コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ノベル(シングル)>


インターミッション ――奪われたウォースパイト――
 縁故品ばかりを狙う盗賊団が、最近出没していた。
 なかなか足がつかない盗賊団に業を煮やした当局は、玲奈と鬼鮫に任務を与えた。

 そして――

 深夜の倉庫。街の喧騒からは遠く離れたこの場所で盗賊団が中古携帯電話の山を見つけた。
「これなんかどうだ?」
 一人の男がそう言うと、別な男が感想を漏らした。
「元の持ち主はかなり派手な女らしい」
「使えねーよ」
 そして別な男がチンピラ風の口調でそんなことを言う。
「【信者】の頭数さえ揃ってればいいんだ。仏様を盗んで足がつくよりマシだ」
「そうだな。適当に見繕ってズラかるぞ」
 どうやら単なる泥棒ではなさそうだ。
 携帯、その他多数の因縁が絡んでいそうな盗品を漁っている。
 最後に彼らは一抱えはあろうかという巨大な軍艦の模型を見つけた。
「ほう‥‥こいつはいい。概ね展示品か何かだろう。来訪者の中には常連もいただろう。たっぷり残留思念が摂れそうだ」
 残留思念を取るとは何の事だろうか? ともかく、男の一人がそう言った時だった。
「‥‥そこまでだ!」
 投光器を背に鬼鮫と玲奈が現場に踏み込む。
 逆光の中で、二人のシルエットがくっきりと浮かぶ。
「大人しくしろ! 抵抗すれば‥‥」
 鬼鮫がそこまで言った時、突如停電して投光器の光が消え、瞬間暗闇になる。
 そしてその刹那、二人に向かってスタングレネードが炸裂する。
「しまった!」
 叫ぶ玲奈。視界が戻った頃には盗賊団の姿は消えていた。
「畜生、やられた‥‥」
 玲奈が悪態をつく。敵は一枚上手だった。

 ――縁故品ばかりを狙う盗賊団に業を煮やした当局は、玲奈と鮫島を使い遂に犯行の現場を押さえた。
 だが、結果は囮の餌に用意した、戦艦ウォースパイトの霊が宿った戦艦の模型を奪われる失態だった。
 事件は特捜班に委ねられ鬼鮫と玲奈は長期休暇を貰った。
 そして二人は単車と車で遠乗りに繰り出した。
「憂さ晴らしにもっと飛ばしてよ」
 背中に穴の開いたツナギを着た玲奈が鬼鮫の車を急かす。
「ハハハ転けるなよ」
 鬼鮫が笑う。
「教習所で8の字を軽々と引き回したわよ」
 玲奈はそう言って鬼鮫を煽る。
 単車と車で警戒を分担しつつ遊ぶ二人は、そのうちに神社を見つけた。
 境内には戦車等が祀ってある。縁故品を奉納するとご利益が有るらしく、賑わってる神社だった。
 だが――
 突如参拝客達が二人に襲いかかってくる。
「くっ!」
「なんだいきなり!?」
 突然の事に慌てる。
「ここの人達‥‥操られてるていうか一部は人間でない」
 攻撃をかわし続けながら玲奈は観察し、そう結論づける。
「なら遠慮ナシだぜ」
 鬼鮫が襲撃者を斬捨てる。
「はぁああああああああああああ!」
 玲奈が念動力で襲撃者を吹き飛ばす。
 そうしてしばらく襲撃者との攻防戦を繰り広げていると、突如キュラキュラキュラと何かの音がした。
 二人が音のした方を見る。
「なっ――!」
「冗談じゃねえ!」
 戦車が動き出して砲塔を二人に定めた。
 砲口から吐き出される霊体の砲弾。
 二人は左右に散ってそれをかわすと、態勢を立て直した。
「どうする玲奈?」
「戦艦のあたしが戦車ごときに負けると思って?」
 そう言う玲奈だが、戦車が二人を轢き殺しにかかってくると、前言を撤回した。
「きゃあああああああ! ちょっと、冗談じゃないわよ。鬼鮫、車に戻りましょう!」
 追いかけてくる戦車に速度では敵わない。二人はその突撃をかわし続けながら車に戻った。
 単車と車で逃走する二人。最高速度では最新式の戦車でも時速70キロもでない。本気で走れば追跡を振り切るのは簡単だった。
 だが、戦車をそのままにしておくわけにも行かない。
 二人は速度を抑えてアスファルトを砕きながら走ってくる戦車に並走する。
 鬼鮫は片手で車を運転しながら窓から手を伸ばし刀で戦車を攻撃する。
 一方の玲奈はバイクの機動性を活かして戦車の後方に回り込み目からビーム光線を放つ。
 爆発・炎上し、停車する戦車。中から人が飛び出してくる。
「おい!」
「ええ‥‥」
 二人は視線をかわすと即座にエンジンを切ってその人影を取り囲んだ。
「動くな!」
「抵抗したら容赦しないわよ!」
 二人の言葉にその人影――鬼鮫の雰囲気にそっくりなヤクザ風の男が両手を上げる。
「とっつかまったら組織に何されるかわかんねぇ。そんな死ぬより恐ろしいことは御免だ。
 だから、ひとつだけ教えといてやる。俺は命令されて兵隊を作っていただけでそんなに重要な役割は担っちゃいねえ。
 お前らIO2だろ? 盗んだものは――に置いてある。捨て駒にされるのは嫌だからな、教えてやったぜ。
 じゃあな、アバヨ!」
 男はそう言うと懐から拳銃を取り出しこめかみに押し当てる。
「まてっ――!」
 鬼鮫が慌てて止めるがすでに遅い。
 銃声が響いて、それから男が倒れる音がする。
「糞ッ!」
 鬼鮫がつばを吐いた。
 その後男の供述に基づいて捜査がなされ、世界各地から盗まれた品々は無事に取り戻された。
「ウォースパイト、ごめんね。怖かったでしょう?」
 玲奈は戦艦の模型を見つけると駆け寄り、抱きしめる。

 ――とある骨董屋。
「では、たしかにお預かりします」
「頼むぞ」
「はい」
 盗品の一部はその骨董屋にあずけられた。
 こうして事件は一応の収束を見たが、様々な謎が残されたままだった。
 その謎を解き明かすため、当局は今後も捜査を続ける。
 玲奈と鬼鮫の忙しい日々がふたたび始まるのだった。

 了