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<パンパレ・ハロウィンドリームノベル>


魔王様は悪戯が好き

キルメリア・シュプール(gz0278)、彼女は天使の外見と魔王の性格を持つという世にも珍しい(?)アンバランス少女。
母親の前だけは猫を被って接しているのだが、以前悪行がばれてしまったという過去もある。
しかし何故かな、人々は『萌え』と『癒し』を混ぜた新語で彼女を呼ぶ。
そう、もやし――と。
「トリックオアトリート!」
にっこりと天使の微笑みで通行人に話しかけるもやしことキルメリアは手を差し出していた。
「あ、ハロウィンか。はい、お菓子どうぞ」
話しかけられた男性はぱらぱらとクッキーやキャンディーなどをもやしに渡した‥‥のだが。
「ふぅ‥‥此処はお金でしょ? 今時お菓子を貰って『わぁい、ありがとう♪』なんて喜ぶ奴がいると思うの?
 馬鹿じゃない? そういう幻想は自分の夢の中だけにしてなさいよね」
もはやハロウィンのお遊びではなく、恐喝になりつつあるのは気のせいだろうか。
「い、いや‥‥でも、こ、こういうのでお金なんてちょっと現実過ぎるっていうか、ねぇ?」
男性も苦笑しながら言葉を返すのだが「ここが夢の中に思えるの? 馬鹿じゃないの、だったらさっさと布団被って寝てろよ、馬鹿」と酷い言葉を返す。
さてはて、このような魔王娘をどうするかは貴方次第。

一緒になって悪事を働くもよし、自らを犠牲にして彼女を止めるもよし。

さぁ、貴方はどうする?

視点→ソール・バレンタイン

「うーん、最近凄く寒くなってきたなぁ‥‥今度新しい服でも買いに行こうかなぁ」
 ひゅう、と冷たい風が吹き荒ぶ中、ソール・バレンタインは着ていたカーディガンを手繰り寄せながら少しでも寒さから逃れようとしていた。
 その時だった、ソールから見れば小さな女の子が何やら男性と話しているのを見かけたのは。
(「なんだろ、親子‥‥には見えないよね。明らかに男の人の方は日本人だし」)
 男性は日本人、仕事帰りなのか濃い灰色のスーツを着ていた。その男性と話している少女――キルメリア・シュプールは何処から見ても外人さんだ。
 もしかして少女の方が絡まれているのかと思ったけれど、近くまで歩いていってソールは自分の考えが全く違った事に気づく。
「っていうかさ、おっさんが子供だった時とは時代も違うんだからその辺を理解しなさいよね、クズ」
 どうやら絡んでいるのは少女、キルメリアの方らしくソールは少しだけぽかんと見ているしか出来なかった。
 しかし男性の今にも泣きそうな顔を見てハッとして「ちょ、ちょっと」とソールはキルメリアと男性の間に割って入った。
「誰よ、あんた。そんな大きな乳なんか揺らして私に対する嫌味? その辺の地面に頭打ち付けて私にわびなさいよ、ヘタレ」
 酷い言われようだが、ソールはとりあえず我慢と心に決めて「こういう事は止めようよ、もっと子供らしくね?」と諭すように優しく言葉を投げかけた‥‥のだが。
「子供らしくって何よ、あんたの子供基準で物事言われても凄く困るのよね、イイ年こいたおばさんがそういうのも分からないわけ? いっぺん三途の川渡ってきなさいよ」
「いや、だからね‥‥」
「煩いわね」
 どん、とキルメリアはソールを突き飛ばして言う事を聞く事を拒んだ。その拍子にソールの持っていたバッグが地面へと落ちて中身が見事にばらばらに撒き散らされてしまう。
「あぁ、もう‥‥」
 ため息混じりにソールは散らばった荷物を一つずつ手に取ってバッグの中に直していく。
「何よ、私が悪いんじゃないからね。しつこいあんたが悪いのよ。折角のカモもあんたのせいで逃げちゃうし、踏んだり蹴ったりじゃない。この馬鹿」
 その時、キルメリアは少し離れた所に落ちたカードのようなものを見つける。恐らくはソールのバッグから落ちたものが離れた所まで転がって行ってしまったのだろう。
「まったくもう、気づいてないなんてマヌケもいいところだわね。拾ってあげた私に感謝しな‥‥さい、よ‥‥?」
 キルメリアは拾ったカードとソールを交互に見比べる。実は彼女が拾ったのはソールの名刺、それもソールが働いている所の名刺だったりする。
「あんた‥‥」
「え?」
 漸く荷物を全部拾い終わったソールはキルメリアの呟きに首を傾げながら聞き返す。
「カマだったのね」
 キルメリアが見たもの、それはソールが『男』だと言う事実だった。
「え、いや‥‥別にそういうんじゃ‥‥」
「男なのにそんな格好してたら立派なオカマでしょう、しかも何よ、その化粧の仕方。そこらの女より気合入れて化粧してるんじゃないわよ、このカマ」
 べらべらとキルメリアは言葉をまくし立て、そのたびにソールは眉を下げて悲しそうな顔をしている。
「あ、あの? 凄く傷つくんだけど?」
 恐る恐るソールがキルメリアに言葉を返すと「私が傷つくわけじゃないから知ったこっちゃないわよ」とばっさりと斬り捨てられるような言葉が返ってくる。
「しかも確かあんた乳まであったわよね、それって手術? あんまんでも入れてるの? しかも何気にそのカーディガン、この前発売されたばかりの新作じゃない。誰の断りを入れて着ているのよ」
「う、うぅ‥‥」
 先ほどの男性が泣きそうな表情だった理由をソールは今、この時、身を持って知る事となった。このキルメリアという少女、人の弱点らしきものを見つけたらとことんまで突っつくタイプらしい。彼女の突っつき攻撃に耐えられる人間が果たしてどれほどいるのだろうか‥‥。
「あ、カマが逃げた。駄目じゃない、カマが走る時は内股のカマ走りしなくちゃ、カマ失格ね。カマの称号返上しなさいよ」
(「なんなんだろう、あの子――外見『だけ』は可愛いのに、性格は魔王そのものだよ‥‥」)
 ソールはキルメリアの攻撃に耐え切れなくなり、バッグを持ってキルメリアの前から逃げ出してしまった。

「最近のカマは根性ないわね、さて次は誰をいじめ‥‥いたっ」
 キルメリアは少し満足したように次の獲物を探そうと振り向いた時だった。数名の見るからに『やんきー』な男たちがキルメリアとぶつかったのだ。
「ちょっと! どこ見て歩いてんのよ、その目ン玉は飾りなわけ? 飾りだったらさっさとくりぬいちゃいなさいよね」
 ぶつかられた上に生意気な口調で話してくるキルメリアに『やんきー』ではない大人でも少し苛立ちを募らせることだろう。
「何だ、このガキ。ぶつかったら『ごめんなさい』って言葉も親から教わらなかったのか?」
 キルメリアを囲むように大人気ない『やんきー』達が威嚇するような口調でキルメリアに話しかけるが、それで怯むような彼女ではない。
「へぇ、それじゃアンタの親はそんなパンチな頭の職業になれって言ってたわけね、随分と立派な親ですこと。立派すぎて笑いしか出てこないわよ。クズ」
 キルメリアの言葉に「なんだと!」と男性たちが少し大きな声で叫んだ時だった。
「太陽と月の女神ソルディアナ参上! 子供相手に大人気ないですよ!」
 ソルディアナの衣装を身に纏い、現れたのは――何処からどう見てもソールだった。
「はぁ?」
 男性たちはソール‥‥いや、ソルディアナをコスプレパブの店員とでも思ったのか「そういうのは店でサービスしてくれよ、姉ちゃん」と馴れ馴れしく肩を抱き寄せたりなどしてくる。
「きゃああああああっ!!」
「な、何だぁ!」
 突然悲鳴をあげたソルディアナに男性たちは目を丸くしながら驚いている。その悲鳴で通行人たちの視線が一気に集中して、構図的にも自分達が怪しまれていると感じたのか男性たちは「覚えてろよ!」と三下悪役が言うような台詞を吐いて逃げ出していった。
「ねぇ、あんたさっきのソールって奴でしょ」
「偶然私が通りかかったから良かったものの、誰も助けてくれなかったらどうするつもりだったの? こういうこともあるんだから悪戯は程ほどにしなさいね」
「いや、人の話を聞きなさいよ。別人装っててもバレバレだから」
 キルメリアのツッコミは見事にスルーしながらソルディアナは「これからはちゃんといい子にしてなくちゃ駄目よ」とキルメリアの頭をなでながら言葉を掛ける。
「人の話を聞けって言ってるでしょ、カマ」
 しかしソルディアナとなっている今のソールに何を言っても効果は薄いらしい
「まぁ、いいわ。あんたのおかげでこれからの悪戯がもっと楽しくなりそうだからお礼を言ってあげる」
 先ほどの男性たちを追い払った方法の事を言っているのだろう。そして魔王の笑みを浮かべたまま獲物となる人間を探しに行くため、キルメリアはソールに背中を向けて歩き出した。
「ちょ、ちょ‥‥ちょっと待って!」
 自分のした事でキルメリアが妙な知恵をつけてしまったことに気づき、ソールはソルディアナの衣装を着たままキルメリアを追いかけたのだった。


END


―― 出演者 ――

7833/ソール・バレンタイン/24歳/男性/ニューハーフ/魔法少女?

―― 特別出演 ――

gz0278/キルメリア・シュプール/13歳/女性/サイエンティスト

―――――――――

ソール・バレンタイン様>
こんにちは、いつもお世話になっております。
今回はパンパレ(もやし)にご発注ありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
ご期待に沿えるような内容に仕上がっていれば良いのですが‥‥。
何か、結構いじめすぎちゃってごめんなさいっ。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!


2009/10/30