コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ノベル(シングル)>


殲滅の幕間

1.ファミレスのシスター達

ある平日の昼間のファミリーレストラン。
メイン客の家族連れが利用しにくく、それ程人も集まらない時間帯だ。
そんな人気が無い昼間に、数人の女達が集まっていた。
近所の教会のシスター達だ。
「では…勝負を始めましょう」
神妙な面持ちで言ったのは、白鳥・瑞科。戦闘シスターと呼ばれる、武闘派のシスターである。
周囲の女達も彼女の同僚で、ここに集まっているのは、シスターと言っても普通に教会の教えを説くのではなく、物理的に教えを説く者達ばかりだった。
瑞科の言葉に、他の戦闘シスター達も厳粛な面持ちで頷いた。
ある平日の昼間、人気が少ないファミレスの出来事である。
ファミレスの座席についている戦闘シスター達は、無言で互いの利き手を突きだした。
拳を握る者がいる。開く者も居る、人差し指と中指の二本を立てる者も居た。
平たく言えば、じゃんけんである。
数度のあいこの後、瑞科一人が拳を握り、他のシスターたちは拳を開いていた。
瑞科の負けである。
「あら、瑞科さんが一人負けとは珍しいですわね…」
「任務が終わったばかりのようですし、少しお疲れですか?」
他のシスター達が、ざわざわと騒いでいる。
「別に、疲れているわけではありません。
 皆さん、腕を上げましたね」
瑞科は、にっこり微笑んだ。
戦闘シスター達にとっては、じゃんけんというのは運試しでは無い。お互いの腕の動きを見定め、手を読み合う真剣勝負なのだ。
瑞科が一人負けするというのは、珍しい事だった。
…任務よりも、みんなとのじゃんけんの方が、よっぽど難しくなってきましたわね。
色々と腕を上げつつある仲間の戦闘シスター達の事を心地良く思いながら、じゃんけんで負けた瑞科はドリンクバーへと、仲間の分の飲み物を取りに行った。
テーブルには、各人が好むパフェやケーキが並んでいる。
甘いデザートには、砂糖が入っていない紅茶がよく似合う。
今日は、戦闘シスター達の休日だった。
人気が無い昼間のファミレスで、久しぶりに集まったシスター達は、日頃の任務の辛さの愚痴に、ひそひそと花を咲かせた。
…みんな、苦労してるのですね。
敵に見つかりそうになったとか、罠にかかったとか、それなりに他の娘達は苦労しているようである。
苦労する任務が無い事が悩みの瑞科にとっては、うらやましいばかりだった。


2.ブティックのシスター達

シスターというには、派手な格好である。
脛まで覆うロングブーツが、アスファルトを叩いている。
その代りにスカートが短い。
膝まではもちろん届かずに、瑞科のストッキングを履いていない白い太ももが外気に触れていた。
ロングブーツにミニのブリーツという若い娘にしか着る事を許されないような服装は、敬虔なシスターらしくない。らしくないが、瑞科は戦闘シスターだから良いのだ。
とはいえ、そろそろ秋風が若い身体にも染みる季節が近づいてきた。
秋物の服を適当に探しに、ファミレスを出た戦闘シスター達は近所のブティックを物色していた。
「お仕事の服もスカートに出来ないのかしらね?」
「見られるのさえ気にしなければ、割といけそうよね」
お仕事…つまり戦闘服も、もう少し色っぽくならないかと、戦闘シスター達は、ひそひそと話している。
確かに、戦闘服は動きを妨げないように身体にぴったりと合い、尚且つ肌を露出させないボディスーツが基本となってしまう。
身体にぴったり合うという事は、自慢のボディラインを披露する事になり、それはそれで色っぽいのだが、ワンパターンである。
瑞科も、それは感じている。なので、私服は露出を多めにしたいとも思っている。
瑞科は上半身は肘の上まで、下半身は膝がぎりぎり位の水色のワンピースを手にして、試着コーナーのカーテンを閉めた。
それから、上着を脱いで下着姿となった。
下着姿となった所で、自分の身体をゆっくりと確認するように鏡の前で一回りを始めた。
まず、両腕を上げ、頭の上で組み、上半身のラインを確認する。
女らしく膨らんだ胸は、自分でも威圧感を覚える程だ。丁寧に毛を処理した腋のくぼみも悪くない。
それからゆっくりと背を向け、背中からヒップのラインを確認して、瑞科は正面に向き直り、水色のワンピースの試着を始めた。
…悪く無いですわね
自らのワンピース姿を瑞科は満足して眺めた。
しばしの休暇を挟み、戦闘シスター達は訓練や任務の日々が待っている。
それでも、鏡に映るワンピース姿の瑞科は、とても落ち着いていた。