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<PCシチュエーションノベル(グループ3)>


+ 勝利の女神は誰を愛すか +



 キャットファイト試合会場控え室。
 選手の一室にて彼女達は本日の衣装へと着替える。最初に着替え終わったのはルナ・バレンタイン。長い銀髪に青い瞳が美しい、凹凸も素晴らしいボディーラインを持つ女性だ。彼女は今、銀ラメのハイレグレオタードとマスクを身に纏い全身鏡の前に立ち、己の姿を観察している。股に食い込む布地がいやらしくあるも、彼女はそれを全く気にしていない。


「ふぅん、この衣装は涼しくて良いわね。ちょっと露出度が高い気がするけれど、まあいっか。ミネルバの方は着替え終わった?」
「もう少しよ。ほら、このお揃いのマスクを付ければ……ね? あら、私達にとても良く似合っているわ」


 赤い髪に青い瞳、ミネルバ・キャリントンは赤のお揃いのハイレグ衣装を身に着ける。
 そしてルナの隣に並べばとてもセクシーで妖しげな雰囲気を纏う美女二人が出来上がる。マスクをしているからこそ、素顔ではないからこその開放感。それはまさに自分自身が晒されている証でもあった。


 ミネルバがルナの頬に手を添える。
 ルナは一度瞬きをしてから応えるようにミネルバの額に額をくっつけた。
 今回このキャットファイトに誘ったのはルナ。それに応えてくれたのは親友であるミネルバだった。
 白の女神と赤の女神。
 白の女神――ルナは唇をやんわりと開く。


「あたし達のリングネームはあたしが『アルテミス』。そしてミネルバ、貴女が『アテナ』よ。チーム名は『ツイン・ガッデス』。あたし達は今から二人の女神になってリングに光臨するのよ」
「ふふ、それは魅力的。思い切り戦いに行きましょう」
「慣れてくるとね、本当に愉しいんだから! ミネルバにもあの快感味あわせてあげたいなぁ」
「今日味わうから大丈夫よ。そろそろ時間ね」
「今日はよろしく、アテナ」
「ええ、こちらこそ。アルテミス」


 時計とスタッフの呼び声に誘われ二人は試合会場へと足を運ぶ。
 すでに会場には三百人ほどの観客が詰め込まれ、異様なほどの熱気に満ちている。以前の試合よりも異常なテンションの高まりにルナは一瞬違和感を覚えるが、今それを気にしている時間は無い。


「赤コーナー! アルテミス、アテナの二人が組んだ麗しき女神チーム、ツイン・ガッデース!!」


 マイクを通して二人の紹介が響き、それと共に駆けながらリングへと上がる二人の女神。
 彼女達は観客達の視線と妖しげな声援をその身に受け、露出狂にも似たぞくりとした快感を得る。この瞬間、彼らが見ているのは自分達だけ。両手を振りながら、胸をわざと挑発するように揺らしながらもマスクに隠されていない唇が弧を描く。
 やがて一旦、熱が引くと今度は青コーナーの紹介がなされる。
 だが、そこに現れたのは予定の対戦相手二人ではなく――。


「え、うそ。ちょっと、ミネルバ見て。対戦相手が違うわ」
「あれは、誰?」


 黒のレオタードとマスクを着た二人の女性。
 ルナとミネルバにも負けない素晴らしい肉体美を持つ二人はそれでも堂々とリングへと上がってくる。一人は長く美しい黒髪をその背に流した女性、もう一人は茶色の髪を後頭部で軽く結った女性であった。
 二人は驚愕する。
 マスクで顔を隠されているものの、その二人に見覚えがあったからだ。


「嘘……まさか貴女――ローザ?」
「それに後ろにいるのは麗香……」
「ふふ、来る筈だった二人は控え室で寝てもらっているわ。私はレアー、彼女はテミスよ。ティターンズとでも名乗りましょうか?」


 相手二人の正体に気付いたルナ達は目を丸める。
 黒髪の女性――ローザ・シュルツベルクはともかく、月刊アトラス編集部編集長である麗香はこんな場所に取材以外で参戦する人間だとは到底思えないからだ。ローザの後ろに控える様に立っている麗香、いやテミスの表情を見ればどこか虚ろで、それによりミネルバは彼女の異変に気付く。


「ローザ! 貴女薬を使ったわね!?」
「あら、その名前はリングではご法度よ。さあ、戦いましょう。今日はね、貴女が私の下で醜く伏せるのを期待しているの」


 カン、と試合開始のゴングが鳴り響く。
 ここまで来てしまったら戦うしかない。ローザは薬学の天才で、今も何か会場に仕掛けを仕込んでいるかもしれないのだ。だが逃げることなど二人には出来ない。なぜならばすでに二人の女神はリングに上がり、そして試合は始まってしまったのだから。


「さあ、テミス。思う存分アルテミスと戦ってきて。そして観客を楽しませてあげましょう?」


 彼女がそう口にした瞬間、後ろに控えていた麗香ことテミスが素早い動きでアルテミスへと向かって駆け出した。そのあまりにも速い動きにアルテミスは身動き一つ出来ず、簡単に拘束されてしまった。首に腕が回され、背を反らし胸を強調するように呼吸を締める。
 豊満な胸が上下に揺れる度に観客達は「おおお!!」を声をあげ、リング付近の人間などもっと間近で見ようと近寄り始めた。当然スタッフに制されるが、そのスタッフ達の目もどこか異様だ。普段よりも興奮状態にあり、下手すれば観客同様リング上へと視線を釘付けにし、己の職務を忘れてしまいそうなほど勢いである。


「アルテミス!!」
「アテナ。貴女の相手はこのわ、た、し。ほら余所見なんてしている暇なんてないことよ」


 アルテミスの助けに走ろうとしたアテナへと拳を繰り出してきたのはローザこそレアー。
 そのパンチを寸でのところで避け、女豹のように身を屈ませれば今度は薄い布地で隠された柔らかなヒップが観客の方へと向く。その淫らなポージングに観客達はまたも触発され、中には卑猥用語を飛ばす者も出てきた。


 ……異常だ。


 アテナは目を細め、敵を見据えながら考える。観客全員に何か仕掛けられるものは何か――そしてレアーの後ろの見えたある機械を見つけた。
 それは空調。この場の気温を調節する大切な機械、だけど上手く仕掛ければこの場全員に何かしらの薬を嗅がせる事が出来るもの。それを試合前にあらかじめ仕込み、観客達をトリップ状態に追いやっていたのだとしたら納得出来る。


「あら、気付いたの。偉いわね、さすがアテナってところかしら」
「観客を巻き込むなんて卑怯よ!」
「ああっ、そうね。確かに卑怯かもしれないわ。でも私にとって手段の一つに過ぎないの。出来ることは全力でした方が後悔は少ないでしょう? それに、そんな事もうどうでも良いじゃない」


 その言葉が言い終わる前にレアーは動く。
 麗香に拘束されたアルテミスの顔に手を当て呼吸を塞ぐと、そのまま一気に拳を腹部に叩き込んだ。
 どさ……と物音が聞こえ、アテナが振り返れば其処にはアルテミスがぐったりと脱力しリングに伏している姿があった。意識はあるのか、ぼんやりとした瞳がアテナとレアーを見ている。だが、その症状は戦闘によるものではなく、明らかに何かしらの薬を嗅がされた事を示していた。
 ひらひらと口を押さえていた手を振って何かを散らすレアーの様子がそれを確信付ける。


「ほら、貴女のパートナーが堕ちたわよ」
「っ!!」
「行くわよ、テミス。二人掛かりならもっと観客を楽しませてあげられるし――そ、れ、に、私達も楽しみましょう」


 一対二の戦闘は明らかにアテナ側には不利だ。
 それでも右へ、左へ、時には伏せて飛んで攻撃を避ける。元軍人でもあるアテナだからこそ動けるが、これが常人ならば即捕まっていただろう。だが体力というものは限界がある。それは彼女にとって同じこと。幾ら鍛えられているとはいえ不死身ではないのだ。
 一瞬、血圧が上がり頭が白むような感覚に襲われた。その瞬間をテミスは逃しはしない。


「ッ――ぐ!」
「テミス、有難う。そのまま確保しておいてね」


 片手一つで両の手を後ろに回され、かつ髪の毛をむんずと掴まれ顔を強制的に上げさせられる。
 アテナは屈辱を感じ表情を苦く歪めるも、それは逆効果。レアーは赤い舌で唇を舐めて幸せそうに恍惚な笑顔を浮かべると、抵抗出来ないアテナの頬をその指先で撫でた。


「ねえ、ここまで露出が高いなら裸体でも同じだと思わない?」
「なっ!?」
「そうねぇ、まずはそのむっちりした綺麗な脚を皆に見てもらいましょうよ。貴女そういうの好きだものね」


 言いながら右の網ブーツの紐を外し、するりと脱がす。
 ストキングもなにも着用していない生肌が外気に晒された。足の親指まで観客達に見られるのは流石のアテナとはいえ精神的に苦痛を味わう。それが屈辱を味あわせる目的であればなおの事。
 飛んでくる声の中には「もっとやれー!!」「脱がせー!!」と更なる辱めを要求するものも聞こえてきた。唇を噛み抵抗を試みるがルアーに操られているテミスの力は抜けない。


「テミス、彼女を座らせて。ああ、もちろん脚は開かせてね」
「はい、レアー」
「止めてぇーっ! いや、いやっ!」


 命令に忠実に従うテミスは今の体勢から自分も同様に座るとアテナの足首に自身の足を絡ませ、そのまま左右に広げさせる。
 ハイレグスーツを身に覆っているとはいえそれは女性を辱めるには十分すぎる程のポーズ。顔に熱が集まり赤く染まるのをアテナは感じた。
 観客達のテンションが最高潮に達する。彼らは期待していた。これ以上の――陵辱にも近いものを。
 そしてレアーもそれを叶えようとアテナの首に手を添える。胸を支えているチャックを下ろす音だけがアテナの耳に恐怖対象として聞こえてきた。


「止めて……っ、ローザ、止めなさい!」
「その顔がもっと歪むのが見たいわ。さあ、その牛のような胸を見てもらいましょう。その次はそのハイレグを外し――」


 アテナを辱めにあわせているという快感を味わっていた彼女の声が急に止まる。
 次の瞬間、レアーとアテナの間に空気を裂く音が入った。咄嗟の判断でレアーは身を引く。そしてマスクの下で目を大きく見開いた。


「そんな! 常人の三倍の量を使ったのに!?」


 攻撃してきたのは先ほどレアーによって薬を嗅がされたアルテミスだった。
 彼女はまだ意識がはっきりしていないのか、額に手を当てて首を振っているものの瞳だけはアテナを拘束しているテミスを捕らえ、そのまま一気に引き剥がしにかかる。
 薬を使われているとはいえ疲労しているのはテミスも同じ。
 アテナを無事救出すると、その足にブーツが履かされていないことに気付きため息を吐く。


「随分危なかったようね」
「ええ、本当に――ねえ、アルテミス。悪い子にはお仕置きをしなきゃいけないと思わない?」
「もちろんよ」


 アテナはもう一方のブーツを自ら脱ぐとリングの外へと放り投げる。
 動きやすくなったアテナはもう二人を、いやレアーを許す気などなかった。まず薬と暗示によって操られているテミスへと二人は駆け出す。アルテミスが両脇に手を差し入れ拘束すると、アテナが一発鳩尾にパンチを繰り出し気絶させる。
 ごふっ、と醜い音と僅かな液体が散ってテミスはリングに膝を付き、そのまま倒れた。


「さて」
「次は」
「「そちらの番ね」」


 即席コンビとは違い、その息の合った連携プレイに流石のレアーも己の身の危険を感じた。
 じりじりと寄ってくる彼女達に舌打ちを一つ鳴らすと、高く飛び上がりそのままロープを超えてリング外へと飛び出す。


「ふんっ、今日はここら辺で見逃してあげるけど、次は覚えてなさいよっ!」


 あくまで不敵な捨て台詞を残しながらもレアー……いや、ローザはその場を後にする。彼女の黒い髪の毛がなびいて去っていく様子を二人は見ながらやがて、ふぅ、と息を吐き出した。
 そしてその瞬間、リングに鳴り響く勝利の鐘の音。


「勝者、ツイン・ガッデス!!」


 審判が二人の女神の腕を片手ずつ掴み、上へと上げさせる。
 観客達の歓声に包まれながら彼女達はやっと微笑を見せた。


 が。


「……な、何よ、これーっ!!」


 ほぼ同時に正気を取り戻した麗香の声が響いたのも――ある意味お約束。


 余談では有るが、後日誰かがキャットファイトの団体に迷惑料をたっぷり支払ったとの事。
 それを聞いたミネルバとルナの二人は、また次もありそうな予感がして思わず遠い目をしたとか。








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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7873 / ルナ・バレンタイン (るな・ばれんたいん) / 女性 / 27歳 / 元パイロット/留学生】
【7844 / ミネルバ・キャリントン (みねるば・きゃりんとん) / 女性 / 27歳 / 作家/風俗嬢】
【8174 / ローザ・シュルツベルク (ろーざ・しゅるつべるく) / 女性 / 27歳 / シュルツベルク公国公女/発明家】

【NPCA036 / 碇・麗香(いかり・れいか/プライベート) / 女性 / 28歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集長】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、お久しぶりです。
 またの発注有難う御座いました! ちょっとセクシー路線ということでこういう形で表現させて頂きました。ライバルに対してちょっかいをかけるということなので、じりじりと追い詰めていく様子が伝わればいいなとこっそり。