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<東京怪談ノベル(シングル)>


琴美の日常その4

9.新たな任務?

ある夜。
夜に紛れるように、黒いミニのプリーツスカートとロングブーツに身を包んだ影が歩いていた。水嶋・琴美だ。
「今日の任務は、いつもよりも簡単そうですね」
夜の闇に紛れるように琴美は呟いた。
「いや、これは実質休暇だろう」
横にいる男が呟いた。
琴美と同様の色合い、黒系のスーツを着た男は、以前に琴美が無人島で助けた諜報員だ。
「やっぱり、そうなのですか。
 薄々、そうでないかと私も思ってました」
琴美は、にっこりとほほ笑んだ。
研究所の殲滅任務を終えた琴美の次の任務は、
『街で一般事務用の衣服を買ってくる』という内容だった。
本部に居る時の普段着を調達してこいという事である。
確かに、体の良い休暇という事なのだろう。
「まあ、難易度的には、この前程度の敵拠点の殲滅だったら、良いお洋服を選ぶ方が難しいかもしれませんね」
琴美は皮肉で無く、そう思った。
お気に入りの服を選ぶというのは、なかなか難しい事だ。
夜の街…
琴美は同僚の諜報部員を連れて、なじみの店を回る。
夜に紛れる黒系の服を探して、琴美は街を彷徨う。
「どれも同じに見えるけど、そんなに違うのか?」
同僚の諜報部員には、どれも同じような黒い服に見えるが、琴美は色々と吟味しているのだ。
「違いますよ。これは肩の感じが硬すぎますから、可愛くないですね。
 こっちの方は腰回りがふわっとし過ぎてますから、体型を誤魔化してると思われますから、もっと体にぴったりと合う方が良いですね。
 男の人にはわからないと思います。仕方ありませんね」
服の事を話していると、琴美は口数が多くなる。
男から見ると何が何だかよくわからない服選びも、琴美にとっては一つの戦いだった。
彼女の言葉通り、それは殲滅任務にも勝るとも劣らない…いや、彼女にとっては殲滅任務よりも気を使う任務でもあった。
お供の諜報部員としても、琴美が服を選んで試着する度に琴美ファッションショーを堪能する事が出来るので役得でもあった。
「男の方の意見を聞いてみたいのですけど、こんなワンピースは、いかがですか?」
何件目かの店で、何度目かに着替えたのは涼しげな黒いワンピース。
袖が肘までの長さで、夏向けの薄い感じだ。
全体的に少しゆったりとした黒い布が、神秘的な雰囲気で琴美によく似合っている。
だが…
「可愛いけど…
 基地で着てたら怒られないか?」
「あら、古来からワンピースは女性の正装と言われてるんですよ。
 パーティとかだと、みんな着てますし」
「いや、自衛隊基地はパーティ会場じゃないし…」
「それは…確かに考慮しなくてはいけませんよね…」
はぁ…せっかく可愛いのに。と琴美はため息をついた。
まあ、これはこれで、私服として買ってしまいましょうか。
せっかくの良い服なので、琴美は私服用にキープする事にした。
…さて、次のお洋服は、何を見ましょう?
琴美のお洋服選びは、そうして夜更けまで続いた。

10.ディナー

薄暗い店内は畳が敷かれた和風の作りをしている。
明かりも灯篭のような物で照らされている。実際は、恐らく中に電灯が入っているのだろうが、雰囲気は出ていた。
木製の机の上には、茶碗が2つ並んでいた。中身はお茶漬けである。
琴美とお供の諜報員の分だ。
琴美の馴染みの和風の店…お茶漬け屋に、二人は来ていた。
「なんだ、経費なんだから、もっと高い店に行けば良いのに」
諜報員は机の上のお茶漬けを見て苦笑する。
「あら、鯛のお茶漬けですよ。決して安い物ではありません。
 夜中ですし、お茶漬けでも軽く食べる程度にしませんと」
静かに湯気を立てているお茶漬けを見ながら、琴美は言った。
確かに、それなりに高級な鯛茶漬けである。本物の日本茶と本物の魚を使ったお茶漬けだ。
戦利品のワンピースその他を脇に置いて、琴美は幸せそうに見えた。
「お米は良いですよ。麦と違って、水で煮るだけで調理できますから、保存食に最適ですし、お茶漬けにすれば夜食で食べても美容にそんなに悪くありません」
幸せそうに、お茶漬けについて琴美は語る。
そういえば、この娘はくノ一の出だったっけか。
たまに妙に和風になる琴美を見ていて、諜報員は思った。
日頃の任務は命がけになる事が多い。
こういう役得…琴美のお供として、デート出来る任務がある事は、男性諜報員にとっては、ありがたい事だった。
のんびりとお茶漬けを食べ終わると、着物姿のウェイトレスがデザートの餡蜜を運んできた。
まだ、お茶漬け屋でのディナーは終わりそうにない。

11.次の任務へ

束の間の、任務という名の休息。
なかなか休みを取らない琴美には、そうした任務が割り振られる事がある。
それは、同時に男性諜報員の役得ともなっている。
それが終われば、琴美達には次の任務が待っている。
「水嶋琴美、失礼いたします」
ゆっくりとした敬礼の動作と共に、琴美は部屋…彼女の任務の指令室へと入った。
都内某所の基地、第三特殊庶務課付控室と書いてある部屋が彼女の職場だ。
彼女の顔には迷いや不安は感じられない。

(完)

-----------あとがき-----------

毎度ありがとうございます。MTSです。
普段から窓は2枠づつ開けるようにしてますので、
ぶつ切りみたいな受発注になって申し訳ありません。
また、気が向いたらよろしくお願い致します。