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<東京怪談ノベル(シングル)>


潜入は退屈

 水嶋・琴美(8036)は、単独で某所の首都より数十キロほど離れた場所にあるテロ組織の隠れ家に潜入し、壊滅……いや、【殲滅】するようにという任務を受けていた。
 自分の体の一部のようになるまで使い込んだ感触……斬ってよし、投げてよしという遠近両方こなせるクナイをその手に握り、
 黒のジャケットと白いプリーツスカートという、おおよそ戦闘服というイメージとはかけ離れた、女性らしい可愛い服装。
 しかし、ジャケットの下にはV字のニットシャツを着込み、彼女が身を素早く屈めたり立ち上がったりする度に、ニットシャツの下で大きなバストがゆっさゆっさと存在を主張している。
 おおよそ体格に至っては可愛らしいというものではなく、かなり女性を意識させる……つまり、一言で表すとナイスバディだ。
 彼女の後ろには、折り重なるように倒れている武装した男たち。
 狭い通路へ濃密に広がる血の匂い。よく観察すれば、男たちは急所を一突きにされて事切れている。
 急所にクナイが刺さったままの者もいたが、いずれも、この琴美によって容赦なく命を絶たれた者ばかりということだ。

 曲がり角では銃弾が雨のように降り注ぎ、射出音と薬莢の落ちる音が聴覚を奪わんばかりに鳴り響く。
 嗅ぎ慣れてはきたものの、火薬の臭いが鼻を刺した。
「――これしきで、私の進路を塞いだつもりですの?」
 弾を無駄に使わずにすむ方法もあるでしょうに、と肩をすくめてから、琴美は助走もせずに壁に足をかけると、一気に通路の向こう側へと飛び移る。
 着地する瞬間、胸元から数本のクナイを取り出すと、相手の手元や急所を狙って投げた。
 銃を取り落とし、醜く短い悲鳴を聞きながら、途切れた銃弾の合間を縫って素早く距離を詰める琴美。
「短い優勢でしたのね……もう逃げられませんわよ」
 テロリストに肉薄した琴美の姿に反応し、彼女の綺麗な頭部を銃の柄で殴りつけようと男は振り下ろしたが……琴美の姿は瞬時に視界から消えていた。
「……!?」
「鈍いですわ。下です」
 男が当惑した刹那、体をべたりと床につけて足払いを繰り出す琴美。
 ものの見事に男が転倒したのを横目で確認しつつ、
 立ち上がる動作の一部で、床に手をつく瞬間、立ち上がろうとする男の喉笛をクナイで抉り、白い床に鮮やかな赤の曲線を滴らせる。
 そのままくるりと空中で一回転。前方に着地した琴美は、さらりと揺れる髪をなびかせ、流れるような動作で次の標的へと狙いを定めた。
 素早く立ち回る琴美を仕留めようと、無数の銃弾が彼女を追うのだが――誰一人として、彼女の身体に銃弾を食い込ませることなどできなかった。
 琴美の表情も歪められず、そしてその体にかすり傷ひとつすらつけることが出来ぬまま、一人、また一人とテロリストたちは死の闇へと沈んでいく。
「なんと愚鈍。こんなことでよくもまぁ、テロ組織を語りますのね」
 私でなくとも片づけられたのではないかしら、と、伸びをしつつもつまらなそうに言葉を投げかける琴美。
 男の顔に憤怒の色が浮かんだが、琴美は銃口が付きつけられる前に男の頭部にクナイを投げた。
 眉間に深々と刺さったクナイをちらりと見やった後、琴美は編み上げブーツの踵を鳴らしつつ先を進んだ。

「随分派手に暴れてくれたなぁ、姉ちゃん」
 隠れ家の最深部に到達した琴美を迎えてくれたのは、数人の組織幹部と、組織の首領。
 彼らの表情は憎しみと畏怖にひきつり、愛想良く微笑む琴美を睨みつけていた。
「ここまで来るのに、少々時間がかかりましたわ。皆様熱意ある歓迎を見せてくださいましたもの」
「そうだろうなぁ。だが、俺らの歓迎は手荒いぜぇ?」
 首領が指を鳴らすと数人の幹部がさまざまな武器を持ちつつ素早く琴美を取り囲み、首領自らも長剣を抜き放った。
 殺せという低い声を合図に、一斉に襲い掛かる幹部たち。
 振り下ろされる剣をクナイで弾き、貫こうと風を切る槍の側面をブーツで弾き、軌道を逸らす琴美。
 穂先がひらひらと宙を舞うスカートに引っかかり、生地を引き裂く。ぷりぷりと弾力があり、彼女のほどよい肉感の太ももを露わにした。
「あら。女性のスカートを破くなんて、無粋ですわよ……」
 いけない人たちですわねと窘めるが、琴美の顔には怒りや悲しみ、焦りといったものは浮いていない。
 いつものように、微笑みを絶やすことなく相手の攻撃を捌き、一人ずつ確実にクナイの一撃や素手で屠っていく。
 テロリストも馬鹿ではない。だが、どんなに密接な連携を組んでも、波状攻撃をしても。
 琴美は涼しい顔のまま、その艶めかしい身体をくねらせながら躱して、相手を破壊するためにクナイを打ち込む。
 防刃チョッキであろうと、その繋ぎ目の隙間にクナイの刃先を差し込み、断ち切る。
 金属同士が擦れる耳障りな音が不快だっただけだろう。男を切り倒して僅かに眉を寄せた琴美は、最後に残った首領に目をやると、ニッコリと笑った。

「次は、あなたの番ですわよ」
 血に塗れたクナイを突きつけると、怯えもせずに首領もにやりとほくそ笑んだ。
「こんなに強い女は初めてだ。まったく、敵だってのが惜しい」
「そのようにお褒めいただきますと、大変気分が宜しいですわ」
 楽しそうに笑った後、琴美は『ですけれど、これ以上の手加減は致しません』ときっぱり告げて腕を組んだ。
 むにゅりと形の良い胸が歪まされ、先ほどよりも強調されて見える。
「もとより、助けてくれなど言わないさ。俺たちにも意志ってもんがある」
「ええ、それはお話しいただかなくとも結構です。私には、あなた方の理念などはどうでも良い事。
私はテロリスト全てを排除させていただく任務もございますから」
 睨みあう二人。先に動いたのは首領のほう。
 数歩瞬時に踏み出して、琴美の胸……急所である心臓付近を狙って剣を振る。
 県の長さと自分の間合いだけを考え、琴美はクナイで受けつつ一歩下がった。
 なるほど、速度は彼らの中では群を抜いているし、クナイで受け止めた時の重さはかなりあった。
 しかし、琴美もこの世界で生きてきたプロフェッショナル。この程度の衝撃や戦いはどうということもなかった。
 クナイを使って首領の剣を上に弾き、そのまま懐に入ってとどめを刺すように見せかけ――瞬時に裏へ回りつつ、脇腹から背中にかけて深く切りつけた。
 傷口を押さえ、後ろの琴美を振り返ったまま……首領はどさりと倒れて、動かなくなる。

 琴美は乱れた髪を手ぐしで直しつつ、周囲の状況と気配を伺った。
 最早どこにも人の気配はない。
「あっけない事……もう少し楽しませて欲しかったのですけれど、本当に残念。これで任務完了ですわ」
 大きく息を掃出し、琴美は踵を返して揚々と引きあげていくのであった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【8036 / 水嶋・琴美/ 女性 / 19 / 自衛隊 特務統合機動課】