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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


No Problem
 怪奇現象サイト管理人、瀬名 雫(せな しずく)が募る悪霊退治依頼が明姫 クリスの目に留まる。後輩の呼びかけに力を貸そうと、親友の鳳凰院 麻里奈に声をかける。
学園の二大有名人を前に、雫は良いこともあるものだと、浮かれてヒミコの待つインターネットカフェへと向かった。

 ○

「へへへ~」
 静けさが隅から隅へと行き届いたインターネットカフェのブースに緊張感の無い笑いが響く。
「もう、雫さん。ここでは静かにしてくださいっていつも……」
姫神 ヒミコはキーボードを叩く手を止めて振り返ると瀬名 雫の機嫌の良い笑いに合点がいった。
「こんにちは、姫神さん」
 ブロンドの美少女がつぶらな瞳で自分を見ている。吸い込まれそうとはよく言ったものだ。
「私、明姫 クリスと申します」
 自己紹介の必要はなかった。元々同じ学院の先輩後輩の関係だし、学園で知らない人がいるはずがない。
「あ、どうも。あの……」
「クリス先輩、怨霊退治手伝ってくれるんだって」
「本当ですか!?」
「可愛い後輩の為だもの、喜んで力を貸すわ。でもね…点」
 クリスは雫の額を指先で二度つつくと。
「こんな危ないことしちゃ駄目でしょ?」
 雫は上目遣いで、はぁいと返事をした。
「クリス」
 雫達の後ろでクリスに負けず劣らずのブロンド美女が、腰に手を当てて少し憮然としている。通りすがりの男たちが皆彼女に視線を釘付けている。
「私の親友の鳳凰院 麻里奈ちゃん。知ってるかな?」
「もちろん。憧れの先輩ですから」
「そんな事より……」
 麻里奈はつかつかとクリスの前にやってくると、表情を強張らせ。
「なんだ、今のは」
 クリスの額をつついた。
「危ない事しちゃだめよって」
「違う。そんな事は分かっている。その……、なんだ」
 言葉が浮かばず表情が険しくなる麻里奈にピンときたのか、クスっと笑うとクリスは麻里奈の頬をなぜて。
「麻里奈ちゃん。麻里奈ちゃんは特別だよ」
「バカ、そういう事では」
「うん、何?」
「その…点。もういい、もういい」
「はい」
 微笑むクリスは麻里奈の頭をなぜる。憮然としたままだが、どこかほっとした様。
 そんな二人のやりとりを見ていた雫とヒミコは、状況が掴めずポカンとしていた。

 ○

「うう……、おっかないよぉ」
時刻は午前一時、四人は神聖都学園の廊下にいた。雫が今までの事件発生現場から推察するに、徐々に学園に近づいていると言った為だ。
 電気をつけていないので、先に続いているはずの廊下が闇に飲み込まれているように見える。クリス達の後ろで雫とヒミコが固まってついてきている。
 雫は怖さを紛らわせようと、さっきから気になっていたことを呟いた。
「それにしても……」
 クリスと麻里奈の格好を交互に見つめる。
「昼間に比べて、凄いセクシーな格好ですね」
「そうかしら?」
「麻里奈ちゃんはそうね、下着が見えているし。私はまだ普通じゃないかな?」
「私からすれば、二人とも十分に過激です」
 クリスと麻里奈はバトルスーツに着替えてきていた。二人ともグラマラスな体系なだけに、体のラインがくっきりと浮き出ている。ヒミコはこんな時に、上には上がいるのだなと羨ましがっていた。
「クリス、その髪型はどうした」
「うん、今回の怨霊はなんでもこんな髪型の女性を好むみたい」
 ちょうど額の上に結った髪を麻里奈は軽く握る。
「変ですか?」
 不安げにこちらを確かめる瞳、麻里奈は視線を泳がせる。
「い、いや、これは作戦だし、仕方ないわよ」
「そうですよね」
「ち、違うわ。断じてそういう意味ではないの。いつもと違って可愛いし、その……」
 言葉を遮る様に、麻里奈の肩に頭を乗せた。
「冗談です」
「……。もう人が気を遣っていると―」
 その時、後ろにいたが急に床に膝をついた。
「ひぐっ! うっ……!」
 喉を両手で押さえ、もがき苦しんでいる。雫がヒミコの背中をさすっている。
「雫さん、私たちの後ろに!」
麻里奈が双剣を構えて叫ぶ。
クリスはヒミコに歩み寄る。
「気をつけて」
 麻里奈に頷いて返すと、クリスはヒミコに手を差し伸べて。
「テッド・バンティさんですね?」
「あれれ? 私をご存知?」
 ヒミコは苦しみなど無かったように立ち上がると、髪をかきあげた。
「この街に何か御用ですか?」
「いやね、この町には見目麗しい娘が多くて。ただそれだけだよ」
「あなたの婚約者に似た方が多い、そういう事ですね?」
 ヒミコはクリスの確認に一瞬固まる。
「やだなぁ、私の事どこまで調べたの? それに君のその髪型、似てる、似てるよ……彼女に」
 ヒミコから黒い蒸気が立ち上ると、廊下のガラスが次々と割れて、床に散らばっていく。
「おとなしく、成仏していただけませんか?」
「それはぁ、出来ないねぇ!」
 ヒミコの体に憑依したテッド・バンティは一足飛びでクリスに襲い掛かる。
「下がって!」
 麻里奈の合図で、丸腰のクリスはやむなくバックステップを刻む。
「はぁぁ!」
入れ替わり、双剣を一閃。ヒミコを無力化した。
―はずだった。
 テッド・バンティの憑依が解けたヒミコは意識を失くし、床に倒れこむ。その行動が、麻里奈の初太刀を回避した。
「愛してる! 愛してる~~~~~~~~!!!!!!!」
 霊体となったテッド・バンティの目標はクリスだった。囮として二人の代わりに髪を結い、事前に調査していた事は無駄ではなかった。雫とヒミコを危険から遠ざける事が出来たのだから。
 しかし、一つだけ誤算があった。
 後ろで雫の護衛に回ったはずのクリスが、今は麻里奈の前方に飛び込んでいた。
 床一面に散ったガラス、そこに倒れこむヒミコ。麻里奈には彼女が何をせんとしているか十分に理解できたが、そのやさしさが状況を悪化させている。
 無防備な三人、自らも太刀をよけられたばかり。バイオアーマー化して助けるには雫の目がある。
 この一瞬に永遠の長さを感じ逡巡する。
 ダイビングしているクリスと視線が合う。口を開く。
―ダ イ ジ ョ ウ ブ
 そこから躊躇はしなかった。麻里奈はバイオアーマー化、全身を獅子の鎧を纏いクリスに襲い掛かるテッド・バンティを次の瞬間には仕留めていた。

 ○

「大丈夫?」
 ヒミコのクッションになったクリスを抱き起こす。
「さっき言いましたよ。大丈夫って」
「そうね」
 そうだと、振り返ると雫は膝をついてうな垂れていた。
「申し訳ないけど、落ちてもらいました」
「雫が襲われていたらどうなっていたことか」
「その時も、バイオアーマー化した麻里奈ちゃんが倒していました」
「そうね、でも二度とこういう真似は」
「いいんです」
 麻里奈の頬に柔らかく、暖かい感触が伝わる。
「私、麻里奈ちゃんを信じていますから」
 クリスに厚く抱きしめられると、麻里奈は胸に厚くこみ上げてくるものをかみ締めて、クリスの背中に腕を回した。





 【了】





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【八〇九一 / 鳳凰院・麻里奈  / 女性 / 十八 / 高校生】
【八〇七四 / 明姫・クリス  / 女性 / 十八 / 高校生】


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■         ライター通信          ■
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 初めまして。遅くなって申し訳ありませんでした。
仲がいい中にも、互いに惹かれあう部分を少し見せる事が出来たらなと思い書いてみました。楽しんで頂けると嬉しいです。