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甘い日をあなたと‥‥
バレンタインデー‥‥。
この日、女性は意中の男性にチョコレートを渡して告白をし、男性は自分の元にチョコレートが来るかドキドキする日である。
「こんにちは、チョコレートはいかがですか?」
バレンタインデー用の特設コーナーでエプロンドレスのような制服を着た女性が話しかけてくる。
「外国では男性が女性に渡すという所もあるので、男性から贈っても喜ばれるかと思いますよ」
にこにこと営業スマイルでチョコレートを進めてくる店員に赤い色やハートで飾られたコーナーへと足を踏み入れたのだった。
視点→ベアトリス・フレデリクソン
「バレンタイン‥‥」
カレンダーを見ながらベアトリス・フレデリクソンは小さく呟いた。今度の2月14日、ベアトリスは自らの上司であるアーデルハイト・ハイゼンベルクにチョコレートを渡して自分の心に秘めていた思いを伝えようと決意していた。
折角自分の気持ちを伝えるのだからとベアトリスは美味しいチョコレートを作るために様々な資料などを揃えるために本屋へと来ていた。
「簡単にチョコレートの本と言っても種類が多いのね‥‥」
バレンタイン特集といって本屋にはチョコレートの本がずらりと並べられている。
「ふぅ‥‥」
とりあえず本の中身を見てみようと手を伸ばした時に「ベアトリス?」と聞き慣れた声が聞こえてベアトリスは振り向く。
「アーデルハイト様!」
「偶然ね、何をしているの?」
「いえ、何でもありません」
ベアトリスは曖昧に言葉を返し「そう?」とアーデルハイト・ハイゼンブルクが言葉を返した。
「あ‥‥2月14日に其方へと伺いますので予定を空けていてもらえますか?」
ベアトリスの言葉にアーデルハイトは「分かったわ、それじゃ2月14日にね」と言葉を返してその場を去っていったのだった。
そして2月14日――‥‥。
ベアトリスはチョコレートを溶かして型に入れるという作成方法を行っていた。本にはもっと複雑な作り方が載っていたのだが、自分の気持ちを伝える為にはシンプルな物の方がいい、そうベアトリスは考えてシンプルなハート型チョコレートを作っていた。
最も、彼女は不器用な方ではないので複雑なものも作ろうと思えば作る事が出来たのだけれど‥‥。
「これでいいかな‥‥」
作ったチョコレートを箱に入れ、包装紙とリボンで綺麗にラッピングする。
「きっと驚かれるだろうな‥‥でも年に一度のイベントなんだし、今日は勇気を出して頑張らなくちゃ」
ベアトリスは小さく呟き、チョコレートを持ってアーデルハイトの執務室がある場所へと向かい始めたのだった。
午後1時30分、ベアトリスはアーデルハイトの執務室へ通じる扉の前で大きく深呼吸をしていた。
中世の王宮のようなシックな雰囲気が余計にベアトリスの緊張を煽っていた。
(「よし」)
心の中で呟くと同時にコンコンとノックをする、少しだけ手が震えているような気がしたけれどベアトリスはあえて自身の手の震えには気づかない振りをした。
「どうぞ」
扉の向こうからアーデルハイトの声が聞こえ、心臓が早鐘を打つのがベアトリス自身にも分かった。
「し、失礼します」
少しだけ声がうわずり、椅子に腰掛けているアーデルハイトの姿を見て顔が赤面するのが分かる。
「今日は無理を言って申し訳ありませんでした、それとお仕事お疲れ様です」
机の上に積み重なっている書類などを見れば、今までアーデルハイトが書類の山に追われていた事が一目瞭然だった。
(「きっと、私が来るから早めに切り上げてくれたんだ‥‥逆に疲れさせてしまう結果になってしまったかしら」)
「今日はどうしたの?」
アーデルハイトから話しかけられ、ベアトリスは「その、あの‥‥」と俯きながら顔を真っ赤にして呟く。
「‥‥?」
ベアトリスの言動の意味が分からず、アーデルハイトが首を傾げると「これを‥‥」と綺麗にラッピングした箱をアーデルハイトに渡す。
「これは‥‥?」
アーデルハイトはベアトリスから受け取りながら箱とベアトリスとを交互に見比べる。
「今日は‥‥バレンタインデーですので、アーデルハイト様にチョコレートを、と思いまして‥‥」
顔をゆでだこのように真っ赤にしながらぽつり、ぽつりと言葉を紡いでいく。
「私はアーデルハイト様の忠実な腹心として、貴方様に無二の誓いと想いを告白したいと思い、今日はチョコレートを贈らせて頂きました」
ベアトリスの言葉を聞いてアーデルハイトは「私は‥‥」と呟きながら椅子から立ち上がり、ベアトリスの方を向く。
「私は正直にいって、ベアトリスの言葉、気持ちが凄く嬉しかった――‥‥私にとっても、ベアトリスは大事な部下であり、それ以上に大切な存在だわ」
まっすぐにベアトリスを見て話すアーデルハイトの言葉、それはベアトリスもアーデルハイトが嘘を言ってない事を知る。
「だから、これからも私の傍で私を支えて欲しい、そしてこれから未来(さき)に起こりえる悲しみも怒りも嬉しさも分かち合っていこう」
アーデルハイトの言葉にベアトリスは目を丸く見開き、そして今にも泣きそうな顔で「アーデルハイト様‥‥」と言葉にならない言葉を呟いていた。
「私、凄く嬉しいです‥‥っ! あの、今日は1日一緒にいていいですか?」
折角のバレンタインデーですから、とベアトリスは言葉を付け足して伺うようにチラリとアーデルハイトを見る。
アーデルハイトは苦笑しながらも「仕方ないわね」と言葉を返し、机の上に出ていた書類や仕事道具を全て片付けた。
「何処に行きましょうか、アーデルハイト様」
外に出てベアトリスが問いかけると「ベアトリスは何処に行きたいの?」とアーデルハイトが聞き返す。
「私は‥‥アーデルハイト様と一緒だったら何処でもいいです、きっと何処でも楽しいですから」
にっこりと極上の微笑みを浮かべてベアトリスは言葉を返した。
「‥‥? どうされたんですか、アーデルハイト様?」
少し顔が赤いアーデルハイトを不思議に思ったベアトリスは問いかけるのだが「何でもない」と言葉を返されてしまう。
「はぁ、そうですか?」
それから2人はショッピングに行ったり、普段は行かないようなファーストフード店に行ったりと普通のカップルが行うデートのようなものをとっぷりと日が暮れるまで楽しんでいた。
上司と部下、そして何より仕事がある為にきっとすれ違いとか多くあるかもしれないだろうが、お互いがお互いを想い合う気持ちがあればクリアできる問題だろう。
2人の幸せはこれから始まるのだから――‥‥。
END
―― 登場人物 ――
8123/ベアトリス・フレデリクソン/18歳/女性/シュヴァリエ/プリースト
8002/アーデルハイト・ハイゼンベルク/20歳/シュヴァリエ/ハイゼンベルク家令嬢
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ベアトリス・フレデリクソン様>
初めまして&こんにちは。
今回執筆させていただきました水貴透子です。
今回はご発注をありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
ご希望通り、そして楽しんでいただける内容に仕上がっていれば幸いです。
今回は百合ちっくな内容をご希望との事でしたので、それっぽく仕上げてみたのですがいかがでしょうか?
ベアトリス様とアーデルハイト様の今後の幸せを心より願っております。
それでは、今回はご発注いただき、本当にありがとうございました。
またご機会がありましたらご発注をお待ちしています。
2010/2/11
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