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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


雪で遊ぼう!

 SHIZUKUが街に降り積もった大雪を見て、「今日は雪で遊ぶの! これは決定よ!」との一言で、学園の広い校庭には大勢の知り合いが集まった。


●はじめまして!
 頭にはもこもこのロシア帽、肩にはケープ、体にはコート、両手には手袋と、完全防寒の服装で校庭に訪れたアリア・ジェラーティは多くの人の中から、SHIZUKUとヒミコの姿を見つけて駆け寄る。
「SHIZUKUちゃん、ヒミコちゃん…」
「あっ、アリアちゃん!」
「来てくれたんですね。嬉しいです」
 話をしていたSHIZUKUとヒミコだが、アリアに声をかけられ、笑顔で手を振った。
 アリアが二人に近付くと、雫は彼女を見て首を傾げる。
「えっと…」
「ああ、まだ雫ちゃんは会ったことなかったね。このコはアリアちゃんっていうの。アリアちゃん、こっちのコは瀬名雫ちゃん」
「やっぱり初対面だったんだね。二人の知り合いだから、あたしも会ったことあるのかな〜って思っちゃった」
「『しずく』ちゃんが…二人?」
 SHIZUKUに紹介され、雫は納得がいったように頷くものの、今度はアリアが不思議そうに首を傾げた。そんなアリアを見て、二人は苦笑を浮かべる。
「あたしは芸名だけどね」
「まぎらわしいから、名前の下に大とか小とかつけて呼んでもらっても構わないからね。『SHIZUKUちゃん・大』、『雫ちゃん・小』って」
 雫の提案に、SHIZUKUはギョッとした。
「あたしが『大』の方っ!?」
「当然」
 確かにSHIZUKUの方が年上であり、雫に比べればいろいろと大きい。
 しかし女の子としてその呼び方に苦悩するSHIZUKUをそのままにして、アリアは雫に自己紹介をする。
「私はアリア・ジェラーティ…。アイス、いる?」
 そう言って能力を使ってアイスを作り出し、雫の前に差し出す。
「あっありがとう…」
 雫は引きつった笑みを浮かべながらもアイスを受け取って、一口食べると体が震えた。
「冷たいっ! …けど、美味しい」
「良かった…」
 嬉しそうに笑うアリアを見て、次は自分がアイスを貰う番になるのかもしれないと思ったSHIZUKUは気をそらさせようと、手を叩いて注意を引き付ける。
「あっアリアちゃん! 今日はここで雪遊びをすること、聞いているでしょ? 良かったら、あたし達と一緒に遊ばない?」
「そうですね。大勢で遊んだ方が楽しいですよ」
 SHIZUKUとヒミコの申し出に、アリアは嬉しそうに眼を輝かせた。
「雪遊び…、一緒に良いの? …うん、よろしくね」


●みんなで雪遊び
「最初はベタなところで、雪合戦をしましょう!」
 とSHIZUKUが言い出したので、参加する人々を集めてすることになった。
 まずは二つのチームに分かれる。次に学校の備品で借りてきた雪かきスコップを使って雪を積み上げ、防壁を作っていく。そして各々武器になる雪玉を作り、戦う準備を整えた。
「それじゃあスタートっ!」
 SHIZUKUの掛け声と共に、雪合戦が始まる。
 ちなみにチーム分けはSHIZUKUとアリア、雫とヒミコになっていた。
 運動神経が抜群のSHIZUKUをリーダーにしたチームは、どんどん雫&ヒミコチームを攻撃していく。
 そんな中、アリアはこっそり防壁に隠れながら、雫を見つめる。雫はSHIZUKUを狙っている為に、アリアの視線には全く気付かない。アリアは冷気を操り、雫の背中に雪を発生させた。
「うひゃあっ!? 冷たいっ!」
 雫は背中の冷たさに驚いて、こちらに向ける集中力を切らせてしまう。
「雫さんっ、大丈夫ですか?」
 バタバタと暴れる雫を見て、心配そうにヒミコが声をかける。
「…背中に雪が入ったのかな? 後ろの人の雪玉が、間違って当たっちゃったのかも…。大変だね…」
 と言いながらもアリアは雪玉を腕に抱え、雫を狙って次々と投げていった。
 雪まみれになってひっくり返る雫を見て、アリアは無言で、しかし得意顔をしながらガッツボーズをする。
 そんなアリアを見ていたSHIZUKUは、恐怖から顔を引きつらせた。
「…アリアちゃん、何て恐ろしいコなの…!」


 一通り雪合戦を楽しんだ後は、雪でいろいろな物を作ることになった。
 SHIZUKUと雫は大きな雪ダルマを、ヒミコは小さな雪うさぎを作っている。
 そしてアリアはスコップで大量の雪を集めると、袖からノミを出し、いろいろな作品を作っていく。
 それぞれ自分達の作品を作り終えたSHIZUKU・雫・ヒミコの三人は、アリアの作品を見てぎょっとする。
「わっ!? ネコ型ロボットがリアルに作られている!」
「耳にリボンを付けた白いネコもいるよ!」
「ハチミツが大好きな、クマさんのもありますね…」
 アリアは真面目な表情で、某有名キャラクター達の雪像を精確に作り上げていた。その出来は素晴らしく、近くにいる人々が携帯電話やデジカメなどで撮影を始めるほどだ。
「ふぅ…。氷像を作るのに慣れているから、雪でも作れた…」
 満足気に、手袋で額の汗を拭うアリア。しかしふと何かを思い出したように、真剣な顔付きになる。
「そういえば雪祭り…、今年は参加しなくちゃ…!」
「…それはどこの雪祭り?」
 決心を固めるアリアの耳には、SHIZUKUの声は届かなかった。


●危機一髪?
 その後はみんなで雪を集めてカマクラを作り、四人は中に入る。
 参加者の中に温かいお汁粉を作って配っている人達がいて、四人はありがたくお椀を受け取って食べ始めた。
「お正月が終わったばかりでお餅なんて食べ飽きたと思ってたけど、こうやって食べるとやっぱり美味しいわ〜」
「それにシチュエーションが良いよね。雪のカマクラの中で食べると、また一味違うし」
 SHIZUKUと雫はニコニコ顔で、お汁粉を食べる。今まではしゃいでいた分だけ体が疲れていて、温かい甘さが体中に染み渡るのを感じていた。
 ヒミコは食べながらも、アリアに声をかける。
「アリアさん、熱いですからゆっくり食べてくださいね」
「うん…」
 はふはふと白い息を吐きながら食べていると、不意に周囲が暗くなっていくことに気付く。カマクラから顔を出したSHIZUKUは、空に分厚い灰色の雲が浮かび、雪が降り出したのを見て眼を丸くする。
「うわっ!? 急に吹雪いてきたよ」
 同時に強い風が吹くようになり、SHIZUKUは慌ててカマクラの中に戻った。
「すぐに止むと良いけど…」
「帰りが大変そうですね」
 雫とヒミコも、心配そうに外を見ている。
 唯一、アリアだけは平然とお汁粉を食べ続けていた。しかしその眼には、怪しい光が宿っている。
 お汁粉を食べ終えると顔を上げ、三人の背中をじぃ〜っと見つめた。三人は外に視線も気も向けており、アリアの異変には気付かない。
「うわぁ…。何かもう、視界ゼロじゃない?」
「外に出ている人達、大丈夫かな?」
「…私達もピンチなのではないでしょうか?」
 ヒミコの言葉に、SHIZUKUと雫の表情が凍り付く。
「そっそういうこと、言わないでよ。ヒミコちゃん」
「そうだよ。カマクラの中はそこそこ暖かいけれど、吹雪き始めてから寒くなってきたんだから」
「そっそうですね。気温が下がっていますしね」
 三人はその寒さが、アリアから発生していることを分かっていない。
 寒さに震えだす三人を見て、アリアはニヤっと笑う。しかしだんだんと、その眼が閉じかけていく。
「何か…眠い…?」
 ウトウトしはじめたアリアは、数分も経たないうちに眠ってしまった。それとほぼ同じタイミングで吹雪は止み、分厚い雲の間から再び太陽が姿を見せて輝き出す。
 再びカマクラから顔を出して太陽を見たSHIZUKUは、安堵のため息を吐く。
「ほっ…。通り吹雪だったみたいね」
「良かったぁ。でももうそろそろ帰る時間じゃない?」
 雫の一言で、SHIZUKUとヒミコはそれぞれ時間を確認する。もうすぐ夕方になる時刻だ。
「そうですね。じゃあ帰る準備を…アラ?」
 そこでヒミコは、壁に寄りかかって眠っているアリアに気付いた。
「遊び疲れて、眠っちゃったのね。アリアちゃんはあんまり表情が変わらないし、自分から話すことも少ないけど、今日はずいぶんはしゃいでいたしね」
「と言うか、今日一番目立っていたのは、アリアちゃんのような…」
「ふふっ、可愛い寝顔です」
 SHIZUKUと雫、そしてヒミコに見つめられても、アリアは安らかな寝息を立てるだけ。
「起こそうとしても、コレは無理ね。仕方ないからあたしが背負うわ。校舎の中で休ませましょ。片付けが終わって、帰る時に声をかければいいし」
「そうだね。いくら何でもここで寝かせていたら、大変なことになるだろうし」
「じゃあSHIZUKUさん、アリアさんを背負わせますよ〜」
 SHIZUKUは雫とヒミコの手を借りながら、アリアを背負う。
 アリアの『三人を凍らせて、コレクションにしよう』という暗い願望に気付かないまま、三人は校舎に向かって歩き出した。


<終わり>


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【8537/アリア・ジェラーティ/女性/13歳/アイス屋さん】

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■         ライター通信          ■
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 はじめまして。
 このたびは依頼に参加していただき、ありがとうございました。
 ほのぼのながらも、ちょっと危険な感じのするストーリーを書かせてもらいました。
 アリアが良い味を出していると思います(笑)。