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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


+ それはとても良い××天気な日で +



「今日はお仕事おやすみ〜♪ はー、空中散歩ってなんでこんなに気持ち良いのかな!」


 前髪の一部が紫色の黒くて長い髪の毛を持つ少女――ファルス・ティレイラは別世界から異空間転移してきた紫色の翼を持つ竜族である。普段は完全に十五歳の少女という完全な人間形態だが、時々文字通り羽を伸ばすため、人の姿に飛翔可能な翼と角と尻尾が生えた姿となり空を散歩している事があった。
 今日の服装はキャミ系シャツに赤のミニスカート。中が見えても大丈夫なようにスパッツは勿論履いている。


 一方、同じように仕事休みを利用し、森の中を散歩している一人の少女がいる。
 彼女の名前はアリア・ジェラーティ、十三歳。フリルの付いた薄水色のワンピースを着た少女で、普段はアイス屋さんをしており、台車を引きながらアイスを売っているのだ。


「あ、雨」


 ふとアリアが顔を上げれば空からはぽつぽつと水が落ちてくる。
 最初こそはその勢いも緩やかだったが、次第にザーッ! とまるでバケツでもひっくり返したかのような物凄い勢いで雨が降り始めた。
 これにはアリアも――そして空を散歩していたティレイラもびっくり!
 慌ててどこかに雨宿り出来そうな場所は無いかと二人は各々探し出す。そして見つけたのは一軒の小屋。まずティレイラが空中から降り、その小屋の扉へと手をかける。だが当然施錠されており、中に入る事は叶わなかった。次いでティレイラは不意に何者かの気配を感じ取ると慌てて人間形態へと姿を変える。
 やがて、彼女の目にはぱしゃぱしゃと雨が降る中走ってくる可愛らしい少女が見えた。ティレイラは一瞬にして彼女が「人間でない者」だと見抜く。アリアもまたティレイラの存在に気付くと雨の中ではあるけれど、ぺこりとお辞儀をした。


「こんにちは、雨宿りご一緒させてください」
「これはこれはご丁寧な挨拶を……って言ってる場合じゃなーい! 早く屋根の下に入って入って!」
「きゃん!」
「あーあ、お互いびしょ濡れね」


 ティレイラはアリアの腕を引っ張り彼女を小屋の屋根の下へと避難させる。
 幸いにも屋根は広く、小屋の傍に寄れば雨がかかることはない。お互いに水も滴るいい美少女となり、非常に困った顔で空を見上げていた。服から下着も透けかけているし、これはかなり困った事態である。しかし止むまで動くわけにはいかない。これ以上びしょ濡れになるのはやっぱりお互い嫌なのであった。


「私、アリア・ジェラーティです。お姉さんのお名前は? あと、もしかして人じゃない……?」
「私の名前はファルス・ティレイラよ! ふふ、アリアちゃんも人間じゃないわよね」
「はい。ご先祖様に氷の女王っていう人が居たってお母さんから聞いてる。だから私、氷とか作れるの」
「へー、私はね。本当は竜族なのよ」
「竜!」
「今、人いないわよね。……ちょっとだけ見せてあげる」


 アリアはティレイラの言葉に目を輝かせると、ティレイラも悪い気はせず口元に指先を一本乗せると竜の翼と尻尾を出現させた。アリアは更に興味津々でティレイラの方へと寄ると恐る恐るその尻尾や翼に触れようとする。ティレイラはそれを快く受け入れた。
 さて、お互いに正体を明かしあったところで、暇だからという理由で種族の話や魔法のお話、そして互いのお仕事がなんなのかなど雑談を始めた。
 ティレイラは普段師匠と呼ぶ女性の元で魔法の修行をしながら配達屋さん兼何でも屋さんをしている事、アリアは自分の能力を活かしアイス屋さんをしている事など様々だ。
 ところが、その話の最中にふと、アリアが空を高く見上げる。つられてティレイラもまたアリアを見てから同じように空を見た。
 もはや雨と言うよりも嵐である。雨宿りするにもそろそろ限界を感じ始めていたその時、アリアは唇を開いた。


「もしかしたらこの雨、何とかできるかも……」
「本当!?」
「うん、でも……やってみないと、わかんない」
「いいよ、何事もチャレンジだもん! 何をするか私には分からないけど、アリアちゃんが何かを思いついたならやってみたらいいと思う!」
「じゃあ……」


 アリアは小屋の屋根から出る前に気合いを入れるため両手をきゅっと引き締める。
 そしてまたぱしゃぱしゃと水音を立てながら外へと出ると、その両手を天にかざした。その瞬間、大雨は小降りになり、そして嘘のように止む。ティレイラもまた屋根の外に出て軽く手を翳す。天気は曇ってはいるが、雨は見事アリアのおかげで止まっていた。


「ティレイラちゃん。今のうちに、帰ろ?」
「うん! しかし凄いなぁ……私こんなの出来ないよ」
「ちょっと、応用したの」
「? ……ま、いっか! さ、帰ろう!」


 深く物事を考えず、ティレイラはまた翼を広げると空を飛ぶ。飛び上がり見下げた森は僅かな光を吸い、キラキラとその葉を光らせていて綺麗。恍惚な表情を浮かべつつ、彼女は森の小道を走るアリアの速度にあわせながら帰路を辿っていた。
 だがそんなアリアに途中異変が起こる。はぁっと息を吐き、少し苦しそうに胸元を押さえたかと思うと。


「ごめんなさい、やっぱり限界……」
「アリアちゃん? ――きゃぁああ!!!」
「きゃんっ……!」


 直後、怒涛の猛吹雪が辺り一帯を襲い掛かる。
 アリアがした事……それは雨粒を全部雪に変えて、吹雪の要領で空中に渦巻かせ待機させていたのだ。しかし幼い力ではそれを持続させる事は困難で、今二人に溜まっていた雪が一気に襲い掛かり、力を使っていたアリア自身でさえ雪だるま状態になってしまうという事態に。


「ぷ、は。……ティレイラちゃん、どこ?」


 だがそこは氷を操る事の出来る娘。
 すぐに雪だるま状態から復活すると、ティレイラを探し始める。夏なのに吹雪という異常事態を引き起こされた事にびっくりしたのは森の動物達も同じようで、慌てて逃げていく鳥や小動物の気配がした。
 そしてアリアはティレイラを発見する。逃げ腰な飛行状態の時の姿で全身雪まみれになりながら彼女は凍っていた。アリアが凍らず、ティレイラが凍ってしまったのは恐らく空を飛んでいた事が原因だろう。なんせアリアは空に向かって力を使っていたのだから。


 ティレイラの氷像。
 それは所々、身体から氷柱が垂れ下がっており、瞬間冷凍された事が分かる。凍ったまま砕けなかった事は幸いというかなんと言うべきか。雪に覆われ倒れていたティレイラのその氷像を起こし、アリアはじっとティレイラを見つめる。
 だがその瞳はうっとりとしていて……。


「ティレイラちゃん、綺麗なの……!」


 スイッチが入ってしまった、とでも言うべきか。
 自分好みの氷像を作ることが好きなアリアはティレイラの氷像をとても気に入ってしまい、凍ったティレイラを観賞する事にした。
 溶けそうになればティレイラの周りだけ温度を下げ、溶ける事を許さない。――それはなんて美しい光景なのだろう。いつの間にか晴れた雪景色の中、アリアは自分用に雪の傘を作りそれを手に持ちながら、輝くティレイラを撫で回したり、凍った表情を近くで見て満面の笑みを浮かべる。


―― わーん、誰か助けてー!


「ティレイラちゃんすっごく可愛いの。綺麗なの……アリア、うっとりしちゃう」


 凍ってしまったティレイラの心の叫びはアリアには届かない。
 この後彼女がどうなるのか、アリアが彼女をどうするのか……それはまだ、分からないままである。







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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【8537 / アリア・ジェラーティ / 女 / 13歳 / アイス屋さん】
【3733 / ファルス・ティレイラ / 女 / 15歳 / 配達屋さん(なんでも屋さん)】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、ノミネート有難うございました!
 まさかのお二人のツインで何事かと思えば発注文を読んで納得。

 アリア様ってば相変わらず無邪気ですね!
 ティレイラ様も相変わらず素敵な固まりっぷりで!

 この後どうなったかは……今はお二人だけが知ってると言う事で一人妄想しておきます(笑)
 ではでは!