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<東京怪談ノベル(シングル)>


貴重道具・獣の涙

「みなもちゃん! 結構貴重なレアアイテムを手に入れたよ!」
 今回の始まりは瀬名・雫のこの一言から始まった。
「貴重なレアアイテム、ですか?」
 海原・みなもは電話越しでやや興奮気味の瀬名に言葉を返す。
「うーん‥‥電話じゃちょっと説明しにくいし、獣の証みたいな事もあるかもしれないから、今からみなもちゃんの家に行っていい?」
「え? えぇ、大丈夫ですよ」
「分かった、それじゃ10分で行くから!」
 ぷつり、と電話が切れ、海原は瀬名を迎える為にちょっとだけ部屋の片付けを行いながら「‥‥獣の、証」と小さな声で呟いた。
 獣の証は以前に入手した呪具であり、装備をすると特定能力強化と獣スキル常時発動という便利な能力が発動されるものだった。
 しかし、メリットばかりではなくシステム上では『モンスター扱い』というデメリットも存在し、ログイン・キーにて無理矢理解呪した結果になった。
(モンスター扱いになると、店にもいけなくなるから回復アイテムも買えなかったし‥‥それさえなければ良い装備品だったんですけど)
 はぁ、と小さなため息を海原が再び吐いた所でインターホンがなる。
「いきなり電話して、いきなり家に来てごめんねっ!」
「いいですよ、いつも雫さんにはお世話になってますから」
 瀬名を部屋に迎えた後、パソコンを起動して瀬名が持つ『獣の涙』というアイテムを海原に見せてきた。
「この前、ちょっと難易度の高いクエストをクリアしたら入手したんだよね。モンスターを捕獲して、装備したキャラクターに追従させながら戦闘時に攻撃させる事が出来るアイテムなの」
 モンスターを捕獲する、という言葉に「そういう便利なアイテムがあったんですか?」と海原は目を瞬かせながら言葉を返す。
「うん、捕獲できるのは普通のモンスターだけだし、アイテムを使用させる事くらいは出来るみたいなんだけど、装備を変更したり、成長させたりが出来ないから趣味以外で使う人はあんまりいないみたい」
「へぇ‥‥そうなんですか」
 まだまだ自分の知らないアイテムがあるんだ、と再確認し、海原は全てのクリアを出来るのか少しだけ心配になる。
「それと、これも見つけたから買ってきた」
「解呪アイテム?」
「そう、しかも滅多に出回らない最高レベルの解呪アイテム! 知り合いに持ってる人がいたからレアアイテムで交渉してもらったの!」
「でも‥‥何で解呪アイテムなんか‥‥?」
「これで獣の証を使用したみなもちゃんを使役できないかなって思ったの。獣の証は自身をモンスターにしちゃったでしょ? だからこの『獣の涙』も装備して、獣の証の特性を逆手に取ったらどうかないって」
 確かに試してみる価値はあるかもしれない、と海原は思う。獣の証、獣の涙、双方を装備したら一体どうなるのか――想像も出来ないけれど、これからの事を考えるならば試す価値は十分にあった。
「分かりました、やってみましょう」
「でも‥‥ちょっとだけこれを提案するのに迷ったこともあったんだ。危険な目に合うのはみなもちゃんだし‥‥もしかしたらって思うと‥‥」
 瀬名は俯きながら「もし失敗してもあたしには何のリスクもない。無責任だよね」と悔しそうに言葉を付け足した。
「いいえ、あたし一人ではきっともう挫けていたかもしれない。だから雫さんがいてくれたことがあたしにとっては凄く心強い。だから気にしないで下さい」
「みなもちゃん‥‥」
「それに、デメリットのことばかりを考えていたら、きっと前には進めません」
 海原はそう言いながらみなもに渡された『獣の証』と『獣の涙』を装備する。
「装備されて、前と同じメッセージが出てるね‥‥あ! ちょっと見て!」
 瀬名の言葉に海原が画面を見ると『獣の涙は耐え切れず、壊れてしまいました』と言うメッセージが表示されている。
「‥‥やっぱり、駄目だったかぁ‥‥これが使えれば能力は上がるし、ちゃんと成長もするからかなり有利になると思ったんだけどなぁ‥‥」
 瀬名が「ごめんね、役に立たなくて」としょんぼりしながら呟くと「いえ、大丈夫ですよ」と解呪アイテムを使用する。
 瀬名が最高レベルの解呪アイテムというだけあって、獣の証は無事に外すことが出来た。
「よ、良かった。そのアイテムで外せなかったらまたログイン・キーに頼るしか出来なかったから、ちょっとだけ心配だったんだ」
 でも、と瀬名は言葉を続ける。
「一体、ログイン・キーってどういうシステムが組まれてるのかな?」
「システム‥‥考えたこともなかったです」
「それにフルリアってキャラとあすらってキャラ。一体誰が使ってるのかな? それとも完全にプレイヤーのいないキャラなのかな」
 海原が会った二人はプレイヤーのいない存在のように思えた、だけど実際にプレイヤーがいないのかなんて海原が知るすべはない。
「みなもちゃんが巻き込まれてる事件、きっと一筋縄ではいかないんだろうね‥‥。悔しいなぁ‥‥あたしも手伝えればいいのに」
「その気持ちだけで十分ですよ」
 海原は笑って瀬名に言葉を返す。
「でも、何か獣の証をちゃんと活用できる日が来るような気がするんだよね。何か方法がないかあたしも調べてみるよ」
「えぇ、あたしも調べてみます――とは言ってもネットでしか調べられないでしょうけど」
 苦笑しながら海原が呟くと「お互い、頑張ろうね」と瀬名が言葉を返してきた。
「よし、せっかく来たんだし何かのクエストに行ってレベルでもあげよう! あたし、みなもちゃんに付き合うからさ!」
「ありがとうございます、それじゃ一緒にお願いできますか?」
 海原が言葉を返し、2人はレベルに合ったクエストへと出発していったのだった。




―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――

海原・みなも様>
こんにちは、いつもご発注ありがとうございます!
最近は私事で普段より納品が遅くなってしまい、
本当に申し訳ございません。
ご感想の方もまだお返事できていませんが、嬉しく拝見させて
頂いております!

それでは、今回は書かせて頂き本当にありがとうございました!

2010/10/31