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獣の涙・アナザーストーリー
「みなもちゃん! 結構貴重なレアアイテムを手に入れたよ!」
今回の始まりは瀬名・雫のこの一言から始まった。
この話は、海原・みなもが選ばなかった道の物語。彼女が選ばず、だけど確かに道が存在していた物語。
「獣の証と獣の涙、一緒に使ったらどうなるかな?」
瀬名は首を傾げながら、みなものアイテム欄を見る。
さきほど、レアアイテム・獣の涙をみなもへと渡しているので、みなものアイテム欄には『獣の証』と『獣の涙』が並んで表示されている。
「あ、でもみなもちゃんが獣の涙を使っても意味ないかもしれないね‥‥」
だったら〜、と瀬名は再び操作して獣の涙をみなもから自分のキャラクターへと再び移動させた。
「雫さん?」
海原が首を傾げながら瀬名を見ると「良い事かんがえたんだよ」と瀬名は笑って言葉を返した。
「獣の証を使ったら、みなもちゃんのキャラクターがモンスター扱いになったじゃん?」
「えぇ、店も利用できなくて困った状況になりましたよね‥‥」
「だから、この獣の涙はモンスターを捕獲して使役する事が出来るんだよね」
瀬名が「結構ほしがってる人が多いんだよ、これ」と言葉を付け足すと「へぇ、そうなんですか?」と海原も言葉を返した。
「うん、だからあたしがこれを装備して、モンスター扱いになっちゃってるみなもちゃんを使役できないかなーって思ったんだけど」
瀬名の言葉に「あぁ、確かにそういう考えもできますね」と海原は言葉を返す。
「もしかしたら‥‥またログイン・キーを使うことになるかもしれないから、言おうか言わないか悩んだけど‥‥」
瀬名は少し俯きながら呟いた。ログイン・キーを使う、それは海原を危険な目にあわせる事だと瀬名も分かっているからこそ言いづらかったのだろう。
(ログイン・キーを使う事になるかもしれない‥‥でも、これからの事を考えたら、試してみる価値はあるかもしれない‥‥)
これから先、どんな事が起きるか分からない状況に立たされている海原にとって、どんな事でも可能性があるならばやってみようという気持ちになっていた。
「やってみましょう」
海原が呟くと「い、いいの?」と瀬名は言葉を返す。
「何事もやってみなくちゃ結果なんてついてきてくれませんから」
微笑みながら海原は言葉を返し、瀬名は獣の涙を、海原は獣の証を装備してみたのだった。
「‥‥なんか、意外と相性いいよね」
あれから海原と瀬名は結果を確かめる為によくレベル上げの場となっているフィールドへとやってきていた。
最初はどうなるかと思っていた二人だったけれど、相性もよく、特に戦闘面ではみなものステータスが上昇している事もあり、とても有益な結果を出していた。
(私がステータス上昇、それに雫さんの戦闘補佐‥‥本当にやってみてよかったかも)
海原は画面を見ながら心の中で呟いた。
(これから私は色々な事に巻き込まれる‥‥生き残るためだったら、たとえ卑怯といわれている裏技でもチートでもいいから、強くなりたい)
海原は震える手をぎゅっと拳を作って誤魔化す。
(でも‥‥)
やっぱり裏技やチートには引け目を感じる、と海原は心の中で言葉を付け足した。生真面目さゆえに望んだことだったが、生真面目さゆえに後悔することもあった。
「でもこれでいけば最強っぽくない?」
瀬名が海原に問いかけると「そうですね、これなら負ける気がしません」と言葉を返す。
「よし、それじゃ次のフィールドに行ってみちゃう?」
「ですね。行きましょう」
「‥‥あ」
ぱちり、と目が覚める。
(ゆ、夢‥‥?)
天井を見ながら海原は心の中で呟く。
(もしかしたら、自分でも気づかないうちに結構追い詰められているのかもしれないですね‥‥あんな夢を見るなんて)
はぁ、と小さなため息を吐いた後、くしゃりと髪をかきあげる。
「絶対に負けない方法なんて、きっと存在しないはずなのに」
夢の中の自分はたとえ卑怯な行為であろうと受け入れていた、そんな自分が少しだけ恥ずかしくなった。
「どんな事でも――それじゃ、私はLOSTの異変を起こした人と同じになってしまう。追い込まれたならば自分の力で立ち上がらなくちゃ‥‥」
海原は瞳を閉じ、大きく深呼吸をする。
「今日も一日が始まる‥‥頑張ろう、全てを解決するために‥‥」
ふぅ、と海原はため息を吐き、今日も一日頑張ろうと外を見たのだった。
これは海原の先に待つ数多くある未来の中にあった一つの道。
彼女が『選ばなかった』道。
彼女が選んだ道はつらく険しい道のりへと続くだろう。
だけど、彼女が、彼女を友と呼ぶ仲間たちとなら、きっと切り抜けることが出来る道。
夢の彼女が選んだ弱い道ではなく、現実の強い彼女が選んだ道――‥‥。
―― 登場人物 ――
1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生
NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人
――――――――――
海原・みなも様>
こんにちは、いつもご発注いただきありがとうございます!
今回は夢オチのシナリオと言うことでしたが、いかがだったでしょうか?
楽しんでいただける内容に仕上がっていれば嬉しいです。
それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました!
2010/11/29
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