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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


妖精の悪戯


 突然だが、人類というのは好奇心旺盛な生命体である。
 五本の指を駆使し、棒や葉を利用することから始め、衣服を身に纏い、火を使い、獲物を駆り立て、社会を作り、鉄を錬成し、やがて科学の力を手に入れた。そこに至るまでの何千年という月日の中で、人類は知性という未知の要素を常に進化させてきた。不可能とされることを可能とし、大海と空を支配し、宇宙にすらも飛び出した。
 その全てを可能とした、大元にある必要不可欠な要素‥‥‥‥それが好奇心なのだ。
 例え他人に笑われても、危険だと分かっていても挑戦を続ける人間がこの世界を作り上げていく。それは世界に誇るべき行動であり、決して恥じるべき行いではない。
 未知に対する好奇心。挑戦する心‥‥‥‥それを無くしたら、人類の未来は暗闇に閉ざされることだろう‥‥‥‥
「つまり、好奇心旺盛な私が未知の蝋燭に目を惹かれるのも、必要なことなんですよね」
 自分で自分に言い聞かせるように、ファルス・ティレイラは掃除の手を止め、綺麗な細工の施された蝋燭に魅入っていた。
 ここは、ティレイラが魔法の修行のために出入りをしている魔法薬屋の倉庫である。
 店主であるシリューナ・リュクテイアから修行の一環という名目の倉庫整理を言いつけられたティレイラは、溜息混じりに黙々と倉庫の中を清掃し、雑然と並べられ積み重ねられていた荷物の山を整理していたのだった。
 古びた箒や壊れたランプ。綺麗な砂や禍々しい気配を放つ石仮面など、様々な道具が倉庫の中には眠っていた。それらは見る限りはゴミか、ただのインテリアとしか見えない。しかしそんな道具達は、一つ残らず魔力を帯びており、半人前のティレイラの目でも、一目で呪具の類だと理解することが出来る一品ばかりだった。
 そんな道具が雑然と仕舞い込まれている倉庫である。ティレイラは慎重に、慎重にと気を張りながら整理をしていた。師であるシリューナが商談で出かけているため、万が一悪質な呪いが発動したとしても誰も対処が出来ないのだ。慎重になるのは当然で、気を張りながらの倉庫整理は確実にティレイラの神経を磨り減らしていた。
 ‥‥‥‥そんな中、ティレイラは荷物の中から一つの綺麗な蝋燭を発見した。
 置物のように小さな台の上に乗せられている蝋燭。いや、どちらかというと蝋細工か。職人の手によって妖精の形に削られた蝋燭は、ティレイラの目を惹き付け、そして放そうとはしなかった。
「‥‥‥‥まぁ、いいかな」
 整理と清掃に疲れていたティレイラは、休憩がてらにその蝋燭を観察し、眺めていた。
 見れば見るほど精巧に作られている妖精の蝋燭は、彫像の類には素人同然のティレイラでさえ唸るほどの品だった。両腕と羽を広げ、銀製の台の上に片足立ちで立っているのは、恐らくは踊っている最中だからだろう。妖精の表情は穏やかでありながら情熱的、どう表現すればいいのかは分からないが、無邪気な子供の表情がよく表されており、見ているだけでも心中が熱くなってくる。
 他の呪具の類と同様に微弱ながらも魔力を帯びているが、禍々しい気配は微塵もない。ティレイラは妖精の蝋燭に目を奪われたまま、ウズウズと胸中に広がっていく好奇心を抑えきれずに小さく頬を歪めてしまう。
 何というか‥‥それは遊園地に連れてこられた子供のような顔だった。
 魅力的な遊具を前に、抑えの効かなくなった子供。目前のアトラクションを制覇するまでは疲れ知らずに走り回り、大人を引きずり回す、自らの欲求に素直な無邪気な心が、久々にティレイラの心に湧き上がっている。
(う〜ん、少しぐらいならばれないよね)
 妖精には、埃が全く積もっていない。つい最近になってここに置かれた物だろうが、しかし倉庫に入れるからには、すぐに必要となる物でもないのだろう。倉庫に入れられたまま忘れ去られた品など数知れず‥‥‥‥ここで蝋燭に火を灯したところで、「あれ? これってもう使ってたかしら‥‥」と首を傾げる師匠に「随分と前に使っていましたよ!」と誤魔化すことも出来るかも知れない。
「と言うわけで‥‥点火♪」
 ポッと、ティレイラは指先に炎の魔力を収束させ、小さな炎を灯しにかかる。指先にマッチの炎程度の小さな灯火が灯り、倉庫の中にゆらゆらと揺れる影を無数に作り、そして静かに妖精の体を照らし出した。
(あれ? この妖精、何か掘ってある?)
 指先の炎に照らされ、妖精の体に小さな模様が浮かび上がる。妖精の全身には、足先から髪の末端に至るまで、全身に隈無く細く浅い、微かな模様が刻みつけられていたのだ。
 倉庫にも電灯が灯っていたが、どうやら電球の光では上手く照らすことが出来ないらしい。魔力によって精製された炎を翳されることによって初めて姿を現した模様を見た瞬間、ティレイラの背筋にビリリと微かな悪寒が走り回った。
 それは、ティレイラのこれまでの人生経験が訴える危険感知だった。が、それは余りに遅い。炎を纏った指先は蝋燭の紐に近付き、既に着火は済まされている。
「ん‥‥!」
 ティレイラは指先の炎を消すと、火が灯された妖精の蝋燭から少しだけ間合いを離し、そして注意深く観察する。毒ガスの類が噴出されても大丈夫なように扉を開け、蝋燭に怪しい動きがないかどうか、目に魔力を集中させてジィッと目を離さずにいた。
 そうして、一秒‥‥二秒‥‥三秒‥‥‥‥十秒ほど経過し、ティレイラは怪訝そうに眉を顰めて妖精の蝋燭に近付いた。
 妖精の手の平に灯った小さな火は、何事もなかったかのように揺れている。
 見たところ、灯った炎には不審なところはない。魔力らしい魔力もなく、煙も立たなければ香りもない。妖精自体にも変化はなく、このまま置いておけば静かに溶けていくだけだろう。
 何も起こらなかったことで、ティレイラは安堵すると同時に落胆を覚えてしまう。
 何が起こるか‥‥‥‥好奇心に駆られて調べに掛かったのだが、その結果として何も起こらなければ寂しいものだ。
 ティレイラは溜息混じりに蝋燭の火を消しに掛かる。このまま火を灯したままにして、全部溶けてしまっては師からの叱責は免れない。
 水を掛けて湿気らせるわけにもいかないため、ティレイラは火を吹き消そうと顔を近付ける。
 パンッ!!
 そうして顔を近付けた瞬間、蝋燭から突然蝋が噴出し、ティレイラ目掛けて弾け飛んだ。
「ひゃっ!?」
 顔の近くで突然蝋が弾けたことで、ティレイラは驚いて体勢を崩し、思わず尻餅をついてしまう。幸いにも足下には何も無かったため、怪しいものを踏み付けてお尻を痛めることはない。しかし灯の灯った蝋燭の蝋をまともに浴びたのだ。ティレイラは反射的に「あひゃっ! あつっ!」と慌てて蝋を払い除ける。
 ‥‥‥‥しかし、払い除けた蝋が床に散らばることはなかった。
 まるで自らの意思で食い付くようにティレイラの顔に、腕に付着した柔らかな蝋は、ウネウネと動き出し、ティレイラの体を包んでいく。それを更に払おうとするティレイラだったが、蠢く蝋は衝撃を与えられるたびに逃げまどうように動き回り、その動きを加速させる。
 そしてその間も、妖精の蝋燭からはドロドロとした蝋が吹き出し続けていた。
 蝋燭は周囲に蝋を撒き散らし、ティレイラの体に直接、床に散った物も床の上を這い、足下から包んでいく。それは、さながら火山の噴火のようだった。撒き散らされた蝋は瞬く間に硬化を始め、ティレイラにまとわりついていた蝋も、少しずつ固まり始めている。
「ま、待って待って待ってぇ!?」
 さしものティレイラも、恐怖と焦燥に体が震え、冷静に対処することなど出来なかった。
 両腕を振り回して蝋を払おうと自分の身体を叩き出す。しかし柔らかな肌に痛みが走ることはなく、感じるのは肌の上で固まる蝋の固く、奇妙な感触ばかりである。
 焦る。焦る。焦る。その間にも蝋は固まり続け、足先から膝、腰、衣服の中にまで入り込んで素肌を包み、綺麗にその体を覆い尽くす。衣服も完全に取り込んでしまい、服の模様までそのままに硬化する。
「‥‥‥‥‥‥!!」
 そしてそうなった時には、既にティレイラの体は完全に停止してしまっていた。つい数秒前まで暴れ回っていた両腕も、間接という間接を蝋に覆われた状態では動けるはずもない。全身を余すところなく包んだ蝋は非常に頑丈で、無理矢理に動かそうとしても、指一本も動かない。
 竜族としての力を解放し得意の炎を纏えば或いは脱出も出来たかも知れないが、何もかもが後の祭りだ。冷静さを失いタイミングを逃したティレイラには、もはや抵抗する術など残されてはいなかった。
(うえ〜ん! う、動けないよぉ!)
 涙を流せるのならば、確実にティレイラは泣いていただろう。しかし蝋に顔面を完全に包まれているティレイラには、ただ泣くことすら許されない。
 不思議と意識はあり、息苦しくもないのは魔法の蝋の力なのだろうか‥‥‥‥
 だが、いっそ意識を奪われ昏倒していた方が、ティレイラとしては良かったのかも知れない。
 眠ってさえいれば、どんなお仕置きを受けようとも、記憶に残ることなど無いのだから‥‥‥‥

カランカランカラン‥‥‥‥

 遠くから、店の扉を開く鐘の音。
「ただいま。ティレイラ、倉庫の整理は終わってる?」
 扉の閉まる音と共に、聞き慣れた恐れ敬う師匠の声が聞こえてくる。
(助けてくださいお姉様ぁ!)
 師匠であり姉貴分のシリューナが廊下をこつこつと靴音を立てて歩き、こちらへと真っ直ぐに近付いてくる。そのシリューナに心の中で叫びつつ、しかし心の底では、こっちに来ないようにとも叫んでいる。
 ‥‥‥‥それはこれまでの経験上、拘束されている状態でシリューナと会った場合、高確率で玩具のように扱われると、身に染みて分かっているからだった‥‥‥‥



 店の扉を開けた時から、嫌な予感はしていたのだ。
(‥‥‥‥焦げ臭い?)
 シリューナは店内の廊下を歩き、そして倉庫へと歩いていく。店舗兼住居としても使っている店の中には、人の気配という物がない。基本的には自分一人で使っているのだから、それはある意味当然なのだが、倉庫整理を言いつけておいた弟子が一人居るはずだ。
 だと言うのに、気配どころか返事もないとはどういう事か‥‥‥‥
「ティレイラ? 整理を頑張ってるあなたのために、ケーキなんて買ってきたんだけど‥‥‥‥」
 声を掛けながら倉庫へ向かい、そしてふと、魔力の気配を察知して足を止める。
 微かな煙のような、焦げ臭い香りに混じって魔力が廊下に漂っている。それは霧のように薄く、儚い魔力で、害意のような物は感じられない。
 だが、その魔力はそこにあるだけで異常性を知らせる物だ。そもそも店主であるシリューナが外出している時点で、この魔力を撒き散らしたのは赤の他人か、もしくは――――――――
「‥‥‥‥‥‥」
 がちゃっ。シリューナは魔力を察知した瞬間から押し黙り、そして無言で倉庫の扉を開け放った。
 目に飛び込んできたのは、蝋まみれになった大事な荷物の数々。そして蝋にまみれて固まった、見慣れた弟子の姿だった。
「迂闊にここの物を使わないように言ったのに、本当に懲りないのねぇ」
 蝋燭となってしまった自らの弟子を前に、シリューナは嘆息しながらそう呟くだけだった。
 そこには弟子が蝋燭と化してしまった事への焦燥もなければ後悔もない。何というか、いつもの事だと慣れてしまった感がある。
 そもそも、この倉庫の清掃と整理を任せた時点で、何らかのトラブルが起こるであろう事は予想していたのだ。扉を開けたら弟子が蝋燭になっていました、と言うのでは、まだ驚くには値しない。
「この蝋燭を使ったのね。確かこれは‥‥‥‥そうね。一ヶ月ぐらい前に、預かった物だったかしら?」
 シリューナは微かに熱を持っている妖精の蝋燭を手に取り、微かに首を傾げた。蝋燭からの蝋の噴出は既に止まっており、火が灯される前の綺麗なままで残っている。
 この蝋燭は、一ヶ月前、古馴染みの蝋燭店の店主から預かった物だ。たかが蝋燭に専門店など‥‥と思うかも知れないが、蝋燭の姿形は千差万別。更に蝋に香草や薬品を溶かし込むことで様々な効果を生み出す物だ。
 場合によっては危険極まりなく、シリューナのように魔法の心得のある者が作成した曰く付きの物もある。シリューナの馴染みの蝋燭店は、そうした品を扱う裏通りの店だった。
「ええっと、確かこれ、どんな効果か分からなかったのよね」
 蝋燭店から預かった蝋燭は、どこぞの魔法使いが死去した際に流出した曰く付きの蝋燭らしく、その効果が分からないから鑑定してくれと頼まれた物だった。
 しかし魔導具の類は、基本的に使用してみなければその効果を調べることは出来ない。道具に籠められた術式を読み解き、その起動方法や効果を調べ上げるのは非常に手間が掛かり、下手に扱えば暴走することもあり得る。
 タチの悪いことに、使用した者に呪いを掛けるための罠のような魔導具もあるため、こうした物の鑑定にはシリューナも乗り気にはなれなかった。ましてや鑑定物が蝋燭である。基本的に使い捨ての蝋燭を鑑定するのに、使用するというのも気が引けた。
 そうこうするうちに面倒臭くなり倉庫に放り込んでいたのだが、どうやらその蝋燭に火を灯してしまったらしい。念のため魔法を使いティレイラの体をスキャンする。‥‥‥‥命に別状はない。蝋にまみれているが、魔法の蝋のお陰で生命活動に支障はなく、ただ体が動かなくなっただけらしい。
 解呪の術式は‥‥‥‥検索完了。魔法の蝋に組み込まれた術式を読み解くことで解呪の方法を思考し、そして解を導き出す。どうと言うことはない。全身を満遍なくゆっくりと熱してやれば、それだけで元に戻るようだ。
 どうやら、この妖精の蝋燭は火を灯した者を拘束するための道具か、もしくはただの嫌がらせの品だったのだろう。命を奪われることはないが、シリューナは引っ掛かったのが自分でなくてホッと胸を撫で下ろす。
「さて、この子、私の声が聞こえているのかしらね」
 シリューナは、コンコンとティレイラの固い頭を軽く叩く。
 反応らしい反応はない。しかしこの蝋は、命や意識を奪う類の物ではない。ならば蝋燭へと変えられたティレイラも、まだ意識を残していることになる。
単純に耳を塞がれて聞こえない、と言うこともあり得るが、基本的に外界からの刺激は届くはずだ。
 実際にシリューナに声を掛けられたティレイラの体が、ビクリと反応する気配がある。
「この倉庫の物は、勝手に使わないでね。絶対に使わないでね。絶対に絶対よ? って念を押して言っておいたのに、使ったのね。ふふふふふ」
 コンコンとティレイラを叩きながら、シリューナは薄く笑っている。
「何度言っても言いつけを守れないのなら‥‥‥‥そうね。やっぱりお仕置きをしておかないと、ね♪」
 見るからに上機嫌。声も体も、僅かながらに弾んでいる。
 まるで玩具を与えられた子供のような雰囲気だ。年甲斐もなく目を輝かせ、どんな仕置きにしようかと思案する顔など‥‥‥‥正直気持ち悪い。
「ていっ!」
 ばごん!
 お仕置きの方法を考えていたシリューナは、唐突に蝋燭へと変貌したティレイラを殴り付けた。
「今、何か失礼なことを考えたでしょ?」
 蝋に固められていなければ、ティレイラは全力で首を横に振っていただろう。しかし蝋燭となったティレイラには、そんな動作すらも出来なかった。
 蝋に守られているために痛みは感じないが、もしもそのまま砕かれていたらと思うと‥‥‥‥怖くて悲鳴を上げたくなる。
「そうだわ。こうしましょう」
 と、そんなティレイラの恐怖を察して溜飲が下がったのか、シリューナは何かを思い至ったらしく指を立てて提案した。

‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥

「本当に良いのかい?」
「ええ、もちろんです。鑑定に時間を掛けてしまいましたから」
 オホホと笑いながら、シリューナは古馴染みの蝋燭店店主に笑いかけている。対する店主は、木製の古いカウンターの上に乗せられている妖精の蝋燭を観察しながら、微かに苦笑いを浮かべていた。
「そりゃ、うちとしては客引きになりそうだから良いんだが‥‥‥‥あの子はあんたのお弟子さんじゃなかったか?」
 そう言い、店主はカウンターの前に置かれている人間大の蝋人形に目を向ける。
 まるで何かに襲われ、恐れおののいているようなポーズで固められている蝋人形‥‥‥‥いや、指の先に小さな紐が付いているところを見ると、人間大の蝋燭なのだろう。
 言うまでもないことだが、この蝋燭は魔法の蝋によって固められてしまったティレイラである。
 魔法によって運び込んだこの蝋燭を、あろう事か、シリューナは蝋燭店の店主に貸し出してしまおうとしていた。
「ええ、私の自慢の弟子ですよ」
「それを余所の店に渡そうとか‥‥鬼か? あんた」
「あら、これは私の私物を勝手に使った罰ですから。厳しくないといけません」
 悪魔の笑みとは、今のシリューナの表情を言うのだろう。
 店主は肩を竦め、深く突かずにいることが懸命だと判断した。
「楽しんでいるように見えるがなぁ」
「ふふふふふ。まぁ、その蝋燭に火を灯すとどうなるかの例として、置いておいてくださいな。ちなみにレンタル料は、おまけしてこれぐらいで‥‥‥‥」
 そして商談。互いに、研究者でありながら商売人だ。無料で大切な弟子を余所に預ける師匠でもない。
「一週間、百円でどうかしら?」
「いや、十円で」
「五十円」
「七十!」
(お姉様ぁ! いくら何でも安すぎます‥‥‥‥って言うよりも助けてくださいよぉぉぉ!!)
 自分の隣で行われている商談に、ティレイラは涙を流して抗議する。
 ――――しかし蝋燭の心情など、誰が察してくれるのだろうか。
(くすくすくす)
 小さな笑い声が、店内に響いている。
 誰にも気付かれることもなく、三人を眺めて、小さな声が笑っている。
(くすくすくすくす)
 妖精の蝋燭は、楽しそうに、自らの作品を愛で続けていた‥‥‥‥



Fin