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<東京怪談ノベル(シングル)>


ぷにぷに肉球に癒され、特訓中

「はぁ‥‥」
 海原・みなもは今朝もため息混じりに自分の両腕を見る。もしかしたら治っているかもしれない――という淡い期待を胸に抱かせながら毎朝、起きると同時に両腕を見るのだが相変わらずの猫の手。
「‥‥忙しい時には猫の手も借りたいと言いますけど、こんな形では借りたくないですね‥‥」
 二度目のため息を吐きながら海原は寝床から起きて、顔を洗って歯を磨く為に洗面所へと移動する。考えてみればこの腕の使い方も上手くなったものだ、と海原は心の中で呟く。
(「それにしても、それぞれのタイプのキャラクターにレベル上げに適したフィールドがあるなんて知らなかった‥‥」)
 先日、瀬名・雫と会った時に【狩場】と呼ばれる場所について教えてもらった。みなもは武闘術師、スキル傾向は獣。このタイプのキャラクターがレベル上げをしやすいフィールドが存在するのだと瀬名は海原に教えていた。勿論、これは武闘術師だけに限らず他の職業にも適した場所があるのだと言う。
「あ、そろそろ家を出ないと‥‥」
 自分の両手の肉球をぷにぷにと触っていたせいか、準備に予想以上の時間がかかってしまい、海原は少し慌てて家を出て、この前瀬名と待ち合わせたネットカフェへと向かいはじめたのだった。

「おっそーい!」
 待ち合わせ場所のネットカフェへ行くと、既に瀬名は到着していたみたいで壁に背中を預けながら腕組みをしており、冗談交じりに怒った口調で海原に言葉を投げかけた。
「すみません。ちょっと準備に時間がかかってしまって‥‥」
 苦笑しながら海原が謝ると「かくいうあたしもついさっき来たんだけどね」と笑って瀬名も言葉を返してきた。
 それから海原と瀬名は2人部屋を借りて、それぞれLOSTにログインしてキャラクターを起動させる。
(「このゲームに関わったおかげで結構大変な目にあってるんですよね‥‥」)
 海原は心の中で呟く。異形と化してしまった両腕。恐らくゲームを進めていく上で変化してしまう部分もあるだろう。13歳の少女が抱えるには物凄く大きなものになってしまっているのだ。普通の少年少女ならば気が狂っていてもおかしくはない事態なのだ。それなのに海原は気丈にも前向きに考えている――けれど、やはり不安は残り、恐怖が彼女を覆う事もある。
(「大丈夫、大丈夫、きっと‥‥」)
 海原は自分の両手の肉球を触りながら自分を落ち着かせるように心の中で呟き、小さく深呼吸をする。
「どうしたの?」
 突然黙って俯いてしまった海原を心配して瀬名が話しかけてくる。
「いいえ、何でもありません」
 少し困ったように笑いながら海原は言葉を返して視線を画面へと戻す。
「そういえばみなもちゃんは猫系統なんだね。あたしの知り合いは犬系統の武闘術師なんだよ。獣スタイルにした人ってランダムで獣化の系統が決まるらしいから。猫と犬系統は人気だって聞いたよ」
 瀬名の言葉に「へぇ、そうなんですか?」と海原は言葉を返す。
「うん。獣系統の中には猪とか豚とか牛とかもいるらしいから」
 瀬名の言葉を聞いて『みなも』の獣スタイルが猫であってよかったと心から海原は思った。みなもの変化が海原自身にも影響しているのだから、もしみなもが豚や牛などの獣になっていれば、この猫の手となっている両腕も豚や牛になっていたはずだから。
「あ、いたいた!」
 瀬名の後ろをついていくと、とある草原フィールドに到着して瀬名の知り合いの武闘術師が待っていた。恐らく彼女が瀬名の言う犬系統の武闘術師なんだろう。ステータス欄を見るとかなりの高レベルのキャラクターである事が伺える。
 瀬名の知り合いの武闘術師が言うには、猫系統の武闘術師のエフェクトは可愛い系が多く犬系統にはどちらかと言えばカッコイイ系が多いのだと言う。
「機動力などは猫系統のほうが有利、ですか」
 他にも色々と話を聞いた限りだと犬系統は攻撃力などのスキルが多く得られ、猫系統は素早さなどのスキルが多く効果を得られるのだとか。
「それじゃ、此処でちょっとレベル上げしてみる? あたしも手伝うし」
 瀬名が海原に言葉を投げかけ、草原フィールドに巣食うモンスターとの戦闘を行う事にした。
「あ、その鳥モンスターには物理攻撃が効かないから気をつけてね」
 瀬名が指差したモンスターを見る。海原は今まで見た事がなかったモンスターであり、物理攻撃が効かない事も知らなかった。
「‥‥と言う事はこの前覚えた、気孔破・獣を使うしかないですね‥‥」
 海原は呟きながら、カーソルを『気孔破・獣』にあわせてクリックする。すると画面上の海原が手を前にかざして大きな光の玉を作り出して、それを敵に投げつけるという動作を見せた。ハートマークが飛び散り、どちらかと言えば確かに可愛いエフェクトがかかっている、と海原は技を繰り出すみなもの姿を見て心の中で呟いたのだった。
「そういえば、さっきの子も言ってたんだけどもうちょっとレベルあげていけば防御力と攻撃力を1ターンで上昇させるスキルとかもあるみたいよ。両方を1ターンで上昇させるわけだから得られる効果は少し小さいみたいだけど」
 瀬名の言葉に「へぇ、そんな便利なスキルがあるんですか‥‥」と海原は言葉を返す。
「でも、もうちょい先のことになると思うよ〜」
 瀬名の言葉に「便利なスキルですからレベルも相当上げなくちゃならないんでしょうね」と言葉を返す。
「まぁ、とにかくクエストを順調にクリアしたいならレベルを上げてく事。これしかないね」
 瀬名の言葉に「確かに」と頷きつつ、武闘術師に適したフィールドで戦闘を繰り返し幾つかレベルを上げ、ドロップしたアイテムを売ってお金に換金した。結構なお金になったので回復アイテムなどを買い足していると「あ」と瀬名が思い出したように呟く。
「もう少しレベルあげて自信がついたら塔に行って見るといいよ。各階にボスがいるんだけど、そのボスたちは結構良いアクセサリとかアイテムをくれたりするから。勿論倒した後に、だけどね」
 あたしもまだ3階までしか攻略してないんだー、と瀬名は言葉を付け足す。それを聞いた海原は「今度、いってみようかな」と小さく呟き、再び道具屋めぐりをしたのだった。


END


―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――

海原・みなも様>
こんにちは、いつもご発注ありがとうございます!
スキルの事や塔のことを少し出させていただきました。
塔については、塔攻略のシナリオを今後出していくつもりです(^^)
今回の内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていればいいのですが‥‥。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました!

2010/5/13