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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


CHANGE MYSELF! 〜未来への希望〜


 謎の組織『マスカレード』の最後の戦士・シャドウベノムが倒れ、残すは首領のインフィニティのみ。渋谷中央署が雇い入れた異能力者で編成される『シューティングスター』は、最後まで攻めの姿勢を崩さない。もちろん今さら油断することもない。誰もが磐石の態勢を整え、最後の戦いに備えていた。

 ところが、氷雨だけひとり悩んでいる。なんと最終決戦を前にして、シャドウレインへの変身がままならないのだ。自らを戦士へと変えてくれた『心の闇』という原動力を失ってから、一度としてその身はあの姿に変わらない。人よりも冷静さを漂わせる才女ではあるが、さすがの彼女もこの時ばかりは焦った。レインバックルの力を操る自分がインフィニティの封印の一翼を担うというのに、発動はおろか変身すらできない……こればっかりは、優秀な研究者たちも手を差し伸べることはできない。氷雨が自分でどうにかするしかないのだ。
 そんな時だった。実兄の桜井警部から電話が入ったと連絡が入る。彼女の顔色が変わった。すぐに連絡を取り、状況を確認する。

 「氷雨です。」
 『苦しんでるとこ悪いが、渋谷が大パニックでね。堂々と白昼にやらかしてくれたよ、首領さん。』

 この間の悪さ……氷雨は唇を噛んだ。

 『渋谷にいる善良な人間の心の奥底からじーっと見つめて、「影の獣になーれ」ってやってるらしいわ。おかげさまで街中大パニック。今に俺も出動だ。望月もちょこちょこ動いてるらしい。ま、こっちは自衛隊とか警視庁とか適当に脅して、身の安全を確保するわ。』
 「その隙に、私たちは渋谷の地下へ……」
 『場所は、魔女っ子のローズちゃんにでも聞いてくれ。ちゃちゃっと倒してくれればいいから。事後処理は任せろ。それより今の混乱の方が、お役所の手に余るんだわ!』

 受話器の向こうは『銀の弾丸の装填許可』だの、『特殊装備の装着許可』だの、いろいろと物々しいセリフが飛び交っている。もはや一刻の猶予もない。氷雨はレインバックルとアペンドバンクを握り締めた。

 「わかりました。特殊部隊『シューティングスター』、ただちに現場に急行します。」
 『出たとこ勝負だよ、俺もお前も。「結果は後からついてくる」と信じるんだ。そうでもなきゃ、サラリーマンはやってられねぇ。』
 「あいにく、私は給料制ではないもので……お心遣い、感謝します。」

 肉親の愛情を悟った氷雨は礼を述べると、静かに通話を終えた。そして凛とした表情で、自分の部屋を出る。


 氷雨が自室を出ると、そこには仲間たちが待っていた。彼女が変身できないと聞き、撫子と智恵美が陣中見舞いに来ていたのだ。
 智恵美はこの日まで急がず、『力』についてのアドバイスをしていた。ところが智恵美が有する光の力は、信仰に目覚めた者に備わる神聖の力ではなく、自分の闘気だという。精神力で変身していた氷雨とはまったく方向性が違い、自分の経験からアドバイスができない。そう前置きした上で、愛する者や大切な者を守ろうとする純粋な思いを導こうと説いた。撫子もまた心の闇に頼った変身では、いずれ同じ結果を招いただろうと言い、必然的にこのようなきっかけを手にしたと説明。今だからこそ、自分の心と向き合ってみることを勧める。この頃の撫子は精神修養を行ったばかりで、経験則なら頼りになる部分が多かった。

 ところが、氷雨は変身できないまま……今日という日を迎えてしまった。さすがの彼女もふたりに詫びる。

 「申し訳ない。あれだけ貴重なアドバイスを受けておきながら……」
 「何のきっかけもなしに目覚められる方はそうはいません。自分に素直になれるか……それだけですよ。」
 「戦いの中でもその気持ちでいられれば、きっといい結果が生まれますわ。それでは参りましょう。」

 撫子も智恵美も温かい言葉をかけた。氷雨は一礼し、レインバックルを持って玄関へと走る。向かうは、地下洞窟だ。


 いまだかつてない混乱に包まれた渋谷中央署の玄関に、金髪の陽気な女性が桜井を待っていた。彼女は目的の人物に寄り添うと、さっそく自己紹介を始める。

 「明日菜……いい名前だが、それ以上に気になるのが苗字だな。隠岐ってことは、シスター智恵美のご家族の方かな?」
 「ご名答。まったく人使いが荒いのよねー。こうなる前から説明しといてほしかったんだけどさ、私は!」

 今までの智恵美の行動パターンから推測するに、この猫の手も借りたい状況までも計算済みだったということか。桜井は『絶対に敵にしたくねぇ』と心の中でつぶやくと、素直に明日菜のできることを聞き出した。明日菜は戦うよりも情報操作の方が役に立てるといい、指示を下せる機能とプライベートな空間がほしいと依頼する。もちろん明日菜も義母から、桜井警部の性格を聞かされていた。事件が動いている今、回りくどい言い方をしている余裕はない。桜井警部はケータイを取り出し、彼女をシューティングスターの一員として迎え入れ、渋谷中央署がメインで行う情報収集ならびに情報操作を一任することを周知させた。さらに指示は自分が使用する指揮車を提供、自らは明日菜の駒になると宣言する。

 「ちょっと予想外の部分もあるけど、その辺のお話は終わってからゆっくりね〜。」
 「今まで秘密にしていたが……射撃の腕前は異能力者も顔負けだぜ。ふふん?」

 さすがの明日菜もこれはどこまで信用していいか悩んだが、その不安を消してくれる絶好の援軍が姿を現した。その人物はラーメン屋台をバックにピースサインをしている。

 「お、緑田も来てくれたか。お前は地下に行かなくていいのか?」
 「今から向かいますよー。でも、地上の支援も忘れてません。ご覧なさい、これらの魔法のアイテムたちを!」

 謎の魔法お兄さん・緑田の紹介するアイテムはどこか変わったものばかり。
 まずは『影の獣の抑制グッズ』のご紹介。今回は従来のリボンではなく、光のワッパや耀の首輪、さらには煌の指輪といった、魔法を解除できない工夫を備えている。これを特殊工作班が所持し、片っ端から装着させていく。さすがの緑田もそれでは追いつかないと踏んだので、おまけに神秘のスタングレネードや鎮魂の特殊ゴム弾、白の放水車を使った無差別浄化装置も完備。これらを使って夢と希望を守ってほしいと懇願された。

 「あのさ、他のアイテムは隊員を言いくるめて使うけど……この放水車って、一般人が運転できるようになってるのか?」
 「すべてそちらの規格に適合済みです。オールグリーンだ。」

 ちょっと寒くなるシャレも飛び出したところで、桜井はいちおう納得してアイテムを隊員に配るべく招集をかけた。明日菜は最後に「望月さんにも傍受できるようにしておくけど問題ないよね?」と確認したが、相手の返事は想像通りだった。

 「すでにあいつが出撃してる時点で、こっちの通信を傍受してるってことだろ?」
 「こんなに話が早いと助かる。アカデミーのみんなにも動いてもらってるから、そっちにもサービスするね!」

 桜井は「責任者に任せる」と伝え、緑田とともに走っていった。明日菜は指揮車に乗り込み、仕事の段取りを始める。地下での激しい戦闘を支えるのは、明日菜たちにかかっていた。
 明日菜は地上の混乱を食い止めるために必要なことは、影の獣を保護することではなく、無事な人間を獣に変えないことだと考えていた。だから街頭にあるテレビなどの映像は、すべて普段どおりのものに差し替えることを最優先する。いたずらに混乱を招く状況を作ってはならない。彼女の指先には数え切れないほどの人間の運命がかかっている。

 「さ、アカデミーのみんなもよろしくねー!」

 明日菜はノートパソコンを開く。ここでもまた、孤独な戦いが始まった。


 渋谷の地下に広がる洞窟は、悪意によどむ空間だった。それがじわじわと蒸気のように立ち上り、地上にいる人々に悪影響を与える。邪悪な目で心を覗き、暴悪をそそのかし、その身を異形へと変えてしまうのだ。今だからこそ変化に個人差があるが、首領はあえて状況を加速させずにいる。こうすることで、渋谷中央署の面々を足止めすることができるからだ。まずは『シューティングスター』を各個撃破しようという腹づもりである。少年の姿を模ったインフィニティは、宿命に導かれし相手を静かに待った。

 そしてシューティングスターの面々がやってきた。少年はうやうやしく礼をして、歓迎の意を述べる。

 『ようこそ、悪意の巣へ。我が名はインフィニティ……』
 「せっかちで悪いけど、こっちは話し合う気ないから。穏便に済ませようとは思ってないよ!」
 「あらあら。そうなると、いきなり戦闘モードなんですね。」

 柚月は限定解除と装備使用の最強モード、撫子は手加減なしの神位覚醒で神々しくも紅に染まるオーラをまとい、亮吾も集中してある作業に着手する。どのみちこれだけの相手に小細工は通用しない。何をするにも真正面からでいいだろうと、誰もが開き直って行動することを心がけた。
 撫子は三対の翼でふわりと舞い上がると、神斬を構えてしばし精神を集中。そして深き悪意の塊を探り当てると、そこに向かって虹色に輝く攻防一体の翼状光璧を放つ。これに触れた悪意はあっという間に霧散してしまうが、地上に存在する分も考えるとこれが決定打にはなり得ない。その後も同じ技を効果的に繰り出すが、インフィニティは余裕の笑みを浮かべた。

 『悪意に過敏というのは……どうなのでしょうね?』

 首領の言葉を遮るかのように、周囲に張りつめた音が響いた。緑田はぐるぐる眼鏡をかけて、今の状況を確認する。なんとインフィニティは撫子に向かって、精神を蝕む言霊のような力を飛ばしていたのだ。それを柚月が止めたらしい。彼は「今回は無限の書が動いたのかな?」と推測した。もちろん所持者である柚月も敵の攻撃には気づいていたが、あまりにも人間らしくない攻撃のタイミングに若干戸惑う。今まで人格を有する敵ばかりで、この手の敵と戦うのは実に久しぶり。柚月は万全のバックアップを心がける。

 「ま、人の悪意は底なしやね。そやけど人の思いはそれだけやないよ。そこをよう覚えときや。」
 『悪意は人間しか持たぬ才能だというのに。もったいないことをするお方だ。』

 インフィニティの言葉に聞く耳を持たず、ただただ攻撃を続ける撫子。無限に存在するかもしれない悪意を浄化し続ける彼女だが、何の考えもなくやっているわけではない。首領が少年の姿で出現するところを見ても、この悪意はどこかに核を持っているはずだ。それを一刻も早く探し出し、次の一手とする腹づもりである。
 それを役目を担うのが亮吾だったが、彼は正直に苦しそうな表情を見せた。悪意の渦が精神の揺らぎを引き起こし、立っているだけでも体調が悪くなっていく。その変化は誰が見てもわかるほどで、常に智恵美が寄り添っていた。氷雨の穴を埋めるべく、亮吾は撫子のタイミングに合わせて攻撃を繰り出そうと準備を整える。

 そしてその時はやってくる。幾重にも重なった虹色の果てに、燃え上がるような強い悪意の核が現れた! 黒く揺らめきながら、ある時は悪意を放ち、ある時は悪意を吸い……もはや存在そのものが邪悪に満ちている。撫子は亮吾に向かって叫ぶ。

 「これが……インフィニティの正体ですわ!」
 「そこか! いくぞ!」

 亮吾はずっと結界の発動を狙っていた。こっそり緑田にも手伝ってもらって黒い箱をあちこちに置き、敵の核に合わせたサイズの円を作り出す。この配置は計算の域を超えて、もはや芸術と呼べる代物だ。亮吾の結界は、インフィニティだけを認識して別次元へ落とし込む圧縮封印……もちろん最後は消失まで狙いたいが、発動してすぐに成長した姿になってしまう。彼にとって、この姿はピンチを意味する。それを見て、智恵美と氷雨が駆け寄った。

 「あらあらあら、これはいけませんわ。」
 「亮吾くん!」
 『の、のんきに「お久しぶり」と言いたいところだが、そうもいかない……さ、さすがにこれはキツい。俺でさえ吹き飛ばされそうな風だ!』

 青白い結界が轟音とともに、インフィニティの核から力を奪い取っていく。亮吾は手はずどおり発動したはいいが、このままではあまりにも厳しいので、取り込んだ悪意をさっさと消失させることでリスクを軽減していた。それでも地上に染み出る悪意を食い止めるので精一杯。それも長く持たないのは、誰の目にも明らかだった。亮吾の姿もだんだんダブって見えてくる。限界が近い。本体を離れた悪意に容赦ない電撃と疾風が襲い掛かる。これもまた亮吾の能力が暴走している証だ。

 『氷雨さん……強くなれる。俺もここまで来れたんだしさ。大丈夫だって。ダメでもみんながなんとかしてくれるから。』

 ふたりの亮吾の声が洞窟に響く。智恵美はいつでも心霊治療ができるように備えた。

 『お、俺……電池切れみたいだ。あ、あとはよろしく……み、みん……な』
 「亮吾ーーーーーっ!」

 倒れこむ亮吾を見たまま、氷雨は吠えた。悲哀に染まった声は次第に熱を帯び、自らを鼓舞する音となる。
 それに応えるようにレインバックルが蒼く光り、その身に鹿のようなフォルムが出現した! 躍動を体現する黒いフォルムと、蒼いライティングライン。その場に現れたのは、紛れもなくシャドウレインだった。

 「こ、これは……へ、変身!」
 『いや、貴様は変身できていない。そのままでは、足手まといだ。』

 いつの間にか戦いの場に姿を現したのは、魔導強化服『バール』を身につける男・レギオンであった。今までにも同じような雰囲気の男がたびたび姿を現していたが、おそらく彼もそのうちのひとりなのだろう。やっとの思いで変身できた氷雨は少なからずショックを受けて立ち尽くす。

 「こ、これでも、わ、私は、へ、変身していない……?」
 『光と闇は一対。表裏であり、同質でもある……貴様から闇を抜き取った奴が言っていた。今だからこそ考えろ。お前の変身する力は何だ?』
 「魔法使いのおにーさんも激励しちゃいますよ! 氷雨さん、心を鎮めて己の内を見てごらんなさい。暗く渦巻くのも、温かく息づくのも、同じ貴方の心。もともと分かれてなんかいない物です!」
 「ま、まさか、これ以上の……まさか! これ以上の!」

 氷雨が何かに気づいた時、レインバックルが亮吾の結界に反応して動き出した。今までにない回転を生み、さらにはライティングラインが黒いボディを染め上げていく……!
 一時は止まったはずの亮吾の結界は、再び作動し始めた。そこには新たな力を得た氷雨が立っている。消失を担う封印の鍵は氷雨となったせいか、その速度が徐々に高まっていく。

 『キミたちは、この悪意を……何百年にも渡って蓄積された人間の思いを消すというのかい?』
 「人間の身勝手で分けられ、鬱積した貴方ですけども……忘れちゃいけません。貴方と対になる物の存在を。そしてそれを集めている存在たちを! ほーら、いいものですよ。暖かな感情というのも。」

 吸収を拒むかのように浮遊する悪意に向かって、緑田は在庫分と称したキラキラしたエネルギーをぶつける。これが封印の加速させる要因となった。まるで幸せな気持ちが心の中を埋め尽くすかのごとく、ゆっくりと洞窟の中を伝播していく。この時点で核はすでに丸裸の状態だが、柚月は『クッペル・デル・ルーヘ』でインフィニティの存在する空間を閉鎖してしまっていた。柚月は撫子のリズムに呼吸を合わせる。

 「撫子さん! ここはきれいに決めいくよ!」
 「ええ、柚月様! 行きますわよ!」

 柚月は悪意を滅ぼす黒き珠『シュバルツ・クーゲル』の乱れ撃ち、撫子は神斬で核を十文字に切り裂いた。その悪意を氷雨が渾身の力を込めて浄化していく……と、ここでレギオンが霧散する悪意を強化服で吸い取り始める。本来なら全力で止めるべき行為だが、今はインフィニティを消すことが先決。それに封印や消失の方法が増えれば増えるほどいいのも事実である。ここは無法に目をつぶって、全員が悪意の核を消しにかかった。

 『インフィニティ……俺は貴様の天敵。貴様は俺の贄となるべき存在なのだ。』
 「ここの関係の人らって、感心するほど抜け目ないねー。」

 これだけ複数の封印や消失を連動させれば、いかに強力な悪意でも消え去るしかない。インフィニティは人間たちに問いかける。

 『か、仮面なき人間たちに、未来はないと知って、こ、このような仕打ちをするのか……?』
 「人の思いは悪意ばかりではありません。あなたもやさしさを思い出してください。これに仮面は……必要ありませんわ。」
 『わっ、我が名は、イ、インフィニティ……人間に住まう無限の、あ、あ、悪意……………うおおおお……!』

 マスカレードの首領を名乗った無限の悪意は、ついにその姿を消した。それを確認した柚月は空間を元に戻し、レギオンの前に立つ。あの強烈なまでの悪意を手にした彼を野放しにするわけにはいかない。彼女の表情は険しかった。しかし今の彼女とケンカするとは、まったくもって不幸である。あの智恵美でさえも、哀れみをこめて「あらあら」とつぶやいた。

 『今、吸収した奴を再び解き放ちたいのか?』
 「それを言われると困るねー。手負いの人らばっかりやから、穏便に済ませたいんよ。」
 『貴様らのおかげで、渋谷はいい実験台になった。それに免じて、ここは静かに立ち去ってやる。シャドウレイン……いや、その名はふさわしくない。光を手にした貴様は「トゥルーレイン」と呼ぶに値する。その姿が貴様の真実だ。』
 「これが……私の、真実……」


 今さら事を荒立てたくないのと、見境なしの攻撃でダウンした亮吾が傷つくのを恐れた柚月は、しぶしぶ「帰ってええよ」とレギオンを見逃す決断をした。それに異を唱える者はおらず、彼は静かに洞窟を後にする。本当の力に目覚めた氷雨の姿は、その後『トゥルーレイン』と呼ばれるようになった。
 それを見送ってから、桜井警部たちの応援に行こうとシューティングスターはこの事件で最後の出撃をした。


 夕暮れ迫る渋谷の地上は厳戒態勢だったが、事件発生時よりも深刻な状況には至らず、明日菜の迅速な指示と緑田が提供した支援物資のおかげで事態は収まっていた。桜井警部が魔法のアイテム一式を装備して出迎えたが、あの氷雨でさえ笑ってしまう姿をしているではないか。おかしな光を放つ警棒に、ハート柄のスタングレネード……お前はどこの国の警官だとツッコみたくなるのも無理はない。ところが桜井は大真面目な顔で「これでどれだけの人間が救われたと思ってるんだ」と胸を張った。そんな真摯な態度に胸を打たれ、緑田は桜井と熱い握手を交わす。
 そして地上で被害を食い止めるべく活躍した明日菜は、警察の指揮車からご自慢のノートパソコンを片付けながら出てきた。義母の智恵美に「終わった?」と声をかけると、「私の仕事はこれからですよ」と笑ってみせる。彼女はIO2上層部に報告をするため、今から出発する旨を仲間たちに伝えた。しばしの別れを惜しみつつ、智恵美は渋谷を去る。このまま解散というのは寂しいと、氷雨が今から自分の屋敷にみんなを招待したいと申し出た。残った者は誰ひとり断らず、打ち上げに参加することとなった。

 柚月は氷雨に今後の協力を打診し、撫子も力の安定に尽力したいとの旨を伝えた。亮吾の不調は、引き続き智恵美が治療にあたる。しばらくは療養生活になる亮吾を見て、明日菜は「氷雨おねーさんの近くでうらやましいねー♪」といじって楽しんでいた。緑田は夢と希望が伝わったし、おいしいものもたんまり食えるしで大満足。何かにつけてお邪魔しようかと算段しているようだった。

 悪意に満ちた謎の組織の陰謀は、一閃の流星たちによって阻止された。たとえ新たなる敵が訪れたとしても、何も恐れることはない。彼らが信じるものは強く大きい。どんな苦難があろうとも、必ず乗り越えられる。そう信じられるものだ。後に、彼らは尊敬の意をこめて『シャドウブラスター』と呼ばれることとなる。渋谷を舞台にした一連の事件は、こうして幕を閉じた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/ PC名 /性別/ 年齢 / 職業】

7305/神城・柚月      /女性/18歳/時空管理維持局本局課長・超常物理魔導師
0328/天薙・撫子      /女性/18歳/大学生(巫女):天位覚醒者
2390/隠岐・智恵美     /女性/46歳/教会のシスター
3421/コマンダー・リバース /男性/ 1歳/TI社特殊強化服装着員
2922/隠岐・明日菜     /女性/26歳/何でも屋
7266/鈴城・亮吾      /男性/14歳/半分人間半分精霊の中学生
6591/東雲・緑田      /男性/22歳/魔法の斡旋業 兼 ラーメン屋台の情報屋さん

(※登場人物の各種紹介は、受注の順番に掲載させて頂いております。)

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■         ライター通信          ■
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皆さんこんばんわ、市川 智彦です。今回は「CHANGE MYSELF!」の第22回です!
長らくお待たせして申し訳ございません。今回で第2部は終了となります。

第2部をはじめた当初、こんなに続くとは思ってませんでした。
ひとえに皆様のおかげです。心からの感謝とともに作品をお送りいたします。
ところでアカデミーの面子が顔を出してませんが、それは第3部の伏線です(笑)。

今回も本当にありがとうございました。また『CHANGE MYSELF!』でお会いしましょう!