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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


沖縄怪奇旅行!
「やったー!」
 放課後に飛び上がって廊下を進み、下駄箱にはずんだ音を鳴らし、学校から立ち去るのは現役女子高生、瀬名・雫(せな・しずく)。白い息は雲になって消え、彼女は急いでいつものネットカフェに立ち寄る。そこで待っていたのは影沼・ヒミコ(カゲヌマ・ヒミコ)だった。
「雫ちゃん、今日は元気そうじゃない。どうしたの?」
「冬の修学旅行が、沖縄に決まったの!」
嬉しそうな雫の声を聞いて、
「いいわねー」
と思わずうらやましくなったヒミコであった。
「ねー。特に……心霊スポットとかあるみたいなのよ。いっぱい。防空壕で死んだ人の地縛霊とかー竹やり自殺した農村の後とか」
そう言って雫はマウスを動かしてクリックする。ずらりと並ぶ怪奇情報の中でも、「沖縄」に関することが実際にぽつぽつある。
「沖縄は本土決戦になってるからね。広島や長崎と同様、怪奇事件が絶えないのよ。そしてね……」
「そして?」
「SHIZUKUお姉ちゃんが沖縄で写真集の撮影に行くんだって!」
ヒミコは目を輝かせて、
「えー。わたしも行ってみたいな。がんばってね、雫ちゃん」
と言ってすべてを雫に頼ることにした。ヒミコも沖縄の怪奇事件には興味があるのだ。
 静かなネットカフェで騒いでるか細い声を聞き逃さなかった人物……いや、人の姿をした藤森・雪夏(フジモリ・ユキカ)が雫たちのところにやってきた。
小柄でサイドをリボンでくくった銀色の女の子だ。こっちを見てにっこり笑い、
「いいな。ゆっかも行ってみたい」
とつぶやいた。
「でも修学旅行だから無理だよ?」
ヒミコはごく当たり前のことを雪夏に言った。
「雫ちゃん知ってるよね? ゆっか犬になれるの」
「うんうん。チワワの赤ちゃん並のサイズならいけるかも」
と雫と雪夏はおもわずそっと手をたたいた。それを聞いたヒミコは、
「でも気をつけてね。空港の荷物検査はテロがあってから厳しくなっているから」
と注意をうながすが、2人は聞いていないようだ。

 時は変わって空港。そこで仕切っている教師がとんでもないことを言い出した。
「これから先生が荷物チェックしていく!」
「なにーーーー」
雪夏に襲った魔の手。教師どもは1つ、1つチェックしていく。ペットボトルの飲み物まで回収されている。どうも液体爆弾というものがあって、それを空港側からもチェックするかららしい。
「瀬名。今度はお前の番だ」
 雫は何の焦りもなくかばんの中をすべて見せた。犬の姿もなく。それはこういうカラクリである。雪夏は検査の順番が来る前に雫の胸元にこっそり隠れたのだ。もちろん小さいので、ぱっと見はわからない。小さい雫の胸が妙に成長しているだけだ。外見だけは。
 無事に飛行機に乗り込み、沖縄に到着。しかしその後は大変だ。1日目はぎっしりとスケジュールが組まれている。2日目は少しだけ自由時間、3日目になってようやく長い自由時間が与えられる。チェックアウトしてから、搭乗時間の数時間だ。
 2日目の夜。旅館のテーブルの上。雫は沖縄怪奇マップを堂々と広げた。雪夏は雫の犬として友達に認識されている。もちろん何も食べさせないわけにはいけないので、サイコロステーキとデザートのオレンジシャーベットを食べさせてもらって、しっかり食を楽しんでいた。その分、雫の胃袋は泣いているが。
「まずは死んだ子供がいっぱいいる防空壕でしょ、それから竹やりで死んだ村でしょう。それから……」
(どこがいいのかな? どこに行くの?)
雪夏は小声で雫に質問した。
「えーっと、まずは防空壕と、村の順で行こう。時間も限られてるし」
(うん)
 そしてチェックアウトを済ませた雫は、犬の散歩を理由に友人と別行動をした。
「ふぅ〜」
ようやく人間の姿になれた雪夏は疲れ切ったように、ため息をついた。
「お疲れさま」
雫がポンと雪夏の肩を叩いた。
 歩く先は防空壕。「進入禁止」のテープが貼られているが、それをくぐって中に入る。
「何にもないね」
何となくがっかりした雪夏と雫だが、
「じゃあ記念撮影しようよ! 何かうつるかも」
雫のコンパクトカメラを片手に、ほほを寄せて防空壕を背景にチーズ。
 その近隣に村民が竹やり自殺した村跡に向かった。
「すごい。そのまま残ってる」
時間が止まったかのような村がそこにあった。
「めずらしいねぇ。こんなところに娘っ子さんが来るなんて」
おじいさんが2人を見て話しかけた。
「この村ってまだ人が住んでいるんですか?」
「まぁ年寄りばかりじゃがの」
そこで黒髪がなびき、Tシャツにジーンズというラフな恰好が、もったいないくらい美人な女性がやってきた。
「私みたいに若い人もいますよ」
とかわいらしく笑った。
 村の怪談の話を聞いてみたが、
「そんなことは知らんぞ」
と誰も知らない様子。
「あれ? どうして知らないのかな?」
と雪夏は思うが、有力な話は聞けなかったこともあり、2人とも奇妙に思いながら、村から立ち去っていった。
 雪夏と雫は帰り道を歩いていた。そこで白いワゴン車が前からやってきた。
「雫ー!」
その車にはSHIZUKUが乗っていたのだ。彼女は車を止めるよう運転手にうながし、雫の前にやってきた。
「SHIZUKUお姉ちゃん。村に取材に行くの?」
「うん。村というか、跡地をね」
「?」
雪夏は不思議に思った。
「でもあの村は今も人が住んでたよ!」
雫は反論するが、
「そのはずはないわよ。一緒に行ってみる?」
 そして再度その場所へと向かった。人も家も存在せず、激しい焼け跡と風化した竹やりと骸骨が転がっていた。
「ここはね、村長が村人を全員刺していったものの、村長本人は自死できずに村を去っていったところ、殺された村民の霊が村長を捕まえて首を絞めて殺したそうなの。廃村になった後、日本軍が焼き跡にしたみたいよ。それからは呪いにかかるとか、いろいろ地元の人に言われて、近づかないように言われたんだけどね、仕事だからここでも撮影するのよ」
と、すぐに巫女姿になったSHIZUKUは、
「撮影始まるからここまでね。最後は霊媒師に除霊してもらうの。2人ともこれでも持っていた方がいいわよ」
そう言われて数珠みたいなものを雪夏たちは貰った。それぞれ腕に通して集合場所へ。自由時間はとっくに過ぎて、先生には怒られ、それでもなんとか東京へ帰還した。

 SHIZUKUの写真集、「沖縄怪奇旅行!」が絶賛売り出し中で、巫女姿の写真も好評。背景は最後に見た廃村のままであった。
 その頃、雪夏は雫と2人きりで会った。
「怖かったねー」
雫がため息つきながら言葉をこぼした。
「あの村人って幽霊なのかな?」
不思議そうに雪夏は言う。
「そしてカメラを現像したんだけどね」
と言った雫は写真を一気にばらまいた。しかしどれもただの黒い写真。
「壊れちゃったのかな?」
雪夏は言うけれど、こればかりは真相はわからない。本当にカメラが壊れていたのかもしれないし、霊の仕業という可能性もゼロではない。
 それともう1つ不思議なことが起こってた。SHIZUKUに渡された数珠が東京に着いた途端、切れてしまったのだ。代わりに守ってくれていたのだろうか?
 そうしてゴーストネットOFFには解決編が加わった。しかし本当の謎は闇の中。それを解き明かしていこうと、雫は駆け回るのであった。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【8280 / 藤森・雪夏 / 女性 / 13歳 / 中学生】

【NPC / 瀬名・雫 / 女性 / 14歳 / 女子中学生兼ホームページ管理人】
【NPC / SHIZUKU / 女性 / 17歳 / 女子高校生兼オカルト系アイドル】
【NPC / 影沼・ヒミコ  / 女性 / 17歳 / 神聖都学園生徒】

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■         ライター通信          ■
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初めまして。発注ありがとうございます。
いつもなのですが、遅筆なため、納品が遅れてしまってすみません。
それとおまかせとのことで、ノベルゲームというよりただのホラー小説に
なってしまったり、プレイングがおまかせということで、雪夏は登場するものの、
この時どう考えて、どう行動するかは勝手に書かないようにしました。
これを読みながら、「本当はこう思ってるんだろうな」
と考えながら読んでくれると嬉しいです。