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<常夏のドリームノベル>


+ Summer partyでびっくりどっきり!? +


  ――――――――――――

■さまーぱーてぃさんかしゃぼしゅう

 かっこう:みずぎがいいとおもうよ
 きがえ:じこはんだん
 にんずう:おおければおおいほど
 にちじ:まんげつのよる
 ばしょ:いくうかんないようかんのうみべ(おぼれないでね!)

 さんかしゃは『まんげつのよる』に『きがえたじょうたい』で、この『しょうたいじょう』をにぎりしめてまて。

 よだん:みんな『ふぁいと!』です。

 ついしん:さきにさんかしちゃっただれかさんのかんそう。


「正直、面白かったけどマジで死ぬかと思った」

  ――――――――――――

 それは一週間前の出来事。
 参加者達の目の前に突如現れた一枚の紙切れ。
 ある者の元には住んでいる家の玄関に貼り付けられ、ある者など戦闘中突如空から降ってきた。各々紙を見れば子供の筆跡で上記のような文章が綴られていたのだ。中には子供の悪戯だろうと紙をゴミ箱に捨てるものもいたが、不思議なことにその紙は戻ってきてしまう。


 ―― そしてパーティ当日。
 招待状が光り、目が覚めた時には異空間。しかも昼。
 各々水着(及びそれに該当する)姿で揃ったメンバーは、明らかに海の家と言った建物とその前に立つ肌がこんがり焼けた水着姿の男はこう言った。


「では皆様、今より自力でのパーティの食糧確保をお願いいたします。海鮮は新鮮さが大事ですからね。巨大サザエなどもいいですが、タコとかイカとかとても美味しいですよ。あ、ちなみに飲み物や野菜類はこっちで用意してありますのでご安心下さい」


 ザァザァ。
 寄せては返す海辺、そこには巨大海鮮モンスター達が自分達を手招くように触手をにょろにょろ伸ばしていた。



■■【scene1:工藤 勇太(くどう ゆうた)の場合】■■



 問題の一週間前の朝。
 高校生男子である工藤 勇太(くどう ゆうた)は自分の学校の下駄箱の前でふるふると一枚の紙切れを握り締めながら歓喜に震えていた。高校生にとって下駄箱の中に手紙と言えば一つ! そう、それは!


「こ、これはもしや恋文!?」


 青春を謳歌している高校生にとって恋愛事も大事な事。恋人が出来れば人生薔薇色のハッピー。もちろん、出来なくても不幸とは言わないが、心構えが変わる事はあるだろう。もちろん別の面で青春を捧げる人間もおり、その人たちはその人たちなりに人生を謳歌している。
 だが勇太にとってやっぱり恋愛事は学生において重要と心に定めており、それはもう意気揚々と手紙を開いて――。


「とりゃっ!!」


 くしゃくしゃぽい!
 中身を読んだ瞬間、ゴミ箱に捨てるという結果に。
 ひらがなだらけの文面におかしな誘い文句。これに警戒しない訳が無い。勇太はそのまま午前中の授業を受け、やがて手紙の事を忘れかけていた昼食時――。
 お弁当の蓋を開けばまたあの紙切れ。
 そっと蓋を戻す。俺は何も見なかった。何も見なかった。そうこれは幻覚。次開いた時にはいつも通りの光景が広がっていると信じて。
 しかしまた開いてもそれはあった。


「勇太ー、お前さっきからなんで弁当の蓋ぱかぱかしてんの?」
「……抗えぬ何かが俺を呼んでいる……」
「はぁ? 暑さでボケたか」


 友人の一言もあり、彼は自身の顔を覆うとしくしくと泣き始めた。



■■【scene2:飯屋 由聖(めしや よしあき)と阿隈 零一(あくま れいいち)の場合】■■


 二人の手元に現れた紙切れ。
 それは阿隈 零一(あくま れいいち)が悪魔を倒した後にひらりと降ってきたもの。二枚出現したそれは綺麗に零一ともう一人、飯屋 由聖(めしや よしあき)の元へと狙いを定めて降りてきた。彼らは互いに顔を突き合わせ、内容を読んでみれば全く文面。
 ひらがなの多い招待状――これに切れたのは零一である。


「こんな怪しい所に行けっかよ!」
「へー。楽しそうじゃない」
「いやいやいや、こんな危険そうな場所に由聖を絶対行かせられるかよ」
「危険かどうか行ってみなきゃわからないじゃない」
「行かせらんねーっつってんのに、行く気かよ! ったく、破棄だ、破棄!」


 零一はそう言うと二人分の紙切れをびりびりと細切れにしてコンビニのゴミ箱の中に捨て去る。さあこれで問題は解決したと手を払い由聖の元に戻ったのだが、彼は天使のような微笑を浮かべながら何故かまたしても二枚の招待状を持っている始末。
 即座に零一は紙を奪い取り、また捨てに行くが――捨てても捨てても戻ってくる紙切れに零一はやがてがくりと肩を垂れ下げた。


「くっそ、満月の夜はお前ん家に泊まりに行くからな! ……も、もちろん警護の意味で」
「あー、お泊りっていいよねぇ。水着とか着替えとか準備しないとー。零一はどんなのが良いかな〜。あ、今から水着買いに行く?」
「お前には危機感というものがないのかー!」
「え?」


 両手を合わせ既に不思議な招待状を握り締めながら想いを馳せている由聖に零一は叱咤する。だが普段から天然気味な彼のこと。特に気にした様子は無く、満月の夜に胸をときめかせているのであった。


 そして当日の夜。
 由聖の部屋から見える空には見事な円を描いた月が浮かんでいた。零一は自分の分の着替えなど当然持ってきておらず、むしろ何か変化があればすぐに由聖を連れて逃げる気満々であった。だがそれはもう最早予想の範囲内だと由聖は知っているため、自分の荷物の中に相手の分の水着や着替えを詰め込んで準備は万端。
 由聖は日焼けが苦手なので、短パンタイプの水着の上に大きめのパーカーを纏い、そして麦藁帽子も忘れない。


―― 本当に危機感の無さ過ぎるだろっ!! 色んな意味で!


 中性っぽい顔立ちと肌が白い事もあり、胸元が隠れていれば女の子にも見えそうな由聖に対して零一はもやもやとした気分を抱き、苛立ちをそのまま貧乏揺すりと言う形で表す。
 そして。


「うわっ! 眩しっ!」
「何、招待状が光りだして――っ」
「由聖、それを離せ!」
「え、え、えええ!?」


 零一の警戒心も虚しく、シュンッと二人の姿がその場から消え去る。
 後に残ったのは……開きっぱなしだった窓の痕跡のみ。



■■【scene3:セレシュ・ウィーラーの突っ込みと狩人達】■■



「ちょいまち、どこがサマーパーティーやねん!?」


 金色のウェーブ掛かった髪に背中に一対の金色の翼を持つ少女、セレシュ・ウィーラーは男が吐いた「ちょっと海生物狩ってこい」(要約)の言葉に思わず突っ込みを入れてしまった。
 彼女はあの招待状に従い、しっかりとパレオ付きのビキニタイプの水着に着替えている。そして召喚されるがままに異世界の海辺へとやってきたのは良いが、そこで告げられた言葉に彼女は驚きを隠せないでいた。


 確かに彼女の眼鏡越しに見える目の前の景色にはバーベキューセットらしきものは用意されている。
 一緒にセットされた簡易テーブルの上には野菜も準備されており、それだけを見れば確かにバーベキューパーティなり、サマーパーティなり言えるだろう。しかし材料を取って来いとはどういう事か。本来ならば全てを準備した上で招待するのが礼儀ではないのか。
 彼女の言葉に同意するほかの召喚者達も多くおり、ぶーぶーとブーイングが飛ぶ。


 逆に戦闘が好きな者はこれ幸いと既に狩りに出かけてしまった。
 後ろの海からは楽しげな――訂正、阿鼻叫喚の声や、ヒャッハー! しちゃった人の声が聞こえてきて戦闘系ではない者達は若干冷ややかな視線を送っている。


 セレシュは「どないしてやろか」と眉間に指先を押し当て考える。
 バカンスを期待していた自分が悪いのであろうかとまで考えたが、そんな事はない。実際セレシュ同様バカンス気分でやって来た者も居り、彼らもどうするか迷っていた。


「あー……学校指定の水着とはいえ用意しておいて良かった……でも暑いー……」


 不意に隣からだらけた声が聞こえセレシュはそちらへと顔を向けた。
 そこに居たのは勇太で、彼は水着の上にパーカーを羽織った姿でだらだらと汗を流している。ふっと彼はセレシュを見やる。そして彼は大きく目を丸めた。


「え、あ、あれ? セレシュ、さん?」
「なんや、あんた。うち、あんさんのこと知らへんねんけど」
「え、え、あ、でも確かに俺の知ってるセレシュさんは人間で――えええ!?」
「別人ちゃう? 人違いされんのいややわー」
「あ、す、すみません。っと、俺は工藤 勇太! 宜しくな」
「お、挨拶されたんやったらしかえさなな。うちの名はセレシュ・ウィーラー。よろしゅうな」
「…………名前まで一緒」
「なんか言うたか」
「なんでもありませんー! ……う、叫んだら余計に暑くなった気がする。うー……暑いー……死ぬー……溶けるー……」
「うちは勇太さんのその声聞く方があつぅなるわ。ちょっと黙ってくれへんか?」
「ぐさり」


 勇太はセレシュの事で若干悩みつつ、背後に広がる海を見やる。
 やっぱりそこでは既に漢達の――いや、狩人達の戦闘が繰り広げられていた。巨大なイカにタコがその触手で人を絡めとり、剣を持つものがそれを叩き切る。何故パーティなのに戦闘。何故海に来てまでナマモノと戦わなければいけないのか。暑さにやられた頭ではもう何がなんだか分からない。


「ほら、零一はやっぱり準備してこなかったから着替えに時間を取られたじゃない」
「なんでお前が俺の分の水着を用意していたのかの方が気になるんだけどな!?」
「だって零一ぜーったいに何も用意しないと思ったから!」
「実際その通りだったけどよ!」


 海の家の方からは二人の少年が現れる。
 年の頃は勇太と同じくらい。――それは水着に着替えた零一と由聖だった。彼らは勇太の姿を見つけると片手を挙げ、寄って来る。いや、懐っこい笑顔を浮かべていたのは由聖で、実際零一は勇太に対して少しだけ眉根を寄せた。


「工藤さんも来ていらっしゃったんですね! で、パーティの準備は一体どうなったんですか?」
「ちっ、お前も居たのか」
「……なんで俺、嫌われてんの? いや、それが――」
「うちが説明したるわ。もう黙ってるのもあほらしいしな。というわけで皆、海の方を見い。あ、うちセレシュ・ウィーラーと言うねん。よろしゅうに」
「あ、僕は飯屋 由聖です。わー、黄金の羽だー」
「お前、天使か?」
「……まあ、うちの種族なんておいといてええ。どうせ多種族入り乱れ取るし」
「「「確かに」」」
「で、説明なんやけど……――」


 セレシュが海の方へと指を指し示す。
 そして海の男が言い放った言葉をそのまま繰り返し、そして深い溜息を付いた。その言葉にひくりと表情を引き攣らせたのは当然零一。由聖は意外にも「へぇー」と暢気な声を出すだけだった。


「意味わかんねー……つーか、なんでデカイの……? これ、狩るってより逆に狩られね? 俺達。絶対ッアー! なフラグだよな? な?」
「『あー!』ってなんですか、工藤さん」
「つーか、ざけんな! んな危険な事できっかよ! 俺は降り――」
「零一、いってらっしゃい♪ 僕は零一が獲って来た海鮮でお料理するからここで待ってるね」
「え、……アレに立ち向かえと?」
「まあ、あの男曰くそうらしいで? 自分で食べる分は自分で狩れっちゅー話やし」


 四人が集まってうーんっと悩み始める。
 いや、一人だけにこにこと天使のような笑顔を浮かべている人物がいた。「早く行ってくれないかなー。まだかなー。まだ行かないのかなぁー?」という期待の表情を浮かべた由聖だ。


「そこでサボっている方々、こっちの手伝いをするという宣言をした彼以外は行って頂きますよ」
「え、マジで?」
「さあ、……行ってらっしゃいー!」
「ぐぇっ、いやだぁーーー!!」


 男が勇太のパーカーを掴み、しっかり固定するとそのまま思い切り皆が戦っている戦闘場へと放り投げる。その悲痛な声はやがて木霊となり、勇太の姿は巨大モンスター達の中へと消えていった。タコイカ怖い、嫌いな勇太にとってこれは非常に苦痛な事である。
 さて男は次は誰を……、と零一へと視軸を変える。まさか自分も放り投げられるのかとぞっと寒気が走った零一は一歩後ずさった。助けを求めようと由聖の方へと視線を向ける。
 だがしかし彼はそれはもう本気で天使の微笑を浮かべながら一言言った。


「零一の格好良いところ見てみたいなー♪」


 ――終わった。
 結局零一が由聖のお願いを無視する事など出来ないのだ。一瞬は、ぐっと息を詰めるもやがて零一は己の手を拳にし、そして海へと走り出す。


「しゃーねーな! 行ってくる!」


 その表情は言うほどまんざらでもなく。
 零一は惜しみなく自身の能力を活用し、捕らわれていた狩人の一人を助けたりとそれなりに奮闘し始めた。


 そして一人残されたセレシュは腕を組みながら現在戦っている狩人達の行動を分析し、自分がどう動けばいいのか考え始めた。彼女が得意なのは回復・防御・補助魔法。一歩引いて皆が危険に陥った時に踏み込めばいいかと思案する。彼女自身、近接攻撃や攻撃魔法もそこそこ使えるが基本的には後衛支援が妥当だろう。


「よっしゃっ! うちがする事も決まったで!」
「いってらっしゃい〜。皆無事に帰ってきてね〜!」
「由聖さんも、準備とはいえ気をつけやー。こっちまで来ぉへん保証はあらへんねんから」
「はーい、気をつけておきますー」
「あんさんが怪我すると彼氏さん心配しはると思うでー」
「あ、……うん。そうだね」


―― あれはきっと僕の事を女性だと勘違いした……かな?


 セレシュの言葉にちょっとだけ困ったように笑みを浮かべるも、零一に心配をかけないよう気をつけようと思ったのも本当。そして全員が巨大モンスターと戦いに出た頃、由聖は海の男と戦闘能力が一切無い人達と共に残りの準備を始めた。皆が海に行ってる間テーブル出したりバーベキューコンロの準備したり、疲れて途中で帰ってきた人達には冷たい飲み物渡して「お疲れ様」と笑顔を向けたりと。
 そうして英気を養った人達はまた巨大モンスターと戦いに出て行くので、巨大イカタコがこっちの方に触手を伸ばす隙はなく、それだけが唯一の救いだった。
 

「皆ー! 回復魔法かけんでー!」
「「「おー!」」」
「あと補助魔法欲しい人おったら手挙げー……って多いわ!!」
「皆、補助魔法は欲しいってーの」
「零一さん、あんさんもかい」
「俺だって加護は欲しい」
「しゃーないなぁ。……うー、うちこれ終わったらぶっ倒れとんちゃうか……」


 セレシュの回復、そして補助魔法は前衛には非常に有り難く、彼女が唱える度に士気が上がっていく。
 零一は補助魔法を受け、より一層破壊力が増した己の能力で巨大モンスター達にダメージを与え、時にトドメをさす。ふと零一の視界の端に勇太が見え、彼が助けを求め、もがいているように見えたが……。


「ま、自力で何とかすんだろ」


 放置する事に決めた。



■■【scene4:戦いの終焉】■■



 ザァ……ザァ……。
 夕日が沈み始める頃、戦いは終結した。もちろん召喚者達の勝利によって。


「勝ったぞー!!」
「ぉぉおおおおお!!」
「やったぞー!!!」
「そうだぁああ!!」
「つまり」
「つまり?」
「飯の時間だぁああああ!!」
「うぉおおおおおおおおおお!!!」


 どうやら召喚者達の中に熱血漢が居たらしく、無駄に皆で盛り上がる。
 通常ならば装備なりなんなりと纏っている癖に、今回は水着という事でそれも無し。普段よりもボロボロになった狩人達がぞろぞろと獲物を連れて戻ってくる。


「大漁大漁っと」
「あー、つっかれたぁー……なんやえらい目におうたわ」
「お、これもついでにっと」


 波打ち際に流れ着いていた『ソレ』を零一は引き上げ、そして由聖の元へと真っ先に向かう。その肩には獲物の一部が握られており、零一は己の活躍に満足げ。一方、由聖は戻ってきた彼らを見るとまた冷たいお茶などを出し、癒しに掛かる。


「お帰り、零一。……って」
「大漁だろ?」
「た、大漁って……! だ、大丈夫ですか!? 工藤さんー!!」
「……俺、もうイカタコ食いたくない……」
「波打ち際に打ち上げられていたのを拾ってやっただけマシだろ」


 散々な目にあった勇太は本気で大粒の涙を零しつつ、本日の恐怖にぶるっと身体を震わせる。由聖は慌てて零一にレジャーシートの上に寝転がされた勇太の介抱に向かった。よっぽど怖かったのだろう。勇太は膝を抱え、拗ねたように「イカタコ嫌い、怖い。触手嫌い」と繰り返す。由聖はその度に「大丈夫ですよ、皆が倒してくれましたから!」と必死に心のケアに回った。


「なんや、零一さんの彼女甲斐甲斐しいなぁ。とられんよう気ぃつけや」
「彼女じゃない」
「そうなん? じゃあ余計見張っとかへんと横からかっ攫われてもしらへんで。あ、おっちゃん、うちにもジュース頂戴ー!」


 何かやっぱり勘違いされている気がする。
 うっかり噛み合ってしまった二人の会話を由聖は聞きながら、勇太の肩を揺らし「ご飯一緒に食べましょうよー」と優しく諭した。



■■【scene5:さまーぱーてぃ!】■■



「なんや、凄い大味かと思とったけど、意外と美味しいやん」
「でしょう? ちゃんと調味料とか刷り込んで、下味をつけてあげればあんな巨大モンスターでも立派に美味しくなるんです」
「それ、生やとマズイっていう風に聞こえんで」
「はっはっは、気のせいですよ。あ、向こうの方では工藤さんがあわびなどを焼いてくれてますから食べに行くと良いですよ」
「おおきにー」


 海の男が切り分けたタコやイカの足をサラダ風に仕立て上げたものをテーブルに置くと、一斉に群がる。しかし女性優先思考の男性がセレシュの分を取り分け、小皿に乗せたものをすっと差し出した。彼女はそれを有り難く頂きつつ、先程男に言われた方を見やる。


「う、う、う。最初から俺、準備係で良かったのに」
「――ありゃ、ちょっとしたトラウマになっとんなぁ……。あ、おいし」


 泣きながらも皆が狩って来た獲物を焚き火で焼く係を担っている勇太。
 彼の傍に置かれていた食材は皆、しょっぱい味がしたとか……しなかったとか。


 さて由聖と零一はというと、皆と仲良く談話しつつバーベキューコーナーに居た。各自用意されていた肉や捕ったばかりの大魚を切ったものを炙ったり、焼いたりし、好きなように料理しながら賑やかに食事を取っている。


「ね、来て良かったでしょ?」
「まあな。……あの狩りさえなきゃ」
「あはは、それは皆思ってること、かも?」


 由聖は少しだけ肌に傷を負っている零一の姿を見やると、そっと寄り添う。
 零一はそれに対しては何も言わず、けれどさり気無く相手の方へと近付くように身を寄せた。なんだかんだと傍に居れれば幸せな二人なのである。
 涙ぐんだ勇太にジュースを渡しにいくセレシュ、食べたいものを取り渡す零一にそれを受け取る由聖。他にも今回の戦闘で友情や恋が芽生えた面々が和気藹々と食事をする風景を見ながら男はうんうんっと満足そうに頷く。


「いやぁ、皆さん青春ですなぁ。結果良ければ全てよしなのですよ」
「「「「 お前が言うなっ!! 」」」」


 海の男の言葉に皆一斉に突っ込んだ。








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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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東京怪談
【1122 / 工藤・勇太 (くどう・ゆうた) / 男 / 17歳 / 超能力高校生】
【7587 / 飯屋・由聖 (めしや・よしあき) / 男 / 17歳 / 高校生】
【7588 / 阿隈・零一 (あくま・れいいち) / 男 / 17歳 / 高校生】

学園創世記マギラギ
【mr1850 / セレシュ・ウィーラー / 女 / 外見年齢15歳 / ゴルゴーン】


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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、今回はさまーぱーてぃへの参加有難うございます!
 四人での活躍、いかがでしたでしょうか?
 どちらかというと戦闘メインよりも四人でのわいわいがメインとなりました(笑)

 一応これでおしまいでは有りますが、今回は前半です。
 後半にも興味が湧いて下さいましたらぜひ参加してやってくださいませ!

■飯屋様
 こんにちは、お久しぶりです^^
 笑顔で零一様を動かすその天然系と見せかけた……(ごほんごほん)そこが相変わらず魅力的です。どうか零一様とお幸せに! パーカーを着たままなら男女カップルで通りそうなので思う存分いちゃついて下さい!