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<東京怪談ノベル(シングル)>


遺伝子の汚染
 神聖都学園高等部、二学期初日。男子が大勢欠席し女子が目立つ教室で玲奈の担任が重大発表をした。
「落ち着いて聞いて欲しい。殆どの男子生徒が病気で中退したと言うことだ」
 なんでも寝食を忘れるほど動画サイトの虜になり遂に倒れたそうだ。
 墓場で歌う美少女CG歌手が人気でネット廃人続出とのこと。
 玲奈は雫に依頼して大元の動画を探してもらった。
 故人の歌を悉くカバーする彼女を視聴する玲奈と雫。そこには、常識では感じられない気を感じる。
「これは……」
「霊障が原因ね」
 二人は霊障が原因だと推定した。この美少女CG歌手には霊障が仕組まれているのだ。
 そこで玲奈はエルフ譲りの喉を震わせ、美少女CG歌手を名指しでライバル視する動画を投稿した。
 一本、二本……暫くスルーが続くが次第にウザくなったのかアンチが湧く。殺人予告まで出る始末。
「ひどいわねぇ」
 ネットの匿名性を利用しての誹謗中傷に凹む玲奈。
「これがネットよ。ネット浄化法も必要かもね」
 今度はコミック規制に続いてネット規制も必要かもしれないと雫が言う。
「それは恐ろしい話ね……とりあえずこれでよし、っと」
 玲奈は玲奈の住所が推定出来るプロフで刺客を釣った。
 歌手の作者だという人物が
「お前がネカマで無いならオフ会に来い」
 と玲奈を挑発。
「もちろんよ」
 長髪を受けて立つ玲奈と雫。
 雫と二人で会場に向かった。そこは汗臭くむさ苦しい道場跡だ

「廃屋で格闘技ごっこ中の事故……公式な死因はそれが良い」
 玲奈が会場に付くなり死を宣告する作者、は黒衣の女だった。
「オフ会にしてはずいぶんとむさくるしい場所だこと」
「余裕も今のうちよ……」
 事件を暴くべく乗りこんだ玲奈だが雫の同行は迂闊だった。
「女が何かをすると雫の体は中に浮かび、女の手元にすっぽりと収まる。
 雫は人質に取られてしまった。
「たすけて、玲奈!」
「三島 玲奈、覚悟!」
 女は雫を抱いたまま器用な足蹴りで攻める。
「なんであたしの名前を……」
「龍族に逆らうバカだからさ」
「……龍族ねぇ……脚の2、3本、へし折ってやるよ」
 玲奈は邪魔な制服を破り棄てブルマ姿で機敏に遮蔽物を避けつつ四肢を打撃する。
 その打撃が鬱陶しくなったのか敵は跳躍。玲奈も翼を広げる。月明りに黒衣と白翼が舞う。
 一瞬、女の口から吐かれた白い糸が月光に輝く。
「蜘蛛女!」
 玲奈が驚く。何と多数の男がインターネット回線で出来た蜘蛛の巣の虜になっていた!
「蜘蛛の天敵は蜂よ! お前の負けだ!」 
 玲奈の針が蜘蛛女に突き刺さる。
 毒を注入し蜘蛛女を動けなくする。
 獣化を解き皮膚を再生中、全裸坊主頭の玲奈に止めを刺され断末魔の女が告げる。
「愚かな娘よ。貴様の人間態は本来貴様が身籠るべき胎児の流用……貴様の穢れた遺伝子が原因で女が女を産む世が来る。故に我は健康な男子を温存すべく龍族の命で……」
 事切れる女。
 玲奈は絶句する。
 玲奈は獣人から人間態に戻る際に、何と自分自身を妊娠して、その体を新たな肉体として流用していたのだ。しかし女が女を産むという玲奈の構造は、人類の遺伝子汚染の元凶だったのだ。そのため、龍族の命令を受けた女郎蜘蛛の妖怪が正常な男のDNAを確保するために今回の事件を企てたのだという。
 玲奈が、ショックを受けないはずもない。
「玲奈、女同志は群れて耐えましょう」
「そうね、雫」
 雫の励ましに、二人は寄り添いあう。
「唇が紫ね、雫」
 言うが早いか玲奈が雫の唇を奪う。
「ん……」
「むう……」
 小鳥がついばむようなキスを繰り返す。
「ふふ……」
「うふふ……」
 笑いあう二人。
 手をつないで壁に寄り掛かる。
「どうしようか?」
「どうしようね?」
 女同士の他愛ない会話を、IO2の迎えが来るまでずっと続けていた。