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<東京怪談ノベル(シングル)>


政略結婚と不倫返し!?

 全ての始まりはどこからだったのだろう。兄嫁を弟が略奪したところからだろうか。弟国が相手語のみの女になれる虹嫁を兄国に嫁がせる計画を立てたところからだったのだろうか?あやこにはわからないし、考えるつもりもなかった。

 そんなことよりも今はこの特販人をどうにかして欲しかった。
 漂流中の老朽船が救難信号を出していたから助けただけなのだが、
「艦長太っ腹♪ダウナーの最新鋭艦は最高ネ」
 などといってやけに持ち上げようとしてくる。それがウザったくて仕方がない。それなら助けなければよかったと今更ながらに思う。
 あやこは挙式と和平の準備で忙しいのだ。
 艦内は弟国の神前挙式の準備中。
そこに碧摩蓮がいろいろと売り込みにやってきた。
「あなたもなの!?」
「あなたも、ってなんだよ。結婚式といえばいろいろ入用だろ。しかも、花嫁は虹嫁らしいじゃないか」
「そうだけど?」
「あれの保管は大丈夫かい?あたしの目算じゃ成熟の終盤。一番フェロモンを出す時期だし、どうやら胡散臭いねずみが潜り込んでるみたいじゃないか」
「ねずみ?」
「艦内をうろちょろしてる特販人さ」
「あれは困ってたから助けただけよ」
「どうだかねぇ」
 
 打ち合わせのために弟国の神官を探していると、虹嫁の前でに、特販人が神官に声をかけているところに出くわす。
「金などいらん」
「…まだ値上げするカ?神官商売上手ヨ。じゃあこれでどうネ 」
「しつこい!」
「何の話?」
 後ろからあやこが声をかけると、特販人はあやこにきがついていないのか、口をすべらせた
「とぼけるの下手ネ。虹嫁の……」
「虹嫁の?」
 そこで特販人が振り返りあやこの姿を見ると顔が凍った。
「花嫁は売り物じゃないの。わかる?」
 軽くパニックを起こしたかのように顔を真っ赤にして何事か叫びながら暴れ始めた。
「ちょっ!?」
 慌てて抑える神官とあやこだったが、繭が破れてしまう。
「「あっ」」
 その瞬間、繭の中から美しい女性が出てきて何故か綾子に靡く。その場にいた2人は虹嫁のフェロモンにメロメロだ。しかもフェロモンはこの部屋だけにとどまらず、艦内中に蔓延してしているらしく、扉の向こうで引き寄せられた人々の声がする。
「おいおい」
 そこに人をかき分け蓮がやってくる。
「あ〜あ、やっぱりなったか」
「まあ、政略結婚って常套手段だし、相手がメロメロの方が助かるんだろうけど……」
 苦笑いを浮かべるあやこに蓮がいきなり顔色を変えた。
「政略結婚だと!?虹嫁は人間だぞ。自由な恋愛も知らないのに政略結婚なんて許されてたまるか」
「まあ、人道的にいったらね……」
 ため息をついて少し考え
「じゃあ虹嫁の人権のために戦おうじゃん!戦争で何億死のうと知るか」
 そう言ってあやこは蓮と共闘することになった。
 先程から離れない虹嫁にあやこは諭す。
「本当にこのまま結婚してしまって良いのか?夫の死後の孤独を考えたか?」
 しかし虹嫁はキョトンとしてこう言った。
「幼い時から侍従が居たし孤独なんて知らない。役目完遂こそ至福だわ」

「ねぇ。私このままでいいのかしら。私、貴方と……」
 しかし、不安になったのか虹嫁はあやこを誘惑し誘う。そのフェロモンにクラっとこない訳はなかったが、
「私は私は既婚者で椅子に跨って寝る女よ?」 
 あやこはわざと嫌われるようにそう返した。

 そして婚礼当日。兄国の首相は仕事優先の男だった。
「可哀想に……あっ、これ美味しい」
 そう呟くようにい言いながら、出された料理に舌鼓を打ち笑顔のあやこ。
 お酌にきた虹嫁に
「綺麗ね。お幸せに」
 定例句のようにいうと、虹嫁が耳元で囁いた。
「私彼を好きに成れない…良妻を装うけど本当の伴侶は貴女。刷り込みは完了してたの♪ 」
 その言葉を聞いた瞬間、あやこは頭を抱え考えた。
「ま、まさかの寝取られ不倫返し!」
 その言葉が頭をよぎり、考えることを放棄したあやこはそのまま卒倒した。


Fin