コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ボマー

 その男が沈黙を破る時、爆発する。
 こんな一文がゴーストネットOFFに書き込まれていた。
 これはここ最近ニュースで騒がれている『サイレントボマー』の事を言っているのだろう。
 1日に何件も爆発が起きて、既に死者は10名を越えている。その犠牲者の中に警官も存在しており、彼が最後に残した言葉が先ほどの一文だった。
「その男が沈黙を破る時、爆発する」
 これが一体何を指し示しているのか犠牲となった警官から連絡を貰った同僚は知る事が出来なかった、その言葉を残した数秒後に彼は死んでしまったのだから。
 その警官が残した言葉を用いて、マスコミは一連の爆発犯人を『サイレントボマー』と名づけていた。

 お前らに俺が捕まえられるか?

 これは先ほど警官が残した言葉の後に書き込まれた発言、発言だけを見ると『サイレントボマー』のような気がするけれどネットの中では『なりきり』も多い。

 これから1時間後にビルを爆破する、それから3時間後に学校を爆破する――止められるものならやってみろ。

 この発言からちょうど1時間後に『サイレントボマー』の爆破は実行された。
 そして3時間後の爆破を止める為、様々な人間達が動き始めたのだった。

視点→有栖川・風

「‥‥‥‥」
 その日、有栖川・風はニュースを見て驚きに目を見開いていた。ここ最近世間を騒がせている爆弾魔『サイレントボマー』がまた犯行を行った。
 しかし警察官に犠牲者が出たと先ほど放送していたバラエティ番組を中断してニュースが流れ始めた。
 その時、爆死した警察官の名前と顔写真がテレビに流れた――その人物を見て有栖川は驚く事しか出来なかった。特に親しくしていたわけではない、顔見知り程度の知り合いだったけれど自分の知っている人間が死んだと放送されて、良い気分になれるはずがない。
「‥‥ボクも行こう‥‥」
 有栖川は呟き、バッグを持ち、捜査に協力する為に自宅を出たのだった。

 あれから警察署へ赴き、捜査の協力を申し出る。有栖川は普段から心理学な面から捜査協力を行っている為、現在の状況などを教えてもらう事が出来た。
「‥‥書き込みの行われたパソコンは特定する事が出来たのですか」
 警察官から教えてもらえたこと、それは爆破予告の書き込みが行われたパソコンを特定する事が出来たという事、そしてそれは学校のパソコンからだったという事‥‥だが、誰が書き込みを行ったのかがわからないのだと言う。
「爆弾は見つかったんですか?」
 有栖川が警官に問いかけると「発見できました」と警官は言葉を返してくる。そしてそこで1つの疑問が彼女の中で浮き上がってくる。
「‥‥何故、学校から離さないのですか? 解体処理班とか‥‥「タイマーがないんです」‥‥え?」
 警官から言われた言葉に有栖川は聞き返す。
「タイマーもなく、普通に置いてあるだけ。もしかしたら振動で爆発するかもしれないし、と色々な状況が想定されて迂闊に動かす事が出来ないだと連絡が入ってきました」
 警官の言葉に「そうですか‥‥とりあえず行ってみます」と言葉を残して有栖川は爆弾が設置されている学校へと向かったのだった。

「すみません、ちょっと通してください」
 学校から少し離れた所に人が溜まり、遠巻きに学校を見ている。爆弾が設置されているにも関わらず、面白そうだから、理由は様々だろうが人間と言うものは常にスリルを求めているものだ。
 だからこそ危険な場所にすら人間は恐怖を感じながらも来ずには居られないのだろう。
「現在、犯人候補を職員室に集めています」
「犯人候補?」
「書き込みに使われたパソコンは職員も生徒も使うことの出来るパソコンなのですが、書き込みがあった時間帯は授業中であり、そのパソコンを使うことが出来る人物は数名しかいなかったみたいです」
 職員室に案内される途中で有栖川は説明を聞く。その犯人候補にされているのは3名、具合が悪くて保健室に行った女子、トイレに立った女子に人気のある男子、腹痛の男性教師の3人だった。
「あ、あの‥‥いつまで私達は此処にいなくちゃいけないんでしょうか‥‥」
「そうだよ、いい加減帰りたいんだけど――って言うか俺らが犯人みたいに思われてんの?」
「そ、そうですよ‥‥こんな犯人扱いされて他の人からなんて思われるか‥‥」
 女子生徒、男子生徒、男性教師、それぞれが口々に言う。恐らくこの3人の中に犯人はいるだろうと警察も思っているのだが、確たる証拠がない。
「さて、どうしたものか‥‥」
 刑事らしき男性がため息と共に言葉を吐き出す。そこへ有栖川が到着する。
「あの、ボクにも捜査協力をさせてもらえませんか? 亡くなった警官の人、知り合いだったんです」
 有栖川が刑事に問いかけると「そうだったのか‥‥」と亡くなった警官のことを思い出したのか刑事も表情を暗くする。
「おい、いい加減にしてくれねぇかな! こっちだって暇じゃないんだけど」
 男子生徒が少し声を荒くしながら警官に言葉を投げかける。
「分かりました。それではそろそろお開きにしましょうか‥‥その前にボクの質問に答えていただきます」
 有栖川が呟き、男子生徒の手を握る。
「え、ちょ‥‥」
 突然手を握られた事に驚いて男子生徒が何か言おうとするけれど「キミは犯人ですか?」と問いかける。
「爆弾の場所、それの起動方法は?」
 爆弾は既に警察が発見しているが、この情報は3人には知らせていない。もし犯人ならば言葉で否定しても、表情に出さなくても、有栖川になら分かる。心に浮かべただけで有栖川には筋肉の変化の型から読み取ることが可能なのだから。
「はぁ? 何言ってンだよ。意味わかんないし」
「次はキミに‥‥」
 続いて有栖川は男性教師、女子生徒の順番に質問を投げかける。その結果、誰が犯人なのか知ることが出来た。
「‥‥犯人はキミですね」
 有栖川の視線の先にいたのは女子生徒だった。有栖川の質問の際に彼女だけが変化を見せていたのだ。勿論それは有栖川にしか分からない微弱な変化だったけれど。
「え、何を‥‥」
「ボクが質問をした時、僅かに変化がありました。爆弾の場所、起動方法などを心の中で思い浮かべたのでしょう」
 びくりと女子生徒の肩が震える。その行動が図星だと言う事を物語っていた。
「‥‥あの人たちが悪いんです‥‥校長先生だって‥‥」
 ぺたん、とその場に座り込みながら女子生徒は泣き始める。今まで『サイレントボマー』に殺された人間は医者なども存在しており、女子生徒に対して酷い扱いをしていたのだと女子生徒は泣きながら叫ぶ。
 元々女子生徒は身体が弱く、そのせいで金銭面で家族に物凄く負担が行っているのだという。そして金に目が眩んだ医者はいつもと変わりない薬を新薬だと女子生徒の両親にいって多額のお金で売っていたらしい。他にも校長からは欠席の多い彼女を呼び出して「仮病じゃないのか」「どうしようもない奴を生んだお前の両親もどうしようもない奴だ」などと言われたのだと彼女は語る。
「今回で終わりにするつもりでした‥‥爆弾は校長室、起動方法は‥‥校長先生の歌」
 この学校の校長は歌を歌う癖があるらしい。
「‥‥だから、その男が沈黙を破る時、なんですね」
 有栖川は納得したかのように小さく呟く。声紋センサーで本人だと機械が特定すれば自動的に爆破される仕組みになっていたらしい。
 ただ『サイレンとボマー』はあまり無関係な人間を巻き込まないようにしている事が今回の犯人逮捕劇で分かった。今まで死んだ人間、少なからず彼女への嫌がらせなどが存在しており、何らかの形で彼女から恨みを買っていた人物ばかりだからだ。
「後はお任せします」
 有栖川はそれだけ言葉を残し、学校を後にする。死んでしまった人は戻らないけれど、事件を解決できてよかった――有栖川は満足そうに持っていた牛乳を飲み干して空を見上げたのだった。


END



―― 登場人物 ――

8375/有栖川・風/19歳/女性/心理学者、心理カウンセラー

――――――――――

有栖川・風様>
初めまして、今回執筆させていただきました水貴透子と申します。
今回は『ボマー』へのご発注をありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか?
楽しんでいただける内容に仕上がっていれば良いのですが‥‥。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!

2010/5/18