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<甘恋物語・スイートドリームノベル>


甘い日をあなたと‥‥

バレンタインデー‥‥。
この日、女性は意中の男性にチョコレートを渡して告白をし、男性は自分の元にチョコレートが来るかドキドキする日である。

「こんにちは、チョコレートはいかがですか?」

バレンタインデー用の特設コーナーでエプロンドレスのような制服を着た女性が話しかけてくる。

「外国では男性が女性に渡すという所もあるので、男性から贈っても喜ばれるかと思いますよ」

にこにこと営業スマイルでチョコレートを進めてくる店員に赤い色やハートで飾られたコーナーへと足を踏み入れたのだった。

視点→アーデルハイト・ハイゼンベルク

「バレンタインか‥‥」
 アーデルハイト・ハイゼンベルクは街中が浮ついている雰囲気と店などに飾られているハートの飾りや赤い色などを見て小さく呟いた。
「だけど私には関係ないですね」
 くす、と小さく笑って言葉を付け足した。彼女自身には特に想い人と言える存在もこれと言ってなく、自分には関係ないと思って本屋の前を通り過ぎようとした――けれど見慣れた存在が本屋の中にいる事に気づいて「あれ?」とアーデルハイトは首を傾げた。
 本屋の中にいたのは部下のベアトリス・フレデリクソンだった。彼女は真剣にチョコレート作りの本を見ている。
(「あんなに真剣に見て‥‥きっとチョコレートを渡したい人がいるのね」)
 真剣に本を見るベアトリスが新鮮であり、どこか微笑ましいものを感じた。
「ベアトリス?」
 アーデルハイトはベアトリスに話し掛けると「アーデルハイト様!」と少し吃驚したような表情でアーデルハイトを見た。
「偶然ね、何をしているの?」
 チョコレートの本のところにいるのだから何をしているのかなど分かりきった事なのだがアーデルハイトは問いかける。
「いえ、何でもありません」
「そう?」
 ベアトリスが曖昧に言葉を濁してきたので、アーデルハイトも無理に聞く事はしなかった。
「あ‥‥2月14日に其方へ伺いますので予定を空けていてもらえますか?」
 ベアトリスの言葉に『何だろう‥‥』とアーデルハイトは心の中で呟く。
「分かったわ、それじゃ2月14日にね」
 それだけ言葉を返してアーデルハイトはその場を去っていく。
(「2月14日‥‥仕事があるけれど、何とか早く終わらせなくちゃいけないわね」)
 苦笑しながらアーデルハイトは心の中で呟いた。


 そして2月14日――‥‥。
「ふぅ‥‥あと少しで終わりかしら」
 午後からはベアトリスがやってくる為、それにあわせてアーデルハイトは激務とも呼べる仕事をこなしていたのだ。
 そして最後の1つが終わり、アーデルハイトは大きく伸びをしてベアトリスが来るのを待っていた。
「それにしても‥‥何の用なのかしらね、もしかしてチョコレートを渡すのを手伝って欲しい、とか?」
 うーん、と小さく唸りながらアーデルハイトは考えるのだが自分の所に来る意図が分からないまま時間だけが過ぎていた。
 まさか予想もしていないだろう、ベアトリスがチョコレートを渡す相手がアーデルハイトなのだという事に‥‥。

 午後1時32分、執務室の扉をノックする音が聞こえて「どうぞ」とアーデルハイトはノックの主に中へ入るように促す。
「し、失礼します」
 執務室の中に入ってきたベアトリスは少しだけ声がうわずっており、よく見れば顔も少し赤い。
「今日は無理を言って申し訳ありませんでした、それとお仕事お疲れ様です」
 ベアトリスは机の上に積み重ねられた書類を見て、申し訳なさそうな表情で話しかけてきた。恐らく自分のせいで無理をさせてしまったとでも思っているのだろう。
「今日はどうしたの?」
 アーデルハイトに話し掛けると彼女は「その、あの‥‥」と顔を真っ赤にしながら俯いてつぶやいている。
「‥‥?」
 どうしたのかしら、アーデルハイトは心の中で呟きながら首を傾げると「これを‥‥」とベアトリスが綺麗にラッピングした箱を差し出してきた。
「これは‥‥?」
 ベアトリスから受け取った箱と彼女とを交互に見比べながらきょとんとしながら問いかける。
「今日は‥‥バレンタインデーですので、アーデルハイト様にチョコレートを、と思いまして‥‥」
 え、とアーデルハイトは目を瞬かせながらベアトリスを見る。まさか自分にチョコレートが来るとは予想していなかったので驚いたのだろう。
 ベアトリスは顔を真っ赤にしながら一言一言を大切な言葉のように微笑みながら紡いでいく。
「私はアーデルハイト様の忠実な腹心として、貴方様に無二の誓いと想いを告白したいと思い、今日はチョコレートを贈らせて頂きました」
 どこか強い意志を感じさせる口調にアーデルハイトは少しだけ戸惑いを感じるのだが、すぐにそれは消えうせて「ありがとう」と受け取ったチョコレートを見ながら礼を言う。
 そしてベアトリスの気持ちだけを聞いて、自分の気持ちを伝えないのは卑怯だと思い「私は‥‥」と椅子から立ち上がりながらベアトリスの方へと向く。
「私は正直にいって、ベアトリスの言葉、気持ちが凄く嬉しかった――‥‥私にとっても、ベアトリスは大事な部下であり、それ以上に大切な存在だわ」
 それは嘘偽りのない真の言葉だった。
「だから、これからも私の傍で私を支えて欲しい、そしてこれから未来(さき)に起こりえる悲しみも怒りも嬉しさも分かち合っていこう」
 アーデルハイトの言葉にベアトリスは目を丸く見開き、そして今にも泣きそうな顔で「アーデルハイト様‥‥」と言葉にならない言葉を呟いていた。
 アーデルハイトの言葉に驚いたのかベアトリスは目を丸く見開き、そして今にも泣きそうな顔で「アーデルハイト様‥‥」と呟いている。
 折角のバレンタインデーですから、とベアトリスは言葉を付け足して伺うようにチラリとアーデルハイトを見る。
 アーデルハイトは苦笑しながらも「仕方ないわね」と言葉を返し、机の上に出ていた書類や仕事道具を全て片付けた。
(「きっと、明日からはまた忙しい日々が続くのだから今日くらいは‥‥」)
 アーデルハイトは心の中で呟きながら嬉しそうな表情を見せるベアトリスを見て、自然と表情がほころんでくる。
「何処に行きましょうか、アーデルハイト様」
 外に出てベアトリスが問いかけると「ベアトリスは何処に行きたいの?」とアーデルハイトが聞き返す。
「私は‥‥アーデルハイト様と一緒だったら何処でもいいです、きっと何処でも楽しいですから」
 にっこりと極上の微笑みを浮かべてベアトリスは言葉を返した。不覚にもそんなベアトリスの言動を見てアーデルハイトは少しだけ顔が赤くなるのを感じていた。
「‥‥? どうされたんですか、アーデルハイト様」
 きっと顔が赤いことがバレたのだろう、ベアトリスは不思議そうな表情で聞いてくる。
「何でもない」
 顔を逸らしながら呟き「はぁ、そうですか?」とベアトリスも首を傾げながら言葉を返してきた。

 それから2人はショッピングに行ったり、普段は行かないようなファーストフード店に行ったりと普通のカップルが行うデートのようなものをとっぷりと日が暮れるまで楽しんでいた。
 上司と部下、そして何より仕事がある為にきっとすれ違いとか多くあるかもしれないだろうが、お互いがお互いを想い合う気持ちがあればクリアできる問題だろう。
 2人の幸せはこれから始まるのだから――‥‥。

END



―― 登場人物 ――

8123/ベアトリス・フレデリクソン/18歳/女性/シュヴァリエ/プリースト

8002/アーデルハイト・ハイゼンベルク/20歳/シュヴァリエ/ハイゼンベルク家令嬢

――――――――――

アーデルハイト・ハイゼンベルク様>

初めまして&こんにちは。
今回執筆させていただきました水貴透子です。
今回はご発注をありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
ご希望通り、そして楽しんでいただける内容に仕上がっていれば幸いです。
今回は百合ちっくな内容をご希望との事でしたので、それっぽく仕上げてみたのですがいかがでしょうか?
ベアトリス様とアーデルハイト様の今後の幸せを心より願っております。

それでは、今回はご発注いただき、本当にありがとうございました。
またご機会がありましたらご発注をお待ちしています。

2010/2/11