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<東京怪談ノベル(シングル)>


武闘術師・みなも

「‥‥やっぱり治ってない‥‥」
 海原・みなもは朝起きて自分の腕を見てため息混じりに呟いた。その視線の先にあるのは自分の腕。LOSTの異変によって変化したと思われる獣のような腕だった。
 最初はその腕に慣れず、学校に行っても手に持った物を落としてしまったりなどしていたけれど、この腕になってから数日が経過した頃にはだいぶ慣れてきて、自分の腕のように使えるまでになっていた。
(「何となく、武闘術師の武器が少ないのが分かったような気が‥‥」)
 自分の腕を見ながら海原は苦笑気味に心の中で呟く。たとえ使える武器が少なくても、スキルでキャラクター強化、頭を悩ませていた魔法防御に関しても『魔獣の衣』で補強する事が出来て、多少の安心は出来た。
 だけど問題点が無いわけでもなかった。色々とクエストについて調べてみたところ亀のような物理防御力が極めて高いモンスターもいると記されていた。
 つまり、これから先のクエストをクリアしていく為には魔法攻撃力も上昇させていく必要がある。だけど『みなも』は魔術師タイプではないので爆発的に魔法攻撃力を上昇させる事は出来ない。
 でも武闘術師は『気孔術』を使う事が出来るので、己の気を高めて魔法のように放つ技がどの『気孔術』の中には存在する。勿論みなもの『気孔術・獣』にも気孔破は存在する。それに他の『気孔術』には上級スキルで防御力を無視して攻撃できる技も存在すると聞いていた。
「えぇっとクエスト一覧とスキル取得を照らし合わせてみると‥‥」
 海原は攻略サイトでスキル取得の出来るクエストを見てみたけれど、防御力無視の攻撃スキルは確かに『獣』にも存在した。
 だが、そのスキルを取得するにはレベルが足りず、かなりの上級スキルだと言う事が分かった。
 しかし属性が『魔法』になる気孔破を取得できるクエストは今のレベルでも行う事が出来て、海原はそのクエスト内容を確認する。
 病気の子供の為に森に赴き、指定された薬草を持ってくるだけ――という比較的簡単なクエストに思えたのだがボスが出現するマークが表示されており、ボス戦がある事が伺えた。
「まぁ、簡単にスキルなんか手に入るわけないですよね‥‥」
 苦笑しながら海原は呟き、クエストを受注してフィールドを森へと変えたのだった。

 スキルも豊富にそろえ、みなものレベルもそれなりに上がった今となっては森に巣食うゴブリン程度のモンスターなど相手になる筈もなかった。
「ふぅ、この程度のモンスターなら傷を負う事なく倒せるようになりましたね」
 海原は画面上で無傷でゴブリンを倒したみなもを見ながら呟く。ゴブリンは一番弱いモンスターではあるが、無傷で倒せるようになっている事に嬉しさを感じずにはいられなかった。
 しかし、森の奥に進むに連れてモンスターもゴブリンではなく鳥系のモンスターに変わっており、苦戦する事はなかったけれど流石に無傷で倒せるとまではいかなかった。
(「‥‥そういえば、ログイン・キーって自分の意思でも使えるみたいですけど――この前みたいにいきなり発動する条件って何かあるんでしょうか‥‥」)
 海原はパソコンの横に置いてあるログイン・キーを見ながら呟く。恐らく何かしらの発動条件はあるのだろうが、それが一体どんな条件なのか、今の海原には分からなかった。
「あ、森の最深部ですね‥‥」
 フィールドを見るとその奥は存在せず、きらきらと光る薬草を護るかのようにして巨大な鳥モンスターが行く手を阻んでいる。鳥モンスターを退治すれば薬草が手に入り、クエストクリアになると言う事なのだろう。
 みなものヒットポイントなどを確認し、海原は鳥モンスターと接触して戦闘を開始する。みなもはスキルを使用して攻撃力や防御力などを上昇させ、鳥モンスターの攻撃に備える。スキルで防御力を強化しているはずなのに、受けるダメージはそれなりに大きく、みなもは回復をするばかりで中々鳥モンスターにダメージを与える事が出来ないでいた。
「あ――っ!」
 攻撃されては回復、と言う行動を数ターン繰り返していると鳥モンスターからのクリティカルヒットを受けてしまい一気に瀕死に陥る。行動ターンは相手の方が早い、だから次のターンで確実にやられてしまう――そう考えた時。
「えっ!」
 ログイン・キーが突如激しく輝き始め、あの時のようにみなものステータスに変化をもたらした。ステータス欄に『無限&無敵』と表示され、全ての能力が無限表示になっていた。
「まさか‥‥ログイン・キーの発動条件は‥‥」
 みなもが瀕死に陥った時、それも負ける事が確定している時なんじゃないか、と言う予想が海原の頭に過ぎる。その証拠に今のターンでやられているはずだったのにログイン・キーのおかげでそれを免れている。
 まるで、負ける事を許さないかのように。
「‥‥まさか‥‥」
 全ての表示が無限になったと言うこともあり、鳥モンスターを楽勝で退治する事が出来て、目的の薬草を入手する。
 その薬草を依頼人に届けて、みなもは魔法属性の『気孔破・獣』のスキルを入手する事が出来たのだった。
「あの時、感じたこと――あれは間違いじゃなかった。強くならなくちゃ。ログイン・キーから自分を守る為に、強くならなくちゃ‥‥」
 先ほどのログイン・キー使用で両方の二の腕までが獣化した腕を見て、海原は小さく呟いたのだった。


END


―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

――――――――――

海原・みなも様>
こんにちは、いつもご発注いただきありがとうございます!
今回はログイン・キー^発動条件の内容でした。
内容の方がいかがだったでしょうか?
本編第3話も今月中に公開予定ですので、興味がありましたらご参加くださるとうれしいです。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました!

2010/5/9