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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 魔獣の力 ――

 先日、呪われた武具なら『獣の証』の効果も消える事なく使えるのではないかという事を考え、海原・みなもは『魔獣・虎の着ぐるみ』を装備した。
 効果は上々であり、この先を進む為には必要不可欠な力なのだと海原は考える。
 だけど、その急激な力は海原の事情を知っている瀬名・雫にも不安の影を落としていた。
「みなもちゃん、本当に‥‥いいの?」
 魔獣での変貌を知っている瀬名としては、出来れば呪われた物に手を出すのはやめてほしい、というのが本音だ。
 だけど、海原が置かれている状況を分かっているからこそ、強く引き止める事も出来なかった。
「心配、ありがとうございます。雫さん」
 淡く微笑みながら海原が言葉を返す。
 もちろん、海原自身は『魔獣シリーズ』を揃えてLOSTのゲームクリア、そして異変解明が出来るとは思っていない。
(おそらく――‥‥いえ、すべてを終わらせるためにはログイン・キーが必須のはず。だからあたし自身、魔獣シリーズで終わらせるなんて出来るとは思っていないけど‥‥)
 だけど、キャラクターを少しでも強くしておけば有利に進めるかもしれない。海原はそう考えていた。
(もっともキャラクターとの同調率を高めても、あたし自身のゲームの腕前も戦闘技術も素人なんですけどね‥‥)
 小さく息を吐きながら、海原は心の中で呟く。
「それと、みなもちゃん。トレードに出すのはコレでいいのー? 被ってるやつは全部トレード対象でよかったんだよね?」
「はい、よろしくおねがいします」
 先日、海原が『理想郷』で入手して、2つ以上持っているものはすべてトレードに出す事にしていた。
「結構レアなものとかあるね、これならそこそこの物とトレードできると思うよ」
 理想郷で海原が入手できたのはアイテムであり、店売りの普通な物もあれば、あまり手に入らないアイテムまで幅広く入手していた。
「第一希望は魔獣シリーズにしてっと‥‥トレード募集開始」
 いまいちトレードの仕方が分からず、海原は瀬名が操作するのをジッと眺めていた。
「雫さん、迷惑かけてすみません‥‥」
「この程度、迷惑のうちに入らないよ。それにあたしに出来るのってこんな事くらいしかないんだから、あたしに出来る事ならもっと頼ってくれてもいいんだからね」
 瀬名の言葉が嬉しくて、海原は「はい」と素直に頷いて言葉を返していた。
(でも、あたしは雫さんの存在に助けられているんですよ‥‥あたし1人だったら、どうなっていたかも分からないですから‥‥)
 海原は心の中で呟く。
「あ、とりあえず4件のヒットがあったよ」
 瀬名が画面を指差しながら海原へと向き直る。海原も画面を覗き込んでみると、そこには瀬名の言う通り、4つの『魔獣シリーズ』の名前が表示されていた。
「白狼、黒猫、黒豹、朱鳥、かぁ。黒猫に関しては結構出回ってるし、一番まともなのは白狼と朱鳥かなぁ」
「あの、獣型でも鳥の着ぐるみが使えるんですか?」
 疑問を瀬名に投げかけてみると「うん、そうだよ」とさらりと言葉を返してくる。
「鳥っていっても、実際に翼が生えるとかそんなんじゃないみたい。たいて鳥系の魔獣シリーズは跳躍力とかスピードに特化するものが多いみたいだよ。逆に狼系は攻撃力が特化だったかな」
「へぇ‥‥そうなんですか」
「でも、姿が変わらないやつばっかりじゃないみたいだからね。鳥系は鳥系でも物によっては翼が生えて空が飛べるとかいうのもあるみたい。かなりのレア物だろうから、まず目にかかる事はないと思うけどね」
 瀬名の言葉に「という事は魔獣シリーズにもレア、というか強さが特化したものがあるという事ですか?」と海原が聞き返す。
「んー‥‥みなもちゃんが使った場合、どんな副作用があるかわかんないから言いたくなかったけど、四獣シリーズってのがあるみたいだね」
 四獣? と海原が首を傾げながら聞き返す。
「えっと、白虎、玄武、青龍、朱雀、だったかな。これはたった1つきりで誰も持ってないみたいだね。どのクエストで手に入るのか、それとも特殊条件があるのか、まったく分かってないみたい」
 瀬名自身も調べたのだろうが「あたしが全然情報を集められなかったんだよ」と肩をすくめながら、海原へと言葉を投げかける。
(雫さんでも集めきれない情報、まさかそんな武具があるとは思わなかったです‥‥)
 興味はあるけれど、瀬名でさえ集めきれてない情報なのだ。きっと自分では見つける事も出来ないだろう、と海原は心の中で言葉を付け足す。
「それより、どうする? 4つともトレードしてみる? 黒猫の方はアイテムの方がもったいないような気がするけど‥‥」
「いえ、とりあえず4つともお願いします。アイテムに関しても私には手に余るものですから、使いたい人が持っていた方がいいですし」
 海原が言葉を返すと「わかった、それじゃトレードするね」と言葉を返し、トレード完了ボタンをクリックする。
 そして4つのアイテムが失われたが、同時に4つの魔獣シリーズを入手する事が出来た。

 それから海原は入手した魔獣を装備して、効果を確かめる事にした。
「とりあえず、白狼だけでも試してみようか」
「そうですね」
 瀬名に言葉を返し、海原は解呪アイテムを用意して『白狼』を装備する。姿はあまり変わらないが『白狼』というだけあって、キャラクターの色、ほとんどが白になっている。
 瞳も青くなり、どこか高貴ささえ感じさせていた。
 雪原に立つ狼のように、どこまでも孤高な雰囲気すら感じる。
「やっぱり、狼だから攻撃力が段違いにあがるね。でも防御力がちょっと下がりすぎな気もするけど‥‥」
「そう、ですね。何か体が軽くなったような気がします」
「‥‥‥‥」
 魔獣シリーズを装備して、どんどん現実世界への侵食が酷くなっているような気がして瀬名は何も言うことが出来なかった。
 みなも、というキャラクターを使うたびに『海原・みなも』が変わってしまいそうで、瀬名は少しだけ怖くなる。
 恐らくキャラクターとの同調率は、海原の方が瀬名よりも上なのだろう。自分自身では技術面でも素人だといっているけれど、もう海原の技術などは素人とは言いがたいものがあったのだから。
(戦闘慣れしてないから、たまにドジっちゃったりするみたいだけど‥‥戦闘にも慣れて、LOSTに染まったら‥‥その時、みなもちゃんはどうするのかな)
「雫さん、手伝ってくれてありがとうございます」
 解呪を行い、普段の姿に戻った海原は瀬名へとお礼の言葉を言う。
(みなもちゃんは変わらないよね)
 瀬名は心の中で呟いた後「さ、次も試してみようよ!」と言葉を返したのだった。




―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

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海原・みなも様>

こんにちは、いつもご発注ありがとうございます。
今回は『魔獣』に関してのノベルでしたが、
内容の方はいかがだったでしょうか?
楽しんでいただけると嬉しいです。

それでは、今回も書かせて頂きありがとうございました!

2011/7/28