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<PCシチュエーションノベル(グループ3)>


 最後の闘い・黄龍に敗れし邪竜

 金色の龍が邪悪な竜を打ち倒す。
 これは運命だったのかもしれない。
 朱の鳥と白き鳥の血を持つ少女が邪悪な竜を打ち倒す――決して曲がらぬ運命。

「灯?」
 赤羽根・円は新たな力を宿して立ち上がった自分の娘、赤羽根・灯の名前を呼ぶ。
 しかし灯から言葉は返って来る事なく、灯はただジッと虚ろな瞳のまま邪竜クロウ・クルーハを見ていた。
 まだ新たな力に目覚めたばかりの能力は灯の身体に馴染んでいないのだろう。
「‥‥あ」
 円が伊葉・勇輔に視線を向けると、邪竜クロウ・クルーハが灯の中で目覚めた黄龍の気配を感じ取ったのだろう。勇輔を弾き飛ばして円や灯のすぐ近くにある石の柱へと叩きつける。
「くそー! 三頭身じゃリーチが違う! こんなんありかよ!」
 起き上がりながら勇輔は自分の三頭身を呪う。普段の姿ならばここまで邪竜クロウ・クルーハに良いようにやられる事はないのに、と勇輔は心の中で呟いた。
「娘‥‥その力を寄越せ、その力があれば‥‥!」
 邪竜クロウ・クルーハはずしん、ずしんと音と共に振動を響かせながら円と灯の元へと近寄ってくる。
「愚痴ってる暇があるんやったらさっさと戦え! リーチ差があれば身体ごとぶつかれば問題ないやろ!」
 円は勇輔の首根っこを引っ掴みながら此方へと向かってくる邪竜クロウ・クルーハに向けて思い切り勇輔を投げ飛ばした。
「鬼! 元の亭主を投げ飛ばす事はないだろ! お前全然俺の事考えてないな!」
 勇輔は円に向けて文句の言葉を並べ、円によって投げ飛ばされた数秒後に全身を襲う痛みが勇輔を襲った。円の持つ朱雀の焔の力が加わった肉球アタックで此方へと近づいていた邪竜クロウ・クルーハを部屋の奥壁へと弾き飛ばす。
「‥‥ってぇ‥‥!」
 勇輔はアタックで邪竜クロウ・クルーハを壁へと叩きつけた後、空中へと放り出されてくるくるとかっこよく回転しながら地面へと着地をする。
「灯‥‥」
 円の言葉に勇輔が視線を移すと、そこには確かな意思を持った灯が立っており、彼女の後ろにはゆらゆらと金色の龍が灯を守るように取り巻いていた。
「これが、灯の新しい力‥‥龍か、かっこいいな、それに比べて俺は‥‥」
 くっ、と勇輔は黄龍と自分の三頭身ネコタヌキ姿を見比べて嘆くように呟く。
「まだそんな事言ってるのか、大概にしつこいな、あんたも」
 円が呆れたように大きくため息を吐きながら呟くと「お前に俺の気持ちは分からない、お前もネコタヌキになってみればいいんだ」といじけたように言葉を返してきた。
「あなたは‥‥自分の為に、色々な人を傷つけてきた‥‥あなたを信じてついてきた人を裏切り、そんなあなたを私は許さない」
 淡々とした口調で灯が邪竜クロウ・クルーハへと言葉を投げかけると、豪快ともいえる笑い声が部屋の中に響き渡る。
「綺麗事をほざくな、強い力を求めるのは当然だ、強い力を持てば使うのは必然だろう」
 くくく、と此方が不快になるような低い呻くような笑い声を邪竜クロウ・クルーハがあげる。
「可哀想ね、私はあなたとは違う――私はあなたを滅ぼせるだけの力がある」
 す、と右手を邪竜クロウ・クルーハへと向ける。すると灯の後ろで彼女を守るように取り巻いていた黄龍もゆらりと動きを見せる。
「何が始まるんだ?」
「私にも分からない、だけどあの子は‥‥」
 勇輔の言葉に円が言葉を返し、途中で言葉を止める。
「どうしたんだ?」
「いや、何でもない、このままあの子を見守ろう」
 円は少しだけ険しい表情を見せて、黄龍を従えている灯を見つめた。勇輔は円の意図が分からず首をかしげた後に灯を見る。
「私とは違う? くははは、何が違う、その力でこのクロウ・クルーハを滅ぼすのだろう? 所詮綺麗事を並べてもお前も同じだ、その力を試したくてしょうがないんだよ!」
 あはははは、と部屋の中に邪竜クロウ・クルーハの笑う声と言葉が響き渡る。
「もう、あなたと話す事は何もない――さようなら」
 灯は厳しい表情で右手に渦巻く光の龍を邪竜クロウ・クルーハへと向けて放つ。すると薄暗かった部屋の中がまるで閃光弾でも放ったかのように激しく光り、円も勇輔も、そして身体を痛めていた黒崎・潤も瞳を反射的に閉じてしまう。
「私はあなたとは違う、力とは滅ぼすためだけのものじゃないもの‥‥その事をこれからの長い時間でゆっくりと考えるといいよ」
 灯は右手を下ろし、壁に縫い付けられるように封印された邪竜クロウ・クルーハに向けて言葉を投げかけた。
 灯が選んだのは邪竜クロウ・クルーハを『滅ぼす』のではなく『封印』する事。灯の新たな能力『黄龍』を使えば簡単にではないだろうけれど滅ぼす事は出来ただろう。

『私にはあなたを滅ぼせるだけの力がある』

 これは灯が自分の力を過信して言った言葉ではなく、本能で相手より強いと感じて言った言葉だった。
 そして自分の方が弱いと邪竜クロウ・クルーハも感じていた。
「終わった‥‥のかな、あれ、なんか‥‥凄く、ねむ――い」
 灯は呟きながら、がくりと膝折れて倒れそうになった――のだけど円が灯をしっかりと抱きとめて灯が地面に倒れこむことはなかった。
 新たに目覚めた力をフルパワーで使い、灯の身体が追いつかなかったのだろう。今の灯は深い眠りにつき、安らかな寝息をたたていた。
「お疲れ様、灯‥‥よく頑張ったね」
 円は穏やかな笑みを浮かべて灯を抱きしめる。
「本当に、頑張ったな、灯」
 勇輔もすやすやと眠る灯の頭を撫でながら言葉を投げかける。
 そんな三人の姿を見て黒埼は少しだけ複雑そうな表情を見せた。それは灯や円、勇輔達に対しての申し訳ないという気持ちだった。
「あぁ、そうだ。あんた、身体は大丈夫?」
 円が黒崎に言葉を投げかけると「大丈夫、問題はない」と黒崎は短く言葉を返した。
「僕は‥‥無理矢理連れてきて、酷い事を沢山言った、酷い事も沢山した。その娘に『悪かった』と伝えてくれ」
 黒崎はそれだけ言葉を残すと邪竜クロウ・クルーハの冷たい牢となった部屋から出ていき、3人の前から姿を消した。
「私達も帰ろう、3人で」
 円が呟き、灯を抱きかかえようとすると「代われ」と勇輔が呟き、灯を抱きかかえて歩き出した。
「灯はお前だけの娘じゃねぇんだ、俺にだって少しくらい良い所見せさせろ」
 勇輔は背中ごしに円へと言葉を投げかけると、邪竜クロウ・クルーハを一瞥して部屋から出て行った。
「あんたにとっては滅ぼされた方が楽だったかもな、だけど‥‥そこで長い時をかけて己の過ちを悔いることだ」
 円も邪竜クロウ・クルーハに言葉を投げかけて勇輔と灯の後を追い、部屋から出ていく。城の中はシンとしており、黒崎以外の手下は邪竜クロウ・クルーハによって命を奪われたのか無残な姿が至るところで見受けられた。
「ところでどうやって帰るんだ」
 城の外へと出た後で勇輔が円へと問いかけると、円は勇輔の問いに言葉を返す事なく運命の女神の名前を小さな声で呼んだのだった。

TO BE‥‥?


― 登場人物 ―

5251/赤羽根・灯/16歳/女性/女子高生&朱雀の巫女

6589/伊葉・勇輔/36歳/男性/東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫

7013/赤羽根・円/36歳/女性/赤羽根一族当主

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赤羽根・灯様
伊葉・勇輔様
赤羽根・円様>

こんにちは、いつもご発注をありがとうございます!
少しアレンジが多く入っているのですが、大丈夫かな、とドキドキしながら納品させていただきました。
気になる点がありましたら遠慮なくリテイクなどをお願いします。

それでは、またご用命の際は一生懸命執筆させていただきますので宜しくお願いします。

2009/12/25