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<WF!Xmasドリームノベル>


雪の降る日に‥‥

クリスマス、それは1年の中で恋人達が最も盛り上がる日。
街中もクリスマス一色に染められ、綺麗なネオンが恋人達の甘い雰囲気を更に甘くしていた。
街を歩く人達もクリスマスが近い事で浮足立っているようにも見える。

「明日は雪が降り、ホワイトクリスマスになるでしょう」

天気予報のアナウンサーの言葉が聞こえ、近くにいた少女たちも嬉しそうに言葉をかけあっている。

ホワイトクリスマス、貴方は誰とどんな風に過ごしますか?

視点→松本・太一

「はぁ‥‥」
 松本・太一は作業を止めて小さくため息を吐き、ホテルの室内に備え付けられていたカレンダーへと視線を向けた。
 今日は12月25日、恐らく一年の中で一番盛り上がる日なのではないだろうかと松本は心の中で呟いていた。
(世間ではクリスマスという幻のイベントが行われているというのに‥‥私は例によって仕事か‥‥まぁ、別に悲しいわけじゃ――ない、はずだ)
 うん、と自分に言い聞かせながら松本はパソコンの画面に視線を戻した。
「そういえば、LOSTでもクリスマスイベントが行われているとか告知されていましたね」
 掲示板に運営側から告知されていたのはサンタ関連の集団イベント、そして特定のNPCと個別のデートイベントというものも用意されていた。
(傍から見れば『寒い』のは自覚はありますけどね‥‥)
 苦笑しながらイベント説明を見ながら心の中で呟く。
「どうせですから、デートイベントの方を選択してみましょうか――でも、これってほとんど普段は敵キャラだったりするんですよね」
 ずらりと並べられているNPCの名前を見ながら松本が呟く。確かに彼の言う通り、急に作られたイベントのせいなのか、動物系のモンスターキャラとのデートイベントや人型NPCとのデートイベントなどが用意されていた。
「‥‥でも、この動物系モンスターとのデートイベントって、どう見てもただの散歩にしか見えないですよね‥‥」
 虎のような動物系キャラクターを見て、松本が呟く。でも確かに動物系のキャラクターとのデートイベントがあっても、ただの散歩にしか見えないのはきっと気のせいではないだろう。
「あ、人型NPCの方はクリスマス前に抽選があって、もうデート出来る人は決まってるのか‥‥」
 松本が『申し込む』をクリックしてみると、既に人型NPCは満員になっていて、デートイベントが出来るNPCはモンスターしか残されていなかった。
「‥‥しかも、可愛い系のモンスターは既に選べないようになってるんですね‥‥そりゃまぁ、クリスマス当日ですから当然と言えば当然なのかもしれませんが‥‥」
 キャラクター蘭を見ながら松本が呟いていると、1人だけ残っている女性NPCの姿を見つける。
「他の虎とか牛とかとデートしても、ねぇ‥‥それよりは人型が残っているなら、そっちを選んだ方がいいですよね」
 呟きながら松本は残っている女性NPCを選んで『デートイベント』の申し込みを行ったのだった。

 デートイベント申込みが完了した後、タイチの所に案内メールが届いた。そこにはアドレスが書かれており、クリックするとデートイベントのフィールドへと飛ばされるとも書かれていた。
 松本は説明を見た後、アドレスをクリックすると画面がぐにゃりと変わっていき、フィールド全体がクリスマスカラーで統一されたフィールドへと飛ばされてしまう。
「こんにちは、私は今回貴方のデート相手を務めさせていただくNPCです。どうぞ宜しくね」
 黒猫を連想させるような外見をした女性がフィールドに入ると同時に話しかけてくる。真っ黒な服に髪に映える金色の瞳が特徴的だった。
「あ、どうも‥‥」
「今日はクリスマス限定デート、このフィールドの中のみだけど楽しくデートしましょう」
 そう言いながらNPCは腕を組んで、前方を指差す。タイチもつられるように見ると、そこには『クリスマス☆イベント』と大きな看板が掲げられ、様々な店などが出ていた。
「このフィールド限定のアイテムとかもあるのよ、ほら一緒に見に行きましょ」
 NPCはタイチの手を引っ張りながらずらりと並ぶ店の方へと歩き始める。
「わぁ、綺麗だと思わない?」
 アクセサリーの店で立ち止まったNPCが、首飾りを指差して問いかける。そこで選択肢が表示され、松本は『はい』にカーソルを合わせてクリックすると――‥‥何故かNPCにアイテムを買ってあげるという流れになってしまい、実際の所持金から首飾りの分が引かれてしまっていた。
「買ってくれてありがとう! 私もお礼にこれをあげるわね」
 そう言いながらNPCがタイチにくれたのはレア度MAXとされている頭用の防具『花のティアラ』だった。
(クリスマス限定で配布される防具だからレア度が高いんでしょうか)
 心の中で呟きながらアイテム説明欄を見ると、予想通りで防御力は初期装備並に低いものだった。
(限定配布のアイテムが強いわけはないですよね‥‥)
 苦笑しながら画面を閉じ、イベントの続きを再開する。
「あそこの店の食べ物、とっても美味しいのよ」
 食べさせてあげるわね、と画面の中ではあるが食べ物を差し出され、タイチがそれを食べる。
 ゲームの中だから、あまり気にはならないけれど実際のクリスマスでこんな事をしていたら百合っぽく見られるのだろう。
「さぁ、次はどこにいきましょうか」
 NPCに手を引かれ、フィールドの中で我を忘れて松本は『クリスマス』を楽しむ事にした。
 しかし、きっと心のどこかで彼は『我に返ってはいけない』と思っていたのかもしれない。
 何故なら、我に返ると果てしない空しさが襲ってくる事を松本は気づいていたのだから。
 結局、時間切れになるまで松本はNPCと限定フィールドで一緒に遊んでおり、所持金はなくなったものの、レアなアイテムがアイテム欄にずらりと並ぶ事になったのだった。



―― 登場人物 ――

8504/松本・太一/48歳/男性/会社員・魔女

――――――――――
松本・太一様>

こんにちは、いつもご発注ありがとうございます。
今回は『LOST』のクリスマスノベル、という事でしたが
内容の方はいかがだったでしょうか?
気にいって頂ける内容でしたら、うれしく思います。

それでは、今回も書かせていただきありがとうございました!

2011/12/19