コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談・PCゲームノベル>


――LOST・失世界――

『ログイン・キーを入手せよ』
それがLOSTを始めて、ギルドから与えられるクエストだった。
そのクエストをクリアして『ログイン・キー』を入手しないと他のクエストを受ける事が出来ないというものだった。
クエストにカーソルを合わせてクリックすると、案内役の女性キャラクターが『このクエストを受けますか?』と念押しのように問いかけてくる。
「YES‥‥っと」
 その途端に画面がぐにゃりと歪んでいき、周りには海に囲まれた社がぽつんとあった。
「あの社には大切な宝物があるんだ、だけどモンスターがいて‥‥お願いだから宝が奪われる前にモンスターを退治しておくれよ」
 社に渡る桟橋の所に少年キャラが立っていて、桟橋に近寄ると強制的に話しかけてくるようになっているようだ。
「ふぅん、まずはモンスターを退治するだけの簡単なクエストか」
 小さく呟き、少年キャラが指差す社へと渡っていく。
 そこで目にしたのは、緑色の気持ち悪いモンスターと社の中できらきらと輝く鍵のようなアイテムだった。

 視点→海原・みなも

 その日は暑い日だった。
 海原・みなもは照りつける太陽の暑さに耐えながら図書館へとやってきていた。
「ふぅ、やっぱり図書館の中は涼しい‥‥」
 図書館に入ると同時に外の暑さが嘘かのようにひんやりとした空気が海原を迎える。
 今回、海原が図書館を訪れたのは、とある事を調べる為だった。
(‥‥この調べた結果、異変が進むかもしれないけど‥‥)
 海原は心の中で呟きながら、拳を強く握り締める。彼女の手は緊張の為か分からないがじんわりと汗ばんでおり、これから行う事がどれほど危険なものかを知らせていた。
 彼女が試してみようと思った事、それは図書館の裏コードから現在のLOSTのシナリオがどこまで進んでいるのかを調べようと思った事が始まりだった。
 最初、彼女が『ログイン・キー』を手にした原因となるクエスト、あれこそが全ての始まりであり、全ての鍵になっているような気がしたから‥‥。
(あの時、クエストを持ちかけてきたのは少年のキャラクターだった‥‥もし、あれがフルリアさんだとしたら‥‥)
 それに、と海原は手に持っている『ログイン・キー』を見ながら言葉を付け足す。
(現実世界とLOSTの世界を結びつける、だからログイン・キーなのだと思ってた‥‥だけど、もしLOST内にもログイン・キーを使う場所があるとしたら?)
 LOSTから別の『どこか』にログイン出来る場所があるとしたら、海原はそう考えて危険なことは分かっているけれど、調べてみようと思った。
「それに‥‥理想郷の道しるべ、まだ使ってなかったですね」
 先日のクエストで入手したレアアイテム『理想郷の道しるべ』、瀬名・雫が言うにはアクセサリー、武器、防具、お金、経験値、どれか1つがランダムで選ばれて山ほど出てくる特殊フィールドなのだとか。
(ついでに理想郷の道しるべを使った人がいないか、図書館からのパソコンで調べてみましょうか‥‥)
 かたかた、と最初に比べれば慣れた手つきでLOSTにログインして『理想郷の道しるべ』について調べ始める。
「あ、意外と使った人が多いんですね」
 LOST内のコミュニティで調べてみると、確かに瀬名が説明した通りだった。あるキャラクターは武器を、またあるのキャラクターは経験値を、どれか1つだったけど多大な恩恵を受けていた。
(あ、時間制限があるんですね‥‥まぁ、時間制限がなければ大変でしょうけど)
 理想郷にいられる時間は15分と決まっており、その間に多くのモンスターを倒して色々入手できるのだという。
「せっかく手に入れたんだし、今度行ってみるのもいいかもしれませんね」
 とりあえず『理想郷』への情報を閉じ、現在どれだけのクエストがLOST内にあるのかを調べ始める。
「‥‥検索、と」
 全てのクエストの欄にチェックを入れて、検索を始めたところ――‥‥画面がぐにゃりと捻じ曲がり「ナニ ヲ シテイルノ?」と真っ黒な画面に白い文字で表示される。
「‥‥まさか‥‥フル、リアさん‥‥?」
『アナタ ハ アナタ ノ スベキコトヲ シナサイ』
『コノサキ ハ マダ アナタ ニハ ハヤイ』
 え、と表示された文字を見ながら海原が呟く。
「‥‥この先は、まだあたしには早い? つまり、それは‥‥この先があるという事?」
 画面が白くなり始め、遠くに大きな扉が見え、その下には少女が立っている。
『アナタ ガ メザスベキ ハ コノトビラ コノトビラ ヲ ヒラクタメ ニ アナタ ハ アナタ ノ デキルコト ヲ シナサイ』
(私が目指すべきはあの扉‥‥?)
 心の中で海原が呟いているとバッグの中に入れていた『ログイン・キー』が淡く輝いていた。
(まるで、共鳴でもするかのように‥‥つまり、あの扉はログイン・キーを使って開けるということ?)
『ワカッタ ナラ ハヤク イキナサイ』
「ま、待ってください!」
 慌てて海原がキーボードを叩いて文字を打ち込む。
「異変やその関係者に繋がる情報は‥‥」
 異変やログイン・キーに関係した人間たちを調べれば、今後の対策もできると海原は考えており、無謀かと思ったけれどフルリアに直接問いかけることにした。
『‥‥ナニ モ オシエルコト ハ ナイ』
『ソノウチ ワカルコト アノヒトタチ ガ ドコ ヘ ムカウノカ アナタ ガ ドコ ニ タドリツクノカ』
 そのままぶつんとパソコンの電源が落ちてしまい、海原はそれ以上何も情報を仕入れる事が出来なかった。
(だけど、わかったことがあります‥‥)
 LOST内にログイン・キーを使う場所がある事、恐らくその場所こそがフルリアが導こうとしている最後の場所。
(LOSTのクエストを調べられるのを嫌がったというコトは‥‥調べる上で何かがあるから‥‥)
 重要なことがわかったけれど、それがわかったからと言って現時点でできることは何もない。このままクエストを続けるしかない事が分かり、海原は小さくため息を吐いた。
「そういえば、理想郷は1人で行くものだと書いてありましたね‥‥雫さんについてきてもらえない場所だとわかると、ちょっと不安ですね」
 海原は呟きながら(あたしがあたしであるうちに、全てを終わらせなければ)と心の中で言葉を付け足しながら、図書館を後にしたのだった。



―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

――――――――――
海原・みなも様>

こんにちは、いつもご発注ありがとうございます。
今回の話はいかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容に仕上がっていると嬉しいです。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました!

2011/7/11