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<東京怪談ノベル(シングル)>


『合霊レナズナー!』


IO2司令室。IO2怪奇現象や超常能力者が民間に影響を及ぼさないように監視し、事件が起ころうとしているならばそれを未然に防ぐ超国家的・
組織。ここはその司令室である。
IO2戦略創造軍情報将校である三島玲奈はそこにいた。とがった耳、天使の翼を持つ、緑色の目をした亜人間メイドサーバントが彼女である。
ともかく、その三島玲奈は浮かれていた。上司との結婚話があったからだ。その上司は中年髭達磨で、現在の医療技術では治療が困難な病気を患っている。なぜ、玲奈はこんな男と結婚する気になったのか。流石亜人間メイドサーバントは趣味が違った。
遺産目当てでもなければ、結婚しようなどとは思うまい。
玲奈はこの上司との結婚話を司令室の女の子に話まくっていた。話しかけられた方からしても、ただ迷惑なだけで、羨ましくもなんともなかった。
ビー、ビー。
突如作戦司令室のランプが赤く点滅し、警報が鳴る。正面のモニターに東京湾が映される。いや、それは東京湾とは呼び難かった。東京湾は妖怪で埋め尽くされていたのである。
「三島玲奈さん、出撃してください」
早速、出動要請が発せられる。玲奈は数多くの特殊能力がある。どれもチートな能力ばかりだ。だが、敵の数は膨大である。星の数程存在する。熾烈な戦闘になるのは明白だった。だが、こういう展開でこそ、燃えるのが愛というものだ。
「あたし、この闘いが終わったら、結婚するんだ」
壮絶な死亡フラグを玲奈は発した。
「玲奈さん!」
司令室のオペレーターの一人が慌てた様子で駆け寄ってくる。そして、耳打ちをする。
その言葉を聞いた玲奈は、表情を一変させる。

病室の一室、そこには結婚相手である上司が寝かされていた。ただし、半死半生と言った様子である。点滴を打たれ、
隣には医師がいる。
「先生! この人の病状は!」
「不治の病です。今夜が峠でしょう」
「そんな先生! 不治の病って。嘘だと言ってください」
玲奈は激しくショックを覚えた。
「玲奈」
上司は口を開いた。極端に弱っている様子だ。
「俺はもう長くない……。俺がお前にしてやれる事はもうあまりない。だが――俺には最後にひとつだけ、お前に残せてやれるものがある」
上司は言った。
「レナズナーだ」
「レナズナー」
「ああ。対妖怪用の人型決戦兵器だ。これにお前が乗れば――」
「じゃあ――」
「だが、レナズナーは一人では動かせん」
上司が視線で指した先には、一人の女性がいた。
茂枝萌。忍者服を着た理知的な女性だ。ちなみに、この忍者服はパワードプロテクター「NINJA」であり、コスプレではない。彼女はIO2捜査官である。
「彼女と一緒に、レナズナーに乗って貰う。ちなみに一号は玲奈、二号は萌に乗って貰う事になる。そして、廃棄予定だった戦艦玲奈号の護衛任務をやってもらう」
「それはいいですけど……」
玲奈は上司の容態が気がかりだった。
「いくんだ……世界の平和を守る為に。ぐうぁ!っ」
上司は吐血した。血でベッドが赤く染まる。
「上司――――!」
玲奈は叫んだ。

格納庫。そこにはレナズナー一号と二号があった。人型ロボット。対妖怪用決戦兵器。
お前達一人一人は只の女だが二人合わせて女女→∞となる。∞と化したレナズナーは無敵だ」
上司の言葉を玲奈は思い出す。そして噛みしめた。
(勝ちます……世界とあなたの為に)
玲奈は決心した様子でレナズナー一号に乗り込む。

戦艦玲奈号。旧妖怪大戦の時に使われた戦艦だったが、現在は廃棄処分となっている。今回の作戦は、これに大量の爆弾を仕込み、妖怪の中心部で爆発させるというものだ。
レナズナー各機に課せられた任務は、この戦艦の護衛である。
「妖怪群の接触まで、後十キロ」
二号機に載っている萌の音声が届く。だが、玲奈はどこか上の空だった。
(もし世界を救えても、あの人がいなきゃ――)
頭の中は中年髭達磨の上司の事で一杯だった。
(あの人は今夜死んでしまうかもしれない)
――と。
突如の衝撃が玲奈を襲う。
高速で飛来してきた小型妖怪の直撃をレナズナー一号機は受けたのだ。
「何戦闘中で余所見しているのよ!」
通信機越しに萌は叫び声が聞こえてくる。
「だって! ……あの人のいない世界なんて意味が――私、司令部に戻る!」
玲奈はレナズナー一号機を反転させようとした。
「馬鹿!」
萌は叫んだ。
「そんな事で、あの人が喜ぶとでも思っているの! あの人が何の為にレナズナーを作ったと思ってるの! 余命幾ばくもないあの人が!」
はっ、と玲奈は気づく。上司が自分の命よりも、世界の事を考え、このレナズナーを極秘裏に建造していた事、そしてそのレナズナーを託してくれた事。そんな彼に、ここで何もしないで帰っていいものか。
「ごめんなさい萌」
「わかればいいのよ」
「わかったは萌、合体しましょう!」
「ええ。玲奈、よくってよ」
レナズナーは摩訶不思議なエネルギーで合体した。最初から合体していろよ、というよくある突っ込みはスルーだ。とにかく合体した。強くなった。かっこよくなった。アニメだったら二分間くらいかかる複雑な合体シーンがあった。
あった事にしておく。
「合霊レナズナー!」
玲奈は叫ぶ。
目の前、いや、視界の全ては巨大ナマコ妖怪で覆われている。
「敵機の数、約一万」
「お姉様、あれを使うわ」
「ええ、よくってよ」
お姉様ではないが。
「スーパー!」
「イナズマ」
「○ーーーク!」
十億ギガボルトの蹴りと共に、レナズナーは巨大ナマコ妖怪を屠っていく。それはまさしく、一筋の流れ星のようだ。
「合体したレナズナーをただのマシンと思わないでよ」
レナズナーは、戦艦玲奈の上に降り立ち、そういう。
「上司の、上司の、上司の想いが詰まってるんだから―――ー!」
玲奈は叫ぶ。次に放ったのはビームだ。ビームが巨大ナマコ妖怪を屠っていく。
「あたしの上司は、熊みたいで!」
レナズナーはミサイルを放つ。
「髭が素敵で!」
レナズナーは、バッドでボールを放つ。
「少し薄れくなっている頭がとってもチャーミングなんだから!」
最後に、そう叫んだ。萌はその趣向に、ドン引きだった。
気づけば巨大ナマコ妖怪の数も半分程度にはなっている。
「後、2キロ」
玲奈は距離を告げる。もう中心部は目と鼻の先だ。
――と。
突如、現れたのは、水母妖怪二匹がレナズナーを挟み撃ちにしてきた。上下の二方向から押しつぶされそうになるレナズナー。そして、協力な電撃が流れ込んでくる。
「参ったわね……こんなものまであるなんて」
「ええ、思っても見なかったわ。けど――上司の作ったレナズナー甘く見ないで欲しいわ」
レナズナーはより強力な電撃を放ち、水母妖怪二匹を撃破した。
そして、ついに中心部にたどり着く。
「さよなら玲奈号…」
――玲奈は、玲奈号から離れる。ある程度の距離を置くと、玲奈号は爆発した。

「上司!」
玲奈は叫びつつ、病室に戻る。上司は生きていた。奇跡は起こった。上司の不治の病はなぜか完治していた。恐らく愛の力だ。
「やったか……玲奈」
「はい! 上司の作ったレナズナーのおかげです」
「萌も……よくやってくれたな」
こくり、と萌も頷く。
「それで、上司……」
「なんだ?」
「大好きです! 結婚してください!」
「ああ。私もだ。結婚しよう」
挙式は上司が退院するよりも早く、病室で行われた。神父を呼び、多くの人間に祝われ。こうして世界は救われ、二人は幸せになったのだ。

〜完〜

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号7134 / PC名三島・玲奈 (みしま・れいな) / 性別 16女性 / 年齢 / 職業メイドサーバント:戦闘純文学者】。

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■         ライター通信          ■
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これでよかったのか不安です。クライアントの方は、これで満足できたでしょうか。不満点などありましたらお申し付けください。またよろしくお願いします。