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<東京怪談ノベル(シングル)>


玲奈のドタバタ日記

「宇宙は無から生じた説と質量保存の法則は矛盾するわよ。一体どうなっているの、鍵屋」
 三島・玲奈が鍵屋・智子に尋ねると、返答に窮した鍵屋はひとつの機械を取り出してそれを操作し始めた。
「ちょ、ちょっと、なによそれ?
 玲奈の質問に鍵屋は動じず「召喚機」と答えた、
 そして四畳半の卓袱台を挟んで鍵屋、玲奈と一匹の龍が対話している。
「……宇宙の無限膨張は見掛けの物だ。作用反作用は習ったろ?なぜ無限収縮が無い?」
「確かに」
「運動方程式も習ったな?」
「質量×加速度の二乗ね」
「そこでだ!膨張分の加速度を虚数で書く」
「虚数の二乗は−だから…あーっ綺麗に相殺されるぅ」
「徹頭徹尾、宇宙は常にありき。だが移項すれば虚無から生じたとも言える」
「流石提督ぅ♪」
 玲奈号の艦長であり提督を務める穏健派の龍族は美少女に抱きつかれ照れ臭そうだった。
「昼飯にするぞ姫君共」
「はーい」
「何がいい?」
「うーん…おまかせ」 
「わかった。では私に任せるがいい」
 そう言われておとなしく待っていた二人だったが、やがて焦れてくる。
「ねー、何つくってんの?
 玲奈が鍋を覗き込むとお湯が沸かしてあった。
 そして鍋の隣にはパスタの袋。
「うわーっ、パスタなんだぁ」
「パスタか……いいわね」
「うお、なんだお前達。いいから黙ってあっちにいっとれ」

「ねえ玲奈、どうせパスタをやるなら本格的に行きたいわよね。ソースは何を使うつもりだったの?」
「ん? そこにあるレトルトの……」
 鍵屋の言葉に龍族が答えると、鍵屋は。
「駄目。絶対駄目!」
 と叫ぶ。
 そして
「玲奈、財布持って。この駄目龍族に、パスタの何たるかを教えてあげるわよ」
「う、うん」
 どんがらがっしゃ〜ん。
 玲奈が財布をひろおうとして転ぶ。
 パンツが丸見えだ。
「こら、玲奈、パンツが見えてるわよ」
「ひゃわわ。提督見てないよね?」
 提督は顔をそむけて
「うむ。見てなどいないぞ」
 と言う。
「あやしーなー。それよりも買い物に行こう」
「ええ」
 こうして三人は龍族の提督を真ん中に二人がその腕をとって街を闊歩する姿を晒したわけだが、映画か何かのロケハンと思われたのか全く気にされていない。
 エプロンをしながら食材を選ぶ龍族というのは非常にシュールなのだが、誰も相手にしない。相手にしないほうがいいと直感で判断したのかもしれない。
 ともかく玲奈と鍵屋が
「今日、なににする?」
「ペペロンチーノがいいな、鍵屋」
「おーけー。じゃあ、とりあえずにんにくと鷹の爪ね」
「それからベーコンにバジルね」
「それからオリーブオイルとコンソメも必要だな」
 鍵屋に玲奈に提督と順番に発言する。
「付け合せも欲しいわよねえ」
「ベーコンがあるんだったらポテトマッシュサラダはどう?」
 玲奈と鍵屋がキャッキャウフフしているのを提督は遠くから眺める。
「いいアイデアね。それからキャベツの千切りを下に敷きましょう。ってことでキャベツね」
「となるとスープも作れるわね。玉ねぎを買っていけばポテトとキャベツと玉ねぎのコンソメスープができるわよ」
「ナイス鍵屋。それいただき」
 そうして二人はどんどんとかごに食材を詰め込んでいく。
 レジに着くと龍族の提督がレジに買い物かごを置いた。
「何かのロケですかー? TVカメラ見当たりませんけど」
 レジの係が聞いてくる。
「後ろで隠しカメラで撮影してるわ。さすがに店内でおおっぴらに撮影するのも不味いだろうし」
 鍵屋がフォローを入れる。
「それもそうですね。ってことは私も写ってるのかな……きゃーっ! きゃーっ! 放映日時決まったら教えてくださいね」
「あ……うん」
 玲奈が勢いに押されてそう答える。
 そして三人は玲奈宅に帰ると料理を始めた。
 提督はパスタを茹でる。
 男は黙ってアルデンテ。
 そして、ペペロンチーノの作り方にもツッコミを入れてくる。
「にんにくは薄切り、ベーコンは細切りに。鷹の爪は種をのぞいて三等分にちぎる」
「フライパンにオリーブオイルを敷いたらにんにくと鷹の爪を入れ、ベーコンとドライバジルを加える。
「ベーコンから油が出始めたらコンソメを入れて、パスタの茹で汁を混ぜる。よいっとな」
 茹で汁を混ぜる。
「そして塩を入れて味を整える」
「玲奈、皿を持ってきてくれ」
「はーい」
 食器入れから皿を持ってくる玲奈。だが……
 どんがらがっしゃーん。
「ああ、お皿が壊れちゃった」
「玲奈、あなた怪我はない?」
 鍵屋が心配するが、玲奈は平気だと答える。
「すぐに掃除して新しい皿を持ってこい。もうすぐ出来上がるぞ。あと1分だ」
 そうなるとうかうかしていられない。
 大きいのは手で拾って新聞紙に包み、細かいのは掃除機で吸う。
 その頃には提督は手際よくパスタとソースを絡め、同時にマッシュポテトとスープに味付けもし、料理は完成した。
 そしてそれをテーブルに並べる。
「うわあ、美味しそう」
「うむ。味見をしたがうまいぞ」
 玲奈の声に提督が頷くと三人はいただきますをする。
 玲奈のドタバタ日記はまだまだ続く。