コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ノベル(シングル)>


異変の先に行き着く者は‥‥

「よし、これで装備完了――っと」
 海原・みなもは先日入手した装備『猫の着ぐるみ武具』を自身のキャラクター・みなもに装備させる。
 すると外見がパッと変わり、猫耳に猫尻尾、そしてもふもふの猫の爪を装備した可愛らしい外見へと変わった。
「そうだ、どうせならエフェクト効果も変わってるか見てみようかな‥‥近場に雑魚モンスターの集まるフィールドもあったし‥‥」
 海原は小さく呟くと、みなもを操作して雑魚モンスターが集まるフィールドへと移動させたのだった。
「あ、走り方も変わってる」
 今までは普通に走っていたみなもだったが、猫の着ぐるみ武具を装備してからまるで猫のように四足で走り出す。そのたびにぴこぴこと可愛らしい音までついていた。
「‥‥この効果ってこの武具のせいですよね‥‥もしかして、これをくれたあの人はプレイ時にこんな感じだったんでしょうか‥‥」
 海原はみなもの姿を見て、猫の着ぐるみ武具をくれた男性の事を思い出す。もしあの男性がこんな感じでプレイしていたのだと思うと、少しだけ海原の顔に笑みが浮かんだ。
 そしてフィールドでモンスターを見つけると接触して戦闘画面へと移行させる。
「よし、獣の爪――使用っと」
 海原がスキル選択をした後、みなもは選択された通りに獣の爪を使用する。すると装備しているのが女性キャラクターのせいなのだろうか、スキル発動時に幾つものハートが現れてスキル使用のエフェクトが可愛らしくなっているのが判る。
「あ、何か可愛い‥‥」
 エフェクトを見ながら海原が小さく呟く。今までのエフェクトはどちらかといえば可愛いというより格好良い――というには少しシンプルなものではあったけれど、特に何か考えるようなエフェクトではなかった。
「装備によってエフェクトが変わるんですね‥‥まだ手にしていない装備にも特殊エフェクトがある装備があるのかな‥‥」
 海原はパソコンの画面を見ながら小さく呟く。他の装備も見てみたいけれど、まずは今現在抱えている問題を解決する事が先決だと海原は思う。猫の着ぐるみ武具を貰ったおかげでみなものステータスはレベル以上に跳ね上がり、雑魚モンスター相手では苦労どころか傷を負う事すらなくなった。
 よほどの敵と出会うことがない限り苦労することはないだろう――‥‥だけど‥‥。
「他のプレイヤーと違って、よほどの敵と出会う確率が高そう――ですよね、あたし」
 はぁ、と小さなため息を海原は吐きながら呟き、自分の分身・みなもを見る。今のところまだ全滅になった事はない。
(「もし、普通のクエストとかでゲームオーバーになったらどうなるんだろう‥‥」)
 そう心の中で呟き、海原は自分の腕を見る。明らかにLOSTのみなもとリンクするかのように変化している海原の腕。恐らくログイン・キーの影響だろうとは思うけれど、もしログイン・キーが現実世界とLOST内を繋ぐアイテムだとすれば――ゲームオーバーというものはどうやって海原に伝わってくるのだろうか。
(「まさか――現実のあたしも、死ぬ?」)
 海原は考えた後にぞくりと背中を何かが駆け上がるような感覚に陥る。
「あ、いけない」
 考え事をしていたせいでみなもの操作を忘れており、海原は獣毛のスキルを使用してみた。すると今までは普通にエフェクトがかかるだけだったが、猫が威嚇するようなポーズを取ってみなもが獣毛を使用する。
「結構可愛いエフェクトになるんだ、この猫の着ぐるみ武具‥‥」
 呟いたところで海原の携帯電話が着信を知らせてきた。
「あ、雫さんだ」
 着信相手を見て海原が呟く。ここ最近で色々な事が起きていた為、海原は瀬名・雫に相談したいと前から言っていた。恐らくそれのことで電話をくれたのだろう。
「もしも〜し、みなもちゃん? 今大丈夫〜?」
「こんにちは、はい大丈夫ですよ」
 瀬名が呟くと「実は今、家の前にいるんだ。だからあけて〜」と電話の向こうからも玄関先からも同じ声が聞こえて海原は苦笑して玄関の鍵を開け、瀬名を迎え入れたのだった。
「何か色々と面倒な事になってるみたいなんだって〜?」
 瀬名がパソコンのみなもを見て「あ、この武具可愛い〜」と言葉を付け足しながら海原へと言葉を投げかけた。
「えぇ、実は‥‥」
 そして海原は瀬名に相談する。全ての現実を司るフルリアという人のこと、宝の場所は知っていても鍵がないあすら達、全てを失いどんな願いもかなえる宝、現実を失った被害者達、そして彼らが集う闇の街、彼らが言う『彼女』の事――‥‥。
「ログイン・キーのことも錆びた剣のことも色々考えるんですけど、それ以上に異変の原因はLOSTそのものなのか‥‥考えれば考えるほどわからなくなっていって‥‥」
 海原の言葉に「う〜ん」と瀬名も唸るように考え始める。
「ねぇ、さっき言ってた全ての現実ってLOSTだけの事なのかな?」
 瀬名の言葉に「‥‥と言いますと?」と海原が先を促すように言葉を返す。
「LOSTの事だけだったら『LOSTを司る』とか言いそうじゃない? 全ての現実って‥‥まるでLOST以外の現実の事も言ってるみたい」
 瀬名の言葉に「確かに――」と海原も納得するように小さく言葉を返した。
「そしてその闇の街――だっけ? その場所もなんか変」
「変、ですか?」
「だって考えてみてよ。本当に『彼女』とやらに見捨てられたのなら何で街を作るの? 見捨てられた者同士が寄り添うにしても、被害者ほとんどが寄り添いあうって何かおかしくない? まるでそうなるように導かれてるみたいじゃない」
 考えれば確かに瀬名の言う言葉は納得できるものばかりだった。
「そのあすらって人たちも、鍵がないのなら何で必死に探さないの? 普通に考えたら宝の場所はわかってて鍵がない――あたしだったら必死に鍵を探すけどね。それをしないってのはおかしいよ、まるで鍵の場所はわかってるみたいだもん」
「鍵の場所がわかってる‥‥?」
「たとえば、その錆びた剣――普通の鍛冶屋じゃ錆は取れないんでしょ? 特殊な方法で錆を取る、もしかしたらその錆びた剣が鍵なのかもしれないよ? それにみなもちゃんが、持ってるログイン・キー。それもキーって名前の通り鍵なのかもしれないし」
 考え始めたらキリがないね、瀬名は言葉を付け足しながら苦笑する。
「異変の原因――もしかしたらLOSTだけじゃないのかも‥‥LOSTはただのキッカケに過ぎないのかもしれないね。あたしも色々調べてみるよ」
 瀬名は呟き「みなもちゃん、何か嫌な予感するから誰も信用しちゃダメだよ」と言葉を残して海原の部屋を出て行った。
「嫌な予感、か‥‥」
 ぞくりとする背中を誤魔化すように海原はパソコンの前に座り、再びみなもの操作を開始し始めたのだった。


END


―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――

海原・みなも様>
こんにちは、いつもご発注いただきありがとうございます!
今回は体調を少し崩してしまい、納品がいつもより遅めになってしまい申し訳ございませんでした。
話の内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入って頂けるものに仕上がっている事を切に祈ります。

それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!!

2010/6/15