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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 魔の力 ――

「獣の証‥‥」
 海原・みなもは小さくため息を吐きながら、画面を見ていた。
 先日『理想郷』に行った時の試みとして『獣の証』を使用した海原だったが、予想以上にこれから先を進むにあたって使える物なんじゃないかと思えてきたのだ。
「でも‥‥アイテムの使用や装備が出来なくなるのは辛いですね‥‥」
 はぁ、と何度目になるか分からないため息を吐きながら海原が呟く。
(この前は理想郷だったから、何とかアイテムが使えなくても大丈夫でしたけど‥‥でもスキルでもアイテムが使えなくなるのはありますし、問題は装備の方ですね)
 たとえ『獣の証』でステータスが上昇されるとはいえ、装備を全くしなくても良いかと言えば、それは『NO』である。
(装備品の中には防御力だけではなく、他のステータスも上昇させたりする物もありますし‥‥そういうのを見ると、やっぱり獣の証に頼る事は出来ないですよね‥‥)
 呪われて外せなくなるのだから、その事も考えなければならない。
「‥‥呪われて、外せない‥‥」
 ポツリと呟き、海原は1つの仮説を立ててみた。呪具『獣の証』は呪われているからこそ外す事の出来ない物。
 だったら‥‥。
「もし、他の呪具だったら、どうなるんでしょう? 獣の証を装備して、他の呪われた武具を装備したら‥‥その装備は外れないんじゃないでしょうか」
 だが1人ではどうにもならないと考えて、海原は瀬名・雫に相談する事にした。

「呪われた武具?」
「えぇ、この『獣の証』のように他にも呪われた武具などは存在するんでしょうか?」
 海原の言葉に瀬名はけろりとした表情で「あるよ」と短く言葉を返してきた。
「しかも数え切れないくらいあるよ。あたしも幾つか持ってたけど、呪われた武具なんていらないし、既に売っちゃってるけど」
「あの‥‥実は、この『獣の証』を装備して呪われた武具を装備したらどうかと思ったんですけど‥‥」
 海原の言葉に瀬名は少しだけ表情をゆがめた。
「あの、さ‥‥余計な事かもしれないけど、みなもちゃん‥‥本当にその『獣の証』を使う方向で行くのかな‥‥?」
 先日『理想郷』に行った時のことを思い出せば、瀬名はどうしても海原を止めたい思いが強かった。
(みなもちゃんが‥‥知らない誰かになっちゃいそうで、怖いよ)
 瀬名は心の中で呟くが、海原の思いは変わらないようだった。
「‥‥知り合いに、呪われた道具ばっかり集めてる人がいるから、被ってる物を譲ってくれるように交渉してみる。一時間待って」
 はぁ、と瀬名は小さく息を吐いた後にキーボードを叩き始め、他のプレイヤーに接触をしていた。
(雫さんが心配してくれているのは分かってるんです‥‥でも‥‥)
 海原はパソコンを操作する瀬名の背中を見ながら、拳を強く握り締めた。
「みなもちゃん、あたしは怖いよ。このLOSTをクリアする為、自分に起きてる異変を取り除く為、色々頑張ってるけど‥‥いつかみなもちゃんが帰って来れないどこかに行っちゃうんじゃないかって怖くてしょうがない」
 海原に背中を見せながら、瀬名がまるで独り言のようにぽつり、ぽつりと呟く。
「‥‥ありがとう、ございます‥‥」
「‥‥あ、いた。魔獣シリーズの『虎』タイプの着ぐるみ武具を持ってるみたい」
「魔獣シリーズ?」
 聞きなれない言葉に「あぁ、こういう着ぐるみ武具の呪われたシリーズ。他にも豹とか獣タイプが犬だったらケルベロスとか、色々あるみたい」と瀬名が言葉を返してきた。
「あと、解呪アイテムはあたしが持ってるからそれを渡すね」
「何から何まですみません」
 海原が申し訳なさそうに言葉を返すと「いーの! 友達じゃん」と瀬名が笑って言葉を返してくる。
「とりあえず、これで試してみようよ。効果があったら別の魔獣シリーズを探してみてもいいし」
 瀬名から魔獣・虎の着ぐるみと解呪アイテムを受け取り、装備した後で『獣の証』を装備してみる。
 普段なら、拒否されるコメントが表示されるのだが同じ呪われた武具のせいなのか素直に装備する事が出来た。
「へぇ、本当に装備できたんだー」
 瀬名が感心したように呟き『みなも』のステータスを見てみると、確かに魔獣・虎の効力であるスピード特化などの効力が持続している。
 それから海原は一度解呪して普通に戻ってから「これは使えるかもしれませんね」と小さく呟く。
 その様子を瀬名が少し寂しそうに見ている事に海原は気がついていない。
(みなもちゃん、気がついてないのかな‥‥LOSTを攻略する為に、自分から『モンスター化』をしてるんだって事に‥‥最初、あたしに話をしてくれた時と今のみなもちゃん、全然違って見えるよ‥‥)
 だけど、それは自分が安全な場所にいるから思う事なのかもしれない――と瀬名は心の中で呟き、先ほどの言葉を海原に言う事は出来なかった。
 一番、恐怖と戦っているのは瀬名ではなく海原自身なのだから。
「他の魔獣シリーズを集めてみてもいいかもしれませんね、雫さん」
「え? あ、うん。そうだね。呪われた武具って結構出回ってるから色んなクエストに行けば手に入るんじゃないかな?」
 海原を不安にさせないように瀬名は笑顔で言葉を返し、今度魔獣シリーズを手にいれる為のクエストに行こうと約束をしたのだった。



―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――
海原・みなも様>

こんにちは、いつもご発注いただきありがとうございます。
今回は呪われたアイテムの話、という事でしたが
内容の方はいかがだったでしょうか?
気に入って頂ける内容になっていれば嬉しいです。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました!

2011/7/17