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<東京怪談ノベル(シングル)>


玲奈号二番艦
 八百万の神が出雲へ帰省するという神無月の間、妖怪退治に忙殺された玲奈と鬼鮫は、遅い休暇を北欧ナルヴィーク市で満喫していた。
 玲奈は極光鑑賞、鬼鮫は新型雪上バイクの試乗が目的だ。ライダーブーツにニーソ、外套で完全武装の玲奈がタンデム席で震える。
「お前にツナギを貸してもすぐ破るだろう。バイク乗りとしちゃ許し難い」
 などと鬼鮫が冗句を飛ばしつつ街を見下ろす丘を爆走していると、港に閃光が見えた。
 最近、北海航路の客船が海賊に襲撃される事件が多発している。謎の幽霊船が砲撃で海賊を撃退し、全て未遂に終っているというが――放置できない。
「やっぱりお出ましか」
「休暇がパーね」
 二人はIO2のメンバーとしての任務を思い出し行動を開始した。
 玲奈は衛星軌道上の玲奈号にターゲットをサーチさせる。偵察技術が熟した地球上に隠れ家などない。衛星軌道上の玲奈号が砲撃の熱源を捉える。
 が、その時――
「バレたわ!」
 どうやってこちらを探知したのかは知らないが砲撃が山の斜面に着弾し、それは雪崩を引き起こす。
「くそっ!」
 鬼鮫は雪上バイクを絶妙なコントロールで操作し雪崩を避ける。が、ギリギリのところで避け切れず生き埋めに――
 生き埋めになりかけたところで玲奈が能力を発動し背に翼を広げてバイクと鬼鮫を持ち上げた。
「間一髪だったぜ! おお絶景だ」
 叫ぶ鬼鮫に対し、玲奈は冷たい目で睨みつけながら冷たい声で言う。
「ツナギが勿体無いとか‥‥私の水着姿が目当てでしょ」
 怒る玲奈。だが、下界に霊気を感じた事でその怒りはどこかへ消えた。
「この、霊気は‥‥」
「どうした、玲奈?」
「ん‥‥なんでもない。それより、下ろすわよ。いい加減重いわ」
「おう!」
 玲奈は鬼鮫とバイクを雪原に下ろすと翼を収納した。
「うう‥‥寒いわ」
 ビキニだけとなった玲奈がぼやく。
「俺のジャケット貸してやるよ」
 そう言って鬼鮫がつなぎの上のジャケットを玲奈に着せる。
「ありがと」
「おう」
「鬼鮫、下界に霊気を感じたわ。明日、霊気の源を探しましょう。と言っても、大体見当はついているけどね」
「そうか。じゃあ、今回の仕事は楽だな。頼りにしてるぜ」
「ん‥‥」
 そして二人は再び雪上バイクに乗ると、山を降りた。

 翌日。
 玲奈は大きなカバンを持ちながら街を散策していた。
「その鞄は何だ?」
「秘密。いずれわかるわ」
 玲奈は霊気の源を探しながら街を歩く。そして、たどり着いたのは市内の博物館。
 そしてその中のとあるものに向かって玲奈は迷いなく歩く。
「いたわ」
「‥‥なんだこりゃぁ?」
 そこにあるのは、大砲の砲弾だった。
「大英帝国戦艦ウォースパイトの砲弾! 霊気の源は貴女ね?」
 玲奈が尋ねると美しい船幽霊が現れた。鬼鮫が思わず構える。
「両大戦を生きのびた無敵の戦艦。最期はあえ無く座礁。拒むかの如く、解体に十年を要したと言う」
 鬼鮫の言葉に霊が頷く。
「現役で居たかったのよね? 殺しちゃ駄目よ鬼鮫」
 玲奈はジャージを脱ぐとブルマ姿の肢体に走る手術跡を見せた。
「私も現役の戦艦なの♪ 仲良くお仕事しましょ」
 玲奈はカバンから用意した戦艦の模型を取り出すと、ウォースパイトの霊にこれに宿るように言う。
「大丈夫か?」
「大丈夫。戦艦の気持ちは戦艦にならよくわかるわ」
 鬼鮫の心配を物ともせず、玲奈は再度霊に模型に宿るように言う。
 霊は輝くと頷いて模型へと溶け込んだ。模型は霊のヨリシロとなったのだ。
「ハイ、これで任務完了。雪原に生き埋めになりそうになったときは怖かったけど、こうして終わってみると楽だったわね」
「たしかに、楽な任務だったな。俺は何もせずにすんだ」
「おまけに、あたしの水着姿も鑑賞できたしねえ。役得よね、鬼鮫?」
「まあ‥‥な」
 そう言ってにやける鬼鮫に肘打ちが飛んだ。
 近い将来玲奈号の二番艦が進宙するという。その船の名は――