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<東京怪談・PCゲームノベル>


――懺悔に教会――



 その白い教会の中には、沢山の、あらゆる人の記憶が保管されている。
 何処にどのようにして保管されているか、また、何故そのような物が保管されているのか、その辺りの事は、知る人しか知らないし、だいたいそんな事を言い出したら、保管されているということは、誰かがいつか利用するためなのではないか、とか、何かのためなのではないか、とか、だったらそれは何のためなのだ、とか、どんどん気になり始めたりして、話が前に進まないので、詮索しない方がいい。
 とりあえず今日、管理人は、その中にある記憶の一つを、作為的に、あるいは無作為に取り出した。
 何故なのか、であるとか、取り出してどうするのか、とか、むしろ管理人って誰なのだ、とか、そう言う事は、やっぱり今は、詮索しない方がいい。
 語られるべきは。
 管理人によって取り出された、あるミュージシャン達の、こんな話。



××ある執着××



 風呂から上がり、濡れたままの髪に、手入れのための液体を塗りつけながら、梅若・雪之丞は油断し切ったジャージ姿で、リビングへと、向かった。
 そしたらソファには、何か、オーハシが、居た。
 風呂に入る前に、わりと仕事以外にやることないわーみたいな感じで何となーく、次の仕事の準備でもしとこーかなーとか何か、作曲を頼まれていたアーティストの情報とか見ながら、戯れるように弄ってそのままそこに置いていたギターを、勝手に何か、弾いている。
 とかいうのを、あーそーですかーみたいにぼーとか見つめた雪之丞は、とりあえず隣接するキッチンの冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取り出し、飲んだ。
 そして、そのままペットボトルを手に、ソファへと向かう。
 隣に、腰掛けた。
 けどすぐに立ち上がり、基礎化粧品セットの入ったボックスを棚から取って、ガラステーブルに置く。
 オーハシの隣の、テーブルとソファの間の絨毯に、ぺしょ、っと座った。
「絶対、あれよね」
 それで化粧水とかで手入れとかしてたら、いきなり、オーハシが、いつもの覇気なーい感じで、唐突に、言った。
「ユキノって、ここに座ってんのがいきなり泥棒とかでも、絶対ビビらないよね」
「いや普通にビビるでしょ、それは」
「ビビった顔とかマジ見たことないわー」
 オーハシが、とりとめもない、曲にもなってないようなコードを弾きながら、言う。「むしろ、泥棒とか殺しにかかってくるんじゃないかってそっちの方が心配だもんね。ユキノ密かに、めちゃくちゃ強いし」
「あれでしょ顔に出てないだけでしょ」
「でなさすぎだよね。それはね」
「昔、僕、ニシ連合のオーハシとカチ合わせになった時とか、もー、本気でやべーとか思ってたもん」
「あん時は俺も、ヒガシの梅若とか、あ、やべ、俺、殺される、って本気で心配したよね」
「無事、生きてるね」
「本当良かったよね。十年くらい経ってるけど、まだ元気で音楽やれてるとか。まーあん時、お前にやられた傷とかは、フツーにまだ残ってるけど」
「それは僕もでしょ。こんなんもー、素顔とか、絶対晒せないし。何で顔とかやったの」
「え。そうなの、いつもやってるメイクって、俺にやられた傷、隠すためなの、そうなの」
 とか言ったオーハシの横顔を、ゆらーとか、雪之丞は、振り返った。
 え、何ですか、みたいに気配に気づいたらしいオーハシが、振り返る。
「うぬぼれてんじゃねえよ」
 とか凄い無表情に言った雪之丞を暫く、見つめた。
「ワー無表情に言われるとすげーこえー」
 って絶対思ってませんよね、みたいに、言った。
「で、さっきからお前は一体、何を弾いてるわけ」
「なにがよ」
「それ、H2のハルカが作った曲なんじゃないの」
 オーハシが持ってるギターを指さす。取りとめもないコードだったはずの音は、いつの間にか、最近雪之丞が面倒を見ている、H2という「朱月・ヒカル」と「遥風・ハルカ」からなるユニットの、ハルカの方が作ったと思しき、曲へと変わっていた。
「鋭い。さすが、ユキノ」
「だから何で知ってんのって」
「そりゃあ、会って見せて貰ったからでしょ」
「でた」
「何が出たよ」
「もー何やってんですか、オーハシさん。面倒臭いからやめて下さい」
「いや一応、音楽に貢献してる身として、俺も後輩育成とかしとこーかなとか。あとほら、曲りなりにも雪之丞の友人として、偵察?」
「いや、何やってんですかって、オーハシさん」
「そりゃユキノが可愛がってる後輩いるとか聞いたら見たいでしょー。珍しいもの」
「珍しいかしら」
「むしろ珍事件よね」
「そうかしら」
「よっぽど才能あるか、よっぽど面白い事があるかの、どっちかじゃん」
 あーそーですかー、みたいに、むしろ、もうこの話興味無くしたんで、やめます、みたいに顔を背けた雪之丞は、肌のお手入れを続けながら、ぽそ、と言った。
「で?」
 けれどオーハシは、無言でハルカの曲を弾いていた。
 実に真っ直ぐな、それは若さとも未熟さとも言えるのだけれど、同時に羨ましい程にあっけらかんとした、明るさのような物が滲む、ハルカという人物そのもののような、その曲を。
「いやあの二人面白いよね」
 暫くして、ポツン、と友人が、言う。
 やっぱり、と思って、雪之丞は、小さく、唇を釣り上げる。
「あんまり若くて面白いから、ちょっと引っ掻き回しちゃったよね」
「やっぱり」
 今度は声に出して言って、たまらず、吹き出す。



 ××



「ああ俺、ユキノの昔からの知り合いだから」
 と、録音の合間に、スタジオの休憩室で一緒になったオーハシさんは、話の流れでそんな事実を明かし、ヒカルを驚かせた。
 オーハシさんは、とあるバンドのボーカルとギターをやっている人だ。最近では、ソロの活動も盛んだったりする。
 H2としてこの業界に入る前から、それなりに好きなバンドのそれなりに憧れだった人で、たまにスタジオで顔を見かける事とかはあったけれど、もちろん気安く話しかけられるような人でもなく、だから、「君らが今歌ってる曲って、ユキノが作った曲なんだよね」とか、向こうから話し掛けられた時には、緊張した。
 それで、はいそうです、ユキノさんの曲です、と委縮しながら答え、なんやかんや喋っていたら、彼が、その事実を明かしたのだ。
 しかもその言い方には何となく、「ああユキノさんね、知ってるよ」みたいな、他の業界の人達が言うような他人行儀さがなくて、もっと身近な親しい感じが滲んでいたりして、ヒカルは、正直、少し、何か、驚いていたりした。
 あのユキノさんを、昔から、知っているとは。
 むしろ、ユキノさんに昔があるんですか? と。
 だいたいいつも、人が若干「え」とかなるくらいのばっちりメイクで、見た感じ、性別とかも何か良く分かんなくて、むしろ人とかではもーなくて、退廃的な少女人形のような雰囲気を醸し出している梅若雪之丞の、素性とか生活とかを知る者は多くなくて、そりゃ人間なのだから、生活だってしているのだろーけれど、そんな雰囲気は全く感じられないくらい無機質な感じしか伝わってこなくて、もしかしたら彼は、音楽関係の仕事をこなすために秘密裏に作られたロボットなのではないか、とか、むしろ音楽で地球を支配しに来た、宇宙アンドロイドとかではないか、とか、確実失礼なのだけれど、実際、思っていたりしていた身としては、あー、そうよね。あの人にも昔があるのね、人間なのね、生きてきてるのよね、みたいな、新鮮な驚きがあった。
 の、だけど、相方のハルカは、そーでもないらしい。
「へーそうなんすかー!」とか、びっくりするくらいライトな返事を打ち、「俺も最近、ユキノさんとは仲良くさせて貰ってんすよー!」とか何か、もー、バカ丸出しとしか思えないよーな、無防備な事を、言った。
 ヒカルは、そんな相方の恥に、穴を掘って埋まりたくなる。
「ふうん。仲、良いんだ」
 と、オーハシさんは、あんまり感情の読めない表情で、言った。
 というか、元々、どっちかってゆーと、やっぱり類は友を呼ぶのか、ユキノさんと同じで、感情の激しい起伏とかがなさそーな人なのだけれど、それにしてもこの反応は、ただでさえ気まずさを感じている身としては、最早、更に、気まずい。
 だから思わず「いや、相手にしなくていいですよ」とか何か、フォローを入れたのだけど、「何だよ! 相手にしなくていいって!」とか、早速相方が、TPO関係なく、怒りだした。
 面倒臭い。
 でも、放っておいたらもっと面倒臭いことになるっていうか、絶対いつまでも絡み続けてくるに決まっているので、言った。
「いやだから、失礼だろ、先輩に向かってそんな風に」
 それから、オーハシに向かい。
「いやほんともう、相方はあれなんですいません。何ていうか、凄い、良くして貰ってます、本当に」
 と、軽く、会釈を。
 そしたら相方は、思いっきり、むーと、「何だよコイツ、イイ子ぶりやがって」感満開の、拗ねたような顔になる。
「だって。本当に、仲良いんだもん」
 最終的に、負けた事を認められない子供みたいに、言った。
 二人の時ならまだしも、先輩がすぐ傍に居て、公衆の面前で、何でこいつは、何処でもこんなに無防備なのか、何処でもこんなにありのままなのか、ヒカルは信じられない。
 だいたい、誰にでもありのままを見せてしまう、という相方のこの部分は、最近ちょっと気に入らない。
 理由は分からないけれど、その時も若干、どういうわけか、ムッとした。
「ふうん。一緒に飯、食いに行ったり?」
 そこでオーハシが、表情こそ無のままだったけれど、まるで、よしよし分かった分かった、と子供をあやすお父さんみたいに、口を挟んだ。
 そんなわけはないので、それは逆に酷な質問ですよ、とヒカルは思った。
 けれど、相方が「はい!」とか元気に頷くので、いやいやいや、とちょっと、何か、笑ってしまった。
「いや何でそこでバカにしたみたいに笑うかな、お前」
「え、笑った? 俺」
「いやいや今まさに笑ってるし。むしろ、現在進行形で笑ってるし」
「いや嘘吐くのどうかな、とか思って」
「は? いや何が」
「別に」
「え、なに。何が嘘なの。何が言いたいんだよ、お前」
「だってお前、本気なの」
「本気だよ、行ったよ、こないだの休み」
「あ、そう」
 けれど、そんな話は聞いてない。
 そんなびっくりニュースがあったなら、いつもは真っ先に俺に言ってきてるはずなのに。
「そうだよ、ざまーみろ」
「聞いてないし」
「別に、言ってないし。休みに何しようと俺の勝手だもん」
 それは確かにそうだけど。
 瞬時にそう、思い。
 同時に、酷く、ムッとした。
「え、なに、誘って欲しかったの」
「別に」
「だってお前、休みの日くらいはほっとけよ、とか言って、電話したら、怒るじゃん」
「バカみたいに、今日は何してた、とか何とかかんとか、いつもはいちいち報告してくるからだろ」
「だから、今回はしてないんだろ」
 確かに、それでいいのだ。
 こいつは言われたことをバカ正直に実行しただけで、今回は全然間違ってはいない。
 なのに、どういうわけか、その時は、物凄く、苛っとした。
 だいたい、いつもなら、聞いてもないのに、一から十までいちいち説明してくるくせに。
 どうして、今回はそうしなかったのか。
 その基準は一体何なのか。
 ぐるぐるして、益々苛々してきた。
「だから、いつもだったらしょーもなこと、一から十までいちいち説明してくるから、面倒臭くなって怒るんだろ。つか、あんな電話されたら、誰だって怒るし」
「一から十までって、そんな俺だって、お前にだって言ってないことくらい、あるに決まってんだろ」
「あんのかよ」
「そりゃ、あるよ」
「ああ、そう」
「バカにしたみたいに笑わないでくれるかな」
「いや良く考えたら、別に普通に言ってないことくらいあるよな、とか思って。そんな事改めて言ってるこの会話、アホじゃねえ?」
「っていうか、何をそんなに拗ねてんだよ、お前はそんなに」
「拗ねてない」
「いや、拗ねてるでしょ。それはもう、ああこれは拗ねてますね、って誰が見ても分かるくらい拗ねてるでしょ」
「誰が見てもって、絶対わかんないし。だいたい、拗ねてないし、それはお前の間違った思い込みだし」
「だから、ユキノさんと食事に行けなかった事が腹立ってんだろ。別に、俺が誘ったんだから、えこひいきとか、お前が嫌われてるとか、そんなんじゃないんだからさ」
「いやもう、何言ってんだよ」
 だから多分、問題は、そんな事ではないのだ。
 話せば話す程、苛立ちの正体から遠ざかっていくようで、ヒカルは益々、苛立った。
 人が拗ねてる事は、簡単に見抜いてくるくせに。大事な事には全く気付いていないのだ、こいつは。
 鋭いのか、鋭くないのか、この相方の感受性はほとほと謎で、謎過ぎて、腹が立つ。
 けれどだいたい、大事な事とは何なのか、この苛立ちの正体は何なのか、自分にだって分かってないのだから、指摘されたところでやっぱり全く、分からないに違いない。
 だからこんな得体の知れない気持ちは、さっさと宥めてしまおう。
 そう、思うのに。
「分かった分かった、ごめんな。じゃあ、次の休みにお願いしてみるから。な? これでいいだろ」
「やめろよ、別にあの人だって、そんな暇じゃないだろうし」
「つか、お前も誘えばいいじゃん。意外と、いろいろ、親身になって相談に乗ってくれるんだよ、ユキノさんは」
「親身」
 その言葉をオウム返しにする脳裏には、以前、雪之丞の言っていたこんな言葉が浮かんでいる。
 ――僕はね。むしろ、分かりやすい子って、好きなんだよ。ハルカみたいな。
 ――可愛いよ、ハルカは。
「ふうん、そう」
 頷いたヒカルと被るように、「珍しい」と、オーハシが呟くのが、聞こえた。
「え?」
 ヒカルとハルカは、同時にオーハシを見る。
「いや、あいつがそんな風に人と飯食いに行ったりするのも、あんまないな、とか思って。特別、可愛がってるんだなってさ」
 そして、全く感情の読めない、あるいはもしかしたら鏡に映る自分の瞳に似ているのかも知れない、透明な湖のような瞳が、じっと、何故か、こちらを見やった。
 特別可愛がっている。
 別に、それならそれで、構わない。むしろ、喜ばしい事なのだ。
 俺は実際の所、雪之丞という人は苦手なのだし、けれど、この業界で生きていくならあの人の存在は大きいのだし、力になって貰って得になることはあれど、損をすることなどない。自分は苦手な人との付き合いを、相方がカバーしてくれているのだと思えば。
 ――誰の心の中にも、するり、と入って行くハルカ。
 ――ヒカルだけにではなく、誰にでも無防備なくらいに懐いて、バカ正直に自分を見せて、傷つくことなど恐れず懐いて、相手の心を動かしていく。

 ヒカルは、思わず、オーハシの瞳から、視線を逸らす。
 別にやましい事など何もないのに、何か、とてつもなく何か、見られてはいけない事を見抜かれてしまいそうで。

「いやホント、相方が可愛がって貰えて、有難い事すよね。っていうか、何か、見苦しい所をお見せしちゃって、すいません」
 ヒカルは、自らを取り戻すように、姿勢を正し、咳払いした。
 すかさず隣から、
「いやマジで、こいつと喋るとだいたいこーなるんすよ。何なんすかね。相性悪いんすかね、俺ら」
 とか何か、また、苛っとするような事を、ハルカが、言う。
「ちがちょっとお前、黙れば」
「んーだよ、うっせえ。機嫌わりー」
「まあ、確かに、全然違うタイプではあるよな」
 オーハシは、二人を見比べながらのんびりと言った。それから、「あ、そうだ」とか何か、自分のジーンズの後ろのポケットに手を伸ばし、何かを取り出す。
 そしてカードケースだったらしいそこから、名刺を一枚取り出した。
「まあ、ユキノ繋がりってことで、何かあったらいつでも、連絡してよ。飯でも行こ」
 ってその軽さも何だかヒカルは苦手だったけれど、それをまた簡単に相方が、「おー」とか何か、意味不明な声を上げながら受け取ってる光景が、何だかもう、どつきたくなるほど、腹立たしい。
「やったー。じゃあ、早速、今度の休み、どうすっか」
「んー、いいね」
 何でコイツはそうやって。
 忘れようとしていた苛立ちが、ぶり返してくる。
 誰にでも、簡単に懐いてんじゃねえよ。
 そしてどういうわけか、そんな言葉を言ってしまいたい自分に気付き、幻滅した。
 こいつがそういう人間な事くらい、最初から分かってた事なのに。
 それに干渉しようとしてるなんて、自分らしくない。
 こいつはどう頑張ってもこいつで、俺はどう頑張っても俺なのだから、それを分かって距離を置いて、見ていることが出来てたはずなのに。

 別に、休みの日にコイツが何をしてよーと、俺には関係ないのだし。
 二人は全く違う人間で、俺はコイツの全部を知ってるわけではないのだし。
 そんな分かりきったことに。どうして、こんなに、苛々するのか。

 なんて。
 そんな感情に基盤を置いてしまうと、自分が揺らぎそうな気配がしたので、ヒカルはすぐさま、それに蓋をすることにする。



 ××



「で?」
 雪之丞は、美容液に手を伸ばしながら、素っ気なく、言う。「どうするの」
 オーハシが、やっぱりギターを弄くりながら、これまた素っ気なく、答えた。
「どうするって、何が」
「いや、引っ掻き回しといて」
「まーとりあえず何でもいいんだけどさ、若いって、いいよね」
「あー別にどうもしない感じですか」
「どうもしない感じですね」
「無責任だねー」
「後はあいつらの問題でしょ。俺らはその、不器用にぶつかってく感じをこー、遠くから眺めてるスタンスってことで」
「どうなると思う」
「どーなるんでしょーねー。でも、こー何か、丸く収まって欲しいよね」
「むずかしそーだけどね」
「難しそうだよね。でも、可愛いよね、二人とも。ほんと若いわ、もう何か、不器用過ぎるわ」
「ハルカは素直に可愛いんだけど、ヒカルはあれだよね、わーコイツ今絶対、ざわざわしてるわーって、気付かれてないと思ってるところが、可愛いよね」
「最低な先輩だよね、俺ら」
「無責任だしね」
「ま。楽しいからまた、おちょくりに行こうとは思うけど」
「おちょくりに行くって、本当最低だよね」
「ねー最低だよね。いつからこんな最低な人間になっちゃったんだろうね」
「最初からじゃない」
「ねー、最初からだねー」
「だから僕達じゃあ、どうせ若くてもあの初々しい感じは出せないんだよね」
「まさにそうなんだよね」
 間延びした声で頷いたオーハシが、二人を思い出したのか、ちょっと、笑う。
 その気配を背中に感じながら。
「ホント若いって、いいよねー」
 雪之丞は、また、そんな事を繰り返し呟いた。









    END








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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 5549/ 朱月・ヒカル (あきづき・ひかる) / 男性 / 21歳 / 職業:ヴォーカリスト】
【整理番号 5548/ 遥風・ハルカ (はるかぜ・はるか) / 男性 / 18歳 / 職業:自称マルチアーティスト】
【整理番号 6477/ 梅若・雪之丞 (うめわか・ゆきのじょう) / 男性 / 27歳 / 職業:マルチアーティスト】