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子供は大切にしよう
1.謎の大陸を見つけた
それは、全くの偶然だった。
何も無いはずの空間に、大陸が広がっているのを綾鷹・郁は見つけた。
移民船のレーダーには何も映っていない。
だが、確かに大陸が広がっているのが見えた。
恐らく、何らかの結界で隠されているのだろう。だが、至近距離でセンサーで確認すると、確かに大陸が広がっているのが見えるのだ。
これは大発見だ。
郁たちの移民船のレーダーでも発見出来ない科学力を持ったムー大陸は実在したのだ。
せっかくなので、潜入して調査を行おうかと郁はしばらくムー大陸の上空に留まって考えていたが、やがて、大陸の上におぼろげな影が浮かび上がった。
「やぁやぁ、見つかっちゃったね。王だよ。
せっかくだから遊びにおいでよ。子供たちだけね」
数千年前に流行っていそうな古代の衣装をまとった男は王と名乗った。
どうやら、ムー大陸側に見つかってしまったようだ。
しかし、そう言われても困る。
子供だけと言われても怪しすぎて、そのまま受け入れるわけにもいかない。
さすがに移民船の艦長が断るが、次の瞬間、郁と子供たちの姿が船から消えた…
2.謎の大陸に行った
気づくと郁は見知らぬ宮殿に居た。
恐らくムー大陸の王宮だろう。先ほど、ムー大陸の上空に浮かび上がった国王と名乗る男と、同じ姿の人影が目の前にあった。
「子供にしか用は無いんだけど、まあ大人が一人位居ても良いね」
「何で子供だけなの?」
「子供が居ないからね。
今、一人しか居ないし」
「そ、それは、やばいんじゃないの?」
国王と名乗る男に話を聞いてみると、ムー大陸は過度の少子化で困っているらしい。
子供が、ほとんど生まれなくなり、現在では子供が大陸中に一人しか居なくなったそうだ。
確かに、それならムー大陸で子供が求められるのはわかるが、もっと他にやる事があるように思えた。
「とりあえず、少子化対策の治療した方が良いんじゃないの?
結界張って籠るより…」
郁の素直な感想を聞くと、国王は一瞬動揺したが、言った。
「やだ。ムー大陸は隠れてなきゃ、やだ」
国王は郁の提案を一蹴した。
結局、子供たちは強制的に里親に出されてしまい、郁も何となくムー大陸に滞在する事になった。
3.謎の大陸は解放された
郁は微妙な立場でムー大陸に住む事になった。
里親に対して、元親という所だろうか。
子供たちに対面する事は出来ない、軽い軟禁状態のようだったが、不自由は無い生活を送っていた。
子供たちも、さすがに大切にされていたが、しばらくするとホームシックで親に会いたいと訴えるようになった。
元々、望んで里親に出されたわけではないので、仕方のない事だ。
こうなったら、仕方ない。
古来より、戦う術を持たない民衆が意思表示をする為に使われてきた最終手段だ。
ハンガーストライキ。
郁は、子供たちに手紙を送る事は許されていたので、子供たちにハンガーストライキを起こすように指示を出した。
要求を通すため、食事をしない事で意思表示をする手段である。
基本的に、子供たちは大切にされているので、これは効果的だった。
そうした混乱の中、郁達の移民船の援軍がやってきた。
ムー大陸は、結界による鎖国を続ける事を望んではいたが、少子化に悩んでいる事も事実。
結局、ムー大陸は少子化の病に対する治療を受け入れる事になった。
「まあ、存亡にかかわるし仕方ないね。
子供も一人だけじゃ、友達が居なくて可哀そうだしね…」
やれやれと、国王と名乗る男も治療について認めた。
そうして、強制的に里親に出された子供たちは移民船に戻る事になったが、里親先の相手に不満があったわけでは無いので、里親相手と別れる事も、また悲しい出来事だった。
「無い方が良い出会いも、あるのかもしれんねぇ…」
予想外の悲しい出来事に、郁も涙で頬をにじませるのだった。
(完)
-----------あとがき-----------
里親に出されると、親が二人居ることになってしまうので難しいですね。
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