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<東京怪談ノベル(シングル)>


Sister & Demon


 司令に呼び出され、彼女は指令室に立っていた。
 美しいスタイルに、色っぽいタイトスーツ、タイトスカート姿。スレンダーで女性らしく、見る者を惹きつける。派手さもなく、露出度も低い普通のスーツを着ているのに、なぜこんなにも艶やかに見えるのか……。それは彼女の美貌と、内面から溢れる色香のせいなのだろう。
 彼女は『教会』と呼ばれる世界的組織に属する武装審問官、白鳥瑞科。
「貴方には、ある廃墟に潜入していただきます」
 教会の司令官は、瑞科に向かってそう言った。
 彼女の属する『教会』は太古から存在する秘密組織で、人類に仇なす魑魅魍魎の類や組織をせん滅する事を主な目的としており、世界的な影響力を持っている。
 瑞科も今までに数多くの指令を受け、それをこなしてきた。
「ターゲットは、この男……」
 司令官に渡された資料を見る。
 鬼鮫と呼ばれる、がっしりとした体躯の男だ。ジーンキャリアという、魔物の遺伝子を投与しその能力を得た者で、我流の剣術の使い手と資料にはある。
「この男の暗殺が、今回の指令なのですね」
 瑞科の言葉に、指令は頷いた。
 瑞科を詳しく知らない人々は、この美しい女性が暗殺指令を受けるような者だとは夢にも思わないだろう。
 しかし瑞科は、教会随一の実力を持つ武装審問官、戦闘シスターなのだ。数々の任務を完璧にこなしており、之まで失敗は一切無い。それどころか、敵には指一本触れさせずに勝利してきた。
 瑞科はまさに、高嶺に香り高く凛と咲く、美しく強い百合の花だ。
 司令官に優しく微笑み頷き返すと、瑞科は指令室を出る。
「貴方に、神のご加護がありますように」
 彼女の背中に、司令官の声が聞こえた。


 自分専用の部屋へ歩きながら、瑞科は髪をほどいた。ふわりと、彼女の甘さが香る。
 部屋に入ると窓に薄いカーテンを閉め、柔らかな光の中で彼女はスーツを脱いだ。
 どきりとするようなグラマラスなプロポーション。誰もが憧れるその白い肌、豊満な肢体を晒して、瑞科はするすると一枚ずつ脱いでいく。
 やがて下着だけになると、その艶やかな姿のままで瑞科はクローゼットへ向かい、一式の衣装を手にした。
 瑞科に合わせて作られた、戦闘用シスター服。最先端の素材の、特別製だ。
 それを持ったまま鏡の前へ行き、自分の姿を映し出す。瑞々しく、うっとりとするような色気の漂う彼女が映る。戦闘員でありながら、その身体には1つの傷痕もない。
 整った顔、すらりとした手、柔らかく豊麗な胸、綺麗なラインを描くウエスト、腰、長く形の良い優美な脚。瑞科は鏡の前でくるりと回って、身体の具合の悪いところはないか確かめた。
「うん」
 瑞科は鏡の中の自分に頷くと、着替えの中からコルセットを取り出した。少し屈んで上半身にコルセットをつけると、彼女の美しい胸元が強調されるような形になる。
 さらりとこぼれた髪を耳にかけ、次はシスター服を。漆黒の色のそれは瑞科の身体にきちんと合うよう作られているので、身に纏うと身体にピッタリと張り付き、ボディラインが浮き出しになった。モデル顔負けの見事さだ。通常のシスター服とは違い、胸元が開いているそれからはたわわな胸がのぞいた。
 また、ふくらはぎまで隠れるような長さのそのシスター服には戦闘で走り回れるように腰下まで深いスリットが入っているので、瑞科の美脚を大きく晒す。今は下半身に下着しか身につけていないので、太股から足先までがすべて見えていた。先ほどのスーツ姿とはまた別の色気をまとった、悩殺的な姿だ。
 その足に、太股に食い込むようなニーソックスを履く。ニーソックスは彼女の足に吸い付いて、履いていても見事な脚線美がわかる。
 そういえば先日、どうしたらそんなにスタイルが良くなるのか、と同僚に訊ねられた。
(そう訊ねられましても……)
 瑞科はそれを思い出し、ちょっと困ったように笑いながら首を傾げた。別に自分はこれと言った何かをしているわけではない。ただ日々真面目に修行をし、バランスの良い食事を取っているだけだ。
 そう、彼女の身体は美しいだけではなく、整っていてとてもしなやかだった。戦闘員である彼女にとって、この身体は武器でもある。ターゲットを狙って走り、跳び、武器を操ることが出来るように鍛えられた身体は、健康的で綺麗な色をしている。
 実はその身体は相手を悩殺する武器としても使えるのだが、本人はそのことに気付いているのか、いないのか。
 ニーソックスの上からは、膝まである編み上げのロングブーツを着用する。すらりとした瑞科の足にロングブーツは良く馴染み、またよく似合っている。もちろんこれも彼女用に作られているので、つま先も踵も踝も、ぴったりだ。
 足の装備を整えると、次は腕へ。白い布製のロンググローブは二の腕ほどまでの長さがあり、刺繍で装飾が施されている。何気ない装飾ではあったが、女性である瑞科にはそのことが少し嬉しかった。
 そしてそのロンググローブの上から、手首までの黒いグローブをはめる。こちらは革製で、金色の装飾が付いていた。
 手足の具合を確かめ、瑞科は仕上げにふわりと2枚の布を広げる。上質な純白のヴェールとケープ。それらを付けた瑞科は、何とも言えない色気と美しさで輝く、戦闘シスターとなった。
「良いですわね」
 1人呟き、瑞科はグローブをはめた手を、握ったり開いたりした。その指先が、パチ、と静電気のような音をたてて小さく光る。彼女の操る、電撃の技の調子も悪くないようだ。
 瑞科はもう1度鏡の中の自分と目を合わせると、投げナイフを携え、そして一振りの剣を手にし、部屋を出た。


 空は宵闇。その暗さの中で、瑞科の白い肌は淡く浮き上がって見えるようだった。そして戦闘服を身につけた彼女の美しさは、暗闇の中でも際立っていた。いや、暗闇の中だからこそ、だろうか。
 シスター服を着用したその姿は清純でありながら、どこか妖しい魅力があった。
 瑞科が歩くと、純白のヴェールとケープ、そして艶のある茶色の髪が風と戯れる。コルセットで強調された豊かな胸はなめらかで、青い瞳、赤い果物のような唇は、異性を惑わせる。
 グローブに覆われて露出度は低いのに、不思議と魅惑的な腕、優雅な指先。ニーソックスに隠れていない太股がシスター服のスリットから見え隠れし、瑞科の豊満な身体からは匂い立つような色香が感じられた。
 瑞科の出で立ちは、刺激的ではあるとはいえ、確かにシスターだ。しかしその手にある剣だけが、異様だった。それは彼女が武装審問官、戦闘シスターである証。
 シスター服を着た彼女がこの剣で任務のターゲット達に与えるのは、祈りと永遠の眠り。ターゲット達は非道な行いを、自らの命をもって贖うことになるのだ。
 瑞科は、その清らかな白い肌に傷1つ受けることなく任務をこなしてきた。
 彼女とその剣が、ターゲットを逃すことはない。そう、もちろん今回も。
 瑞科は、ふ、と微笑むと、その長い髪とヴェールをなびかせ、ロングブーツの踵を鳴らして歩いていく。その先に、ターゲットのいる廃墟が見えた。