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<東京怪談・PCゲームノベル>


◆玄冬流転・陸 〜大寒〜◆



 八重咲悠は適度な広さの和室に座して、一通の手紙を読んでいた。
 それは、この『本邸』に来てから満足に言葉を交わすことの出来ていない、クロからのものだった。並ぶ文字は癖も無く読みやすいが、どこかぎこちなさが漂っている。彼女らしい、と悠は思う。
 丁度一週間前、悠はクロに連れられてここに訪れた。閉鎖的な一族であるだろうというのはこれまでのクロとの関わりで分かっていた。故に、何かしらの問題は起こるだろうと予測していたのだが――特に何も起こることなく、悠がここに留まることは許された。
 クロは当主が事前に通達を出したのだと言った。『本邸』に向かう間に彼女が連絡を取っていた様子はなかったから、何か特殊な方法――例えばクロが口にしていた『予知』のような――で悠の訪れを知ったのだろう。
 対話する程の時間は無いといえど、食事を運んで来る時など、折々に顔を合わせるクロに手紙を書こうと考えたのはつい先日の事だ。渡した手紙に目を丸くしていた様を思い返し、悠は笑みを深める。
 そしてつい先ほど、昼食を運んで来たクロから渡されたものが、今悠の手の中に在る手紙だった。
 内容は、悠の送った手紙に対するお礼と、気を遣わせた事、部屋から自由に出せない事への謝罪から始まっていた。
 その後に並べられた言葉は、自然と笑みを誘うもので――彼女の変化が感じられるその内容が、隠す事なく伝えられる自分への想いが、『好奇』以外の感情を自分に抱かせる。その己の変化を悪くない、と感じる自分を、少しだけ不思議に思う。
 手紙の最後は、当主が二日後の夜に悠の元を訪れるらしい、という話で〆られていた。都合が悪ければ別の日でも構わないというような事も書かれていたが、特に問題はない。二日後の予定にそれを加えて、悠は手紙を折り畳んだ。
 『時間ができたら、会いに行く』――手紙に書かれたその言葉を思い返しながら、その時に彼女と何を語らうかを楽しみに考えている自分に、悠は笑みを漏らした。

◆ ◆ ◆

 『儀式』の準備が一段落つき、クロは一度自室に戻ろうと邸内を歩いていた。延々と続くかのように見える廊下を行く最中、ふと思いついて、持ち歩いていた手紙を取り出す。……その送り主を思い、開こうとした手を止めた。
 自分の掌に視線を落とす。もう一つの姿と比べて小さく、頼りない風情すらある。己の二つの姿の内、少女と形容されるだろうもの――今の自分の姿はそれで安定している。
 それは以前の自分からは有り得るはずの無かった状態だった。『玄冬』に属する者の中で、自分はとりわけ己の姿を制御できなかった。『解除』が進めば尚のこと、制御は難しくなるはずだった。……彼が、居なければ。
(……悠さん、どうしてる、かな)
 脳裏に浮かぶのは、静謐な雰囲気を纏い、笑みを浮かべるその姿。
 彼と共に本邸に来て、今日で丁度一週間のはずだ。その間、彼とは殆ど話が出来ていない。
(『儀式』――『降ろし』の準備があるから、仕方ない……けど、)
 こうまで時間が取れないのは今日までだ。明日からは彼ともっと時間を共有できる――そう考えて、本邸に招く前、彼の告げた言葉が蘇る。

『これが、「最後」の邂逅というのでしたら、このまま別れなければ、その邂逅は続くのでしょう?』
『そんな表情をした友人を、放って置く事など出来ませんから』

 何でもないことのように告げられたそれに、湧きあがった感情は何だっただろう。『喜び』に似て、けれどどこか違う気もして――その時に己が浮かべた表情すら、全く未知のもので。
 『最後』を先延ばしにしてくれたのが嬉しかった。もっともっと、沢山の時間を共に過ごしたいと自分は願ってしまったから。
 ああ、でも、どうしよう。嬉しくて、嬉しくて、――ただ嬉しくて、忘れていた。
 彼の身に迫るかもしれない、危険を。
 『相性の良い者』が不可欠な『白秋』で、『儀式』に関わった人々がどうなったか――一族によってどんな結末を辿ってきたか、自分は知っていたのに。
 『白秋』と『玄冬』。属する季節が違うから、その行く末も違うかもしれない、と。そう思っても、不安は消えない。前例がないのだから、安心などできようはずもない。
 出られる保証などないと言った自分に、彼は覚悟の上だと言ったけれど、でも。
 本来なら在り得なかった邂逅の末に――自分の願いの末に、彼の命を奪うことなど許されない。……何より、自分がそれを、嫌だと思う。
 『最期』まで、と願ってしまったけれど。
 彼を想うなら、今すぐにでもここから――この閉じられた世界から、彼が元居た世界へと、返すべきなのだ。
(それが一番だって、分かってる……)
 自分が望んで、彼がそれを受け入れてくれたとしても。本当なら、本邸に彼を招くべきではなかったのだ。
(分かってるのに、どうして)
 どうして、自分は。
(一緒に、居たい。もっと、もっと――『最期』なんて来なければいい……)
 願って、しまう。
 結局手紙を開くことなく、代わりに己の右耳に下がるイヤリングにそっと手を触れる。彼が自分のために作ってくれた、彼と自分を繋ぐもの。
(……どうしよう)
 どうしよう。やっぱり自分はおかしくなっている。当主の願い以外に、優先すべきことなどないはずなのに。
(わたし、――…『生きたい』って、思ってる……)
 自分のまま。『玄冬』の『器』としてでなく、己自身のまま生きたいと。
 当主の『願い』と相反する想いを、自分は抱いてしまっている。
(どう、しよう)
 どうすればいいのか、なんて。ずっと前から決まっていたはずなのに。

◆ ◇ ◆

(――…おや、)
 『互いの存在の知覚』、そして『強い願いの伝達』――それらを目的として作成したイヤリングの変化に、悠は思考を中断する。
 伝わってくるのは、『一緒に居たい』という『願い』。そして明確に伝わるほどの強さを持たぬ、けれど確かに存在する何らかの『願い』未満の『想い』。
(……迷っていらっしゃるのでしょうか)
 それならいい、と悠は思う。『迷う』というそれ自体が、喜ばしいことだと。
 『迷う』という事は選択肢があるという事だ。初めて会った頃のクロは『当主の願いを叶える』事だけが唯一の行動原理で、それ以外の選択肢など最初から頭になかった。
 それが変化するという事は、彼女に対して『好奇』以外の感情を抱いた悠にとっては歓迎すべき事に他ならない。
 彼女と関わることで生まれた、自分の『願い』――それが叶うか否かは、彼女の選択にかかっているのだから。
 その『願い』のため、自分に出来る事――否、自分が為す事は多くは無い。何故なら悠は、クロの『願い』を妨げてまで己の『願い』を叶えようとは思わないからだ。悠が為すのは、ほんの僅かの手助けのみ。
 悠は、手紙を読む間脇に置いていた『黙示録』を――正確には『黙示録』に挟まれた栞を手に取った。
 一見何の変哲も無いように見えるその栞には、魂を守護する防御魔法が組み込まれている。
 この邸に来る前、クロの口から、そしてイヤリングを介しても伝わってきたように、クロがもし、再び生きたいと…自分と共に居たいと望むならば、或いは効果を示す――その程度の弱いものだ。
 絶対的な効果など必要ない。クロが『器』となる事を選ぶのなら、悠はそれを阻むつもりは無いのだから。
 望むのは、ただ、彼女が己の意思で行く末を選ぶ事。その考え自体は以前と変わりないが――変わったとすれば自分の心持ちなのだろう、と、自身の思考を振り返って、悠は声無く笑った。

◆ ◇ ◆

 翌日、いつも食事を持ってくるよりも早い時間、前触れなく部屋を訪ねてきたクロを、悠は快く迎えた。対するクロは、入り口からおずおずと悠を伺う。
「……早くから、ごめん、なさい……。あの、時間……できた、から。……その、迷惑かな、って、少し思ったけど、昨日から、…楽しみ、で――落ち着か、なくて。……あの、都合が悪いなら、出直す、けど……」
 そんなクロの様子に――その揺れる瞳に不安を見て取って、悠は安心させるように微笑んだ。
「迷惑などという事はありません。手紙に書いたように、私はクロさんとの語らいが何よりも楽しみですから」
 悠の言に僅か頬を紅潮させ、うろうろと視線を彷徨わせたクロは、数度何事かを言いあぐねるように口を開閉し、最後に小さな声で「……じゃあ、お話、しよう」と零したのだった。


 クロへ『外』の世界について語ることは、彼女が訪れる前から考えていた事だった。クロの今までの言からして、『外』について何も知らないに等しいだろう事は、容易に察しがつく。
 故に悠はクロに語る。『外』の世界を、『外』にどのような物が存在するか、どのような事が起こるのか。どのような人々が居て、どのような思いを抱き、どのように生きているのか――悠の識る、悠の見た『外』の話を。
 語る傍ら、悠はまるでクロの興味を引こうとしているような自分におかしさを覚える。けれど実際、自分は彼女の興味を引こうとしているのだ、と自覚する。
 『外』の話をすれば、今の――初めての邂逅の時よりも『ヒト』らしくなった彼女は、当然それに興味を覚えるだろう。現に、彼女は今現在も無表情ながら熱心に悠の話を聞いている。
 興味を覚えるという事は、それを『識りたい』と思う事だ。それまで接触が極端に少なかった事柄についてならば、尚の事その欲求は強いだろう。話を聞くだけでなく、実際に己の目で見たいと願うようになる事も、当然のように予測できる。
 クロがそう願うようになった先に、悠の『願い』はある。それが叶えられるか否かは、無論クロの選択次第だが。
 けれど、『外』の世界を知っているか否かだけでも、クロの選択の幅は間違いなく広がるはずだ。
 クロはどのような話題も興味深そうに聞き入っていたが、特に悠自身の話題は彼女の興味を引いたようだった。他愛のない、例えば悠が学校でどのように過ごしているかや、日常の些細な事にも彼女は真剣に耳を傾けていた。
 その様が、語る悠の胸に何とも言えない心地をもたらす事を、きっとクロは想像もしていないのだろう。
「…わたしの知っていること、は、本当に一部なんだね……」
 どこか感心したような響きを伴うクロの言葉に、悠は笑みを返す。
「何事も、全を識るという事は酷く難しい事ですから。――…こうして語っている私も、未だ知らない事は多いのですが」
 悠がそう言うと、クロが驚いたように目を見開いた。小さく首を傾げて、ぽつりと呟く。
「そんなに沢山のこと、知ってるのに……?」
「『外』は――世界は、とても広いものですから」
 人が一生を費やしても、その全てを知る事が叶わないほどに。
「だからこそ、識りたいと思うのです。未だ見ぬ世界を――私の知らない多くの事を」
「…そう、なんだ……」
 呟くクロは、どこか遠くを見るような――そして何かに焦がれるような、そんな眼差しをしていた。

◆ ◇ ◆

 当主の訪れは事前の通達と相違なく、クロの手紙を受け取った二日後の夜だった。ふらりと気配無く現れた式は、「失礼するよ」と断って部屋へと足を踏み入れる。
「ご足労下さって、有難うございます」
 礼を向けた悠に、式は真意の見えない笑みを浮かべた。
「いや、……こうなるであろう事は分かっていたし、私も君ともう一度言葉を交わしてみたいと、少なからず考えていたからね。――さて、それでは君の話とやらを聞かせてもらえるかな」
 促され、悠は笑みを返しながら口を開く。
「まずは、謝罪を」
「……謝罪?」
 式が僅かに怪訝そうな顔をした。悠はそれに構わず先を続ける。
「以前、クロさんが必要か、との問いに、私は『必要とは言えない』とお答えしましたが、」
 それは四度目にクロと顔を合わせた時の事。初めて事前に約束をして彼女と逢い――そして、式との初の邂逅を果たした。その時に為された式の問いに、悠は迷うことなく返答した。それは紛れも無く、その時点での悠の本心だったが――。
「申し訳ありません。答えが変わってしまいました。……『必要』かは、やはり分かりません。ですが、クロさんの願いを叶える事。それが私の願いとなりました」
 ――…例えそれが、どんな願いであっても。
 そう告げた悠に、式は口を開くことなく、ただ笑みを深める。
 『必要とは言えない』と答えた時から、それ程長い時は経っていない。けれど、『必要』だと答えるまでには至らずとも、彼女の『願い』を叶えたいと思う程には、悠の中でクロの存在は比重を高めた。
「貴方の願いは、理を捻じ曲げて為されるものだとクロさんに聞きました。クロさんが『封印解除』を行う事でその下地を整えていたのならば、クロさんが『器』に――『玄冬』になるという事は、確定された未来とも言えるのでしょう。……けれど私は、もしクロさんが望むのなら、その未来を覆したいと考えています。一族の役割や、『封破士』に課された役目がどうであれ――クロさんが生きたいと願うのならば」
 悠が言葉を紡ぐ間も、式は口を挟むことなくじっと悠を見ていた。それは、何かを見定めようとしているようにも思える視線だった。
「クロさんが、私と共に居たいと願い――そして私もそれを望んだから、私はここに居ます。先程も言った通り、私は彼女の『願い』を叶えたい。その『願い』を叶えるのに何らかの『代償』が必要であっても、それは変わりません」
 理を捻じ曲げ叶えられるのだろう、当主の『願い』。もしクロが生きたいと――『器』としてではない生を望むのであれば、きっと更に理を捻じ曲げる事になる。悠が為そうとしているのは、そういう事だ。
 クロに『黙示録』について語った時、悠は理を捻じ曲げるには『覚悟』が必要だと言った。そしてその考えは今も変わっていない。
 この『本邸』に足を踏み入れた時から――否、本邸へ連れて行ってはもらえないかとクロに申し出た時から、悠は『覚悟』を抱いていた。
 今この場に居る――その事自体が、覚悟の表れと言っても過言ではない。
「……クロさんが『玄冬』となる事を――御当主の『願い』を叶える事を選ぶのならば、私はそれを妨げるつもりはありません。ですから――」
 一度言葉を切り、悠は防御魔法の組み込まれた栞を取り出した。
「これに、全てを託しました」
 式は、悠の手の中の栞に視線を向け、僅かに目を細める。そうして「……成程」と囁くように言った。
 栞に籠められた魔法がどういうものか、説明されずとも分かったのだろう。それが異能によるものか、推測によるものかは悠には判断できないが。
 何かを思案するかのように無言となった式は、暫くして静かに口を開いた。
「――今のクロが『玄冬』を降ろせるかどうかは、正直なところ私にも分からない」
 そう告げた式の声は、不自然なほどに平坦なものだった。
「いや、きっと『降ろし』自体は出来るだろう。ただ、『玄冬』になれるか――『器』としての役割を果たせるかどうかは、微妙なところだ。それは私にとって、とても喜ばしいとは言えない事なのだけれど……何故だろうね。私は今、それ程焦っていないんだよ」
 何故だろうと口にしながらも、彼はその理由について心当たりがあるようだった。悠がそう感じたのは、今まで式と関わった中での言動からでもあるし、直感というべきものからでもあった。恐らく悠の知らない事情もそこには絡んでいるのだろうと思うが、それを積極的に知ろうとは思わない。
 式が、クロが持つかもしれない願いを――そしてそれによって発動する魔法を、妨害する事が無いのであればいい。
「共に生きる者を喪うのは、寂しいと思いませんか。そうして生きるのも。……最近、それを思い出しました」
 クロに関わり、己が変化した事で思い出した、『ヒト』としてはきっと当然の想い。誰かと生きたいと思うからこそ抱く感情。
 悠の言葉に、式は静かに目を伏せて、溜息を吐くように言葉を零す。
「――…そうだね。喪うくらいなら共に死にたいと、そう思う程には寂しい事だ。……少なくとも、私にとってはそうだったよ」
 遠い過去を思うような、それでいて未だ生々しく血を流す傷口を想起させるような響きを伴った言葉に、悠は敢えて何も返さなかった。式もまた、それを咎める事はしなかった。

◆ ◇ ◆

 それからの日々は、とても穏やかな――不自然なほどに穏やかな日々だった。
 『儀式』の準備がほぼ終わったというクロは、少しでも長く悠と共に過ごしたいという表れか、朝に夕に悠の部屋を訪れた。そうして悠との語らいの合間に、『儀式』に関する用事などで席を外す。
 そういう時の彼女は、悠に向けてとても申し訳なさそうな目をしていた。……その瞳の奥にちらつく、後ろめたさや罪悪感のようなものの理由は悠には分からなかったが、敢えて問う事はしなかった。それを悠に気付かれたくないと、クロが思っているのは明白だったからだ。
 何に由来するのかは明確に分からない緊張を必死で隠すクロに、それ以上の負担を強いたくはなかった。
 それは少しずつ引き絞られる、弓にも似て。かかる負荷に弦が切れるのが先か、矢が放たれるのが先か――そんな危うい均衡。
 そうして、ついに『大寒』の――『儀式』の日がやってきた。
 『儀式』には、悠も立ち会う事になっていた。クロに立ち会って欲しいと乞われたからだ。『儀式』に立ち会う事は、彼女の選択を見届ける上で願ってもいない事だったので、快諾した。
 『儀式』を行うという事自体が、クロの選択を表していると言える。けれど、実際にその『儀式』が終わるまでは、彼女の選択が為された事にはならない。
 朝食を終えた後、クロは『儀式』の為の正装に着替えてくると言って部屋を出て行った。何か用意があったらその間にしておいて欲しいと言われたが、クロに渡す為の栞を『黙示録』から抜いておく程度しかやる事はなく、気休め程度に身形を整え、再びのクロの訪れを座して待つ。
「……悠、さん…準備、いい……?」
 戸の向こう側から声をかけてきたクロに、悠は問題ないという旨を伝える。クロは僅かに俯きながら室内に入ってきた。その身に纏うのは、当然部屋を出て行く前の服装とは違う――発言を鑑みれば、『儀式』の際の正装だろう衣装だった。
 それはどこか神職に就く者を想起させるような和装だった。黒と白の対比が雰囲気を引き立たせている――けれどそれは、死装束にも似て。
 清冽さと不吉さが絶妙な均衡を保って同居するその様が、危うい均衡を身の内に抱くクロと重なって見えた。
「……じゃあ、移動――」
「すみませんが、その前に少しよろしいでしょうか」
 『儀式』の場へと誘導しようとしたクロを遮って悠が口を開くと、クロは少し目を見開いて悠を見上げてきた。
「……どうか、した…?」
「クロさんにお渡ししたい物があるのですが、受け取って頂けますか?」
「…え……?」
 戸惑いも露わに見返してくるクロに、手にした栞を差し出す。クロはそれと悠を交互に見遣った。その様が、彼女にイヤリングを渡した時の情景を思い出させて、悠は笑みを深めた。
「……でも、」
 やがて、クロは困ったように目線を下げた。
「わたし、は――」
「とは言え、クロさんの返答に関わらず、受け取って頂かなくては困るのですが」
 恐らくは否定の言葉を口にしようとしただろうクロに重ねるようにして言った悠の科白に、クロは虚をつかれたように僅かに目を瞠った。
「受け取って下さい、クロさん。心底不要だと思われるのならば、無理に押し付けるつもりはありませんが――ただ遠慮しているというのでしたら、どうか受け取って下さい。これは、貴女に持っていて頂かなくては意味の無い物なのですから」
 己が全てを託したこの栞。クロがもし『生きたい』と願ったならば、その魂を守護する物。
 その由来が何かはともかく、遠慮から受け取られないというのは悠にとって歓迎できない事態だ。それ故に、悠は受け取ってくれるようにと言葉を重ねた。
 普段の悠ならば、拒否の空気を察した時点で引き下がるが――今回はそういう訳にはいかない。敢えて言い募った悠に何か感じるところがあったのか――暫くの後、クロはおずおずと栞を受け取ったのだった。

◆ ◇ ◆

 クロに案内されて辿り着いたのは、中庭らしき場所だった。そこに根付く一本の木を中心に、地面に人為的に刻まれたと思しき紋様が広がっている。それはクロが『封印解除』の際に描いていたものとよく似ていた。
「――…ここが、『儀式』の、場所……」
 呟くように言ったクロの瞳には、緊張と何らかの迷い――そして僅かな安堵が混在していた。
「あれは、桜ですか?」
 静かに佇む木を指して悠が問えば、クロは頷いた。
「うん……あれは、当主が…昔の仲間と植えたもの、なんだって……当主にとって、すごく、すごく大事な思い出の象徴が、あの桜、で――だから、『儀式』の場は、ここ…」
 そう言って、クロは僅かに目を細める。
 地面に広がる紋様――魔法陣のようなそれの外、悠達の居る場所から少し離れた所に式が立っていた。その顔に浮かぶ表情からは、彼が今何を思っているかは推し量る事はできなかった。
 再びクロに視線を戻せば、彼女はどこか思い詰めるような硬い表情をしていて――それはいっそ、痛々しいと感じる程の緊張を孕んでいた。極限まで張り詰めた空気は、堅く脆い硝子を連想させる。
「クロさん」
 呼びかけると、クロは足を止め、悠を見上げる。
「お訊ねしたい事があります。答えていただけますか?」
 戸惑うように一度ゆっくり瞬きをして、けれどクロは頷いた。
 尋ねる内容も聞かずに許諾する――その源である自分への信頼を、向けられる瞳から感じ取って、悠は微苦笑した。その無上の信頼が、何とも言えない心地をもたらす。
「――クロさんは、何を願いますか? 『玄冬』になる事ですか? 御当主の『願い』を叶える事でしょうか」
 クロが小さく息を呑んだ。怯えるように一歩足を退くのを見ながら、悠は続ける。
「御当主の『願い』は、理を捻じ曲げなければ為しえない事。そして、私と出会った頃のクロさんは、その『願い』を叶える事だけを考えて――『玄冬』になるという事を、当然の事とされていました。……けれど、クロさんはその頃とは変わられたように思います。ですから、お訊きしたいのです。クロさんの『願い』を」
 クロは無表情のままだったが、瞳は何の感情にか揺らいでいた。戸惑いのような、怯えのような、それ以外の何かのような――もしくは、その全てを微かに映して。
「……御当主に『願い』があるように、そして恐らくクロさんにも『願い』があるように――私にも、『願い』があります」
 悠は微笑む。そこに何を見出したのか、クロは小さく息を呑んだ。
 クロから視線を外さずに、悠は己の『願い』を告げる。言葉ではなく、心で。
 クロの耳に下がる、悠と対のイヤリングが、静かに揺れた。


(私は、クロさんと共にこの世界を見たいのです)
(そして、この感情を知りたいのです)


(――…私と生きては頂けませんか?)


 夜色の瞳が驚愕の色を宿して悠を見た。
 悠がイヤリングを通じて己の願いを語った事で、恐らくクロは気付いただろう。悠が渡した対のイヤリングの、彼女へと告げなかった効果――強い願いを伝えるという、それを。
 緊張に張り詰めていた、クロの纏う空気が揺らぐ。くしゃりと表情を歪めたクロの夜色の瞳が潤んで――雫が、落ちた。

◆ ◆ ◆

 伝わってくる言葉。音ではなく響く『願い』。
 その源が何かを認識して、頭が真っ白になった。
(なんで、)
 目の前に立つ人は常と変わらぬ悠然とした雰囲気で、今しがた感じたものが錯覚だったのではないかと思ってしまう。
 けれど波紋のように『願い』は伝わってくる。身の内に響く。
 ――己の耳に、そして彼の耳に在る、対のイヤリングから。
 『互いの存在を知覚出来る』という効果を持つ――それだけだと思っていたのに。
 気付いてしまえば、イヤリングに籠められたもう一つの効果は簡単に読み取れた。どうして気付かなかったのか――己が術に関して敏いわけではないのは確かだが、意識すれば気付けたはずなのに。
(……嬉しいって、思ったから)
 自分のために――自分を思い、自分のためだけに作られたと聞いて、浮かんだ感情は『喜び』で。
 それできっと、冷静な判断力を失っていたのだ。
 イヤリングを受け取った後、自分は願った。願ってしまった。
 彼との邂逅が最後となる事が嫌だと、二度と会えない事を認めたくないと――もっと共にいたい、と。
(……ああ、だから)
 だからきっと、彼はあんな事を言ったのだ。自分の『願い』を感じ取ったから、『本邸』に行きたいと言ったのだ。
 自分の意を汲んで、戻れる保証がないと聞いても『本邸』に来てくれたのだ。
 やさしいから。やさしすぎるから。他人の感情に敏過ぎるから。
 ――やはり自分は、あの申し出を受けてはいけなかったのだ。気付かなければならなかった。何故彼がそんな事を言ったのか、彼の言葉を聞くだけじゃなく、ちゃんと考えなければいけなかったのに。
(どう、しよう……どうして、なんで。わたしは、何も……うまく出来ない)
 彼を無事に『本邸』から帰すためにどうすればいいか考えて、自分に関わる記憶を消せばそれが叶うのではないかと思った。
 だけど、自分のことを彼が忘れることを想像するだけで胸が痛くなって。それ以外の方法を探したけれど、そもそも『封破士』の役割と関係のない一族外の人間との接触は事例が極端に少なくて、結局記憶を消すしかないのだと、そう結論付けて。
 本当は『儀式』の前に、そうしてしまおうと思っていた。……しなければならないと分かっていた。ここに長く居れば居るほど、彼の身の危険性は高まるから。
 だけど彼と過ごす時間は心地良くて、後少し、後少しだけ、と引き延ばして、――そうして『儀式』当日を迎えてしまった。
 記憶を消すには、『儀式』の際の力の余波を使うのが最も安全だから、と理由を付けてみても、それが言い訳なのだと、誰より自分が知っている。
 彼と会う前、ただ当主のために己の役割を全うすることが全てだった自分には、もう戻れないのだと――今更に理解した。
 彼と関わるようになってから己に生まれた様々な『感情』は殆どが未知のもので、自分には制御出来ないことが多かった。思うようにならないそれを自分は不快だとは思わず、むしろ何故か心地良いとさえ思って。
 『ヒト』とは言えない自分が、『ヒト』に近づけたように思えてしまって。
 『ヒト』に近ければ、彼と関わっても――関わり続けてもいいような、気がしてしまって。
 そんなことはないのに。自分は――自分達は当主の『願い』のためだけの存在だったのに。ただ『玄冬』を降ろす『器』となることだけが、自分の存在の意味だったのに。
 感情も『願い』も――己の意思だって、本当は必要のないものだったのに。
 彼に会う毎に『自分』が鮮明になって、知らなかった自分に気付かされて。彼と過ごす時間が記憶の中で色付いて、『おかしく』なっていく自分を知りながら彼と会うことを止めなかった。
 そして今。彼はまるで当たり前のように、何でもないことのように静かに微笑んだまま、自分の返答を待っている。
 彼はいつもそうやって、当然のように自分に手を差し伸べるから。
 自分はその手に――彼のやさしさに、触れたいと思ってしまう。
 息が詰まる。今にも何かが溢れてしまいそうに喉の奥が熱くて。
 目の縁が熱を持つのを知覚すると同時に、視界が歪んだ。
(どうして、どうして、なんで、――なんでそんなふうに、そうやって、)
 沢山の言葉が浮かんでは消えて、衝動のまま、一歩足を踏み出した。

◆ ◇ ◆

「悠さん……っ!」
 様々な感情の入り混じった声で、クロが悠の名を呼んだ。そしてそのまま、ぶつかるようにして悠の服を掴んでくる。
「分かってる、分かってる――分かってた、はずだったのに! わたし、が、『封破士』として、『玄冬』の『器』として、ただそれだけの、ために生まれたこと…だって、知ってたのに、分かってたのにっ」
 涙に濡れ、俯いているせいでくぐもった声で、クロは懸命に言葉を紡ぐ。
「悠さん、ずるい…っ! わたし、巻き込んじゃいけないんだって思ったのに! あるはずがなかったから、あるはずがない出会いだったから、これ以上巻き込んじゃいけないって、『本邸』に連れて来ちゃったことも、本当はいけなかったって――だから、全部、忘れてもらおうと思ったのに! どうして、そういうこと言うのっ?!」
 悠の服の裾を掴む手は、真っ白になる程に力が籠められていた。
「『最期』まで一緒に居たいって、最初はそれだけだったのに、だんだん…もっと、もっとって、そう思った、から……駄目だって、これ以上願っちゃ駄目だって、――だって、悠さん優しい、から…っ! 入ったら戻れる保証もない本邸に、来てくれるくらい優しいから! これ以上巻き込んじゃいけないって……悠さんの世界に帰さなくちゃって、思ったのに…!」
 震える肩も、揺れる声も、彼女の激情を雄弁に語る。
「わた、わたし、が――どんな気持ちで、今日を迎えたかだって…知らない、くせに!」
「……そうですね。私はクロさんではありませんから」
「悠さんが、何考えてるのか、わからないよ…っ! 何で、ここまでしてくれるのかも……何でそんなこと、言うのか、も、」
 クロの言葉に、悠はゆるりと笑んだ。
「――分かりませんか?」
「わか、んっ、ない……わたし、悠さんに…何も返せない、のにっ」
「見返りを、求めているのではないのですよ。――友を想うが故、というだけでは理由に足りませんか?」
「…え……?」
 よほど予想外の言葉だったのだろうか、クロは頑なに伏せていた顔を上げ、悠を見た。その涙に濡れた顔は、これまで見たクロの表情の中で最も『人間』らしい――否、『人間』そのものの姿だった。
 ぽろぽろと絶え間なく落ちる雫が、地表で弾けては土の色を濃く染め変える。
 震える唇が言葉を探すように幾度か開閉されて、悠の服を掴む手に、更に力が籠められた。
 ――瞬間。
『……泣くな、幼子』
 唐突に声が響いた。肉声ではなく、頭に直接響くような、そんな声。
 場の空気もまた一変する。以前クロが『封印解除』をする際に感じた『異質』によく似た、けれど何かが決定的に違う、別種の『異質』の気配。
 それに最も顕著な反応を示したのは、式だった。目を見開き、声の発生源――クロのすぐ傍にふわりと浮かぶ、半透明の人影を見つめ、次いで叫んだ。
「どうして、ここに――『玄冬』!」
 困ったような目でクロを見つめていた、クロによく似た姿の人影――『玄冬』と呼ばれた人物は、呆れたように式に視線を向けた。
『どうしてと言われてもな。わたしを現世に引き戻そうとしたのはお前だろう』
「だけど、『儀式』は為されていない!」
『今のわたしは魂だけの存在。言うなれば幽霊だ。幽霊が肉体を持たずに現世に在ることはそれ程不思議ではあるまい?』
「…っ、」
 尚も何か言おうとした式を仕草で留めて、『玄冬』はクロに視線を戻す。
『幼子……クロと言ったか。泣くな。お前の感情はわたしに響く。“儀式”を経ずして現世に引きずり出されるほどに。生まれたて――というのも少々語弊があるが――そのせいだろう。今暫くでいい、少しだけ抑えてはくれないか』
 その言葉に、クロは肩で息をしながら戸惑ったように少し俯き――少しして『玄冬』を見上げ、頷いた。
『さて、』
 そう言って、『玄冬』は式に向き直る。
『私が“儀式”を経ずにここに居る理由は先ほど口にした通りだ。本来ならば、恐らく現世に降りた時点で、そこな幼子を“器”としてしまう可能性もあったろうが――』
 『玄冬』が悠を見た。そうしてクロの胸元――彼女が栞を収めた辺りに目を遣る。
『術式によって幼子の魂は守られているようであったからな。降りてこようと問題はないと判断した。……良い機会であろうしな』
 最後は呟くように、そしてどこか寂しげに言って、『玄冬』はふわりと式の元へ移動した。
『…式』
 呼びかけられた式は、どこか怯えるように足を退いた。けれどそうして空いた距離を、『玄冬』は無言で詰める。式の顔が泣きだしそうに歪み、何かを拒むように、何かを否定するように、力無く首が横に振られる。
 それに痛ましげに目を伏せて、『玄冬』は静かに語り始めた。
『わたしは何度もお前に言ったろう。……“死”は覆せないものだ。覆してはならないものだ。お前の力を以てしても、それは不可能だ。だが、お前はそれを認めようとしなかった。沢山の犠牲や歪みと引き換えに、“願い”を叶えることを選んで――そうして“ここ”も、お前も、取り返しのつかないほどに歪んでしまった』
 『玄冬』が目を細めて桜の木を仰ぎ見る。式はまた、怯えるように肩を震わせた。
『お前にそうさせてしまったのは、わたしたちにも責がある。……だが、式。今のお前は、わたしたちを喪った頃のお前とは違うだろう? そしてお前は、そのことを分かっているはずだ』
 確信の感じられる声音で言って、『玄冬』は微笑んだ。
 それは慈愛に満ちた笑みだった。優しく包み込むような、あたたかさに満ちた笑みだった。
「――私、は……」
 その先を紡げずに唇を震わせる式に、『玄冬』は笑みを深める。
『良いのだよ、式。お前のそれは、わたしたちへの裏切りではない。わたしたちがお前に与えたいと願い、けれど叶わなかった変化なのだから』
 そう言った『玄冬』に、式は何かを言おうとして、けれど何も言葉にならなかったように唇を引き結び、顔を俯けた。
 それに苦笑した『玄冬』が、式の耳元に何かを囁いた。そうして悠とクロに向き直って居住まいを正し、深く深く頭を下げたかと思うと、あたかもその存在が夢幻であったかのように、すぅっと消えていった。
 痛いほどの静寂が辺りを包み、まるで時が止まった錯覚さえ起こしそうな空間で、真っ先に動いたのは式だった。
 どこか呆然とした表情で、並び立つ悠とクロをその視界に映す。
「……もう、『玄冬』の『儀式』は行えない。――…クロ」
名を呼ばれたクロが、ぴくりと肩を揺らす。式の声は淡々とした感情を窺わせないもので、『儀式』の前に言葉を交わした時の事を髣髴とさせる。
「君はもう、『封破士』でも『器』でもない。私の願いが叶う事は、未来永劫有り得ない。『玄冬』に属する者も、もう必要ない。……だから、」
 式が踵を返す。悠達からは、もう表情を窺う事も出来ない。
「望むのなら、どこへなりと行くといい。どこでどう生きようと、私はもう関知しない」
 それだけ言って、式は静かに去っていった。
 暫くの間、悠もクロも動かなかった。ただ時折吹く風だけが、二人の衣服を揺らす。
「……あ、の、」
 どれほどの時間が過ぎたか、不意にぽつりと零された小さな声に、悠は傍らのクロを見下ろした。
 迷うように、何かを恐れるように視線を彷徨わせながら、クロは言葉を紡ぐ。
「さっき――これ、イヤリング…から伝わってきたの、は……本当、の、こと?」
 クロの問いに、悠は淡く苦笑して答える。
「勿論です」
 イヤリングを介して伝えた自分の『願い』すら本当だと思ってもらえないのなら、言葉で伝える思いは尚更信じてもらえていないのだろうと察せられて、苦笑が深まる。
 彼女の変化は目覚ましくとも、根本的な部分はまだ変わりきっていないのかもしれない。己への異常なまでの無関心は既に見る影もないが、他者から向けられる関心については、まだ実感として理解が及ばないのだろう。
 そう考える悠をよそに、尚もクロは、疑う、というより信じられないといった風に言葉を重ねる。
「わたし、が……一緒に居たいって…願ったから、じゃなくて?」
「クロさんも察してらっしゃるでしょうが、このイヤリングの効果は『強い願いの伝達』です。私自身がそう願っていなければ、クロさんに伝わる事はありません」
 事実を連ねた悠の言に、クロは少しだけ眉尻を下げて、弱ったように口を噤んだ。そして少しの沈黙の後。
「……そ、っか」
 呟くように言って、ほんの僅か、口端を少し上げただけの――けれど間違いなく『笑み』を浮かべた。
「――返答を、頂いていませんでしたね」
「……え?」
 戸惑ったようにクロが悠を見上げる。その夜色の瞳を見下ろし、悠は言葉を続ける。
「私の『願い』……共に生きては頂けないか、と伝えた――訊ねた、その答えを」
 クロが息を呑む。見開かれた瞳が悠を映す。
 長い長い沈黙――その果てに、クロは僅かに顔を俯けて、幾度も幾度も躊躇った末に、震える声で告げた。
「わたし…も、悠さんと、一緒に、――…生き、たい」
 クロの返答に、悠は自然と笑みが浮かぶのを知覚する。それは好奇からのものではなく、先に浮かべた苦笑でもなく、そして『愉悦』によるものではない――…純粋な『喜び』からの、笑みだった。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2703/八重咲・悠(やえざき・はるか)/男性/18歳/魔術師】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、八重咲さま。ライターの遊月です。
 「玄冬流転・陸 〜大寒〜」へのご参加有難うございます。

 『玄冬流転』最終話、如何だったでしょうか。
 色々ありましたが、とりあえず、『玄冬流転』はこれにて終幕ということになります。
 とはいえ、生ある限り、クロと八重咲さま、2人のお話はまだまだ続いていくことでしょう。
 最終話までお付き合いくださり、有難うございました。

 ご満足いただける作品になっていましたら幸いです。
 最後まで書かせていただき、本当に有難うございました。