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食べ物は大事に
「そろそろ巨人の城が見えてくる頃よ!」
藤田・あやこは自分の後ろをついてくる部下達に言葉を投げかける。
何故こんな状況になっているのかといえば、詳しく話すと長くなるのだが‥‥簡単に言ってしまえばバレンタインのチョコを納品しようとした時、納品店の店先にニョキニョキと巨大な幹が生えだしたのだ。
勿論、店先に出てこられれば「邪魔」としか言いようがないので、藤田は部下を使って切り倒そうとしたのだが、切り倒す為に用意した斧の方が強度で負けてしまい、斧が欠けてしまったのだ。
このままにしておけば営業妨害もいい所なので、藤田は部下を連れて巨大な幹の先にいる人物に会いに行き、巨大な幹を撤去させようという事になったのだ。
「それにしても疲れるったらないわね‥‥これを登る方の身にもなって作れって言いたいわよ」
はぁ、と大げさにため息をはきながら藤田は呟く。
「ん? 姉御! 何か見えます!」
部下の一人が遥か先に見える物体に気づき、藤田へと声をかけた。
「一体どんな巨人が‥‥ってえぇ!?」
双眼鏡を使い、遥か先の『物体』を見た藤田だったのだが――予想もしていなかった物が視界に入ってきて、さすがの藤田も驚きを隠せなかった。
遥か先にある物体――‥‥それは何故か可愛らしいお菓子の家。
「いやいやいやいや、ありえないから! 何でこんな巨大幹の先にあるのがお菓子の家!?」
「しかし、姉御‥‥歩き詰めで疲れました」
「同じく。お腹も空きました」
部下達が口々に言い、藤田もぼんやりと考える。
(確かにお腹は空いたし、歩き詰めで疲れてるのよね)
心の中で呟いた後「分かったわ、お菓子の家で休憩にしましょう」と言葉を部下達に投げかけ、休憩をする為にお菓子の家へと向かい始めたのだった。
お菓子の家と言うこともあり、近くに寄れば甘い香りがして藤田や部下達は余計に空腹を感じてしまう。
無理もないだろう。カステラの壁、飴の柱、チョコの椅子。空腹時にそんな物が目の前にあれば「食べてください」と言われているようなものなのだから。
「ちょっとだけならいいわよね」
そう呟き、藤田達はお菓子の家に手を出し始めたのだが――‥‥お菓子の家を食べ初めてから数分も経たないうちに急な眠気に襲われ、そのままパタリと倒れてしまった。
「ん‥‥」
どれくらいの時間が経過したのか分からないが、藤田達が目を覚ますと体の自由を奪われ、目の前には小さな小人達が立っている。
「金の雌鳥を捕まえたぞ!」
小人達が口々に「おお!」などと言っているが「金の雌鳥?」と藤田は眉をひそめながら言葉を返す。
「貴方のことだが」
小人の中で、一番目立つような服装で偉そうな態度の小人――小人の王が藤田に告げると「誰が雌鳥よ!」と藤田が反論する。
「はぁ? 意味が分からないんだけど‥‥」
「実は貴方のことは前々から存じ上げていた。初めて貴方を見た時から私の胸に衝撃が走ったような感覚が――」
小人の王は大げさな身振り手振りで藤田に求愛をするのだが‥‥肝心の藤田は「おーっほっほっほ!」と高らかに笑いながら王の言葉を遮った。
「私、身長が180cmの男性が好みなの。貴方、どれだけ頑張っても180cmの男性になる事はないわよね」
ふふ、と藤田は不敵な笑みを浮かべながら王の求愛をばっさりと斬り捨てるように断った。
「な、な‥‥」
断られた王は唖然とした様子で、数秒の間ぽかんと口を開けていたが、酷い断られ方をされたという事を理解すると顔を真っ赤にしながら「赤鬼!」と自らに従う赤鬼を藤田へと嗾けた。
「くっ」
赤鬼の攻撃で縛られていた縄が解け、藤田は霊剣を取り出し、華麗な動きで赤鬼を斬る。
「全てにおいて貴方が私に適う事はないのよ」
不敵な笑みを浮かべたまま、霊剣を小人達に向け「早くこれを撤去させなさい」と言葉を投げかける。
さすがの王も愛より命が惜しいのか「わ、わかったから」と言って、そそくさと何処かへと行ってしまった。
その後、藤田達が無事に地上へと降りた後、巨大な幹は影も形も消え、普段通りの景色が戻ってきたのだった。
後日、草間武彦に今回の事で調査を依頼したのだが――小人達は珈琲豆の精だという事が判明した。
しかも豆まきで投げられたせいで今回の暴挙に出たのだろうと草間武彦は言葉を付け足す。
「あんた達! ちょっと来なさい!」
勿論、食べ物を粗末にした部下達に藤田の雷が落ちたというのは言うまでもなかった。
―― 登場人物 ――
7061/藤田・あやこ/24歳/女性/ブティックモスカジ創業者会長、女性投資家
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藤田・あやこ様>
こんにちは、今回執筆させていただきました水貴です。
今回はご発注をありがとうございました。
お待たせして本当に申し訳ございませんでした。
内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていれば良いのですが‥‥。
それでは、今回は書かせて頂きありがとうございました。
2011/2/4
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