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<東京怪談ノベル(シングル)>


大虚構艦隊登場
 桜の名所として有名な某湖。その湖畔で最近、竜の姿を見たという事例が多発している。
 もちろん、ネッシーの類のような都市伝説という説もなくもない。だが、IO2ではこれを「クロ」と判定した。それ故、地元のガールスカウトからの異例の指名依頼に三島・玲奈を派遣したのである。
「よかったー。玲奈さんが来てくれて。写真家の玲奈さんなら何かあってもすぐ気づくわよねー」
 ガールスカウトの少女の一人がそう言う。
「そうねー。おかげで恒例の花見を中止しなくてもよくなったし、助かったわ」
 別の少女がそう答え、玲奈を見た。
 当の玲奈はガールスカウトの制服を着て舞い上がっており、よく話を聞いていない。少女たちの言葉に適当に相槌を打っている。
 コスプレが擬似魔術行使の手段から目的に代わってしまっているようであった。花より制服といったところである。ガールスカウトの群れに違和感なく溶け込んでいる。
「さー、今日はお弁当張り切ってきたわよ。みんな、食べましょう」
 リーダーの少女が弁当を広げる。ほかの少女もめいめいに各自の弁当を広げ、中央におかずを集めて皆で各自のおかずに舌鼓を打ちながら和気藹々と食事をしていた。
「あ、これおいしそう。ちょうだーい」
「いいよー。あたしはこれもらうね」
 そうやって食事の時間は楽しく過ぎていった。と、ふと誰かが湖上に不審な影を発見した。
「あ、あれ、何かしら‥‥?」
 そこには確かに何かの影があった。玲奈は湖に向けてセットしていた写真機のファインダーを覗き込む。
「玲奈さん、そのカメラって竜を撮影するために使うんですか? 後であたしたちの集合写真も撮ってくださいね」
「あー、このカメラは訳あって人には向けられないの。でも、ちゃんと人用のカメラも持ってきたから写真は撮るわよ」
 と、最初にこんな会話が交わされていたのだが、玲奈のカメラが人には向けられないのは、被写体を攻撃するヒエロニムスマシンだったからである。
 組織からの事前命令に従い湖上の不審な影に躊躇なく霊力の弾丸を発射した。
 それは吸い込まれるように正確に不審な影に命中する。
「きゃぁっ!」
 だが聞こえてきたのは竜の叫び声‥‥ではなく女の悲鳴だった。あわてて攻撃を中止する玲奈。
 やがて現れたのは見知った顔。光学迷彩を装備して潜入していたIO2エージェントの茂枝・萌であった。
「萌さん!」
 玲奈が叫ぶ。
「大丈夫? 怪我しなかった?」
「プロテクターのおかげで怪我はないけど、完全にだめになっちゃったわ、これ。どうしてくれるの?」
「ごめんなさい。どうしよう‥‥」
「とりあえずこれは捨てるしかないね。まったくもう‥‥」
 誤爆をされたこととプロテクターを壊されたことに怒る萌。
 そういいながらプロテクターを脱ぎ捨てる。ガールスカウトの女子たちがなにげに壁を作って周りからの視線を遮っている。
「ちょっ‥‥ちょっと‥‥」
 一糸纏わぬ萌の姿に赤面する玲奈。そして赤面しながらカバンからスクール水着を取り出し萌に渡す。
「ちょっと、なんでそんなもの持ってるのよ」
「後で潜ろうと思って‥‥」
「やめときなよ‥‥」
 あきれながら突っ込む萌。春とはいえ水はまだ冷たい。湖に潜ったら心臓麻痺を起こしてしまうかもしれない! そんなことを言いながらも萌はスクール水着を着用した。
「え〜ん‥‥スースーするぅ〜」
 ぼやきながらガールスカウトの娘が予備で持ってきた制服のスカートと上着に身を通す。
「ありがと‥‥それでね、あたしの光学迷彩が狂ったのはね、光学迷彩を狂わせる、すなわち光すら歪める何かが湖底にあったからなのよ」
「当たり‥‥ね。それじゃあ、っと!」
 玲奈はカメラを素早く少女たちに向けると、彼女たちの腹部を軽く撃った。
「あいたたた」
「お腹痛い‥‥」
 急に腹痛に身を埋める少女たち。
「集団食中毒かな? 病院行った方がいいよ?」
 玲奈はひとり平気な顔をして少女たちにそう言う。少女たちは頷くと、保護者とともに湖を離れていった。
「さて。派手にやるわよ!」
 玲奈はカメラに望遠レンズを取り付けヒエロニムスを強化すると湖面に派手に撃ち込む。
 何発も続けて撃っていると湖面を割って竜が出現した。あちこちから血が流れている。玲奈の攻撃に耐えられなくなったらしい。
「玲奈、援護射撃お願い!」
 萌が精神波を放ちながらそう言うと、玲奈は竜の活動を阻害するように砲撃する。
 だがその攻撃は竜に弾かれる。
 竜は叫びながら火炎弾を放ち、二人の衣装が焦げ臭いにおいを発する。
「くっ! なんてヤツ!」
「こうなりゃ接近戦しか無いわね。玲奈、陽動して。あたしが斬りに行く」
「了解!」
 そして玲奈がヒエロニムスを派手に撃ちまくり竜の気を引く間に萌が接近する。
「はああああああああああああ!」
 ブレードで竜の首を切り落とす。と、湖面が爆散した。
「結界!」
 結界で水を封じると、水がなくなった湖底に、二人は隕石を発見した。
 隕石に近づく玲奈と萌。
 隕石に開いた無数の穴には幼竜が巣篭っていた。
 ふと、隕石が光言葉を発する。
『我は天空より人類に神話を贈りし者。我は毎年花見客の執着心を糧に竜を育み世に神話の種たる竜を蒔かん。信仰無くして世に安寧なし。されど、近年人の信心薄れ、我さらに竜を産まんと人々の執念集めたり‥‥』
 萌がこめかみを抑えた。
「こいつが真犯人かよ‥‥」
「小さな親切大きなお世話よね」
「どーする、玲奈?」
「爆破しちゃおっか?」
「そうね」
 決定。
 放置しておいたらまた竜が出るだけだ。
 玲奈は衛星軌道上からビームで隕石を攻撃して破壊した。
 二人は結界をといて湖から上がる。
「で? 結局あれはなんだったの?」
 萌の問に玲奈は空を仰ぐ。
「奴らは大虚構艦隊の尖兵‥‥人類が紡いで虚空に放った妄執が、宇宙に堆積して悪霊になったのよ」
「なんと、身から出た錆ってやつね。どうしょうもないわね‥‥ってちょっと待って。ということはこれからも第二第三のあれが出るってこと?」
「恐らくはね‥‥」
 玲奈はげんなりとしながら答える。
 まだまだ戦いは続くようだった‥‥