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<東京怪談ノベル(シングル)>


―― 魔に染まりし獣の力 ――

「とりあえず、試してみた方がいいですよね‥‥」
 海原・みなもはパソコンの画面を見ながら、小さな声で呟いた。
 彼女が見ているのは、先日『理想郷』に行った時に入手したアイテムと交換した『魔獣シリーズ』だった。
「みなもちゃんが持っているのは、5つだっけ」
 瀬名・雫も海原のキャラクター画面を見ながら言葉を返す。
 現在、海原が持っている『魔獣』は『虎、白狼、黒猫、黒豹、朱鳥』の5つ。
「白狼はこの前装備したけど、白狼を使うんだったら『虎』を使ってた方がいいよね。白狼は防御力の低下が半端なかったし‥‥」
「そう、ですね‥‥となると、普段は猫を装備していて虎が戦闘用、という事になるでしょうか‥‥」
 呟いた後、海原はちらりと瀬名を見る。
(でも、この方法も解呪が出来る瀬名さんが一緒にいる事が前提になるわけですから‥‥LOSTの異変を調べる上では使えないですね‥‥)
 おそらく異変を調べる時、瀬名と一緒に行動する事は出来ないだろう――と海原は考えていた。
(それに、もし一緒に行動出来るとしても‥‥私が嫌です‥‥)
 LOSTの異変を調べるクエストなどに瀬名が一緒に行くことになれば、必然的に瀬名自身も巻き込んでしまう事になる。
(何が起きるか分からない所に雫さんを連れていくわけには‥‥)
 ぐ、と小さく拳を握りしめながら海原は心の中で呟いていた。
「みなもちゃん?」
(雫さんはきっと一緒に行ってくれると言うんでしょうけど‥‥)
「おーい、みなもちゃん?」
(もし、雫さんが犠牲になって私だけが助かるという事態になったら‥‥私は耐えられません)
「みなもちゃんってばっ!」
「はいっ!?」
「もー、何ずーっとしかめっ面で考え込んでるの? さっきから呼んでたのに」
 す、すみません‥‥と言葉を返しながら、瀬名が指差した方向を見る。
「他の魔獣を試してみるんでしょ? 解呪アイテムは用意できたよって、言ってるの」
 瀬名の言葉に(そうでした‥‥)と心の中で呟く。
 今日は他の魔獣を試してみたいと瀬名に願い出て、解呪アイテムを揃えてもらっていたのだ。
「もー、大丈夫? 具合悪いんだったら止めといた方がいいんじゃない?」
 心配そうに顔を覗き込んでくる瀬名に「いえ、大丈夫ですから」と海原は笑顔と一緒に言葉を返した。
(防御力の高いものがあればいいんですけど‥‥ログイン・キーは使いたくありませんし、生存率の高いものを見つけなければ‥‥)
 これから先、何が起こるか分からない状態が続いているため、なるべく海原はログイン・キーを使わない事を決めていた。
(ログイン・キーを使えば、ある程度の事は何とかなるんでしょうけど‥‥)
 確かにログイン・キーを使えば、LOSTの異変以外の事は簡単に片付いてしまうかもしれない。
 だけど、使ったら使った分だけの代償を取られてしまうため、万が一『最後にたどりつく前に』自分がなくなってしまったら、と考えるとどうしても使えなくなったのだ。
「それじゃ、雑魚敵がいるフィールドにでも行ってみよっか」
「そうですね」
 瀬名の言葉に、海原が頷いて2人は初心者向けの簡単なフィールドへと向かった。


 フィールドに到着した後、海原が最初に試したのは『黒猫』だった。
「結構入手簡単だし、あんまり期待はできないと思うけどね」
 瀬名の言葉を聞きながら、海原は『黒猫』を装備する。黒猫は現在海原が着ている『猫』を真っ黒にしただけのように思えた。
「あー、やっぱりねぇ‥‥」
 ステータス画面を見て、瀬名が苦笑する。続くように海原も見ると、確かにステータスは上昇しているのだが『魔獣』の割に上昇率が低かった。
「これは、実践じゃ使えなさそうですね‥‥」
「だね、LOSTをプレイし始めた時ならともかく今持ってる装備とかを考えると、黒猫は今さらって感じだね。メリットもないから、これは使わない方が良さそうだね」
 続いて試してみたのは『黒豹』だった。
「‥‥なんか、雰囲気変わるね」
 瀬名が苦笑しながら呟く。猫を装備している時の『みなも』はどちらかといえば可愛い系だったのだが『黒豹』を装備したみなもはクール系で近寄りがたい雰囲気を持っていた。
 そして、肝心のステータス面を見てみると豹というだけあって、スピードが半端なく上昇していた。
「へぇ、黒豹ってスピード特化型なんだね。でも攻撃も防御も大して上がんないから、使えるかはちょっと微妙な感じかも‥‥」
 瀬名の言葉に(確かに‥‥)と海原も心の中で呟く。スピード程は行かなくてもある程度、攻撃と防御も上昇してくれたら、かなり重宝する装備だったかもしれないが、メリットはスピードだけという中途半端なものだった。
「最後は朱鳥か。入手するには手間がかかるだけで、大して難しいクエストじゃないって聞いた事があるかなー」
 装備してみてよ、という瀬名に促されて海原は朱鳥を装備させる。
「わ、きれい‥‥」
 装備した後の『みなも』は髪の毛なども真っ赤に染まっており、どこか神々しささえ感じさせる外見に変わっていた。
「へぇ、これって結構良いんじゃないかな?」
 瀬名がステータス画面を指差しながら呟く。つられるように海原もステータス画面に視線を移すと、今まで装備した中で一番良いものに思えた。
「攻撃力は白狼と虎には劣るけど、オールマイティに上昇してるから使えない事はないと思うよ」
「そうですね、これをメインで使ってもいいくらいだと思います」
 朱鳥を装備して主に上昇したのは防御力、今の防御力とは比べ物にならないくらいの上昇を見せていた。
「雫さん、その‥‥あたしが『魔獣』を使う時は一緒にいてほしいのですが、いいでしょうか?」
「えっ?」
 突然の言葉に瀬名も驚きで目を丸くしている。
「ど、どうしたの?」
「いえ、その‥‥何となく言っておきたかったので」
 海原の言葉に「変なみなもちゃんだね」と瀬名は笑って言葉を返す。
「みなもちゃんに頼まれなくても、あたしはずーっとみなもちゃんについていくつもりだったから安心して! オカルト関連の情報であたしが知らない事あるなんて嫌だしね!」
 明るく笑って言葉を返す瀬名に海原も笑みがこぼれる。
 そして、瀬名のその言葉に救われる海原でもあったのだった。



―― 登場人物 ――

1252/海原・みなも/13歳/女性/女学生

NPCA003/瀬名・雫/14歳/女性/女子中学生兼ホームページ管理人

――――――――――

海原・みなも様>

こんにちは、いつもご発注ありがとうございます。
今回の話はいかがだったでしょうか?
気に入っていただける内容に仕上がっていると
良いのですが‥‥。

それでは、今回も書かせていただきありがとうございました!


2011/8/2