした女の子――あずさと瓜二つの女の子であった。
「身体中が銀だから、念力の恰好の材料だわ。しばらくそこで立ってなさい」
振り返った彼女はエルたちを見て、
「動きは止めたけど、長くは続かないわ。逃げましょう」
エルは、
「ちょっと待って。あなた何者?」
そう聞くが、
「いちいち話す余裕がないわ。テレポートするわよ」
と言い、その少女はエルと由宇と自身をスピリッターズ事務所へとテレポートした。

 残されたアリスは、傭兵に魔眼を使って石にし、お持ち帰りをしたのであった。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7348 / 石神・アリス / 女性 / 15歳 / 学生(裏社会の商人)】

【NPC / エル・レイニーズ / 女性 / 32歳 / 刑事】
【NPC / 波多野・由宇 / 男性 / 14歳 / 中学生(不登校)】
【NPC / 草間・武彦 / 男性 / 30歳 / 草間興信所所長、探偵】
【NPC / ファング / 男性 / 不明 / 傭兵】

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■         ライター通信          ■
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初めての前後編ということでいかがだったでしょうか?
PCさんは後編での参加の是非は選べるように締めくくるようにするのが
実は苦戦していたりします。

あと反省点は一話の文章が少なくなったことでしょうか?
これは下手になったのか、無駄を省けるようになったのか。

後編は近日窓を空けるようにします。できればそちらもよろしくお願いします!