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<東京怪談ノベル(シングル)>


【HS】トルトゥーガ殲滅戦

ハイチと言われる地域がある。国名にもなっている。
1.ハイチの海へ

中央アメリカに位置するハイチは、ヨーロッパからの距離が近い事もあり、大航海時代と呼ばれた時代には、大西洋を渡ってくる船が多く訪れた。
ヨーロッパ諸国の国外である為に統治が及ばず、かつ、様々な国の富を乗せた船が集まるハイチ周辺は、大航海時代には一種の無法地帯となっていた。
富を乗せた船と、それを追う海賊。さらにそれを追う賞金稼ぎで、海は賑わっていたが、それも過去の話。
海も空も、どこかの国に属する現代では、海賊たちの無法地帯なんて、どこにも無い…はずだった。
「はいはい、どーせ全滅寸前になると、援軍呼ぶんだよね。
 あたし知ってるもん」
三島・玲奈 (みしま・れいな)は、ハイチの海上で、やれやれと呟いた。
海は賑やかである。
玲奈が乗っている、とある組織の艦隊は、大航海時代さながらの海賊と交戦中だった。
「トルトゥーガ…!」
海賊船から不気味な声が上がった。
その声に応じるように、海の向こうから、新たな海賊船の群れが現れる。
ぼろぼろの船に生気がないゾンビのような船員を乗せた海賊船は、幽霊船と呼んだ方が相応しいかもしれないと、玲奈は思った。

2.トルトゥーガへ

よくある幽霊船だ。
最初は、よくある虚無の世界からの召還物かと誰もが思った。
キューバ軍が、よくやる手である。
だが、幽霊船と言っても所詮は時代遅れの帆船だ。沈めてしまえばどうという事はない。
そんなわけで、とある組織の艦隊の火力を動員して、とりあえず沈めてみたのだが、そこに響き渡ったのが…
「トルトゥーガ…!」
謎の言葉だった。
その声と共に、海の彼方から新手の幽霊船が沸いてきた。
何百隻も、何千隻も…
無限に沸いてくる幽霊船は収集がつかない。
近所のキュラソー島に居た玲奈が呼ばれたのは、そのすぐ後の事だった。
まるで大航海時代に戻ってしまったかのような…いや、それ以上に賑やかになってしまた海を、玲奈は見渡していた。
「んー、ほんとに沢山出てくるねー」
なるほど、確かに沈めても沈めても、謎の言葉と共に幽霊船が沸いてくる。
とある組織の皆さんが言っている事は嘘では無いようだ。
「でもさー…
 トルトゥーガって、何か聞いた事あるんだよね?」
「確かに…」
玲奈の言葉に、甲板のクルーが頷く。
少し考えた後、玲奈は手を打った。
「あー、そーだ。
 ジョニデの映画で出てきたよ。
 なんか、カリブの海賊の集まる島の名前だとか何だとか」
おお、そーだ。それだ。
大航海時代には海賊島と有名だった島の名前だ。
とある組織の一同は納得した。
大体のからくりが分かった所で、玲奈は船内にあった救命ボートに乗り込んだ。
「じゃ、後はあたしが何とかしとくからねー」
にこやかに、とある組織のクルーに手を振って手を振って玲奈は幽霊船の群れへと漕ぎ出した。
数分後、玲奈の救命ボートは幽霊船に拿捕された。

3.トルトゥーガのからくり

そのトルトゥーガは、古びた酒場と店が立ち並んでいた。
ぼろぼろの建物は風が吹いたら倒れそうで、幽霊が居るのによく似合いそうである。
実際、酒場の中を見てみると、人間にしては顔色が悪い客でいっぱいだ。肉が削げ落ちて骨が見えている者も居れば、目が片方落ちている者も居る。
それでもアルコールの殺菌効果のおかげか、酒場の客はゾンビにしては血色が良い。
「おーい、ねえちゃん。シェリーはまだかー」
ゾンビAがウェイトレスに声をかけた。
「はいはーい、ちょっと待ってね、ゾンビの人ー」
声をかけられたウェイトレスは、陽気に声を返した。
大航海時代を思わせるカリブ風の衣装を来たウェイトレスは、玲奈だった。
…なるほどなるほど、大航海時代の海賊達の亡霊が集う異界のトルトゥーガを呼び寄せたわけねー。
霧絵も考えたもんだと、玲奈は頷く。
拿捕されてトルトゥーガに忍び込んだ玲奈は、そのまま酒場に忍び込んで様子を見ていた。
化け物を召還するんじゃなくて、化け物の住処ごと召還してしまったというわけだ。
…トルトゥーガから呼び出された亡霊たちが退治されて送り返されるのもトルトゥーガ。無限ループって怖いよねー。
まあ、仕掛けもわかったし、後は汚物を消毒するだけだね。
獲物は無いかな?
と、玲奈は酒場を見渡す。

4.さよならトルトゥーガ

トルトゥーガ…異界のトルトゥーガ…は燃えていた。
…アルコールって燃えるんだよね。
アルコールが高い酒を満たした酒瓶は、火炎瓶に等しかった。
玲奈が酒瓶を火炎瓶代わりにして飛ばしても、酒場の酒瓶は際限なく沸いてきた。
…トルトゥーガに還って無限ループするのは、お酒も一緒って事ね。
こりゃ、面白いや。
召還したドライアイスで酒瓶を破裂させ、火を放ちながら玲奈は、はしゃいだ。
そうして、トルトゥーガは自らの力で焼かれる事になった。
一方、海を挟んだ向こう側では…
「キーッ」
霧絵が悔しがっていた。