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<東京怪談ノベル(シングル)>


●赤城山神社の決戦
「群馬県は鶴が舞う形だそうだ。人間とは面白い事を言う。ならばヴィジャ盤の力で人間の妄想を膨らませ巨大な鶴をフォッサマグナに落としてやろうではないか」
 金翅鳥(こんじちょう)がそう囁く。
「面白い。龍族めに一泡吹かせてやろうぞ」
 フォッサマグナとは本州中央部、中部地方から関東地方に賭けて存在する窪みであり火山地帯とも言える。そしてヴィジャ盤とは、西洋で降霊術などに用いられるボードのことである。
 そしてフォッサマグナの地下の滝では龍族が鯉に滝登りの特訓をさせていた。技を極めれば鯉は天に登るという。これを天敵の金翅鳥の本拠地に特攻させるのだ。
 ちなみに金翅鳥とはガルーダなどと呼ばれる聖鳥で、蛇や龍を食らう存在としてヒンドゥー圏などで信仰されている。日本では迦楼羅天とも呼ばれている。
 金翅鳥たちは龍族の鯉を使った特攻作戦に悩まされていて、それに対抗しようとヴィジャ盤を狙っているのである。
 鍵屋・智子は自室にて某巨大掲示板の「赤城山の大沼を心霊スポットに仕立てて人を騙す」スレを閲覧中、一計を案じて盛り上げる投稿をした。
 そして赤城山の神社。赤城神社とは都内にいくつもの分社がある大規模な神社である。この赤城神社の総本山に、徳川埋蔵金の発掘場所が存在した。江戸時代に西洋より伝来したヴィジャ盤を徳川幕府が全財産を投じて購入して、そのヴィジャ盤が眠っていると言われる地だった。そしてそれが出土した。
 このヴィジャ盤は『何でも成就する』と言われる特製品である。それを狙う金翅鳥と三島・玲奈たち情報創造軍IO2。IO2は龍族と金翅鳥の争いをキャッチし、ヴィジャ盤の力で双方ともに殲滅すべく作戦を立てていた。
 鍵屋が発案したネタにより心霊スポットと騙された人間たちが大挙して赤城神社に集まりつつあった。そこに飛来する金翅鳥。人間たちがパニックになる中、龍族の自爆特攻用鯉妖怪が大挙して訪れる。
「いけ、金翅鳥共を滅ぼしてしまえ」
 龍族が叫べば
「させるか。ヴィジャ盤を奪うのだ!」
 金翅鳥たちはヴィジャ盤を奪うために攻撃を開始する。
 IO2はそんな争いから人々を守りながら行動を開始した。
 大挙して集まった人間たち。そこには妄想の力がたくさん集まっていた。中には自己陶酔してオーラを放つ厨二病患者さえいる。
「これは……想定外だ!」
 金翅鳥は人間のもつ力に焦り、ヴィジャ盤を奪取すべく猛攻撃に出る。
 IO2は玲奈号を中心に砲撃を仕掛け金翅鳥の妨害を図るが、それも甲斐なく大挙して攻撃を仕掛けてきた金翅鳥にヴィジャ盤を奪われてしまう。
 自室で鍵屋はキーボードを叩く。
「赤城神社にはいくつもの分社があるから、そこを拠点にして東京中の霊力を集めて、ヴィジャ盤を起動。そして鳥と龍の双方の駆逐を願うのよ」
 このアイデアを思いついたとき、鍵屋は玲奈に得意そうにそう話した。
 そして、鍵屋のプログラムによって、厨二病患者たちのオーラを身に纏い、玲奈は霊剣片手に金翅鳥の群れに突入する。
「行くわよ!」
 自爆用の鯉の攻撃でひるんでいる金翅鳥たちの隙を付き、玲奈は金翅鳥の翼を切り裂く。
「ふふ、いいわよ玲奈、その調子」
 IO2が設置したライブカメラで戦闘の様子を見ながら、鍵屋はヘッドセットに向けてそう囁いた。
「了解! 鯉のコントロールは!?」
 玲奈もヘッドセットに向けて叫ぶ。
「あと20秒待って。厨二病患者たちのオーラを使って、鯉をコントロールできるようにするわ。10秒……9……8……7……6……5……4……3……2……1……コンパイル完了。いいわよ、玲奈」
「よし。プログラム受信完了。Auto runより起動を確認。まずは鳥から!!」
 玲奈はプログラムを使って厨二病患者たちのオーラで鯉を操り、確実に金翅鳥に命中させていく。
 次々と墜落する金翅鳥。そして玲奈は金翅鳥からヴィジャ盤を奪還すると、鍵屋に妄想力と霊力の流れをヴィジャ盤に集中させるように指示をした。
「了解! 統合完了! 流れるわよ!!」
 と、赤城山神社から放たれる霊力とと厨二病患者たちの放つ妄想力が玲奈の手にするヴィジャ盤に集中する。
「いっけえええええええええええええええええええええ。まずは、金翅鳥の殲滅!」
 玲奈が願うと、金翅鳥が次々と爆発した。
「次、龍族の封印。一匹残らず!」
 その願いを受けてヴィジャ盤が光り、その光が迸って龍族の本拠地、フォッサマグナの地下に流れこむ。
 その光を浴びると、龍族は次々と封印されていく。
 これで、龍族の野望の阻止ができたのだろうか?
 残っている龍族は?
 疑問は残るがとりあえず日本にいる龍族は一匹残らず封印した。これで、玲奈と龍族の戦いもひとまず終結したことになる。
 その後、鍵屋はプログラムをリアルタイムで書き換えて厨二病患者たちの妄想を解除すると、彼らを自宅へと帰還させた。
 こうして、赤城山神社の決戦は終結を見せたのであった。