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<東京怪談ノベル(シングル)>


みなも、ただいま訓練中

「んー‥‥毎日パソコンと向き合ってると結構疲れるなぁ」
 大きく伸びをしながら海原・みなもが呟く。彼女は現在『LOST』の異常調査の為に毎日のようにプレイを続けていた。
 何故か無意識のうちに感じたこと――身を守る為にはLOSTに慣れてキャラクターを強くする、これが自分を守る方法になる――そう感じた海原は毎日のようにログインして武闘術師の『みなも』のレベルをせっせと上げていた。
 LOSTをプレイしていく上で分かった事。それはみなもが選んだ武闘術師には攻撃スキルはあまり多くないけれど、補助スキルが多いと言う事。武闘術師にも色々なスキルパターンが存在するので一概には言えないかもしれないけれど、みなもが選んだ『気孔術・獣』には補助系のスキルが多いように感じていた。
「あ、今日の森は雨が降ってる‥‥雨の色が黄色だったら酸性雨で雨に打たれるたびにダメージを受けます、か」
 攻略サイトを見ながら海原が呟き、画面に視線を向けると黄色ではなく普通の雨だった。酸性雨じゃないから大丈夫だろうと海原はみなもを操作してフィールドを歩く。
 そこで一度立ち止まり『獣の耳』を発動させる。これは突発イベントや戦闘に入った際に相手からの奇襲を受けにくくするというスキルで、先日覚えたばかりのものだったりする。
「モンスターとプレイヤーがいっぱいいますね」
 よし、頑張ろうと海原は呟きモンスターやプレイヤーに接触する前に『獣の鼻』を使用した。獣の鼻と言うスキルは敵を倒した後のアイテムドロップ率を上げるスキルであり、プレイヤーには戦利品と言う形で1つアイテムを奪う事が許されているので効果はないけれど、確率でアイテムを落とすモンスター達には有効なスキルだった。
 せっかく『獣の鼻』を使用したのだから、と海原はみなもをモンスターに接触させて戦闘を開始する。ある程度戦闘にも慣れて来たみなもは『獣毛』を使用して防御力を上昇させる。その次のターンでモンスターが攻撃を仕掛けてきたけれど、みなもはひらりと攻撃を避け、ノーダメージのままだった。
「えっと、ここで『獣の爪』を使用して‥‥あ、攻撃受けちゃいました‥‥」
 攻撃力を上昇させたみなもはモンスターからダメージを受けるが、かすり傷程度のダメージであり、海原は傷に構う事なく『攻撃』にカーソルを合わせてクリックする。既にこの初心者フィールドのモンスターには苦労する事がなくなったのか一撃で退治する事が出来た。
「ふぅ、そろそろ次のフィールドに進んでも大丈夫かな?」
 だがモンスターには苦労しなくなったけれど、プレイヤー同士の戦いはそうは行かないかも、と考えて海原はもう暫くこのフィールドでレベル上げをしようかなと心の中で呟く。「あ、アイテムドロップしてる」
 経験値と所得金額が表示されたあと『鋼の刃を入手しました』という文字が表示される。攻略サイトを見ると、先ほどのモンスターが落とすレアアイテムではあったけれど武闘術師のみなもには装備が出来ないという武器だった。
「売れば結構なお金になるかな?」
 入手した後に呟き、他のプレイヤーとの戦闘を行う事にした。武闘術師であるみなもが使用できない武器などを入手するのだから、他のプレイヤー達も使用できないアイテムなどを持っている可能性が高いと感じたからだ。
 そしてみなもは1人のプレイヤーに戦闘を申し込み、戦闘を開始する。相手は魔界剣士であり、物理攻撃の高さは恐らく現在公開されている職業の中で一番の職業だろう。
「気を抜けば‥‥きっとやられてしまう」
 海原は小さく呟き『獣毛』で防御力を上昇させる。そしてそれと同時に相手からの攻撃を受け、予想以上にダメージを受けている事に驚く。
「防御力を上昇させてこのダメージ‥‥獣毛が間に合わなかったと思うとゾッとしますね」
 海原は減少したヒットポイントを見ながら苦笑する。しかし先ほど受けた攻撃は相手からの必殺技だったらしく、使ったら1ターン動けなくなるというリスクがあったようだ。
 みなもは回復を行い、その次のターンで攻撃を行い、相手へと攻撃を行う。
 このやり取りがそれから7ターンほど行われた後、瀕死の状態に陥りながらも戦いに勝利したのはみなもだった。
 相手からの戦利品を選ぼうとしていると『鋼の刃探しています』という文字がステータス欄に表示されており、海原は少し考える。
 そしてアイテムを選んだ後に相手を呼び止める。
「鋼の刃持っています、もし良かったら情報と交換という形にしませんか?」
 そう相手に話しかけると「いいよ☆ っていうか鋼の刃持ってるんだ!? 俺なんかアレを手に入れようと頑張ったけど全然でなかったのに(笑)」という言葉が返ってきた。
 そしてみなもは先ほど手に入れた『鋼の刃』を相手に渡すと「何の情報が欲しいの?」と相手からのメッセージが表示される。
「LOSTの闇についての情報、噂とかでも何でもいいんです」
 すると相手は暫く考え込んだ後に「そういえば、闇クエストをクリアすると全てを失うけど望みのものが手に入るって聞いたことがある」と言葉を返してくる。
 みなもがどういう意味なのかと問いかけても「そこまでは分からない。聞いただけだし(^^;)という文字が表示される。
「そうですか、ありがとうございました」
「こっちこそ鋼の刃ありがとう! あんまりたいした情報なくてごめんね」
 みなもは「いえいえ」と言葉を返し、フィールドから出る。
「貴方たちは何も知りませんか?」
 みなもは『獣の言葉』と使用して動物達に問いかける。獣の言葉は動物と会話できるというスキルであり、時にはこういった動物達が重要な情報を持っているという事も攻略サイトに書かれていた。
 だけど動物達から返ってきた言葉は「分からない」「知らない」という言葉だけであり、情報を得る事は出来なかった。
「あ、このスキルは結構役に立つかも」
 海原が呟いてみたのはヒットポイントのメーター。先ほど『獣の舌』というヒットポイントを僅かだけど回復するスキルだ。恐らくこれ以上の回復を行うスキルも存在するのだろうが現在はこれで十分だと海原は思う。
「ようやく、慣れて来たかな」
 小さく呟き、海原は小さく欠伸をしながらログオフしてパソコンを閉じたのだった。


END


―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

――――――――――

海原・みなも様>
こんにちは、いつもご発注いただきありがとうございます!
LOSTの方ももう少ししたら新シナリオが出る予定ですので、ご興味がありましたらご参加をお待ちしています。

それでは、今回は書かせていただきありがとうございました!

2010/5/1