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<東京怪談ノベル(シングル)>


虚構と現実
 某ネット喫茶――
 端末全てが突如ウィルスに感染し、暴走していた。再起動を繰り返したりデータを消去したり逆にデータを書き込んだりと様々な悪さを繰り広げている。
 瀬名・雫はオカルトホームページの更新のために取材先から帰る際にこのネット喫茶により作業をしていたのだが、突如の自体に困惑していた。雫はホームページこそ作れるがパソコンに詳しいわけではない。そこでつい三島・玲奈を携帯で呼び出し事態の沈静化を図ろうと考えた。
 玲奈はワクチンソフトを持ってきて端末にインストールするがそれが効果を発揮している様子は見えなかった。そもそも、ウィルスたちにはワクチンソフトを無力化するためのプログラムが存在するのが常であり、真っ先にワクチンソフトの期間のデータが破壊される。インストールし、再起動してアップデートをかけないと完全な状態にならないワクチンソフトは再起動の時にレジストリの書き換えによってウィルスに破壊されていた。
 そして二人とネット喫茶の従業員が途方に暮れていると、突如空間に青い光が出現した。
 その光は3Dホログラフィックのように次第に実体を持ち始めやがて青い龍族の姿になった。
「告げる。すべての都民に告げる。すぐさまインターネットを切断せよ」
 龍族はネットを切断するように警告をしてくる。
「龍族!?」
 玲奈は龍を見るなり戦闘態勢をとった。だが龍は
「余は雫の味方だ。忠告を聞け……」
 という。しかし玲奈はその言葉を無視して
「今度は何を企んでいるの、龍族!?」
 と威嚇する。
「余は龍族の陰謀から雫を守るために此処に来た」
「穏健派? ううん……何の罠?」
 玲奈は罠と疑う。
「罠ではない。これは忠告だ。インターネットを使うな」
「冗談じゃないわ。インターネットがない生活なんて考えられないわよ!」
 雫が叫ぶ。
「現に大変なことになっておるではないか……」
「それも龍族の仕業? マッチポンプじゃないの?」
 青い龍の言葉に、玲奈は聞く耳を持たない。
「あきれ果てたな……全く聞く耳を持たぬとは……忠告はしたぞ」
 龍は完全に呆れてしまい、その場から姿を虚空に消した。
「なんだたのかしら?」
「さあ……」
 玲奈と雫は顔を見合わせる。
「それより、いちどあたしIO2にもどる。最強のワクチンプログラムを取ってくる!」
「わかった。付いて行くわ」
「おーけー」
 そうして二人はIO2へと向かった。
 

 ――一方そのころ
 溶岩滾る富士山火口――IO2に倒されたはずの龍族が部族会議をしていた。
「クックックック……あーっはっはっは。三島玲奈、愚也、愚也」
「これで問題なく計画を実行出来る」
「龍脈の支配は完了した。あとは東京都民を蜂起させるだけだ!」
「AI装置を起動せよ」
 その言葉に下っ端らしい龍族が、同人誌即売会の会場で奪った妄想具現化AI装置を起動させる。
 ブーンと振動音がして装置が起動する。
 そして、玲奈と雫がネット喫茶に戻ってきた頃――

 店内のPCのモニターが明滅し、客が暴れだした。
 PC本体をLANケーブルや電源を引きちぎって持ち上げ、壁や本棚を破壊する。
 どうやら、凶暴化と同時に怪力化もされているようである。皆、目を光らせ理性を失い暴れまわっている。
 モニターを目にした雫も、暴れだした。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!」
 雄叫びを上げ玲奈の胸元に掴みかかる。
 玲奈の上着が怪力化された雫の力によって破けると、その瞬間玲奈は動きを取れるようになった。
「ごめんね、雫」
 玲奈は上着の残骸で雫の顔を覆い、その隙に雫の背後に素早く回りこみ、スカーフで手を縛る。そして首に手刀を叩き込み気絶させる。
 その後玲奈は店内の客を次々と手刀で気絶させると店の外へ出た。
 
 ――都内各所
 その時、インターネットに繋がったパソコンや携帯電話、スマートフォン、タブレットなどを見ていたユーザーが同時に暴れだした。
「――まずった。これがあの青い龍の言ってたことだったのね……どうしよう……」
 玲奈は暴徒たちの群れをかわしつつ思考する。
「そういえばこの近くにセキュリティソフトの会社があったっけ……なんとかワクチンを作れないかしら……」
 それはセキュリティ業界でも名の通った大手ソフト会社であった。しかし――
「XXXXを襲え!」
 暴徒たちはその会社の名前を叫びながら行進していた。
「何!? 思考まで操作されているの!?」
 玲奈は慌てて変身する。服が破け背中には翼が生えた。
(――これじゃまるで幕末の騒乱だわ……何かおかしい)
 玲奈はセキュリティソフト会社に急ぐ。だが――
 そこには燃え盛るビルの姿があった。
 そして――
「虚構は今現実になる!」
 富士の火口で龍族が叫ぶ。
 オンラインウィルス対抗プログラムが停止する。その途端虚構AIによってウィルスやワームたちが実体化した。
 それは悪意を持って町の人々に危害を加える。
 玲奈は携帯でIO2に連絡を取り、電信公社のマシンにハッキングを仕掛け、最上流から直接最強ワクチンプログラムを流すように依頼する。
 しかし、戦略創造軍が誇る最強のプログラムですら、ウィルスたちには効果がなかった。
 そして最悪の事態。長い年月をかけて独自に進化していたウィルスは巨大なドラゴンとして実体化する。
 玲奈は電信公社の基地局に文字通り飛んでいくと、龍と対峙した。
 左目から破壊光線を出す。だが、龍には通用しなかった。
 分身である宇宙船が衛星軌道上からレーザーを発射するがそれも通用しない。
「くっ……」
 そして、龍は口を大きく開けて息を吸い込んだ。
「まずっ!」
 玲奈はビルの前に立ちはだかり対霊障フィールドを展開する。
 その途端龍の口から炎が吹き出された。
 だが、その威力はあまりにも凄まじく……玲奈のビキニは黒焦げとなってしまう。
「こりゃ、あと何発か食らったらマズイわね……」

 物語は続く――